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記事 13件
  • 「万古千秋」

    2015-09-30 07:00  
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     さわやか過ぎる秋晴れだった。 ベランダに出ると、青空がいつの間にか高くなっていた。ふいにどこか気持ちの良い場所で秋の空気を吸いたくなり、仕事を中断して走り始めた。 海は台風の影響で荒れ始めていた。強い陽射しの下でサーファーが波と戯れていた。ここも悪くないけれど、この眩しさは今の気持ちとは少し違うような気がした。
     そう、時に風景はうまく言葉にできない気持ちを鏡のように映し出してくれる。僕は自分がこの秋風の中に、今の心に近い風景を探しに出てきたのだと気づいた。そして、記憶の中にあった「ある風景」を思い出すと、海に背を向け、山へ向かって走り始めた。
     

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  • 「東京にもあったんだ その④」

    2015-09-28 07:00  
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     ランニングは旅先の風景を細部まで楽しむのにちょうど良い。時速40㎞の車だと早送りの映画みたいに通り過ぎてゆく景色も、時速5㎞程度の脚力ならちょうど良いスピードで見続けることができる。気になった場所があれば気軽に立ち止まって深く見つめることもできる。そんな理由で、旅先では可能な限り1日は自分の脚で走るのだけれど、
     

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  • 「東京にもあったんだ その③」

    2015-09-25 07:00  
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     自然は僕らに与えてもくれるし、呆気なく奪ってもゆく。美しさと残酷さが表裏一体であることを満天の星空の下、町中に響き渡った津波警報で改めて思い知らされた翌朝、僕らは素潜りを断念し、再び山へと向かった。
     

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  • 「東京にもあったんだ その②」

    2015-09-23 07:00  
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     何もないんじゃない。余計なものが何もないんだ。そのことがとても心地良かった。自分が普段どれだけ余計なものに囲まれて生きているかを改めて実感させられた。島民の方々にとっては足りないものもたくさんあるのかもしれないけれど。
     そんなことを考えながら、雨上がりの青空の下、車を走らせた。曲がりくねった山間の一本道。ロベレニーの葉の隙間から眼下のマリンブルーが見え隠れする。カーラジオの入りはすこぶる悪い。けれど大好きな音楽さえも今は邪魔に思えた。吹き込んでくる風の感触。深い緑の匂い。何も聞こえない音。五感に次々と飛び込んでくる新鮮な感動と沸き上がる思いをひとつずつ確認するだけで精一杯だった。
     

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  • 「東京にもあったんだ」

    2015-09-21 07:00  
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  • 「儲けないで、豊かに暮らす」

    2015-09-18 07:00  
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     前回記事に書いた「ブラムリー」について「どこで手に入るんですか?」というようなコメントをいくつか頂いたのだけれど、
     

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  • 「海の向こうのアップルパイ」

    2015-09-16 07:00  
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     日本、中でも東京ほど、世界中のありとあらゆる料理がかなりのクオリティで食べられる都市もない気がする。それは、日本が経済的に豊かだからという理由だけではないだろう。たとえば、ニューヨークに行ったことがある方なら分かると思う。世界経済の中心と言われるほどの大都市にもかかわらず、東京ほどたくさんの国の料理を食べさせるレストランはないし、フレンチやイタリアンなどがあるにはあっても、日本ほどおいしくはない(と僕は思う)。
     和食のみならず、中華、フレンチ、イタリアン、スペイン、インド、アフリカ・・・。なぜ日本人だけが、世界中のありとあらゆる国の食を探求し続けるのか。ひとつには
     

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  • 「子供には見えている」

    2015-09-14 07:00  
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     無心になって走っていると、いつもの理屈っぽいアタマでは到底考えないような事柄について考え始めていることがある。たぶん、夢を見ているときと同じ感じなのかもしれない。先日も、久し振りに訪れた秋晴れの空の下、海沿いを走っていて、突然こんなことを思っていた。
     

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  • 「晴耕雨読」

    2015-09-11 07:00  
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     不謹慎だけれど、小さい頃は台風が来るたびに、なぜだかわくわくしたものだ。学校が休みになるのが嬉しかった。閉め切った雨戸を叩く激しい風雨や、世界から光と音を消し去る停電にさえ興奮した。そして仄暗い家の中で蝋燭を灯し、本を読んで静かに過ごせるのが好きだった。
     最初に読書の面白さを教えてくれたのは、7歳か8歳のとき、台風の真っ直中で読んだ
     

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  • 「bouteille à la mer(海の中の瓶)」

    2015-09-09 07:00  
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     電話やメールと違って、いつどこの誰に届くのか分からない瓶詰めの手紙。いわゆる「message in a bottle」は1900年代に盛んだったそうだ。難破船の乗組員による航海日誌や、戦地で綴られた二度と帰れぬ故郷への手紙、また「自分という人間が生きていたこと」をいつか読んでくれるであろう誰かに向けて書かれたものなど、世界中の海岸で様々な種類のボトルメールが時代を越えて発見され、様々なドラマを生み出している。
     いつの頃からだろう。僕は自分の仕事を頭の中で視覚化するとき
     

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