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古賀茂明氏:岸田政権の最優先課題は崩壊した政府のガバナンスの回復だ
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古賀茂明氏:岸田政権の最優先課題は崩壊した政府のガバナンスの回復だ

2021-10-13 20:00
    マル激!メールマガジン 2021年10月13日号
    (発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/)
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    マル激トーク・オン・ディマンド (第1070回)
    岸田政権の最優先課題は崩壊した政府のガバナンスの回復だ
    ゲスト:古賀茂明氏(元経産官僚・政治経済アナリスト)
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     岸田政権が本格的に始動した。あたかも多種多様な候補者たちが侃々諤々の政策論争を戦わせているかのような演出を施し、派閥の親分の命令に造反する若手議員の反乱などというありもしないスパイスまで振りかけて盛りに盛った虚構のストーリーで、実際は国会議員が自民党の伝統的な派閥の論理に則って自分たちのシャッポを決める儀式に過ぎなかった総裁選を世論の一大イベントに仕立て上げたプロデュース力、いや演技力のおかげで、自民党は党の支持率を回復させることに見事に成功したが、さりとて安倍・菅政権と2つの政権を追い込んだ深刻な課題が岸田政権にまで持ち越されたことに疑いの余地はない。
     そして安倍・菅政権から持ち越された課題とは、失われた政権のガバナンスをいかに回復するかに他ならない。残念ながら先の総裁選では様々な政策論争が俎上に上ったかに見えたが、先の2つの政権で課題となった官邸に一極集中した権力の濫用をいかに防ぐのかという、今の日本にとってもっとも深刻な問題はまったくといっていいほど議論されなかった。一連の政策討論イベントはただ一度きりの日本記者クラブ主催の共同記者会見を除けば、全て党が主催し党側がお膳立てをした、早い話がPRイベントだったのだ。
     確かに個別の政策も重要だ。しかし、政権のガバナンスが崩壊したままでは、いかなる政策が打ち出されようとも、国民はそれをまともに受けとめないだろう。ガバナンス崩壊の実例を挙げればきりがないが、特に人事権を盾にとった強権発動に本来は優秀であるはずの霞ヶ関官僚は萎縮し、官邸の意向に唯々諾々と従うばかりか、自らの意見すら言わなくなった。菅元首相は自らの肝いりで導入したふるさと納税の問題点を指摘した総務省幹部を、あからさまに左遷した。
     安倍・菅政権で一強官邸の先兵となって動いた官邸官僚は、岸田政権の発足と同時にほぼ総入れ替えとなったが、果たして新政権が安倍・菅時代に傷んだ日本の民主主義を回復させることができるかどうかは、現時点では未知数だ。岸田政権でも経産官僚が官邸官僚として重用されているし、安倍氏の政権への影響力もさまざまな形で温存されている。
     ただし、元経産官僚の古賀茂明氏は岸田政権が立ち往生し早期に倒れるようなことになれば、次は安倍元首相自身が再登板することになる可能性が高いと指摘する。現時点では安倍氏は桜を見る会をめぐり検察審査会が「不起訴不当」を議決したことを受け、東京地検特捜部が再捜査を行っているため、すぐには身動きが取れない。しかし、その捜査が終結し再度「不起訴」となれば、晴れて政治の表舞台に復帰することが可能になる。今回の総裁選では高市早苗氏を自らの名代として立てざるを得なかったが、今回の総裁選は同時に、誰にどれだけ人気があろうが、結局は派閥の論理で自民党の総裁が決まることを白日の下に晒した。実質的に安倍氏が率いる細田派は385人中146人という党内で圧倒的多数の議員を抱え、盟友である麻生太郎氏の麻生派53人と合わせれば自民党の4割強を支配している現状に変わりはない。しかも安倍氏は国民の間にもそれなりに人気もある。
     岸田政権は単に安倍・菅政治を終わらせることができるかどうかが問われるばかりか、もし失敗すれば本当に安倍氏が戻ってきかねないという、日本の政治史上重大な分岐点の上に立っている政権と言っても過言ではないのだ。
     安倍・菅政権下で壊れた日本中枢のガバナンスとは何だったのか、それを再構築するために岸田政権は何をしなければならないのかなどを、古賀氏とともにジャーナリストの神保哲生、社会学者の宮台真司が議論した。

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    今週の論点
    ・自民党総裁選は3A(安倍・麻生・甘利)側の“完全勝利”に
    ・「李下に冠を正さず」が「捕まらないようにやれ」に
    ・ガバナンスの崩壊と、「失敗」を認めすぎている野党
    ・選挙で野党に期待するのは“ワクワク感”の醸成
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    ■自民党総裁選は3A(安倍・麻生・甘利)側の“完全勝利”に

    神保: 今回は岸田内閣が成立して最初のマル激となります。選挙も10月31日にいちおう決まりましたが、僕が1番に問いたいのは、総裁選の結果です。第一回目の投票で、党員票では河野さんがトップだったけれど、議員票が集まらず、岸田さんと1票差の2位に。ただ、4人もそれなりに有力な候補がいれば、どう考えたって過半数の票を集めることにはならず、河野さんは議員票で100を取ったとしても(実際は86票)、党員票で7割以上取らなければ、過半数の382票にはいかなかった。これがそもそも不可能で、しかも党員票は4割くらいが組織として動いている。

    宮台: 所属集団の奴隷といってもいいですね。

    神保: 自民党は比例区については「党員を何人引っ張ったか」というノルマと、それに達しなかったときにペナルティがあり、「党費はこちらで出しますから」という名義貸しもあるし、言ってしまえば正体不明の110万人です。そして、1回目は議員票が382で党員票も382で同じ比重だったわけですが、なぜか2回目は、議員票が同じく382で、党員票は47しかない。これはそれぞれの県で、河野さんと岸田さんで上に来た方がそちらに行く、と最初から決まっているんです。

    宮台: 決選投票という名前に値しない。党員票については1回目と2回目の投票で意思決定の変更ができないわけだから、決選投票ではありません。
     
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