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「待つ」
2016-09-30 07:00110pt10まさに迫り来る冬を忘れさせるかのような秋麗だった。前日も前々日も夏が戻って来たかのような快晴だったけれど、一日中東京ドームの下で過ごしていたので陽射しを楽しむことはできなかった。なので僕にとっては待ち焦がれていた太陽だった。
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「彼らに正論は意味がない」
2016-09-28 07:00110pt6どうにも理解できないのがゴミを捨てていく人の気持ちだ。浜辺もそうだし、走る車の窓から吸い殻を捨てる人が一体何を考えているのか全く理解できない。そして今、そういう人たちの気持ちを理解しなければならないのではないだろうかと思っている。
先日ランニングの最後に浜へ行った。僕と同年代かあるいは少し年下くらいの6人の男女がバーベキューをしていた。平日の午前中の浜には僕と彼らの姿しかなかった。合コンだろうか。有名な高いシャンパンを飲んでいた。どうして銘柄が分かったのかと言うと空き瓶が彼らのテストから目と鼻の先の浜の入り口にあるネット下に置かれていたからだ。ストレッチをしていたら今度はそこに女性のひとりが新品と思しきバーベキューコンロの空き箱を持ってきた。空き瓶の横に置いてまたバーベキューの匂い立つテントに戻って行く。ひょっとしてここをゴミ捨て場だと思っているのだろうか。でもそこには市が立てた「ゴミ -
「豚に林檎」
2016-09-26 07:00110pt6豚に林檎が合うなんて想像もしていなかった。群馬県は渋川市にある見城農園さんが今年も届けて下さった「ブラムリー」と「グラニースミス」(ビートルズのアップルマークになったことでも有名だ)という加熱用の林檎だ。最近ではもはや当たり前になった蜜がたっぷり詰まった林檎と比べて酸味が強い。加熱すると仄かな甘さが引き立って芳醇な旨さを増す。イギリスなどで主流の甘いだけではない昔ながらの林檎だ。
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「太陽が秋分点を通過した夜」
2016-09-23 07:00110pt2相次ぐ台風と長雨で一向に菜園に手がつけられない。乾燥が必要な夏野菜の種採りもまだだし、そこを耕しての冬野菜の種蒔きもできていない。蒔き時を逃すと発芽しなかったり、成長が悪かったりするので早いところなんとかしたい。おつきあいのある農家さんの中には稲刈りがまだできていないというところもあると訊く。秋の長雨とはいえやれやれである。
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「夏の喪失感に浸る夜」
2016-09-21 07:00110pt4一段と冷えた秋風が音もなく胸を通り抜けるとき、そこに「夏の喪失感」があることをまざまざと思い知らされる。喪失感について考えるたびに「無い」のに「有る」というのもなんとも不思議だなと思うのだけれど。それはともかく、暑さが残っているうちは夏の命が終わったことを実感し難かったのだろう。暦の上ではとっくに秋だったのに。
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「続・いのちを食べて僕らは生きる。」
2016-09-19 07:00110pt2秋の長雨が続いていたある日の夜、以前からお誘いを受けていたその店にようやく足を向けることができた。4月に「渋谷のラジオの学校」にご出演頂いたシェフにして猟師免許を持つハンターの室田拓人さんが渋谷2丁目にオープンしたフレンチレストラン「ラチュレ」。猪や鹿、熊や雉、鳩など天然の野生鳥獣を食材とするいわゆる「ジビエ・フレンチ」を食べさせてくれる店だ。恥ずかしながらフレンチのジビエと言えばたぶん鳩のローストくらいしか食べたことがなかった。そもそもフレンチもここ数年は結婚披露宴でしか食べていない。素材の旨味を生かした和食やイタリアンと違って、濃いめのソースによる肉料理というフレンチは胃に凭れるイメージがあって避けていた。イタリアンと違ってそもそも家で作るには難しいものばかりだし。しかし、室田さんのジビエ・フレンチはそんな僕の先入観を覆すものだった。
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「心に海を」
2016-09-16 07:00110pt6男女問わず好きになる人は誰もが心の中に海を持っているような気がする。海に行く頻度が高いとか高くないとか、海の側に住んでいるとかいないとかじゃない。心の中に大切な海があって、いつも穏やかにたゆたっている。それがこの殺伐した時代においてその人に「人間としての清冽さ」や「大らかな優しさ」を保たせているのではないだろうかと。
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「花を落とし大地の下で実を生らす。」
2016-09-14 07:00110pt4花を落とし大地の下で実を生らすから落花生と呼ばれていることを知ってからまだ10年にも満たない。それまで落花生といえば煎ったものしか知らなかった。そもそも畑で育つという認識さえなかった。だから最初に薄茶色の殻を土の中から掘り出した時は目を疑った。それを塩茹でしたものを食べた時のことも今でもはっきりと憶えている。
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「うたこさんと秋の夕暮れ」
2016-09-12 07:00110pt8秋谷という地名だけあってか、ここは1年の中でも秋の夕暮れがもっとも美しい。秋風というのは古来より西風を指すものだったそうだけれど、なるほど海から吹いて来る西風にもしみじみとした趣がある。その風が吹き抜ける134号線はこの辺りでは「西海岸通り」とも呼ばれている。
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「アオザメに、青褪める。」
2016-09-09 07:00110pt4ところで、「青褪める」の語源はこの魚なんだろうか。なんてバカなことも咄嗟に考えてしまうくらい驚いた。いつものように散歩がてら近所の漁港を覗くとアオザメが水揚げされていた。体長4メートルはあろうかという文字通りのサメだ。
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