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「春の扉」
2018-03-30 07:00110pt2ここ数年、滅びゆく惑星を数人しか乗れない小型宇宙船で脱出するようなイメージがいつも頭の片隅にある。小さな窓から見える故郷の惑星に残り踏ん張っている人々の姿に胸が締め付けられるのは、その中に脱出したと思っている自分自身の姿も見つけてしまうからだと思う。
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「転んで泣いても」
2018-03-28 07:00110pt2娘が本当によく転ぶ。たとえば服を着替えさせようとして逃げる娘とこちらの意図に反して追いかけっこみたいになる時も、歓喜の声を上げて前のめりに走り出してべちゃっと転ぶ。浜を歩いていても砂の起伏に足を取られ転んで砂を食べている。家の中でも浜辺でもとにかくそんな風だから気がつくと膝を擦り剥いていたり、顔や脛に傷を作っていたりする。この間、一日に何回転んでいるのか気になって数えたら
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「青春の終章」
2018-03-26 07:00110pt『とんねるずのみなさんのおかげでした』というテレビ番組が終了した。30年の歴史に幕を閉じた。その30年を自身の人生と重ね合わせる同世代の人も少なくないのではないだろうか。ずっと見ていた見ていなかったに関わらず。
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「僕らは何をそんなに忙しそうにしているのだろう。」
2018-03-23 07:00110pt -
「流されて八丈島」
2018-03-21 07:00110pt空港に降り立った瞬間から気持ち良かった。余計な力が抜けて、リラックスしていた。見上げた空は青く澄み渡っている。山肌に流れる雲の影が模様を描き出している。静寂に包まれている。面倒なものはすべて羽田空港に置いて来たみたいだ。
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「たまには泣いていいんだよ」
2018-03-19 07:00110pt2娘が以前ほど泣かなくなった。喋るようになったせいだ。「まだまだ」とか「もうちょっと」「あっちっち(料理が熱い)」「てて(だっこして欲しい)「ほん(読んで欲しい)」「ばいばい(眠いから寝る)」みたいな要求であるとか、「どうぞ」みたいな他者への好意を自分の言葉で伝え、理解して貰えるなったおかげで泣いて伝える必要がなくなったのだろう。
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「ブランコ」
2018-03-16 07:00110pt -
「暇」
2018-03-14 07:00110pt娘が暇そうにしている姿を目にするようになった。退屈を持て余してソファーに凭れている姿を目にするようになった。妻は料理をしている。僕は書き物をしている。誰もかまってくれない。やるべきことは特にない。やりたいことはあるのかもしれない。行きたいところはあるのかもしれない。けれどひとりでは何もできない。なんて不自由なんだろう。そんな顔でぐでっとしている。
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「2018年3月11日」
2018-03-12 07:00110pt4春の訪れを最初に感じるのは浜へと続く小径沿いの家々の庭に咲く梅の花だ。さりげなく剪定の行き届いた枝々に咲き誇る薄桃色の小さな花を通るたびに愛でていたせいか今年は娘も通るたびに指を差して「うめ」と口にするようになった。
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「漂着物探偵」
2018-03-09 07:00110pt2
春の嵐で時化ていた午後、浜に大きな骨が漂着しているのを娘と散歩していた妻が見つけた。
「何の骨だろう?」
大人の腕の長さくらいはある動物の下顎だった。いくつかの歯の他に牙が2つあるように見えた。絶滅した恐竜のようだとも思ったけれど、化石にしては美しく残り過ぎている。
「何の骨だろうね」
さっぱり分からなかったのと、勝手に処分したり、放置しておいていいものなのかも不安だったので、妻が撮った写真をツイートしてみた。何らかの情報が集まるかもしれないと思った。 海豚?鯨?鰐?鮫?海の生き物が次々とツイートされた。僕もこの中のどれかだろうと思っていた。しかし、答えてくれるのを待っていたある人から翌朝になって正解が届いた。
地元の海岸を調査し、記録することをライフワークとしている「まさかな」さんという方だ。日頃から海亀など座礁した海洋生物の対応もされている。お会いしたことはないけれど
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