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【泥臭く生きてゆけ!!】川尻達也の「30代後半のオッサン勝手にRIZINサバイバル」人生劇場!
2017-04-19 18:1255ptRIZIN横浜大会でアンソニー・バーチャックに判定勝利を収め、連敗を3で止めた川尻達也インタビュー。20代前半のファイターが増えているRIZINの中でベテランが見せたい背中とは?(聞き手/ジャン斉藤)「この歳になって佐藤ルミナさんの偉大さがよくわかります」――昨日はおつかれさまでした!
川尻 珍しいですよね、記者会見に来るって。
――川尻さんに会いに来ました。
川尻 ハッハッハッハッ。
――試合翌日ということもあって、さすがに疲れた顔していますね。川尻さん、見るからに疲れ果ててますよ。
川尻 疲れてないですよ。
――そうですか。じゃあ老けたんですかね(笑)。
川尻 いや、本当は疲れています(笑)。全身疲れてます。
――そうですよねぇ。
川尻 なんかね、歳なんですかね。試合が終わっても勝っていれば元気だったんですけど、勝っても全身が痛くて痛くて。しかも昨晩は眠れましたから。いつもは試合が終わった日は興奮して寝られないですけど、昨日は寝ちゃいました。……やっぱり老化じゃないですかね(笑)。
――それでも老体に鞭を打つというか、先ほどの一夜明け会見では「川ちゃん勝手にひとりでサバイバルトーナメント」の開催をぶち上げて、7月のRIZIN出場をアピールされてましたね。今年の大晦日が決勝戦みたいですけど(笑)。
川尻 いきなりバンタム級GPの開催が発表されたじゃないですか。だったら勝手にやっちゃうしかないなって。
――バンタム級GP開催の話は事前に聞いてなかったんですか?
川尻 聞いてなかったですね。
――じゃあ、「川ちゃん勝手にひとりでサバイバルトーナメント」のプランはその場の思いつきだったんですか(笑)。
川尻 そうですよぉ! フェザー級もしくはクロン・グレイシーの階級でGPをやるという話があったじゃないですか。それだったら俺も出られるかなって。
――本来はそういう話でしたよね。来年はフライ級GPで。
川尻 でも、バンタム級と聞いて「これはどうにしかしなきゃいけない」ってことで……。
――それで「川ちゃん勝手にひとりでサバイバルトーナメント」開催(笑)。
川尻 3連敗で止まりましたし、勢いに乗ってやっていきたいですよね(笑)。
――UFCから数えて3連敗という現実はかなりの重みが……。
川尻 いやあ……デカかったですねぇ、3連敗。ボク、修斗のデビュー戦で無残に負けて、ホントにもう誰にも相手にされないような負け方で。それでも悔しいから頑張って、それから1年後に自分の中では再デビューというかたちでまた戦い始めて。そこからトントン拍子で来たんですけど、大晦日に負けて3連敗となったときは、なんか魔法が解けたような……。いままでかかっていた自分の魔法が解けて、デビュー戦のときに戻ってしまったような感覚に陥ってて。「あの頃の自分に戻ったんじゃないか、もう勝てないんじゃないか……」って凄く不安で。
――川尻さんって大型連敗はないですよね。
川尻 ないですね。連敗自体がなかったです。
――それでこの歳で3連敗したら、自分自身を疑っちゃいますねぇ。
川尻 いやもう完全に疑っちゃいましたねぇ。勝てるイメージが湧かなかったし、自分が上がってるのか下がってるのかすらわからないし、かなり不安でナイーブだったんです。
――今回勝つことで重荷は取れたんですか。
川尻 そうですね。憑き物が取れたというかスッキリして。これからはまた調子に乗って自惚れていこうと思ったんですけど、バンタム級GPと聞かされてたんで「……あれ?」って(笑)。
――クロン・グレイシーをGPに担ぎ出すのがいろいろと難しいみたいですね。だからってクロンがほかの団体に行くというわけではなさそうですけど。この続きと、フミ斎藤や金原弘光が語る『1984年のUWF』、シャーク土屋・後編、KINGレイナ、鈴木みのると全日本イズム、「チキン諏訪魔騒動」とは何か……など20本以上の記事がまとめて読める「13万字・記事詰め合わせセット」はコチラ
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【柴田勝頼、倒れる】「安全なプロレス」は可能なのか?■事情通Zのプロレス点と線
2017-04-17 09:5555ptプロレス業界のあらゆる情報に精通する事情通Zの「プロレス 点と線」。今回は「柴田勝頼、試合後に倒れる」について!――新日本プロレスの両国国技館大会でオカダ・カズチカ選手のIWGPヘビー級王座に挑戦した柴田勝頼選手が試合後に緊急搬送され、硬膜下血腫が発覚。5時間にもの及んだ手術を無事に成功しましたが、沖縄大会で頸椎損傷で搬送された本間朋晃選手に続いてのアクシデントになりました。
Z 本当に命に別状がなくてなりよりだったよね……オカダ選手との試合は激しい内容だったけど、たとえばパワーボムで危ない落ち方をしたわけじゃないし、何かの技でパタリと動かなくなったわけじゃない。決定的な場面があったようには思えなかった。
――柴田選手のヘッドバットじゃないかという話もありますね。仕掛けた柴田選手の頭から出血するくらいでしたし……。
Z うーん、あれも直接的な原因ではないと思うんだけど。
――過激なファイトスタイルが原因じゃないかという声も挙がってますね。いまの新日本はかつての「四天王プロレス」ようにエスカレートしていってる、と。
Z オカダ選手で言えば、東京ドームのケニー・オメガ戦からスタイルが変わった印象がある。いままでのオカダ選手ってどこかクールなイメージがあって、比較的余裕の感じさせる勝ち方をしてきた。今年に入ってからは「誰がオカダ・カズチカを倒すのか」というテーマにもなったことで接戦が多くなったぶん、激しさが増してきた。
――超激闘型になってますね。
Z ここ最近の新日本プロレスというと、アメリカンプロレスのスタイルに寄っていると言われがちだったけど、試合の中身は「さすが業界の盟主!」と唸りたくなるほど激しいものになってる。
――00年代中盤からの新日本はフィニッシュを大切にする流れがありましたね。
Z オカダ選手の場合はいかに必殺技のレインメーカーまで繋げるかがテーマだったけど、徐々にレインメーカー自体のバリエーションが増えていった。今回の柴田戦でもクイックで連打したり、一撃必殺の技でなくなっている。
――試合の流れが変わってるんですね。
Z そうなった理由を推測すれば、新日本って前哨戦を含めて手を合わせることで試合のクオリティを上げていくほうに舵を切っていた。選手の顔触れがそこまで変わらないからカード編成自体にマンネリだという声もあるけど、蓋を開けてみると試合内容のレベルは高くてやっぱり面白いんだよね。
――試合内容で信頼を勝ち得てるんですね。
Z オカダvs鈴木みのる、オカダvs柴田も新鮮味のあるカードのはずなんだけど、「やっと実現した!」という待望感はなかった。だったら、そのぶん試合のクオリティを上げるしかない。それがいまのオカダ選手の激闘型のスタイルなんじゃないかなと。
――新日本プロレスワールドには海外の会員がかなり多いそうですし、この夏はアメリカで興行もある。中邑真輔を引き抜いたWWEという目の前の敵に対してし、ハードなスタイルを武器にしていこうとしてる感はありますね。
Z 日本独自のプロレスだよね。オカダvsケニー戦のときも「これはWWEにはできないだろ!」というムードは漂っていたし。この続きと、フミ斎藤や金原弘光が語る『1984年のUWF』、シャーク土屋・後編、KINGレイナ、鈴木みのると全日本イズム、「チキン諏訪魔騒動」とは何か……など20本以上の記事がまとめて読める「13万字・記事詰め合わせセット」はコチラ
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佐々木憂流迦UFC残留、井上直樹契約!! マネジメントの魔術■シュウ・ヒラタのMMAマシンガントーク
2017-04-17 08:1255pt
向かって左がシュウ・ヒラタさん。インヴィクタで勝利した魅津希選手と勝利の記念撮影©Invicta Fighting Championship
多くのMMAファイターをマネジメントするシュウ・ヒラタ氏が北米MMAシーンを縦横無尽に語りまくるDropkickニコ生配信コーナー。深くてタメになるトークを活字でもお届けします! 今回お送りするテーマは「選手の売り込み」です!(3月に配信された一部を書き起こしたものです)。
――シュウさんは女子MMAイベントのインヴィクタが開催されるカンサスにいるんですよね。
シュウ はい。ホテルのロビーからスカイプしています(笑)。たくさんの選手や関係者が来てるんですが、たったいまボードッグの元関係者が話かけてきたんですよ。
――懐かしのボードック! オンラインカジノがバックについていたことでいろいろありましたが、捕まるような人じゃないですよね……?(笑)。
シュウ 大丈夫です(笑)。マッチメイクの仕事をしていた方ですね。
――安心しました(笑)。インヴィクタの注目度はどんな感じなんですか?
シュウ インヴィクタで活躍した女子選手はUFCにピックアップするケースがあたりまえになっていますし、UFCファイトパスでもライブ中継していますが、その中でも圧倒的な視聴者数を誇っているのがインヴィクタなんですよ。大会によってはUFCより高い数字を弾き出しているんです。
――へえ〜、そこまでの優良コンテンツなんですね。
シュウ 女子格のファンというのはネットやSNSに敏感な方が多いのも理由みたいですね。UFCは女子フライ級を新たに作るんじゃないかという噂になってますけど、そうなると以前のストロー級と同じようにインヴィクタの選手がそのままUFCに移管するという流れになりますね。
――選手がゴッソリいなくなるとインヴィクタは困らないですか?
シュウ いや、インヴィクタとしては入れ替えたい選手がたくさんいるんですよ。なのでUFCに「早く移管してほしい」とリクエストしてるくらいですから。この続きと、フミ斎藤や金原弘光が語る『1984年のUWF』、シャーク土屋・後編、KINGレイナ、鈴木みのると全日本イズム、「チキン諏訪魔騒動」とは何か……など20本以上の記事がまとめて読める「13万字・記事詰め合わせセット」はコチラ
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『1984年のUWF』はサイテーの本!■「斎藤文彦INTERVIEWS⑬」
2017-04-14 02:22110pt80年代からコラムやインタビューなどを通して、アメリカのプロレスの風景を伝えてきてくれたフミ・サイトーことコラムニスト斎藤文彦氏の連載「斎藤文彦INTERVIEWS」。マット界が誇るスーパースターや名勝負、事件の背景を探ることで、プロレスの見方を深めていきます! 今回は話題のノンフィクション本、柳澤健氏の「1984年のUWF」(文藝春秋・刊)について16000字の激語りです!イラストレーター・アカツキ@buchosenさんによる昭和プロレスあるある4コマ漫画「味のプロレス」出張版付きでお届けします!(聞き手/ジャン斉藤)Dropkick「斎藤文彦INTERVIEWS」バックナンバー■プロレス史上最大の裏切り「モントリオール事件」http://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar1010682■オペラ座の怪人スティング、「プロレスの歴史」に舞い戻るhttp://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar1022731■なぜ、どうして――? クリス・ベンワーの栄光と最期http://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar1039248■超獣ブルーザー・ブロディhttp://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar1059153■「プロレスの神様」カール・ゴッチの生涯……http://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar1077006■『週刊プロレス』と第1次UWF〜ジャーナリズム精神の誕生〜http://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar1101028■ヤング・フミサイトーは伝説のプロレス番組『ギブUPまで待てない!!』の構成作家だった http://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar1115776■SWSの興亡と全日本再生、キャピトル東急『オリガミ』の集いhttp://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar1131001■「現場監督」長州力と取材拒否http://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar1154386■ジェイク“ザ・スネーク”ロバーツ…ヘビに人生を飲み込まれなかった男http://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar1167003■追悼ジミー・スヌーカ……スーパーフライの栄光と殺人疑惑http://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar1185954■ドナルド・トランプを“怪物”にしたのはビンス・マクマホンなのかhttp://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar1218726斎藤文彦の最新著作昭和プロレス正史 下巻
ジャイアント馬場・アントニオ猪木の日本プロレス独立から、NWA幻想の高まりと猪木対アリ“格闘技世界一決定戦"を経て、週刊プロレス創刊・UWF誕生、そしてブロディの死で終焉した時代とは何だったのか。活字プロレス誕生から60余年――、いま初めて綴られる、プロレスのほんとうの歴史「第二弾」。――今回『1984年のUWF』をテーマにすると聞いてちょっと驚いたんです。この本にはケーフェイについても書かれているので、プロレスマスコミの立場によっては触りづらいと思っていたので。
フミ そうなんですか?
――たとえばミッキー・ローク主演映画『レスラー』が公開されたときも、プロレスの裏側も描いているので「見た」と公言できないというマスコミや団体関係者が多かったですし。
フミ いや、ボクは『週刊プロレス』のBoysコラムで『レスラー』のことは書きましたよ。それはきっと映画の内容についてコメントを求められるのがイヤなんでしょう。この業界でずっと長く仕事をしたいと考えた場合の保身の発想であり、己かわいさなのかもしれない。ボクは大丈夫です。それに、プロレスはそんなにヤワにできていないですし、『1984年のUWF』は本当に酷い本ですので、これはちゃんと批判しないといけません。とにかく本当に最悪な内容なんですよ。
――えっ、そんなに酷い本なんですか。読み応えはありましたが……。
フミ そういえば、ある編集者に「Dropkickで『1984年のUWF』について話す」と言ったら「ジャン斉藤さんは柳澤さんを絶賛してましたよ」と言ってましたね。
――それは『1976年のアントニオ猪木』のことですかね(笑)。今回の『1984年のUWF』でも更科四郎さんのことを紹介したり、ボクが過去に取材したフクタレコードの福田典彦さんを始めとする関係者の発言が引用されていたんですが。この本の感想を言えば、「新生UWF」の章までは面白かったんですけど……。
フミ 「新生UWF」は何章ですか?
――9章ですね。それ以降はところどころ「えっ?」って感じで引っかかる記述が多かったんですね。UWFの歴史を追うというよりは物語を描かれてるという感じで……。
フミ いや、それは9章以降に限った話じゃないんですよ。あの本はノンフィクションではなく柳澤健さんのフィクションです。それを歴史の書だとか事実の記録だと誤解している人たちは目が曇っていますよ。
――この本の批判でよく聞くものは、前田日明を下げて、佐山サトルを上げてるんじゃないか、ということですよね。
フミ いや、もうそういうレベルの酷さではないんですね。この本はプロレスの捉え方が根本的に間違ってるんです。この本を読むとわかるのは、柳澤さんという方は、プロレスというジャンルについて何かを書くための基本的なベースが一切ないことなんです。単純な事実の誤認を含めて間違いの上に間違いが重なり合い、何重にも何重にも誤りがあって収拾がつかなくなって、間違いの雪だるまみたいな本になっています。
――そ、そこまで言いますか。
フミ プロレスファンがこの本を読んでも、学べることは何一つないんですよ。まず、ビギナーからマニアまでに共通した弱点として「ノンフィクション作家」を名乗る人や、プロレスマスコミではないところの媒体を、自分たちより上みたいな感じに崇めてしまいがちなんですね。この本に書いてあることがいかにデタラメであっても、自分より偉い誰かが書いていて、きっと真実なんだと誤解してしまう。あらためて言いますが、この本はノンフィクションですらないんです。まず当事者であるレスラーの取材・分析を一切省略してますよね。前田日明、佐山サトル、藤原喜明、高田延彦……その他UWFの選手たちを誰ひとりとして取材しないで書かれてるんですね。
――あえて取材していないんでしょうね。
フミ 当事者の証言をすべてすっ飛ばしておいて、周辺の関係者やマスコミは取材して、柳澤さんの仮説にマッチする関係者の発言だけを極めて恣意的に抽出してるだけなんです。
――たしかにこの関係者の真偽不明な発言は採用するんだっていう疑問はありましたね。骨法の堀辺正史師範を筆頭に……。
フミ 堀辺師範でも誰でも、関係者の発言をカギカッコ付にして書くことで、腹話術のように自分の仮説を主張しています。そのうえで関係者の心情を柳澤さんが勝手に語ってるんですよね。だからこの本はノンフィクションではなくて、柳澤さんの書いたフィクションなんです。
「U.W.F.スネークピットジャパン」ジャンバーという正装で取材に臨んだフミ斎藤氏…――たとえば、どこが間違いなんですか?
フミ とにかく間違いだらけで、どこから取り上げていればいいかわからないですが……まず27ページの13行目を読んでください。
――「プロレスはリアルファイトではなく、観客を喜ばせるためのパフォーマンスであり、勝者と敗者があらかじめ決められていることは事実」。
フミ ……と書かれてますが、この文章の前後にはその定義付けのようなものを論証するエビデンス、論拠がまったく示されていないんです。「あらかじめ決められていることは事実」を示すものがない。そのあとには「リング上で行われている試合の勝敗を決めるのはプロモーターであり、残念ながらレスラーではない」と書いてますが、プロモーターというのは誰のことを指しているつもりなのかもわからない。柳澤さんはノンフィクションライターを名乗ってるのに、ノンフィクションたりえる証言や証拠を積み上げる作業をせず、個人的な偏見から「プロレスはあらかじめ勝敗が決まっている」と。「プロレスは――」から始まっていますから、ここはひじょうに大切なセンテンスなんです。ところが、もの凄く唐突に断言してしまってるんですね。次は29ページの11行目です。
――「アメリカに渡ってからはカール・ゴッチと名乗り、アメリカ各地に生き残る伝説の強者からサブミッションレスリングを学んだ」。
フミ 読んでみてどう思います? プロレスの歴史を少しでも知る人間なら間違いにすぐに気づきますよね?
――……まあ、おかしいですね。
フミ ゴッチさんは「アメリカ各地に生き残る伝説の強者からサブミッションレスリングを学んだ」? 「伝説の強者」? 誰のことですか? プロレスファンならすぐわかることなのに、なぜこんなデタラメを書くのか。ゴッチさんがサブミッションレスリングを学んだのはアメリカに渡る前、イギリスのビリー・ライレー・ジムです。次は同じ29ページの14行目を読んでください。
――「1960年の時点で、すでにプロフェッショナル・レスリングは純然たるエンターテイメントであった」。
フミ これもエビデンスを示していない。では、1950年代、1940年代、1930年代、1920年代のプロレスはリアルファイトだったのか。フランク・ゴッチの時代は? マルドゥーンの時代は? 最初から最後までこんな感じで重要なことを極めてアバウトに書いてるんですよ。同じ29ページの16行目を読んでください。
――「観客が求めるのは興奮だ。レスリングのリアルファイトなど地味でつまらない。観客が求めているのは地味なリアルファイトではなく。興奮できるショーなのだ」。
フミ まあ、ここが柳澤さんの一番の弱点なんです。続けてください。
――「だからこそ、ふたりのレスラーは一致協力して興奮できる試合を作り上げなくてはならない。手に汗握る熱戦の末に、最後には観客が応援するレスラーが必ず勝つ。観客は愛するレスラーの勝利を自らの勝利と同一視して興奮する。アクション映画のように、あらかじめ興奮が約束されているからこそ、観客は次の興行にも足を運んでくれるのだ」。
フミ そもそも「リアルファイトが地味」とういうのも偏見ですが、プロレスファンが求めてるのは「興奮」だけなのか。百歩譲って興奮があったとしても、それはプロレスファンがプロレスに求めているたくさんのもののうちの1つでしかないですよ。興奮かもしれないし、熱狂かもしれないし、感動かもしれないし、共感かもしれない。ストレス解消かもしれない。どうして「興奮」と決めつけるかといえば、この人には少年時代にプロレスファンだった経験が一度もないからなんです。こんな短い段落の中に「興奮」という単語を立て続けに5回も使っている。きっと本気でそう思っているのでしょう。単純に言ってしまえば、柳澤さんは「プロレス八百長論」の方なんです。八百長か、真剣勝負かという一点だけしかプロレスを論じる視点を持ち合わせていないんですね。
――プロレスを二元論で捉えていると。
フミ なぜそうなのかといえば、柳澤さんはプロレスファンなら必ず通過している体験をしていないからです。皆さんには経験があると思いますが、第三者に「プロレスファン」を名乗った時点で、それが学校の先生でも、親戚のオバサンでも、八百屋のオジサンでも、誰でいいけれど「プロレスはね、ショーなの、八百長なの。そんなこともわからないの?」と指摘されるんです。柳澤さんは、無垢なプロレス少年ファンに対して「プロレスは八百長なんだよ」と囁く隣のオジサンの立ち位置なんですね。そこにしか立ったことがないからプロレスの魅力は何か、プロレスとはなんなのか? を考えるのではなく、ステレオタイプな八百長論しか頭の中にない。プロレスファンじゃなかったからこそ外側から事実を書けると言いたいのかもしれませんが、それさえも不可能なんだということはこれからの説明でわかってきます。まず32ページの後ろから2行目を読んでください。
――「世界最強のレスラーであるカール・ゴッチの試合には、悪役レスラーの反則によって危機一髪の状況に追い込まれることも、流血戦もなかった」。
フミ ボクはカール・ゴッチさんのことが大好きで、何回もフロリダの自宅を訪ねたことがありますが、「世界最強のレスラー」なコピーのようなものはいったい誰が定義したのか。その根拠も出典も記されていないし、最初から「であろう」という推測、偏見しかない。何度も言いますけど、この人は固定観念、先入観、ステレオタイプ、ありとあらゆるプロレスへの偏見から書いてるんです。何の論拠もなく「世界最強のレスラーであるカール・ゴッチの試合には、悪役レスラーの反則によって危機一髪の状況に追い込まれることも、流血戦もなかった」……ゴッチさんの試合なんか見たこともないんでしょう。何もかもリサーチ不足。詳しく調べてないんですよ。なんでこんなデタラメが書けるのか。
――そういえば『1984年のUWF』では、ダッチ・マンテルが前田日明にシュートスタイルで酷い目にあったとマンテル本人の自伝から引用して書いてて、そのボヤキっぷりが最高に面白かったんですが、YouTubeにアップされている前田日明vsダッチ・マンテル戦を見るかぎり、そんな物騒な試合ではなかったですね。
フミ 当事者に取材していないにも関わらず、そういった自分に都合のいい証言はよく精査せずに引用してるんですよ。ゴッチさんについては、もっと酷いことを書いています。許せないです。
――「ゴッチのプロレスには、観客を興奮させるだけのスリルとサスペンスが決定的に不足していたのである」(P32)
フミ 続けて「観客を興奮させることのできないレスラーがメインイベンターになれるはずもない」なんてことが書かれています。「スリルとサスペンスが決定的に不足していたと言われている」ならまだしも、そうやって断言できるだけのエビデンスを持ち合わせていない。これはボクの実体験なんですけど、ボクは小学4年生のときにテレビでゴッチvsビル・ロビンソン、ゴッチvsモンスター・ロシモフ(アンドレ・ザ・ジャイアント)を見て、小学5年生のときに蔵前国技館でゴッチvsアントニオ猪木の“幻の世界戦”、小学6年生のときには蔵前で猪木&坂口vsゴッチ&ルー・テーズのタッグマッチを生で見ました。50年以上もプロレスにハマり続けているのは、ゴッチさんのプロレスを見たからなんですよ。この本には、あれほどプロレスラーとしても魅力的だったゴッチさんの姿があぶりだされていないんですよ。単なる八百長論を展開するためにゴッチさんが使われている。
――「ゴッチを理解したのは、日本人だけだった」とも書いてますね。
フミ それも柳澤さんの固定観念なんです。日本でしか受け入れられないならWWWF(現WWE)のリングに上がれていないですし、アメリカでレスラーとして生活できていない。そこは定説に乗っかってるだけですよね。疑いの目や批判の目をもってそういう定説を切り崩していくのがノンフィクションの本来の姿勢であるはずでしょ。この本ではゴッチさんがWWWFでタッグのベルトを獲ったことがまるで意外なことのように書いてありますけど、ゴッチさんはオハイオのアル・ハフトというプロモーターがやっていた大きなローカル団体のベルトも獲ってます。ボクはオハイオAWAと呼んでるんですけど、ゴッチさんはオハイオAWAの世界チャンピオンになってるんです。そういう事実を記述することなく、最初からゴッチさんは不遇だったという定説、結論ありきで書かれているんですね。それは38ページの2行目からもわかります。
――「ゴッチに残された役割は、前座レスラー数名のブッキングと、日本の若手レスラーにわずかな期間だけプロレスの基礎を教える臨時トレーナーだけになった」。
フミ これは新日本に対して悪意が篭っているし、ゴッチさんのこともバカにしている。ゴッチさんは大したことを教えていないと書きたいんでしょう。ゴッチさんは日本プロレス時代にも1年以上日本に住んでレスラーの指導をしていますし、新日本時代も日本に滞在しながら、弟子とは呼ばれていない荒川真、小林邦昭、栗栖正伸、グラン浜田らにも教えてるんですよ。それにゴッチさんが指導したのはプロレスの基礎ではなくレスリングの基本です。次は139ページの後ろから2行目を読んでください。
――「自分たちはプロだ。厳しい練習に耐えているのは、リング上で華やかなライトを浴び、テレビの電波に乗って日本中の人気者となり、大金を稼ぐためなのだ」。
フミ 「大金を稼ぐ」? 柳澤さんはプロレスラーってそれしか目的がないと本当に思い込んでるんでしょうね。プロレスを知らないからこそ「テレビもつかないマイナー団体に行くのは愚の骨頂だ」とも書いてしまう。そして149ページの11行目も酷いんです。
――「アントニオ猪木は柔道家や空手家、ボクサー、キックボクサーなどを自分のリングに上げて異種格闘技戦を戦い、カネで勝利を買っておいて……」
フミ 競技スポーツという前提で論じるなら、お金で結末を買う行為が八百長であることはわかりますよ。でも、柳澤さんは最初からプロレスを競技スポーツとして見ていないのに、どうやって勝利をカネで買うというんでしょうか。ならば、勝利をカネで売った方のロジックは? プロレスのそもそもの論じ方が間違ってるからこんなことを書いてしまう。
――柳澤さんのプロレスの定義はショーというものですね。
フミ この一文にからでも単純な八百長論者であることがよくわかりますね。柳澤さんはプロレスは勝ち負けがあらかじめ決まってるからスポーツではないと言うんですよ。でも、じつはスポーツの定義すら間違ってるんです。柳澤さんが言ってることは、競技スポーツという意味だと思うんですね。これは社会学の話なんですけど、スポーツの原型ができたのは18世紀から19世紀にかけての近代化の時代。イギリスの一地方で特殊なゲーム形式を伴う身体運動文化というものが起きて、それをルールで統一したものがスポーツの原型になります。スポーツの定義としては「競技的性格を持つゲームや運動及び、そのような娯楽の総称」なんです。勝ち負けを争うかどうかはスポーツの定義の中のひとつでしかない。実際、勝ち負けを争わないスポーツは多いんです。アウトドアスポーツは勝ち負けを争わないですよね。ジョギングやダンスは勝敗を競わないスポーツですよね。フィギュアスケートや水泳、スキーなどもずいぶんあとから点数を付けて勝ち負けを争うようなシステムになったわけですよね。
つまり、競技か競技じゃないか、勝ち負けを争うかどうかは、いくつかあるスポーツの定義の中のひとつでしかないんです。プロレスはもちろんスポーツです。このスポーツ文化論の概念をわかっていれば、プロレスへの理解も深まると思うんですけど、その土台が間違えたまま柳澤さんは競技スポーツだけを論じてしまってるからおかしことになっていくんです
勝敗を争っていなかったとしても、ゆえにスポーツではないという論理は成立し得ない。プロレスの場合、仮に百歩譲って結末が決まっていても、それは公開されてないからお芝居や映画とは違う性質のものなんです。ドラマや映画は脚本が読むことができるけど、プロレスは先にそれを読むことはできない。しかし、隠してるイコール騙している、見てる方が騙されてるという単純な図式にも当てはまりません。だいたいそんな単純な視点でプロレスを見てるファンはいませんよ。
繰り返しますがスポーツでなくショーであるならば、カネで勝利を買えるということに矛盾が生じるし、そうやって書いてしまうことからプロレスというものへの理解が足りないことがわかります。柳澤さんはプロレスを論じるスタート地点にすら立っていないんです。プロレスはエンターテイメントと言いながら、エンターテイメントであるべきプロレスはないがしろにしている。結局、プロレスを「競技スポーツ」のふりをした「お芝居」だとしか思ってない。プロレスラーは脚本どおりに演じているにすぎないと思い込んでいるんです。次は149ページの7行目を読んでください。
――「マサ斎藤や坂口征二、藤波や長州力、タイガーマスクらが次々に登場し、メインイベントは必ずアントニオ猪木が締めくくる」
フミ その次が凄く大事です。柳澤さんがプロレスへの知識がないことや、自分の都合で書いてることがよく表れています。
――「このように、藤原はテレビに映らない前座レスラーにすぎない」。
フミ わかりますよね?
――そうですねぇ……。
フミ 新日本からのリースのようなかたちでUWFのリングに上がった藤原さんは、UWF旗揚げシリーズ最終戦の蔵前国技館のメインイベントで前田日明と一騎打ちを行ないます。「テレビに映らない前座レスラー」であるはずの藤原さんがいったいどうやって国技館のメインイベントに出ることができたのか。柳澤さんは、プロレスを知る者なら誰もが頭に思い浮かべる1984年2月3日「雪の札幌テロリスト事件」に触れていないんです。あのときの生中継で長州力を襲い「テロリスト」と呼ばれるようになった藤原喜明だったからこそ、UWFでもメインイベンターとして成立しているんです。この本の論調でいうと、昨日まで無名だった前座レスラーがUWFでいきなりスターになったというストーリーにしたいんだろうけど、まったくの誤りです。この続きと、金原弘光が語る『1984年のUWF』、シャーク土屋・後編、KINGレイナ、鈴木みのると全日本イズム、「チキン諏訪魔騒動」とは何か……など20本以上の記事がまとめて読める「13万字・記事詰め合わせセット」はコチラ
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【全文公開中】ベラトールCEOスコット・コーカー「ジャカレイやムサシがUFCからFAしたら……」
2017-04-14 01:47ニューヨーク初進出がPPVのビックマッチとなるベラトールCEOスコット・コーカーインタビュー。UFCを猛追するもうひとつのメジャー団体のトップは何を考えているのか? ミルコvsヒョードルの可能性や、UFCからFA濃厚とされるジャカレイやムサシ獲りについて伺った。――ミルコ・クロコップがベラトールと契約中のエメリヤーエンコ・ヒョードルとの引退試合をアピールしています。両者のファイトマネーや契約状況からすると、ベラトールでしか実現不可能と言われていますが、どうお考えでしょうか。
スコット ミルコはMMAのレジェンドファイターだし、多くのファンはミルコの試合に興味を持っていると思う。ベラトールは常にエキサイティングなファイトを求めてるし、ファンが喜ぶマッチメイクを心がけている。ミルコはそういうファイターの中のひとりなので、ミルコは引退したという話はあるけれど、「まだ戦いたい」という希望があれば可 -
バーチャック、川尻達也戦への決意――UFC離脱組、それぞれの決断■MMA Unleashed
2017-04-14 01:3355ptOmasuki Fightの北米MMA抄訳コラム――今回のテーマは……「UFC離脱組、それぞれの決断」!! アンソニー・バーチャック 、リック・ストーリー、マイケル・マクドナルドの3選手がUFCを離れたときの心境に迫ります!●アンソニー・バーチャックの場合
いよいよ今週末に迫ったRIZIN 2017 in YOKOHAMA – SAKURA - 、メインイベントで川尻達也を相手にプロモーショナル・デビューを飾るアンソニー・バーチャック(30)の元には、UFCから契約更新のオファーが来ることはなかった。UFCとの4試合契約の最終戦にあたるUFC Fight Night 90(2016年7月)のディレノ・ロペス戦で判定勝ちを収めたにもかかわらず、である。
「当時は4試合契約なら、2試合か3試合が済んだところで契約更新の話が来たものだった。それが来なかった」
「ショーン・シェルビー(UFCマッチメーカー)は、いい試合だった、2017年に再契約したい、と言ってくれていたんだ。だからそこからは、欠場者が出るたびにシェルビーにメールして、出場をアピールした。感謝祭のお休みも返上して、回答を待ちながら練習をした。シェルビーは、“かけあってみるから数日待ってくれ”、とは言ってくれるんだ」
「ところが数日たって、“どうかな、練習や減量をもっと本格的にやるべきかな”、と問い合わせると、“いや、今回は難しい”、となるんだ。こうしてショートノーティス・ファイトを何度も空振りした。僕はもうすぐ31歳になる。子どもも4人いる。UFCが再契約してくれるのを、じっと待っているだけというわけにはいかないんだよ」
そこでバーチャックは、他団体の試合に出てみることにした。しかしその練習中に、“心の風邪”を患ってしまったことに気がついたのだという。
「ある団体で試合をすることになって、合宿に入ったんだ。ところがどうも気持ちが乗らない。どうしても“UFCじゃないもんなあ”と思ってしまうんだ。試合は試合だし、しっかり準備をしないとケガをしてしまう可能性もあるというのに、気持ちに全然火がつかない。ひどいうつ状態だった」
「あんなふうに長い間補欠として放置されていると、自尊心が傷つけられていくものなんだ」と語るバーチャックは、UFCとの関係が宙ぶらりんであったことが強いストレスになっていたことに気がつく。そしてバーチャックは、自分はどんな戦いをしたいのか、これからどうしていきたいのか、原点を見つめ直した。
「選手のキャリアにはいいときもあれば悪いときもある。野球やフットボールでは、選手は年間契約をしてもらえるから、山あり谷ありがあっても直ちに解雇されるわけではない。でもUFCでは、最初の2試合で谷があったら解雇されてしまう。だから誰もが安全な試合をするようになる。僕のUFC以前の試合を見てほしい。大砲で火の玉を撃ちまくるような試合をしている。時速1,000マイルで疾走するような試合だ。でもUFCではムチャはしなかった。安全な試合をしたんだ。それが裏目に出た」
「僕はファイターとして自分本来の姿に戻りたい。ブルファイトでずっと前進し、攻撃をやめない。観客が総立ちになるような試合をしたいんだ」
「僕は子どもの頃から、世界を飛び回るような仕事を夢見ていた。すでにブラジルとカナダでは戦った。これからは日本へも行きたいし、ロシアにも、ヨーロッパにも行きたい。ファイターにはそういうチャンスがあるんだから、こういう立場をフル活用していきたい。これからはやりたいことをやって、行きたいところへ行く。海外の有名選手との戦いも経験しておきたいし、さいたまスーパーアリーナのような聖地も踏みしめておきたい。若い頃の夢を実現させていきたいんだ」この続きと、フミ斎藤や金原弘光が語る『1984年のUWF』、シャーク土屋・後編、KINGレイナ、鈴木みのると全日本イズム、「チキン諏訪魔騒動」とは何か……など20本以上の記事がまとめて読める「13万字・記事詰め合わせセット」はコチラ
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キックボクシングと合氣道の融合!! 大和哲也「合氣ック」インタビュー
2017-04-11 12:2255pt「合氣ック」とは何か? K-1MAX -63kgトーナメント優勝をはじめ、多くのタイトルを手にしてきたキックボクサー大和哲也。最近はキックと合氣道を融合させたスタイルを構築してるという。Dropkickは「達人大好き!」なのでさっそく話を聞いてきました。トリャッ!!
<関連記事>「Team DATE名誉顧問」は太気拳創始・澤井健一の弟子だった!! 吉田かずおインタビューhttp://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar1181924【この男は実在する!!】合気道の達人・柳龍拳ロングインタビューhttp://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar757546――以前武道の達人の方を取材したときに、ユーザーの方から大和哲也選手がキックと合氣道を融合された「合氣ック」をやられてるのでぜひインタビューしてほしいというリクエストがありまして。
大和 あっ、そうですか。嬉しいです(笑)。
――キックと合氣道の組み合わせは興味深いですし、ネーミングも面白いですよね。
大和 久しぶりにK-1に上がることになるので、新しいスタイルを打ち出していこうと思って。
――まずは「合氣ック」の始まりから教えてください。
大和 あれは5年くらい前のことですね。カルチャーセンターみたいなところに合氣道を習いに行ったことがあるんですよ。それは合氣道をやりたいというよりは、古武術をやってみたいなあと。キック以外に何か学ぶものはないかなと思って行ってみんですけど、もの凄く馴れ合いの世界だったんですよ(笑)。
――アレな感じだったんですね(笑)。
大和 「……なんだ、これは?大したことないな」ってそれっきりで。で、ボクはアメリカでも試合をしてて『Lion Fight』という大会に出てるんですけども。アメリカで減量したときに水抜きで5キロ落とせたから、日本の試合でも大丈夫だろうと思っていたら、どうしても500グラムが落ちない。フラフラになるまで減量して最悪の状態で試合をして負けちゃったんですよねぇ。
――最悪の敗戦だったんですね。
大和 ある試合のときは「どうやって倒そうか?」って考えられるくらいメチャクチャ調子が良かったんですけど、ダウンを食らったときから5ラウンドが始まるまで記憶がないんですよ。なぜ減量ミスをしてしまったのか。なぜあんなに調子がいいのに負けてしまったのか……悶々してたんですよね。そんなときに合氣道と再び出会えたんです。
――一度は見捨てた合氣道に(笑)。
大和 はい(笑)。昔から持ってた本に『動じない。』というのがあったんです。王(貞治)さん、広岡(達朗)さん、そして、いまボクが習ってる心身統一合氣道会の藤平信一会長の対談本なんですけど。その本をあらためて読んでみたら「心が身体を動かす」と書いてあって。アメリカでも減量できたから日本でも同じようにできるとか、調子がいいからどんな技で倒そうとか……心に隙があったから負けたんだな、と。
――なるほど。精神性に問題があると。
大和 ボクはキックボクシングを15歳からやってきて、世界を獲ったり獲られたりしてますけど。「これから技術がどれだけ上がるんだろう? パンチや蹴りの速度がどれだけ上がるのか」って考えたときに、ちょっと不安を感じていて。悩んでいたところがあったんです。
――行き詰まりを感じていたんですね。
大和 そんなときに「心が身体を動かす」という言葉が凄く響いて。王さんも心身統一合氣道 宗主の藤平光一先生に合氣道を教わってたんです。最初のホームランから最後のホームランまで、バットに気を通して打っていたんですよね。
――「狂気の安打製造機」と呼ばれた榎本喜八も藤平さんに教わってますね。
大和 調べてみたら藤平先生が始めた心身統一合氣道会は名古屋にも道場があったので。ぜひこの合氣道を習ってみたいと思うようになったんです。
――カルチャースクールのときは認めなかったですよね。でも、今回は……。
大和 いや、まだ半信半疑でした(笑)。前日にYoutubeで合氣道関連の動画を見てみたんですよ。かかってくる人を次々に投げ飛ばす映像を嫁さんと一緒に見て笑ってたんですよね。「明日、検証してくるわ~」なんて言っていて。
――まるで信用してないですね(笑)。
大和 行ってみたら、その先生(山本岳見)はボクのジムに昔いたコーチに指導していたこともあったみたいで。 心身統一合氣道の教えは「心と身体はもともと一つでバラバラで使うものではない。いまはもともと一つのものを二つに分けて使ってるからよくない」と。心が重要だから姿勢が大事という話もされて、合氣道のテクニックも体験したんですが……。
――どうなったんですか?
大和 先生から「私の腕を掴んでもらっていいですか?」と言われたので、おもいきりギュッと掴んだんです。すると気がついたら投げられてるんですよ。
――大和選手に投げられた意識はなかったんですか?
大和 ないですね。柔道なんかだと投げられた感ってあるじゃないですか。でも、「どうやって投げられたのか」がわからないんです。
――いわゆる“崩された”ってやつですね。
大和 そうです。自分の身体がその方向に導かれてしまった、自分の意識してない方向に変えられてしまったというか。ビックリしちゃって「もう一回やってもらってもいいですか?」って頼んで何回もやってもらいました。10回ぐらい繰り返しましたかね(笑)。
――それくらいの衝撃だった。
大和 最後にはショックで立てなくなっちゃって。だってボクはいままでスピードとパワーを駆使する世界で戦ってきたじゃないですか。もう意味がわからなくて「なんだ、これは……!?」って倒れたまま天井を見上げていたんです。そうしたら先生が倒れているボクの顔を覗いて「……これがウチの合氣道です」と。後光が差してましたね(笑)。
――惚れますね、それは(笑)。この続きと、フミ斎藤や金原弘光が語る『1984年のUWF』、シャーク土屋・後編、KINGレイナ、鈴木みのると全日本イズム、「チキン諏訪魔騒動」とは何か……など20本以上の記事がまとめて読める「13万字・記事詰め合わせセット」はコチラ
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マンモス鈴木鉄拳制裁から見える力道山のセンスと狂気■ズンドコ・トラブル興行研究会<小泉悦次・編>
2017-04-10 21:1555ptプロレス格闘技に精通する書き手たちがマット界を騒がせたズンドコな事件を書き綴る「ズンドコ・トラブル興行研究会」!! 今回は昭和プロレス研究家の小泉悦次さんによる「力道山、マンモス鈴木鉄拳制裁の裏側」。
<前回の記事>ダフ屋と興行師の哀歌!! 岩手水沢騒動http://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar12169551981年に崩壊した国際プロレスにはレスラーより大きいレフェリーがいました。マンモス鈴木です。馬場、猪木、大木とともに「力道山道場若手四天王」として将来が嘱望されましたが、精神的に弱く、また病気もあって引退、69年にレフェリーに転向しました。
「マンモス鈴木は弱すぎてなぁ。力道山が怒って平手打ちを食らわせたことがあったよ」
亡くなった父からよく聞きました。
1962年9月21日の金曜日、滋賀県は大津市皇子山体育館、メインは力道山&豊登&マンモス鈴木対スカル・マーフィ&ムース・ショーラック&アート・マハリックです。鈴木のメイン登用は力道山の期待の現れです。
一本目、一進一退の攻防の後、力道山が鈴木に交代します。ところが鈴木はすぐに外人側につかまってしまいます。鈴木はずるずるとやられ続け、一本目を失いました。
二本目、力道山は狂ったように外人勢に突進します。2分もたたないうちに一本を返しました。そして外人組は、
「あんなクレージーとはやってられない」
とばかりに控え室に帰ってしまい、三本目は試合放棄で日本側の勝ちとなりました。
要は鈴木の不甲斐なさで力道山が試合を終わらせたということです。しかし、テレビ生中継の時間が余ってしまいました。力道山はいきなり鈴木に鉄拳制裁を始めます。鈴木は無抵抗にただやられるだけです。力道山は豊登にも制裁に加わるよう促します。豊登も平手打ちを一発かましました。テレビの前で見ていた私の父をはじめとする全国のファンの脳内には「だらしがない鈴木」と「怖い力道山」が刷り込まれました。この続きと、フミ斎藤や金原弘光が語る『1984年のUWF』、シャーク土屋・後編、KINGレイナ、鈴木みのると全日本イズム、「チキン諏訪魔騒動」とは何か……など20本以上の記事がまとめて読める「13万字・記事詰め合わせセット」はコチラ
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「UFCの失策のおかげでベラトールは当初構想を2年前倒ししている」■MMA Unleashed
2017-04-07 22:3055ptOmasuki Fightの北米MMA抄訳コラム――今回のテーマは……MSGでビッグマッチ開催!好調ベラトールのスコット・コーカー社長
「UFCの失策のおかげでベラトールは当初構想を2年前倒ししている」
ベラトールが6月24日にニューヨークのマジソン・スクエア・ガーデンでビッグイベント『Bellator NYC: Sonnen vs. Silva』を開催することを発表した。このイベントに先立ち、米国時間3月28日にニューヨークでチェール・ソネンやエミリャーエンコ・ヒョードル、マット・ミトリオンらが出席し、記者会見が行われた。
この大会は米国ではペイ・パー・ビュー(PPV)で放送される。ベラトールにとっては2014年5月の『Bellator 120』以来2度目の、そしてスコット・コーカー政権下では初めてのPPV大会となる。Bellator 120ではメインイベントで「クイントン・ランページ・ジャクソン対キング・モー」が行われ、セミファイナルには当初「エディ・アルバレス対マイケル・チャンドラー」が予定されていたところ、アルバレスの負傷によりウィル・ブルックスが代打出場を果たした。この大会のPPV販売数は約10万件だった。
ベラトールを放送しているスパイクTVのジョン・スラッサー氏は記者会見で、「われわれは、様子を見るだけのために1回限りのカードを組んだわけではない。PPVは当社の新規事業であり、これからPPVがベラトールをますます盛り上げていくことになる。時期は未定だが、定期的なPPVの開催を目指していくのがわれわれの方向性だ」と述べ、ベラトールが今後PPV事業に注力していく旨を明らかにしている。この続きと、フミ斎藤や金原弘光が語る『1984年のUWF』、シャーク土屋・後編、KINGレイナ、鈴木みのると全日本イズム、「チキン諏訪魔騒動」とは何か……など20本以上の記事がまとめて読める「13万字・記事詰め合わせセット」はコチラ
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筋肉女子メシ!! 肉を殴って調理する!■二階堂綾乃
2017-04-07 22:0955pt新日本プロレスの選手イラストを描いてキャッキャしていたプオタ女子・二階堂綾乃がいつのまにかMMAジムに通いだし、ついに格闘技デビューをしてしまったこのコーナー。今回のテーマは鶏胸肉が柔らかくなる調理法です!最近安くて低カロリー高たんぱくで疲労回復効果のある鶏胸肉が大人気である……と、先日ニュース番組で紹介されていました。我々鍛える者たちは毎日のように鶏胸肉を摂取しているので、逆に「いままで人気なかったのかよ!?」と驚きましたが、胸肉はモモ肉よりもパサパサしているので筋肉とお金に気を使わなくていいのなら確かに食べたいです。しかし胸肉だってちょっと工夫すればけっこう柔らかくなります。
今回は、鶏胸肉を何十回と調理した私がたどり着いた、わりと簡単に鶏胸肉が柔らかくなる調理法をご紹介します。
最近棚橋選手等プロレスラーたちがこぞって裸エプロンになるので裸エプロン(風)にしてみた私。
初めに、私はその日に買ったお肉をその日のうちに食べたいタイプなので大量買いはしません。ただ今回はたくさん調理するので肉のハナマサで790円(税抜)の2キロパックを購入しました。かなり安いので大量買いする方にはおすすめです。
2キロパックに6つの胸肉が入っていました。
そしてよく料理の本に載っている「漬け込み」。オイルだったり重曹だったり塩こうじだったり、おろした玉ねぎに漬け込んだり……うぅ〜ん、しゃらくせぇ! 時間も手間もお金もオイルもかけたくないので漬け込み法は除外します。
■魚焼きグリル
・まず今回ご紹介する全ての調理法に言えることですが、冷えたお肉は中まで火が通るのに時間がかかるので、調理する30分程前に冷蔵庫から出し、お肉を室内に戻しておきます。
・胸肉を均一な薄さになるよう観音開きにし、両面に塩コショウをふります。観音開きの意味がわからない方は「鶏胸肉 開き方」でググってください。
・水を入れた魚焼きグリルの網に鶏胸肉を乗せ、臭み消しに上からビャビャッと酒をかけて両面焼きます。中まで火が通るのに時間がかかるので、弱火と中火のあいだくらいで片面5分以上けっこうじっくり焼きます。
・焼きあがって、もし中が生だったらレンジで2分くらいチンしときましょう。
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