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記事 14件
  • 「ピミエント・パドロン」

    2019-07-31 07:00  
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     冷えた白ワインで乾いた喉を潤した僕らの前に、熱々のオリーブオイルで素揚げにされた細長いピーマンに粗塩を振ったものがカウンターに置かれた。それが僕とピミエント・パドロンの出会いだった。
     

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  • 「その夜の花火」

    2019-07-29 07:00  
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     暮れてゆく一色の浜でビールを飲みながら花火を待っていると電話が鳴った。
     

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  • 「潮騒」

    2019-07-26 07:00  
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     潮騒を聞いていた。砂浜に寝転んで、背中で太陽の放射熱を感じていた。曇天だったけれど、雲の切れ間には時折り陽射しが光の梯子となって降り注いでいた。
     その数時間前、雨が降っていないのを確認して久し振りに里山の菜園を覗いた。ミニトマトを摘んで頬張ってみる。このところの多雨のせいでトマトに全く甘味が乗っていない。雑草ばかりが我が物顔で背丈を伸ばし蒼と茂っている。救いはピミエントパドロンが豊作なことだ。雨の少なかった去年は実っても辛い実しか採れず、原産国のスペインでないとうまく育たないのだろうかと手探りだったのだけれど、もっと大量の水を必要とする作物だったのかもしれないと実感した。
     それにしても熱い。まるで熱帯雨林気候のような体にまとわりつく湿度だ。そして無風。不快指数は最高潮に達していた。立っているだけで自律神経もみるみる不調になった。海の水に裸足を浸して頭の先まで冷えるところを想像した。

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  • 「投票しなかった人間が過半数を越えていることが最大の民意なのではないだろうか」

    2019-07-24 07:00  
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     もしも教室に生徒の半分以上が来ていなかったら、それでも教師は登校している生徒の為に粛々と授業を進めるのだろうか。それとも授業どころではないと登校しない生徒ひとり一人の言葉に耳を傾けようとするのだろうか。
     僕が登校している生徒の立場だったら「来ない奴らなんて放っとけばいい」と言うかもしれない。けれどそんなに僕を「みんなが揃って初めてクラスなんだよ」と咎める子もいるかもしれない。あなたならどうだろう。そして自分が不登校生徒の側だったとしたら―――。
     ひとつ一つに耳を傾ければ、不登校の子供たちの中にも多様な声があることが分かるだろう。先生が嫌い。授業についていけない。クラスに馴染めない。風邪をひいた。家の手伝いがある。親が弁当を作ってくれない。教材費や給食費を払うお金がない。そもそも学校に行く理由が分からない。勉強なら家でだってできる―――そう、勉強だけなら家でだってできるのだ。だからこそ

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  • 「ノリでいいんじゃない?」

    2019-07-22 07:00  
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     娘がコミュニケーションの難しさで悩んでいることを知ったのは「保育園に行きたくない」という彼女の意志を尊重し、仕事を半休して、地元の子育て支援施設で遊ばせていたときのことだ。 

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  • 「ぼくらはなぜ泳ぐのか」

    2019-07-19 07:00  
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     意識だけがあった。
     朧気な意識だけがあって、それ以外は何もなかった。光も、音も、香りも、触れるものも何ひとつ。何もないのに、何かがあった。感じられるようなものはひとつもないのに、包み込むような何かを感じていた。それが「ぬくもり」だった。やがてその「ぬくもり」を感じている意識こそが「わたし」であると気づいた。
     

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  • 「それでも太陽はそこにある」

    2019-07-17 07:00  
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     三連休に太陽が顔を見せることは一度もなかった。「海の日」は従来通り7月20日で良かったんじゃないかと歳時記よりも経済振興を優先したハッピーマンデーなる制度に文句のひとつも言ってやりたくなるような空模様だ。
     

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  • 「2歳児の繰り返す日常」

    2019-07-15 07:00  
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    「帰ったら何する?」
     保育園の帰りに娘に聞いた。すると、こんな答えが返ってきた。
    「『おかあさんといっしょ』みて、ごはん食べて、おふろ入って、絵本読んで寝て、また起きてごはん食べて…」
     淡々と答える娘は「何を分かり切ったことを聞いているの?」という冷めた目をしていた(ように僕の目には映った)。
     

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  • 「今日も嫌がらせ弁当」

    2019-07-12 07:00  
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     シェイクスピアの四大悲劇のひとつが〈親子の愛憎〉を主軸に据えた物語であることからも明らかなように親子というのは数ある人間関係の中でも難しいもののひとつかもしれない。
     

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  • 「『ひとつ足りないぐらいがちょうどいいんだ』と、あの人は言った。」

    2019-07-10 07:00  
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     横須賀中央駅から平坂という傾斜のきつい坂道を上がり切った三崎街道沿いに伸びる上町商店街。シャッターを降ろしたままの店も多いこの通りの並びに 

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