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記事 13件
  • 「おいしいごはんが食べられますように」

    2022-09-30 07:00  
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     久しぶりに太陽が顔を出した週末、浜辺を散歩した。散歩のときはいつもトングとゴミ袋を持参している。ビーチクリーンのボランティア活動だ。と書くと、徳の高い人だと誤解する人もいるかもしれない。改めて言っておくが、ぼくは社会のために奉仕活動するような聖者でもなんでもない。家の前に海があり、そこを歩けばゴミが落ちているから拾っているだけだ。
     

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  • 「ことりのギリ」

    2022-09-28 07:00  
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     母に「片付けなさい」と注意したり命令されるのが嫌いだった。だから「片付けなさい」と言われる前に片付けるようにしてきた。母もぼくが注意されたり命令されたりするのを察して何も言わなくなった。言われなくても自分でやる人間だと信じてくれたのだろう。
      誰もが「片付けなさい」と言われる前に片付けるようになれば「片付けなさい」と命令する人は必要ないのではないか。そんな思いが無政府主義とカテゴライズされるぼくの根底にある。
     

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  • 「友だちのーと」

    2022-09-26 07:00  
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     夏に旅をした。父と娘だけの旅だ。四泊五日。往復の機内。空港のトランジット。眠りにつく前。二人だけで向き合う時間がたくさんあった。普段できない話をたくさんした。
     

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  • 『序章、のようなもの』

    2022-09-23 07:00  
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     海辺で暮らし始めて、12年になる。
     どうして移住したのかとよく聞かれるけれど、声高に移住というほどの決意もなかったような気がする。あったのは多くの人が抱く「いつか海辺で暮らしてみたい」という茫漠とした憧れだけだ。すなわち海辺以前のぼくは、今これを読んでいるあなた自身だと言えるのかもしれない。
     

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  • 「子どもが自転車に乗れるようになる為に必要なもの」

    2022-09-21 07:00  
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     娘の自転車の補助輪を外したのは八月の最終週だった。計画的なものではない。朝、海辺で自転車を走らせていたらパンクした。その日の午後、逗子の自転車店に修理に向かう途中で衝動的に思いついたのだ。「どうせだから補助輪取っちゃおうか?」「えー!」 娘にとって青天の霹靂だったのは間違いない。
     

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  • 「可能性があるということは」

    2022-09-19 07:00  
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     5歳の娘はでんぐり返しが苦手だ。最初は恐怖感があった。でんぐり返しなんてちっとも怖くないよ、と読んでいる誰もが思うかもしれない。でも、怖いものは怖いのだ。理屈じゃない。娘は人一倍怖がりだ。良く言えば慎重だ。石橋は何度も叩いてから渡る。懺悔すると、娘がそうなったのは父親であるぼくのせいでもある。心配性のあまりにブレーキの踏み方ばかり教えてしまっていたかもしれないと反省している。一方でおかげでここまで大事に至るような怪我はせずに育ってきたという安堵もある。もちろんブレーキの踏み方ばかり教えても怪我していたかもしれないし、教えなくても怪我はしなかったかもしれない。だから何が正解だったのかはわからない。だが、ブレーキの踏み方と同時にアクセルの踏み方とタイミングも教えてあげるべきだったのかもしれない―――と、悔いたところで、ここからが本題だ。
     

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  • 「9月17日」

    2022-09-16 07:00  
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     2015年9月17日。 あなたはどこで何をしていただろうか。ぼくは八丈島の民宿で島焼酎を呑んでいた。確か平日の水曜日だったと思う。ぼくと妻の他に宿泊客はおらず、ロベレニーの葉を揺らす風も凪いでいて、本当に静かな夜だった。羽田から飛行機で55分。290㎞移動しただけなのに都会の喧噪が過去の悪夢のように感じられた。民宿の小さなテレビで国会中継を見たのは午後8時を過ぎた辺りだった。安保法案が参議院強行採決されようとしていた。四方を海に囲まれた絶海の孤島だからだろうか。昼間、畑や漁場や港で淡々と仕事をし、日が暮れたら温泉で汗を流し笑い合っている島のたちと触れ合ったせいだろうか。昨日まで心をざわわつかされていた問題だったのにその夜は遠い異国の出来事のように感じられた。
     

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  • 「今日ごはんなあに?」

    2022-09-14 07:00  
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     夕方、迎えに来たぼくの顔を見るなり、娘が訊く。「今日ごはんなあに?」 
     朝、起こしに行った妻の顔を見るなり、娘が訊く。「朝ごはんなあに?」
     朝、娘の髪を結っているぼくの顔も見ずに、娘が訊く。「今日給食なあに?」
     

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  • 「名前も知らない虫」

    2022-09-12 07:00  
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      一匹の虫が気になっている。
     頭は黒くて、尻はオレンジ。小さな透明の羽根を忙しそうにはばたかせながら立ち泳ぎみたいに浮遊している小さな虫だ。尻のように見えるオレンジの球体は抱えている卵かもしれない。全長は3ミリくらい。写真を撮ろうにもすぐに飛んで行ってしまう。まだ、二度しか見たことがない。
     

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  • 「もっと抱き締めてあげていればよかった」

    2022-09-09 07:00  
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     子育てが一段落したという方に話を聞く機会があった。「小さいときは一瞬だったよ」  もっとたくさん抱きしめてあげていればよかった、と後悔の言葉を口にされていた。仕事をセーブして、家事を手抜きして、自分のことは後回しにして、子どもに向かう時間を少しでも多く捻出すればよかった、と。 
     

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