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「秋の夕暮れ考」
2015-10-30 07:00110pt9海と山に囲まれたこの小さな集落で暮らすようになって変わったもののひとつに読書の傾向がある。それは『万葉集』とか『新古今和歌集』など、かつての日本人が詠んだ和歌集を読むようになったことだ。読むといってもページをぱらぱらとめくり、目についた歌を味わう程度だけれど。読むようになった理由は
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「医食同源」
2015-10-28 07:00110pt4ある朝、宅配便でペットボトルに入った薄い蜂蜜色の液体が届いた。底の方に何匹かのスズメバチとチーズのような白い欠片がいくつか沈んでいる。差出人は群馬の里山で果樹農園を営む見城さんだった。
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「海を見ながら飲むビールが好きだ。」
2015-10-26 07:00110pt6海を見ながら飲むビールが好きだ。それも自宅では缶ビールではなく、瓶ビールを好んで飲むようになった。さすがに自分で買ってくるには重過ぎるので近所の酒屋さんにケースごと配達して貰う。銘柄はハートランドの大瓶だったり、スーパードライの中瓶だったり。ひとりだとちょっと多いけれど、奥さんと二人で飲むにはちょうどいい。
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「Buy Nothing Day(何も買わない日)」
2015-10-23 07:0011ここ数日、原稿の締め切りに追われ、ひたすら自宅でパソコンに向かっている。数時間おきに強ばった身体をほぐすためにベランダで海を見ながら背伸びをするのと、1時間ほど日課のランニングをする以外は外に出ていない。そんなランニングの最中、ふとあることに気づいた。それはここ数日間、1円もお金を使っていないことだ(とはいえパソコンや照明器具などの光熱費が日割りであるので厳密に言うと1円も使っていないわけではないけれど)。そもそもこの海辺の町では必要最低限なもの以外にお金を使える場所が限られている。結局、喉が渇けば自分でお茶やコーヒーを淹れたり、お腹が空けばごはんを炊いておむすびを握ったり、畑で採ってきた常備菜と養鶏場の卵でオムレツなんかを作ったりする。
これが都会ではそうは行かない。原稿を書きながら遊牧民のようにカフェを何軒もハシゴする。お腹が空けば手軽に食事のとれる店や出来合いのものを売っている -
「いつだったか、夕暮れの波打ち際で」
2015-10-21 07:00110pt5いつだったか、夕暮れの波打ち際をぶらぶらと散歩していたときのことだ。夢中で拾い集めたビーチグラスを僕の上着のポケットにねじ込みながら、奥さんがこんなことを聞いてきた。
「子供のころ、何が好きだった?」
黙って歩いていた中での、何の脈絡もない質問だった。
「子供のころ?」
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「万人直耕」
2015-10-19 07:00110pt9夕食の買い出しの前に、里山の菜園にいく。
その日、畑で採れたものを中心に、献立を考える。ハウス栽培ではないので季節に適合した野菜しか育たない。おかげで身体が必要とする旬のものだけを食べるようになった。身体が自然のサイクルを憶えたせいか、夏に白菜やブロッコリーが食べたいとか、冬にキュウリやトマトを食べたいなんて不自然なことも思わなくなった。
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「僕らが畑を耕す理由」
2015-10-16 07:00110pt5中国山地の空谷地区というところにある棚田から、新米が届いた。すぐに電話でお礼を伝えると「いやぁ、ほんのお裾分けですよ」という嬉しそうな声が返って来た。この棚田米を栽培されている堂願さんは農家ではない。普段は広島市内で老舗レコード店を経営されている方だ。コンサートの仕事を通じて出逢わせて頂いてから早いもので6年のおつきあいになる。お互いエンターテインメントを生業としながら、畑を耕しているのが共通点だった。
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「きぬかつぎ」
2015-10-14 07:00110pt7夕方、ベランダで海を見ながらビールを飲み始めたら、奥さんが里芋を皮付きのまま蒸したものを出してくれた。先日、かしこおばあちゃんの畑で掘って来たばかりの里芋だ。手に取ると皮がつるんと剥ける。添えてある粗塩をちょんとつけて頬張る。ねっとりとした食感とともに、土の匂いと井戸水の清冽さが口いっぱいに広がった。
「”きぬかつぎ”って言うんだよ」
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「ありがとうカウンター」
2015-10-12 07:00110pt -
「樹木図鑑」
2015-10-09 07:00110pt7先日、葉山の書店で『樹木図鑑』なるものを購入した。写真がたくさん載っていて、持ち歩きに便利なポケットサイズの奴だ。自分が木や花の名前に関してあまりに無知であることを、近くの山を歩く機会が増えたことで、改めて思い知らされたからだった。
思えば昔からそうだった。たとえば女の子と腕を組んで公園なんかを歩いている時だ。
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