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【記事13本14万字】朝倉海の挑戦、鈴木千裕、扇久保博正、久保優太、元谷友貴、鈴木秀樹……
2024-12-31 23:59800pt非会員でも購入できる大好評インタビュー詰め合わせセット! 記事12本15万字で800円!!(税込み)
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◎みんなの物語「朝倉海の挑戦を語ろう」■川尻達也☓笹原圭一
◎00年代の怪しい目撃者“Show”大谷泰顕■松澤チョロの「脱線プロレス」
◎【追悼】「世紀の呼び屋」康芳夫インタビュー
◎激動のRIZIN大晦日10年間を振り返る■ジャン斉藤
◎RIZINフェザー級王者・鈴木千裕インタビュー「格闘家は安定を求めたらおしまい」
◎朝倉海とパントージャはどこに差があったのか■水垣偉弥
◎【タメになる15,000字】扇久保博正が語る「格闘技の深淵」
◎久保優太「シェイドゥラエフに挑戦しないなら、格闘家でいる意味はない」
◎【次期王座挑戦者決定戦】元谷友貴「RIZIN“激推し”の秋元選手に勝てばオイシイ」
◎鈴木秀樹が16,000字で語る「プロレスラーの強さとは何か」
■プロレス事情通Z
◎真夜中の飯伏幸太vs佐藤光留■プロレス事情通Z
◎妥当すぎるプロレス大賞の重箱の隅をつつこう
◎裏投げ再燃/欠場者多発の理由
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――どうもジャン斉藤です。今日のDropkickスタジオトークのゲストはこの方です!
笹原 皆さん、こんにちは。平和を愛し、平和から愛された男・笹原です。
――どういう挨拶なんですか!(笑)。そしてもうひとりはこの方です。
川尻 MMA3戦3勝、「超マス十段」の溝口司です。よろしくお願いします!
――SNSを追ってない人には意味がわからないですよ。
川尻 みんな知ってるでしょ?
――なんかケンカを売られてますね(笑)。
川尻 この直前までSNSでケンカを売られていたんです。3戦3勝の奴に。
――川尻さんにケンカを売っている溝口さんとは、ブレイキングダウンCOOの溝口勇児さんとは別人ですか?
川尻 別人っすよね。ブレイキングダウンの溝口さんは凄かったですよ。
笹原 昨日のブレイキングダウンでの試合では、残り1秒でKO勝ちしたんですよね。
川尻 あの決着は映画みたいで凄かったですよ。ボクが言っているのは弱いほうの溝口司です。
――ボクもSNSで溝口選手のことはフォローしてたんですけど……。
川尻 あ、有名なんですか?
――有名というか有望な若手ですね。
川尻 ボクがYouTubeで有望な若手7人を挙げたときに「溝口司もいますよ」っていうコメントがあったんでググったことはありますね。だから名前を知ってたんですけど、どういう選手なのかはわからないです。「超マス」がすごく好きみたいです。
――超マスとはマススパーリングのすごいやつらしくて、川尻さんも執拗に「超マス」を要求されてますけど。溝口選手は21年のアマ修・全国3位の強豪ですよ。川尻さんは何位でしたっけ?(笑)。
川尻 自分は東日本オープントーナメント1位ですけど、そのあと修斗の第1回新人王のMVPですよ。そのあと恥ずかしながら修斗世界王者にもならせていただきました(笑)。
――そんなレジェンドが、アマ修・全国3位から雑にケンカを売られていると(笑)。
川尻 彼はまだ22歳って若いですよね。ボクとは24歳差だし、お父さんはボクと同世代じゃないですかね。こんな無礼なケンカの売り方をして、お金持ちのお父さんに甘えて暮らしてるか知らないけど、まずは土下座しろ。話はそれからだ(怒)。
――めちゃくちゃ怒ってますね(笑)。川尻さんって格闘家の中でも温厚なほうですけど、こうなるとめちゃくちゃ怖いな……。
川尻 だって陰険ですからね。ボク、青木、北岡は「陰険世代」ですよ。
――いや、北岡さんとアオシン(DEEPの佐伯社長夫人が付けたあだ名だけど、そう呼んでいるのは佐伯社長夫人とDropkickユーザー)はもっと上のレベルの陰険だから、彼らに失礼ですよ(笑)。
笹原 川尻くんのパブリックイメージはすごく穏やかな人だから、そのイメージを壊さないほうがいいですよ(笑)。
川尻 ネチネチずっと呪いますよ。「#超マス十段溝口司」ってタグ付けして1ヵ月はやり続けますからねぇ。調子乗るなよ、オマエ。
――このままだとShow大谷さんの配信並にカオスになるので、本題に入りましょう(笑)。
川尻 Show大谷さんのやつ、聴きましたけど、すごかったですよね。話があっちに行ったりこっちに行ったり、「結局なんの話をしてるんですか?」って(笑)。
――いま視聴されてる方はShow大谷さんに関心はないと思うので説明は省きます!UFC310のフライ級タイトルマッチ、パントージャvs朝倉海の盛り上がりはすごかったですね。
川尻 UFC310はいろいろすごかったですよね。「これは現実なのか」って信じられないことが次々に起きて。あれ、どのへんまでファンに伝わってるんですか? そのへんことを笹原さんに聞きたくて今日は来たんですよ。
笹原 今日は何もしゃべらないですよ!(笑)。
――たとえば「オクタゴンサイドで一緒に観戦した榊原さんとダナ・ホワイトは何を話したのか」……いろいろと興味は尽きないんですが、まずは試合の感想から。川尻さんはどう見ましたか?
川尻 ボクもアメリカ初体験がいきなりタイトルマッチだったんですよ。
――ストライクフォースのギルバート・メレンデス戦ですね。
川尻 アウェイだから分が悪いのはわかってたんですけど、海選手は資金力があってチームを組んで、3週間前にアメリカへ渡って。ラスベガスの雰囲気や時差にも慣れていったし、英語も話せてコミュニケーションも取れている。会見もものすごく頑張っていたじゃないですか。すごく感触はいいなと思ってて。
――海外に挑戦する日本人格闘家をたくさん見てきましたけど、初参戦からあそこまで溶け込んでいる人はいなかったと思いますよ。
笹原 めちゃくちゃ堂々とましたしね。
川尻 UFCの仲間になろうという姿勢がすごく感じられて。もちろんRIZINも背負ってるんですけど、しっかりUFCの内に入って、しっかりコミュニケーションを取ってる感じが伝わってきましたよね。ただ、試合当日ケージに入ったときにさすがに顔が強張っていたんで、前日のフェイスオフとだいぶ違うなと。ボクはU-NEXTの応援チャンネルに出ていたんで、そのことは言わなかったんですよ。解説だったら言ってたんですけど……応援チャンネルだとネガティブなことを言わないほうがいいかなと。
――大人!(笑)。川尻さんもUFC時代は海外で試合していたじゃないですか。数週間前から先乗りして備えることはあったですか?
川尻 ないですね。そこはUFCが負担してくれないから自費になっちゃいますし。ストライクフォースのときは、加藤(浩之 )さんが「川尻が安心するのであれば、何人でも連れてきていいよ」って言ってくれて。
――PRIDE武士道のプロデューサーでDREAMの責任者だった加藤さんがお金を出すと。
川尻 そうです。だから完全なチームを組んで、海外だと感じずに戦えたんですけど、それでもやっぱ思いどおりいかなかったし、苦しかったです。
――海選手が資金的な問題をクリアできたのは、日本市場で人気を獲得していたからですが、それはすなわちRIZINでの実績ですよね。
笹原 そこは海選手の実力ですよね。そのほうが安心できるし、試合に集中できるけれども、そこまでやっても結果を出すのは難しい世界ってことですよね。たとえば松坂大輔がメジャーに挑戦したときも通訳から何からチームを編成して乗り込んだんですよ。単身乗り込んでいった野茂英雄やイチローの大変さを理解していたからなんですが、途中から思うような成績を残せなかったですからね。必ずしも吉と出るわけではないんですよ。
――結果に直結するわけではないと。試合内容のほうはどうでした?
川尻 パントージャは意外と前に出て来なかった。それは1回目の飛びヒザがめっちゃタイミングがよかったからじゃないですかね。あれで海選手の狙いがわかって、もう頭を下げて組みに来なくなりましたから。そのあともヒザを連発したけど、読まれていたから当たらない。そのあとパントージャの左フックを食らってのフラッシュダウンは、たしかに体勢は崩れたけど大丈夫かなと。それよりテンカオのほうが効いたんじゃないかって見てたんですけど。
――テイクダウンされてマットに背中を付けられたあとに立ち上がってから、海選手が主導権を握りかけてる感じが見えたんですけど。
川尻 あの立ち方もすごかったんですよ。パントージャがパウンドを打とうとしたのか、頭を上げたときにぶら下がるように起き上がって。「これで流れが変わるんじゃない?」って思えたし、1ラウンドは互角だったと思う。
――3名のジャッジではパントージャでしたけど、競った内容ではあったと。
川尻 ただ、パントージャは打たれ強いというか、ひるまないですよね。日本人格闘家はビビってはないけど、海選手の打撃に気をつけていたというか。でも、パントージャはまったく臆せず前に出るからこそ、パンチはたぶん効いてない。
――「見えていれば効かない」の大沢ケンジ理論ですか!
川尻 そうそう。ボクは大沢さんとまったく同じです。PRIDE大晦日でギルバート・メレンデスとやったときも全然効かなかったから「アゴを引いて見えていれば効かないでしょ」と。でも、DREAMでエディ・アルバレスに倒されて「ああ、見えていても効くパンチがあるんだな」って(苦笑)。
――いつかパントージャもKOされることがあるかもしれないですが、打たれ強いうえに精神的にもタフなんでしょうね。
笹原 パントージャに距離を潰されたことが海選手には痛かったですよね。
川尻 ですよね。あの戦い方を海選手にできる選手って日本のバンタム級にいないと思うんで、だから面食らったところもあったんじゃないですかね。
笹原 もっと落ち着きたかったですけど、パントージャはその時間を与えなかったですし。
――テンポを早くするのも「大沢ケンジ理論」ですよね。川尻さんも以前から言ってましたけど。
川尻 テンポを1・5倍にしてアタック数を増やす。ボクは大沢さんと一緒に練習してたときに「こうだよね、ああだよね」って話をしてたんですよね。
――2ラウンドに入ってすぐ組み付かれてフィニッシュに……。
川尻 海選手もわかってるんですけど、切れないんですよねぇ。パントージャの右足のロックを外そうとしたし、チョークもわかってるのに極まっちゃう。技術的な部分でかなり上なんでしょうね。
――海選手も練習はしてるけども……
川尻 絶対にチョーク対策はしてるじゃないですか。ボクもめちゃくちゃ練習してても、スパーで青木真也にバックを取られたら極められますからね。何度も練習してわかっているし、正しい対処法をやっても極められちゃうんですよ。
――もうひとつポイントは海選手はひさしぶりのフライ級。川尻さんも階級転向はいろいろ経験しましたけど。
川尻 ライト級からフェザー級、バンタム級まで落として。試合前日に扇久保(博正)に聞いたんですけど、彼はもともとフライ級でやっててRIZINでバンタム級に上げて、またフライに戻してるじゃないですか。扇久保も……扇久保と知り合いだから、つい「扇久保」って言っちゃうんすけど、ファンに「年上だから偉そうだ」って怒られちゃうんですよね(笑)。
笹原 昔からの知り合いですよね?(笑)。
川尻 もう彼が岩手が出てきたときから知ってますから。オギちゃんも2022年大晦日の堀口恭司戦が6年ぶりのフライ級だったけど、「あのときどうだったの?」って聞いたら「全然問題なかったです」と。
笹原 階級を落としても全然パフォーマンスが変わらなかったですよね。
――オギちゃんはもっと評価されてもいいですよ!
川尻 フライ級世界1位が堀口恭司なら、オギちゃんは世界2位ですよ、パントージャに勝ったことあるし。
笹原 階級にフィットする技術ってあるんですか?・朝倉海UFC参戦の経済効果
・RIZINとUFCの異常な関係
・夢破れたDREAMを振り返る
・鶴屋怜の挑発は正しい
・ヤング川尻の宇野薫事件
・DJに200万ドルでオファーしたのは?
・下町ロケットRIZINが作る狂ったネジ……記事13本15万字の詰め合わせセットはまだまだ続く……
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鈴木秀樹が16,000字で語る「プロレスラーの強さとは何か」
2024-12-25 17:47200pt鈴木秀樹が16,000字で語る「プロレスラーの強さとは何か」(聞き手/ジャン斉藤)*Dropkick配信されたものを再構成したものです【1記事から購入できるバックナンバー】・TAJIRIかく語りき「奇跡のプロレスから離れて」
・夢とトラウマを与えたアントニオ猪木の「死」■菊地成孔
・【リングス退団編】俺はそんなことを絶対に言っていない■長井満也
・【バチバチ最終回】臼田勝美「ありがとうバトラーツ」
――今日の配信のゲストはプロレスラーの鈴木秀樹選手です。鈴木さん、よろしくお願いします!
鈴木 よろしくお願いします。こうしてZOOMで取材されるのは、なんかすごく久しぶりな感じがする。これはZOOMじゃないですけどね。
――ボクが鈴木さんを取材するのは猪木さんが亡くなったあとくらいですかね。
鈴木 亡くなられてからちょっとあとくらいですね。
――今日は何かテーマは決まってるわけじゃないんですけど……。
鈴木 まあ雑談ですよね(笑)。
――先ほど鈴木さんのツイートを見ていたら、猪木さんと肌を合わせている写真のポストにコメントされてましたね
鈴木 あれは2017年頃に「ISM」という大会があったんですけど、猪木さんがお客さんに技をかけるという企画があったんですね。それの取材兼練習にボクが呼ばれて、アキレス腱固めとフェイスロックの写真を撮ったんですよ。
――鈴木さんは猪木さんに技をかけられたんですね。
鈴木 猪木さんからいきなり「俺は現役とはやらねえんだよ」と言い出して。「なんだろう??」と思いながら、アキレス腱固めをかけられたんですよ。これって動画じゃなくて写真だけの撮影ですよ。変な話、形だけでいいじゃないですか。でもまあしっかり極めてくるんですよね(笑)。
――形だけでは許さない!(笑)。
鈴木 あの頃の猪木さん、何歳だったんだろう。さすがに身体も少し弱くなっていたと思うんですよね。アキレス腱固めって、1回でガッチリと取らないとなかなか極まるものでもない。ポイントには入ったんですけど、猪木さんの力も少し弱まってたからすぐには極まらなかったんですよね。だんだんと力が入ってきたから、ちょっと早めにタップしたんです。その日の夜に試合もあったから痛めたくないじゃないですか(笑)。
――撮影でガマンしてケガしたくないですよね(笑)。力が落ちていることを自分でわかっているから「俺は現役とはやらねえんだよ」と言ったんですかね……。
鈴木 猪木さんはボクの対応もわかったでしょうね。フェイスロックのときはおもいきり顔を締め上げたら「パキッ!」って音が鳴って(笑)。
――ハハハハハハハハハ!
鈴木 「おい、音が鳴ったけど大丈夫か?」って心配するんですけど、その顔がすごい満足してるんですよね(笑)。ナメられて手心を加えられたと感じたから、今度はがっちりやったんじゃないかなと思います(笑)。
――鈴木さんは猪木さんとけっこう肌を合わせてるんじゃないですか?
鈴木 ボクは数回なんですよね。猪木さんがガッチリ触ったのはギリギリUFOのときの選手じゃないですか。
――引退直後の猪木さんが小川直也さんや佐山聡さんと一緒にやっていた頃。
鈴木 藤田(和之)さんやカシンとか。ボクはもう本当に数えるくらいですよ。だから闘魂を理解できるレベルにはいないです。わかっていたらアントニオ猪木的な人物になれてると思うんですよね。なれてないからたぶんわかってない。
――猪木さんとスパーした人間は数知れないですけど、疑ってかかった選手は少ないと思うんですよ。フェイスロックを全力でやってきたのは“前科”があったからじゃないかなと(笑)。
鈴木 ああ、ありましたね。猪木さんがIGF道場に来られたときに、横四方の抑え込みを見せてくれたんですよ。ボクが脇で見ていたら、猪木さんは「オマエは信用してねえだろ?」と。要は抑え込まれてるほうが遠慮してると思ってんだろってことですね。だから「はい。やってもらっていいですか?」と。
――そこでそう言っちゃう鈴木さんも面白いですよ(笑)。
鈴木 ハハハハハ。猪木さん、おもいきり抑えこんできたんですけど、力がやっぱり強い。ボクは下から猪木さんの顔や髪を掴んで引き剥がそうとしたんです。目に指を入れるまでじゃないですけど……。
――ハハハハハハハ! とんでもないですよ!
鈴木 そうしたら、アゴでその手を押さえこんできて。あのアゴも凶器なんですよ(笑)。で、ボクの顔面にヒジを押し付けてくるのがめっちゃ痛くて。終わったあと猪木さんの髪の毛はぐちゃぐちゃのまま「どうだ、ウソじゃねえだろ?」と言われたので「負けました。すいませんでした」と謝りました。
――髪の毛がぐちゃぐちゃなのがリアリティがあって最高です(笑)。猪木さんも跳ね返ってくる若手のほうがやりがいはあるというか。
鈴木 やっぱり猪木さんは本当に強かったわけじゃないですか。もちろん年齢的に一番のピークではないんですけど、ちょっとでもその強さを知れたらいいなと思って。猪木さん以外のレジェンド系も受けてましたね。
――他に誰とぶつかったんですか?
鈴木 たとえば藤原(喜明)組長ですね。なんの試合だったかは覚えてないですけど、6人タッグで先発がボクと藤原さん。組んでレスリングになって、ボクが下になったのかな。何をしてくるのかと思ったら、いきなり顔にパコーンってパンチを入れてきて。
――ハハハハハハハ!
鈴木 「この野郎!」ってボクも殴り返したんですよ。6人タッグなんですけど、そこからお互いに殴り合いですよ(笑)。さすがに顔は反則だからボディを打ちましたけど。
――そこは一線を守るんですね。
鈴木 組長は顔にも打ってきましたよ、ギリギリだったけど。こっちの対応がマズかったら、アゴ行かれるなと思いました(笑)。組長もあのときいくつだったのかなあ。60代後半だったんですけど、「同じの年齢だったら、どれくらい強かったんだろう?」って想像するのが好きですね。
――組長が新日本の前座でやった頃、キラー・カーンさんと仲が悪かったのかな。どこかの地方でシングルマッチが組まれたときに試合前に体育館の緞帳をサンドバック代わりにしてボクシングの練習をしていたと。関節技の鬼だけど、仕留めるときはボクシングなんだなって(笑)。
鈴木 殴り合いになったら殴ったほうが早いってことじゃないですか(笑)。プロレスは殴っちゃいけないってルールはないですから。昔ビル・ロビンソンも言ってましたよ。PRIDEの試合を見ながら「このルールだったら上に乗って関節を取るよりは殴ったほうが早い」と。MMAルールならそうですよね。下にならずに殴ったほうが早い。だから下にならないようにする。ロビンソンが現役のときはMMAはやってなかったですけど、プロレスというジャンルでそれなりにやってきた人だから、その戦いができるかできないかは別として、想像力を働かせればそういう言葉が出てくるんだと思います。ロビンソンの時代のプロレスはテレビもなかったし、けっこう悲惨な試合はあったと思うんですよね(苦笑)。
――悲惨な試合!(笑)。
鈴木 そこはロビンソンに限らずですけど、そういう中で生き残ってきた人たちは何か戦いのコツを知っているはずだし。一線のところでも引かないで勝負できるから残ってきたんでしょうね。
――プロレスは一線を越えてはいけないところはあるけども、その線が消えたときに対応できる力も問われる。
鈴木 とくにロビンソンは、アヤフヤな時代だったからこそなんでしょうね。猪木さんだって“いろんな試合”があったわけですから。それはプロレスが単なる競技じゃなかったからこその強さですよね。プロレスの競技的なところはMMAというものと合わさったんですけど。こういうことをいうと「夢がない」と思われるかもしれないけど、どんな競技もそのルールでずっとやってきた人が強いんじゃないですかね。亡くなられましたけど、横綱の曙さんに仕切りをやってもらったことがあるんですよ。
――相撲の立会いですね。
鈴木 いやあ、あれは怖かったですねぇ。相撲って絶対に前進するじゃないですか。下がったら終わりが前提の競技で、そこまで大きくない土俵の中に200キロ近い相手が目の前にいるんですからね。これは勝てないですよ。でも、これがグラップリングで1センチ後ろに下がってもいいとなると全然違ってくるんです。だから競技の強さはルールの違いに関わってきますよね。
――猪木さんの凄さはよく語られますけど、競技的な強さだけではなく修羅場で立ち回れる勝負度胸はすごいなと。“敵地”だろうが関係なくギリギリの戦いができるじゃないですか。・命懸けだったアントニオ猪木
・中嶋勝彦の闘魂スタイル騒動
・闘魂をわかったふりをしていたIGF
・世界一の日本のプロレス道場システム
・WWE/NXTのコーチ時代・裏投げ問題は単なる技術不足
・ロビンソンの教え
・ジョシュ、青木真也評……16,000字インタビューは会員ページへ続く
いま入会すれば楽しめる記事・配信アーカイブ<記事>・裏投げ再燃/欠場者多発の理由
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・真夜中の飯伏幸太vs佐藤光留
・鈴木千裕インタビュー「格闘家は安定を求めたらおしまい」・久保優太「シェイドゥラエフに挑戦しないなら、格闘家でいる意味はない」
・【タメになる15,000字】扇久保博正が語る「格闘技の深淵」・朝倉海とパントージャはどこに差があったのか■水垣偉弥・みんなの物語「朝倉海の挑戦を語ろう」■川尻達也☓笹原圭一
<動画アーカイブ>・佐藤光留のハードヒット変態トーク・UFC対RIZIN!! 語ろうパントージャvs朝倉海■川尻達也☓笹原圭一・斎藤裕「RIZINとコロナは格闘技をどう変えたのか」・語ろう「RIZIN名古屋」 ゲスト扇久保博正
・2024年の「K」を語る■ゲスト宮田充……などなど
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【次期王座挑戦者決定戦】元谷友貴「RIZIN“激推し”の秋元選手に勝てばオイシイ」
2024-12-23 23:21200pt秋元強真との次期王座挑戦者決定戦が目前に迫った元谷友貴インタビューです!(聞き手/松下ミワ)【1記事から購入できるバックナンバー】・佐藤将光センターラインな12000字インタビュー
・「バンテージ職人」永末ニック貴之インタビュー
・レスリングエリートをMMAファイターに育てる方法■宮田和幸インタビュー
・朝倉未来はジョーカーを引いてしまったのか? 弥益ドミネーター聡志1万字インタビュー
――大晦日の秋元強真戦目前ですが、じつは元谷選手って今回で10回目の年末興行出場なんですよね!
元谷 えっ、そんな出てますか? いや、そんなに出てますかね?
――2014年末のDEEP DREAM IMPACT 2014を含めると、今回でちょうど10回目です。不出場だったのは2017年のRIZIN大晦日だけです。
元谷 「RIZINで出てない年があるよなー」とは思っていたんですけど、1回だけだったんですね。もっと出てないかと思ってました。
――元谷選手は大晦日だけじゃなくてRIZINやDEEPでフル回転してますし、本当に凄いキャリアです(笑)。
元谷 自分でも意外ですね。まさかこんなに長く続けるとは思ってなかったというか。
――そうなんですか?
元谷 RIZINに出始めたのが25~26歳の頃で、そのときは「やっても30歳ぐらいまでかな」と。まさか10年後の35歳までやっとるかな? って感じだったんですけど、時間が経ってみると意外とあっという間ですね。
――正直、元谷選手が格闘技をやめるのは想像しづらいですもんね。
元谷 自分でもまだ大丈夫な気がしています。身体的にはぜんぜん大丈夫なんですけど、あとは気持ちですよね。気持ちがどこまでついていけるのか。やっぱり負けたときに「もういいか」となるのかどうか、そこだけですね。
――年の瀬が差し迫っている中で、やっぱり大晦日独特のザワザワ感みたいなのはあるんですか?
元谷 いや、今回はとくにないんですけど、大晦日はいつも「早く試合が終わってほしいな」と思ってます(笑)。
――ハハハハハ! 聞くところによると、試合が決まる前に早々にアメリカにわたってアメリカン・トップチームで練習していたそうで。
元谷 秋元選手に決まる前は、相手がずっとわからなくて。試合が決まるとも言われてないけど、決まるかもしれない思ってたので。一応、なんかありそうやなーという感じやったんで、一応練習しておかないとという感じでした。
――対戦カードについては、最初はやはり井上直樹選手が候補だったんですかね?
元谷 井上選手も打診されて、もしかしたら……となってたんですけど、結局二転三転して秋元選手になった感じです。
――じゃあ、秋元選手に行き着くまでに意外と紆余曲折あったんですね。
元谷 そうですね。「この選手かも」「いや、この選手かも」という中で決まりました。
――最終的に秋元選手の名前が挙がってきたときはどう思いました?
元谷 やっぱり注目度があって凄くいい選手だと思うんですけど、なんて言うんですかね、まだ誰も知らないというか、得体の知れないちょっと不気味な感じはありますよね。どんなもんなのかな、という。
――いきなり元谷選手との対戦が決定して、俄然注目カードになってます。
元谷 たぶん、それはRIZINが秋元選手を“激推し”なんだと思います。
――ハハハハハ! “激推し”選手を当てられる気持ちってどんな感じなんですか?
元谷 いや、でもそこで勝てさえすれば逆に自分がオイシイんで。これは、凄くいいカードだなと思ってますね。
――元谷選手のコメント聞いていると、秋元選手のことめちゃくちゃ評価されてますよね。
元谷 一応プロデビューした16歳ぐらいの試合から見たんですけど、凄いうまいですよね。めちゃくちゃうまい。「ああ、こんなうまいんや」と思って見てました。
――それは、とくにどのへんがでしょう?
元谷 やっぱり全部がバランスがいいし、打撃も強くて、テイクダウンもしっかり細かい技術があるし、「ああ、こんな取り方するんや」みたいな。寝技もグランドもけっこう丁寧なんですよね。やっぱりパラエストラ千葉ネットワークでしっかり鍛えた成果というか、凄くしっかりした技術があるなと思いました。
――それに対して、元谷選手は公開練習とかでもまったく手の内を明かさないという(笑)。
元谷 フフフフ……。
――ファンに自分の選手カードを配るという謎の公開練習でした!
元谷 本当にあのときは何も考えてなくて。ミットの相手もいないですし、「何しようかなー」と思ってたときに、控え室で自分の選手カードをもらったんで、じゃあこのカードを配ろうと。
――秋元選手も少しでも元谷選手の動きからヒントを得たかったと思うんですけど、あんな感じだったので苦虫を噛み潰したような微妙な顔をされていた感じで。
元谷 まあ、もう成り行きでしたね。1分30秒間シャドーをしても「なんやろうな」という感じになるんで、なんとかカードを配って30秒ぐらい潰れたらいいなと思いながら。
――じゃあ、手の内を明かさないためではなく、切羽詰まってあの公開練習になってしまったということなんですね。
元谷 そのとおりです(真顔で)。
――でも、秋元選手って15歳から人生すべてMMAに振り切ってるわけですが、18歳でここまで来れるというのはやっぱり凄いですか?
元谷 いや、相当凄いと思います、しかも、やっぱり頭がよくないとあんな感じで吸収できないと思うんで。
――なるほど、考えながらやっていると。
元谷 と思います。凄く頭を使ってしっかり練習してますよね。そう感じるぐらいテクニックが細かいんで。
――そういう意味では、平良達郎選手や鶴屋怜選手、神龍誠選手など、いまの若い選手ってMMAファイターとして完成するまでみんな凄く早いなという印象があるんですけど。
元谷 やっぱり若い頃からパッと始めたものは吸収がいいんですかね? いままでだと大人がMMAを始めるとか、柔術を始めた流れでMMAをやるとか、そういう感じの人が多かったと思うんですけど、やっぱり10代からそれに興味を持ってやるって……それに10代って時間あるじゃないですか。
――たしかに(笑)。
元谷 その時間を使えるのも大きいのかなと思いますね。
――ただ、そこは元谷選手もMMA始めてDEEPのタイトルを獲るまで相当早かったですよね。
元谷 自分の場合はプロデビューして1年でベルトを獲ったんで、MMAを始めて2年ぐらいですかね。
――それは、なんでそんなに早く獲れたんですか?
元谷 自分は運がよかっただけです。本当に。あと最初に通ってたジムの練習が凄くよかったんだと思います。ジムのシステムだったり、やっぱクラスでの追い込みもそうですし、全体的にMMAとしていい面を学べたような気はしてます。
――当時、石川にいるときにYouTubeを見ながら研究していたということも話されてましたが、若い選手ってそのへんの情報がめちゃくちゃあふれてるというところも早く強くなれる一因だったりするのかなと。
元谷 ああ、やっぱりYouTubeはいまでも見ますし、そこで研究するのは凄くいいことだと思います。自分も最初は柔術のジムだったんで、柔術の技術はしっかり教えてもらったんですけど、競技としてのMMAを学べたかというとそうではなかったんで、やっぱり細かいところはYouTubeで見てましたね。
――いまの若い選手は、最初からそういう情報があふれている中で研究できるというのは、なんか羨ましく感じるところもあります?
元谷 でもまあ、そんなもんじゃないですか? それに、自分はわからなかったからこそよかった面もありますし。簡単に情報が手に入らないぶん、自分の探究心というか「どうやったらできるのか」というのを、ずっと探して、探して、見つからなくて、いまアメリカに行って「こうやるんだ」という発見があったり、そこがつながってきてたりして、そういう意味での楽しさもありますしね。
――自分で考えて探求することも大切なんですかね。
元谷 それがつながったときが本当に面白かったりします。
――そういう意味では、いまATTでの練習はめちゃくちゃ楽しいんじゃないですか?
元谷 めっっちゃくちゃ楽しいです!
――いや、それが凄く伝わってきます!
元谷 もう、めちゃくちゃ楽しい。やっぱり、なかなか日本じゃわからなかった技術とか、こんだけ長くやってても掴めなかった技術が、意外と「あ、こんな感じなんや」とか答えがわかりやすいですね。そこは世界王者が取り入れている技術やし、それを習得して試せる相手も世界トップレベルなんで。もう、何にしてもわかりやすいです。・食べて、寝て、洗濯のATT生活
・1年経ってATTの練習が身になりつつある
・元谷が見たパントージャの“対朝倉海”キャンプ
・みんなATTvsJTTの構図を言いたがるが…11,000字インタビューは会員ページへ
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みんなの物語「朝倉海の挑戦を語ろう」■川尻達也☓笹原圭一
2024-12-21 16:02250ptみんなの物語「朝倉海の挑戦を21,000字で語ろう」■川尻達也☓笹原圭一(聞き手/ジャン斉藤)☆この記事はニコ生配信されたものを構成したものです【いま入会すれば見られる配信アーカイブ】
UFC対RIZIN!! 語ろうパントージャvs朝倉海■川尻達也☓笹原圭一
https://live.nicovideo.jp/watch/lv346412051
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――どうもジャン斉藤です。今日のDropkickスタジオトークのゲストはこの方です!
笹原 皆さん、こんにちは。平和を愛し、平和から愛された男・笹原です。
――どういう挨拶なんですか!(笑)。そしてもうひとりはこの方です。
川尻 MMA3戦3勝、「超マス十段」の溝口司です。よろしくお願いします!
――SNSを追ってない人には意味がわからないですよ。
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――なんかケンカを売られてますね(笑)。
川尻 この直前までSNSでケンカを売られていたんです。3戦3勝の奴に。
――川尻さんにケンカを売っている溝口さんとは、ブレイキングダウンCOOの溝口勇児さんとは別人ですか?
川尻 別人っすよね。ブレイキングダウンの溝口さんは凄かったですよ。
笹原 昨日のブレイキングダウンでの試合では、残り1秒でKO勝ちしたんですよね。
川尻 あの決着は映画みたいで凄かったですよ。ボクが言っているのは弱いほうの溝口司です。
――ボクもSNSで溝口選手のことはフォローしてたんですけど……。
川尻 あ、有名なんですか?
――有名というか有望な若手ですね。
川尻 ボクがYouTubeで有望な若手7人を挙げたときに「溝口司もいますよ」っていうコメントがあったんでググったことはありますね。だから名前を知ってたんですけど、どういう選手なのかはわからないです。「超マス」がすごく好きみたいです。
――超マスとはマススパーリングのすごいやつらしくて、川尻さんも執拗に「超マス」を要求されてますけど。溝口選手は21年のアマ修・全国3位の強豪ですよ。川尻さんは何位でしたっけ?(笑)。
川尻 自分は東日本オープントーナメント1位ですけど、そのあと修斗の第1回新人王のMVPですよ。そのあと恥ずかしながら修斗世界王者にもならせていただきました(笑)。
――そんなレジェンドが、アマ修・全国3位から雑にケンカを売られていると(笑)。
川尻 彼はまだ22歳って若いですよね。ボクとは24歳差だし、お父さんはボクと同世代じゃないですかね。こんな無礼なケンカの売り方をして、お金持ちのお父さんに甘えて暮らしてるか知らないけど、まずは土下座しろ。話はそれからだ(怒)。
――めちゃくちゃ怒ってますね(笑)。川尻さんって格闘家の中でも温厚なほうですけど、こうなるとめちゃくちゃ怖いな……。
川尻 だって陰険ですからね。ボク、青木、北岡は「陰険世代」ですよ。
――いや、北岡さんとアオシン(DEEPの佐伯社長夫人が付けたあだ名だけど、そう呼んでいるのは佐伯社長夫人とDropkickユーザー)はもっと上のレベルの陰険だから、彼らに失礼ですよ(笑)。
笹原 川尻くんのパブリックイメージはすごく穏やかな人だから、そのイメージを壊さないほうがいいですよ(笑)。
川尻 ネチネチずっと呪いますよ。「#超マス十段溝口司」ってタグ付けして1ヵ月はやり続けますからねぇ。調子乗るなよ、オマエ。
――このままだとShow大谷さんの配信並にカオスになるので、本題に入りましょう(笑)。
川尻 Show大谷さんのやつ、聴きましたけど、すごかったですよね。話があっちに行ったりこっちに行ったり、「結局なんの話をしてるんですか?」って(笑)。
――いま視聴されてる方はShow大谷さんに関心はないと思うので説明は省きます!UFC310のフライ級タイトルマッチ、パントージャvs朝倉海の盛り上がりはすごかったですね。
川尻 UFC310はいろいろすごかったですよね。「これは現実なのか」って信じられないことが次々に起きて。あれ、どのへんまでファンに伝わってるんですか? そのへんことを笹原さんに聞きたくて今日は来たんですよ。
笹原 今日は何もしゃべらないですよ!(笑)。
――たとえば「オクタゴンサイドで一緒に観戦した榊原さんとダナ・ホワイトは何を話したのか」……いろいろと興味は尽きないんですが、まずは試合の感想から。川尻さんはどう見ましたか?
川尻 ボクもアメリカ初体験がいきなりタイトルマッチだったんですよ。
――ストライクフォースのギルバート・メレンデス戦ですね。
川尻 アウェイだから分が悪いのはわかってたんですけど、海選手は資金力があってチームを組んで、3週間前にアメリカへ渡って。ラスベガスの雰囲気や時差にも慣れていったし、英語も話せてコミュニケーションも取れている。会見もものすごく頑張っていたじゃないですか。すごく感触はいいなと思ってて。
――海外に挑戦する日本人格闘家をたくさん見てきましたけど、初参戦からあそこまで溶け込んでいる人はいなかったと思いますよ。
笹原 めちゃくちゃ堂々とましたしね。
川尻 UFCの仲間になろうという姿勢がすごく感じられて。もちろんRIZINも背負ってるんですけど、しっかりUFCの内に入って、しっかりコミュニケーションを取ってる感じが伝わってきましたよね。ただ、試合当日ケージに入ったときにさすがに顔が強張っていたんで、前日のフェイスオフとだいぶ違うなと。ボクはU-NEXTの応援チャンネルに出ていたんで、そのことは言わなかったんですよ。解説だったら言ってたんですけど……応援チャンネルだとネガティブなことを言わないほうがいいかなと。
――大人!(笑)。川尻さんもUFC時代は海外で試合していたじゃないですか。数週間前から先乗りして備えることはあったですか?
川尻 ないですね。そこはUFCが負担してくれないから自費になっちゃいますし。ストライクフォースのときは、加藤(浩之 )さんが「川尻が安心するのであれば、何人でも連れてきていいよ」って言ってくれて。
――PRIDE武士道のプロデューサーでDREAMの責任者だった加藤さんがお金を出すと。
川尻 そうです。だから完全なチームを組んで、海外だと感じずに戦えたんですけど、それでもやっぱ思いどおりいかなかったし、苦しかったです。
――海選手が資金的な問題をクリアできたのは、日本市場で人気を獲得していたからですが、それはすなわちRIZINでの実績ですよね。
笹原 そこは海選手の実力ですよね。そのほうが安心できるし、試合に集中できるけれども、そこまでやっても結果を出すのは難しい世界ってことですよね。たとえば松坂大輔がメジャーに挑戦したときも通訳から何からチームを編成して乗り込んだんですよ。単身乗り込んでいった野茂英雄やイチローの大変さを理解していたからなんですが、途中から思うような成績を残せなかったですからね。必ずしも吉と出るわけではないんですよ。
――結果に直結するわけではないと。試合内容のほうはどうでした?
川尻 パントージャは意外と前に出て来なかった。それは1回目の飛びヒザがめっちゃタイミングがよかったからじゃないですかね。あれで海選手の狙いがわかって、もう頭を下げて組みに来なくなりましたから。そのあともヒザを連発したけど、読まれていたから当たらない。そのあとパントージャの左フックを食らってのフラッシュダウンは、たしかに体勢は崩れたけど大丈夫かなと。それよりテンカオのほうが効いたんじゃないかって見てたんですけど。
――テイクダウンされてマットに背中を付けられたあとに立ち上がってから、海選手が主導権を握りかけてる感じが見えたんですけど。
川尻 あの立ち方もすごかったんですよ。パントージャがパウンドを打とうとしたのか、頭を上げたときにぶら下がるように起き上がって。「これで流れが変わるんじゃない?」って思えたし、1ラウンドは互角だったと思う。
――3名のジャッジではパントージャでしたけど、競った内容ではあったと。
川尻 ただ、パントージャは打たれ強いというか、ひるまないですよね。日本人格闘家はビビってはないけど、海選手の打撃に気をつけていたというか。でも、パントージャはまったく臆せず前に出るからこそ、パンチはたぶん効いてない。
――「見えていれば効かない」の大沢ケンジ理論ですか!
川尻 そうそう。ボクは大沢さんとまったく同じです。PRIDE大晦日でギルバート・メレンデスとやったときも全然効かなかったから「アゴを引いて見えていれば効かないでしょ」と。でも、DREAMでエディ・アルバレスに倒されて「ああ、見えていても効くパンチがあるんだな」って(苦笑)。
――いつかパントージャもKOされることがあるかもしれないですが、打たれ強いうえに精神的にもタフなんでしょうね。
笹原 パントージャに距離を潰されたことが海選手には痛かったですよね。
川尻 ですよね。あの戦い方を海選手にできる選手って日本のバンタム級にいないと思うんで、だから面食らったところもあったんじゃないですかね。
笹原 もっと落ち着きたかったですけど、パントージャはその時間を与えなかったですし。
――テンポを早くするのも「大沢ケンジ理論」ですよね。川尻さんも以前から言ってましたけど。
川尻 テンポを1・5倍にしてアタック数を増やす。ボクは大沢さんと一緒に練習してたときに「こうだよね、ああだよね」って話をしてたんですよね。
――2ラウンドに入ってすぐ組み付かれてフィニッシュに……。
川尻 海選手もわかってるんですけど、切れないんですよねぇ。パントージャの右足のロックを外そうとしたし、チョークもわかってるのに極まっちゃう。技術的な部分でかなり上なんでしょうね。
――海選手も練習はしてるけども……
川尻 絶対にチョーク対策はしてるじゃないですか。ボクもめちゃくちゃ練習してても、スパーで青木真也にバックを取られたら極められますからね。何度も練習してわかっているし、正しい対処法をやっても極められちゃうんですよ。
――もうひとつポイントは海選手はひさしぶりのフライ級。川尻さんも階級転向はいろいろ経験しましたけど。
川尻 ライト級からフェザー級、バンタム級まで落として。試合前日に扇久保(博正)に聞いたんですけど、彼はもともとフライ級でやっててRIZINでバンタム級に上げて、またフライに戻してるじゃないですか。扇久保も……扇久保と知り合いだから、つい「扇久保」って言っちゃうんすけど、ファンに「年上だから偉そうだ」って怒られちゃうんですよね(笑)。
笹原 昔からの知り合いですよね?(笑)。
川尻 もう彼が岩手が出てきたときから知ってますから。オギちゃんも2022年大晦日の堀口恭司戦が6年ぶりのフライ級だったけど、「あのときどうだったの?」って聞いたら「全然問題なかったです」と。
笹原 階級を落としても全然パフォーマンスが変わらなかったですよね。
――オギちゃんはもっと評価されてもいいですよ!
川尻 フライ級世界1位が堀口恭司なら、オギちゃんは世界2位ですよ、パントージャに勝ったことあるし。
笹原 階級にフィットする技術ってあるんですか?・朝倉海UFC参戦の経済効果
・RIZINとUFCの異常な関係
・夢破れたDREAMを振り返る
・鶴屋怜の挑発は正しい
・ヤング川尻の宇野薫事件
・DJに200万ドルでオファーしたのは?
・下町ロケットRIZINが作る狂ったネジ……21,000字インタビューは会員ページへ
いま入会すれば楽しめる記事・配信アーカイブ<記事>
・鈴木千裕インタビュー「格闘家は安定を求めたらおしまい」・久保優太「シェイドゥラエフに挑戦しないなら、格闘家でいる意味はない」
・【タメになる15,000字】扇久保博正が語る「格闘技の深淵」・朝倉海とパントージャはどこに差があったのか■水垣偉弥
<動画アーカイブ>・UFC対RIZIN!! 語ろうパントージャvs朝倉海■川尻達也☓笹原圭一・斎藤裕「RIZINとコロナは格闘技をどう変えたのか」・語ろう「RIZIN名古屋」 ゲスト扇久保博正
・2024年の「K」を語る■ゲスト宮田充……などなど
などなど550円で楽しめます!https://ch.nicovideo.jp/dropkick/live
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久保優太「シェイドゥラエフに挑戦しないなら、格闘家でいる意味はない」
2024-12-17 20:14200ptRIZIN大晦日は強敵シェイドゥラエフに挑む久保優太インタビューです!(聞き手/ジャン斉藤)【1記事から購入できるバックナンバー】・日本格闘技界はドーピングにどう向き合うべきか■大沢ケンジ☓タケ ダイグウジ
・“お隣”韓国の知られざる格闘技事情■PKヤドラン
・レスリングを20年間、撮り続けきたカメラマン――保高幸子インタビュー
・【仮想通貨詐欺】なぜ私はTDTのスポンサーオファーを断ったのか■シュウ・ヒラタ
――いま久保選手は沖縄はなんですか?
久保 いや、明日から週末だけ沖縄です。前にも言いましたけど、沖縄で事業をやっていたりして、向こうが住居になってまして。東京には練習のために滞在している感じなんですね。
――沖縄でトレーニングキャンプを張る格闘家は多いですけども、久保選手の場合は東京でトレーニングキャンプ。
久保 いま東京での練習場所は宮田和幸代表のBRAVE、上田(貴央)さんのFIGHTER'S FLOW、弟の久保賢司と始めたジムのリレイズ東京、この3つをぐるぐる回ってトレーニングしていますね。休みのときに沖縄に戻っているし、試合がなければずっと沖縄にいます。今年に入ってからこういう生活なんですけど、こっちのほうが自分に合ってるかなって。
――東京に来るとファイターのスイッチが入るんですね。
久保 そうですね。いまはちょうど追い込み期間で、来週ぐらいまで頑張って。そこから段階的に減量をスタートするというか。いまは食事調整しながらカロリーコントロールとダイエットという感じですかね。
――いまは疲労を含めてピークの時期なんですかね。
久保 めちゃくちゃ疲労が溜まっています(笑)。
――そんなときに取材で申しわけないです!
久保 いやいや、全然大丈夫です。
――今年の高橋遼伍戦、斎藤裕戦の試合前取材では「試合が決まったときは勝てる可能性は低いけども、試合当日までに勝率と上げていく」という言い方をされてきましたが、大晦日のシェイドゥラエフ戦の手応えはどうでしょうか?
久保 いやあー、どうだろうなぁ。いまちょうどBRAVEで練習したあとで、弟の久保賢司と一緒なんですけども……弟といろいろな話をすると、勝率は上がっている気がします。
――おお、そうなんですね。
久保 まあ、ここからまあ減量がキツくなってくると、マイナス思考になっちゃうかもしれないですけど(苦笑)。大晦日に向けてすごく集中してるというか、充実した選手生活が送れてますし、「どんどん強くなっちゃうなあ」って自信満々になってきました。
――BRAVEってレスリングの練習が中心じゃないですか。そこに元キックボクサーの弟さんも一緒に行くことは重要なんですよね。
久保 BRAVEでは宮田代表が教えてくださるんですけど、キツイ組みの練習してるときに弟が「じゃあ、このキツイときにミッドだ」って始まります(笑)。
――つらいときにケツを叩いてくれる存在!(笑)。
久保 キツイときに打撃を出せるかどうか。自分の武器は打撃じゃないですか。どんなに苦しい状況においてもその武器を出せるトレーニングをしてますね。
――弟さんは近くで客観的に見てくれる存在としても重要だったりするんですか?
久保 ああ、そうですね。ボクは当事者なので、3Dで見られない。俯瞰して見てくれる存在ですよね。行きの車では「今日どういう課題を持ってやるか」という話したり、帰り道では「今日はこの動きができてなかったよ」と反省会をして。MMAにおいての“久保ロジック”を弟と2人で練っている感じですね。
――こないだ笹原(圭一)さんのインタビューしたときに、久保選手にはダウトベック戦のオファーしたんですけど、久保選手のほうが「ダウトベックに打撃で勝ってもあたりまえだから」ということでシェイドゥラエフを指名したと。そのとおりなんでしょうか?
久保 あ、そうです(笑)。
笹原圭一の「RIZIN LANDMARK名古屋」を11,000字で語ろう
https://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar2207110
――うわ!よりによって厄介な相手を指名(笑)。
久保 厄介だと思います(笑)。自分でもそう思ったんですけど……でも、やっぱり人生一度きりじゃないですか。だから挑戦したいんですよ。ボクは33歳でMMAに転向して、いまは37歳。この歳になって夢を追っかけてるんですけど、挑戦するからには、やっぱりキツイ道を……周り道するより目的地まで最短距離で登れるじゃないですけど。
――エベレストを登るにしても商業登山じゃなくて、最難関ルートを選んでる感じですよ!(笑)。
久保 やるからにはやっぱり挑戦したいんです。ありがたいことに、RIZINには自分の望むカードに挑戦をさせてもらえますし、それに応えて乗り越えたいなって思いますね。
――段階を踏む選択はなかったわけですね。
久保 そうですねぇ。段階を踏んでるあいだに歳を食っちゃうなって思ったんで(笑)。それにダウトベックはストライカーなんで、世間から見てもボクなら「いけちゃいそう」に見えるじゃないですか。
――そんな簡単な相手ではないとはいえ“天才・久保優太”なら攻略できるんじゃないかと。
久保 簡単ではないにしろ、ダウトベックとは五分五分、フィフティ・フィフティという見方をされるのかなって思ったんで。シェイドゥラエフだったら「絶対に久保は勝てない」と予想する人が大半だと思うんですよね。
――実際にシェイドゥラエフ有利の声が圧倒的ですねぇ。
久保 高橋選手や斎藤選手とやるときも「まだ早いだろう」と「段階を踏んだほうがいいんじゃないか」って見方をされてたんですけど、挑むんだったら高い壁のほうがいいかなって。
――高い壁とはいえ、格闘家として勝機が見えるからこそ名乗り出たんですよね?
久保 そうですね。ボクって自己分析がめちゃくちゃできるタイプだと思うんです。そこは自己だけではなく、いろんな分析が得意なんですけど。いろいろと分析した結果、シェイドゥラエフに勝てないかなあ、相性が悪いなあって(苦笑)。
――自己分析した結果!(笑)。
久保 はい。でも、せっかく格闘家という仕事をさせてもらってるんで。人に注目していただいて、人に夢を与えられる職業じゃないですか。しかもRIZINという日本一の団体で戦うことができる。これは格闘家としてめちゃめちゃチャンスではあるし、ありがたい環境なんで。それなのに安牌を選んだりするのはどうなのか、と。シェイドゥラエフと戦えるんだったら挑戦したい。そして勝つことで、応援してくれてる人から称賛を浴びたいですね。
――格闘家としてファンに夢やロマンを与えたいわけですね。
久保 じゃないと格闘家でいる意味はないかなって思います。
・シェイドゥラエフの打撃
・SNSで炎上する理由
・格闘マシーンとしての強み
・一流のジャブとは何か
・勝つ確率は五分五分まで仕上げた
・キックボクサーのMMA転向について……続きは会員ページへ
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・2024年の「K」を語る■ゲスト宮田充……などなど
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裏投げ再燃/欠場者多発の理由■プロレス事情通Z
2024-12-17 18:52200ptプロレス格闘技業界のあらゆる情報に精通する事情通Zのコーナー。今回のテーマは裏投げ再燃/欠場者多発の理由/ドラゲーに何が?/諏訪魔役員退任です!【1記事から購入できるバックナンバー】・TAJIRIかく語りき「奇跡のプロレスから離れて」
・飯伏幸太vsDDT亀裂の見立て/Sareeeの裏投げ■プロレス事情通Z
・AKIRAインタビュー最終回「猪木さんから、オマエら殴り合えと……」
・「高田さんは相当強いっすよ……」ブラジリアン柔術家・高田延彦を語ろう■橋本欽也
――「プロレス界の大谷翔平」こと“Show”大谷泰顕さんの「Sareee裏投げ問題」の記事が騒ぎになってます。
事情通Z Sareee選手の裏投げで高橋奈七永選手が動けなくる事態となり、その後しばらく欠場することに。いったん沈静化したけど、この記事をきっかけにWWEの戸澤陽選手が炎上している。元プロレスラーのミスター雁之助さんがこの裏投げを否定するポストをしたら、戸澤選手は「受けがしょっぱいからこんな落ち方になるんだよ 怪我したくらいで騒ぐなバーカ」とリポスト。戸澤選手からすれば、Sareee選手はWWEの仲間だったから、友達をかばいたいがゆえにちょっと熱くなったと。雁之助さんにDMでお詫びした。
――あのポストは過激すぎてビックリしましたよ。
Z 戸澤選手は言い方がアレだったけど……
いま入会すれば見られる記事・配信アーカイブ・妥当すぎるプロレス大賞の重箱の隅をつつこう■プロレス事情通Z
・偏屈王・鈴木秀樹のプロレス時事放談・TAJIRIが来たりてプロレスを語る・追悼・小林邦昭さん■小佐野景浩のプロレス歴史発見・佐藤光留のハードヒット変態トーク<配信予定>https://ch.nicovideo.jp/dropkick/live
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朝倉海とパントージャはどこに差があったのか■水垣偉弥
2024-12-13 20:59200pt
北米MMAを知り尽くした男・水垣偉弥が「朝倉海とパントージャはどこに差があったのか」です(聞き手/ジャン斉藤) ☆この記事はDropkickニコ生で配信されたものを再構成したものです
【1記事から購入できるバックナンバー】・【大人のMMAトーク】日本格闘技界がよくわかる15000字■DEEP代表・佐伯繁
・【RIZIN復帰戦】浜崎朱加は2年間、何をやっていたのか?
・川尻達也vs鈴木芳彦「RIZIN開国の不毛な議論」23000字
・鈴木千裕vs金原正徳から見えた「スーパータイガーセンタージム」■塩田“GoZo”歩
――UFC310のフライ級タイトルマッチ、早いラウンドだったら朝倉海選手のKO勝ち、長引いたらパントージャという予想が多かったんですけど、結末は2Rパントージャの一本勝ち。水垣さんはこの決着をどう見ましたか?
水垣 パントージャがフィニッシュするならバックの取ってチョークだろうなとは決思ってたんですよ。逆に最初の1ラウンド目に朝倉海選手がマットに背中をつけましたよね。
――パントージャがテイクダウンに成功しましたね。
水垣 ああいうシーンにはならないと思ってたんですよね。海選手が絶対に背中がつかないように戦って、バックを取らせないことが勝負の鍵。やっぱりパントージャ相手にバックを取られちゃうと危険だとは思ってましたね。
――海選手は久しぶりのフライ級だったじゃないですか。階級を下げた影響は何か見られましたか?
水垣 動きもよかったですし、ファイトウィーク中もつらそうなところは見せなかった……まあ、もちろん見せないでしょうけど。顔のやつれ具合は出ちゃいますけど、コンディションは悪くなかったんじゃないかなって思いましたけどね。とくにリカバリーしたあとの身体つきはバンタム級のときと変わらない。げっそり細くなった感じもなくて、いい状態で試合当日を迎えられたんじゃないかなと。
――動き自体はよかったですよね。
水垣 打撃も走ってましたし、スピードも乗ってましたし、瞬発的な動きもすごくよかったですね。
――階級を下げたことで破壊力が失われる懸念もありました。
水垣 パンチはクリーンヒットしてなかったので、そこはなんとも言えないんですが……ボディへのヒザはかなり惜しかったですけど。スローで見ると微妙に外れてるとはいえ、あのボディは効いたんじゃないかなって思いましたね。当日の体重がバンタムのときとどれくらい差があったのかわからないですけど、打撃が弱々しくなったとか、力なく見えたことはなかったと思います。
――今回の海選手は数週間前からラスベガスに前乗りして試合に備えていたんですが、水垣さんが海外で試合したときはどれくらい前に現地入りしたんですか?
水垣 ボクは1週間前くらいですね。トップファイターやタイトルマッチの選手はわかんないですけど、UFCの普通の選手は基本的に火曜入りで、試合のある日曜日までのホテル代はUFCが出してくれますけど、ボクは最初の頃は日曜日に早めに入ってたんですよ。そこは自費でホテル代を払って。でも、最後のほうは時差ボケにも慣れてきたし、稼ぎに来てるんだから無駄に金を使うんじゃなくて、ハングリー精神を持ってたほうがいいなと思ってたんで、早めに入るのをやめました。だからスケジュールどおりに現地入りして、試合翌日に帰る。試合後、夜中にホテルに戻って、シャワーを浴びて荷造りを終えて、朝5時にロビーに向かって、飛行機に乗って帰るみたいな感じでしたね。
――観光なんかしてるヒマはないってことですね(笑)。
水垣 ないです。ボクは観光にまったく興味ないんで(笑)。試合が終わったら早く帰りたい派なんですよ。
――海選手は現地の雰囲気に慣れ親しんでるというか、UFC初参戦の選手と思えない振る舞いでしたね。
水垣 やっぱり大舞台で慣れてますし、いまはラスベガスにUFC PIがあるじゃないですか。あそこで食事の管理もやってくれるし、練習環境も整ってる。ボクらの時代は早く現地入りしたとしても、使えるジムを探すのは大変でした。練習場所をマネージャーに手配してもらって「ここからこの時間はこのジムを使えるよ」と。いまはPIがあることによって調整もしやすいんじゃないですかね。
――ということは、ラスベガス以外の大会のときは、UFC PIを使えないからその土地のジムを手配しないといけないわけですね。
水垣 アメリカでの試合だったら、いったんUFC PIで調整して、そこから現地に飛ぶことも可能なので。ファイターにとってはいい環境になってるんじゃないですかね。
――話は試合に戻るんですけども、海選手はパントージャの左フックでフラッシュダウン気味になりましたし、打撃でぐらつかせられるシーンがたびたびありましたよね。
水垣 UFCファイトパスの解説をしながら見てたときは、たしかにいいパンチは入っていたけど、そこまで強いパンチには見えなかったんですよ。あらためて見直したら、思ったよりもらっていた印象がありましたねぇ。
――ここまでパンチを被弾するイメージってありました?
水垣 打撃の勝負で勝てないとなると、海選手は厳しいなと思ってました。海選手からすればパントージャに組みつかれたくないから、意識が集中できず、そこがパンチをもらった原因だと思います。2回目に見たときに「ちょっとパンチもらいすぎたな」という印象がありましたね。
――そこは組に対する警戒がゆえに被弾してしまうということなんですね。
水垣 それはあると思います。タックルを切るなり、四つを差すなりの練習はすごくしてきたと思うんですけど。パントージャのように組みつくようなかたちでパンチを打ってこられると、どうしても反応が遅くなりますし。それでパンチをもらっちゃったのかな、というのが正直なところですかね。
――海選手はヒザの攻撃を中心とした組み立てでしたね。
水垣 ここ2試合ぐらいですかね。前回のアーチュレッタ戦、その前の元谷(友貴)選手との試合もヒザを武器にしてましたよね。これはパントージャの組み方に対してはすごく有効になるんじゃないかと見てたんです。いい狙いでしたし、あのヒザを警戒するあまり。パントージャは組み付きにくくなったと思うんですよね。パントージャってババババって前に出た勢いでケージ際まで持って組みつく。でも、海選手があのヒザを見せたことによってパントージャはやりにくくなったんじゃないかなって思いますね。これも2回目に見たときに感じたんですけど、「打撃でやっても平気だ」という自信も少しはあったんじゃないですかね。打撃戦でもやられないというか問題なく余裕で勝負できるぞっていう風なプレッシャーのかけ方にも見えました。
――それは試合開始前から自信があったのか。それとも途中で確信したのか。
水垣 うーん、ライブで解説してるときはそこまで思わなかったんですけど、あらためて見ると「打撃でもいけるよ」っていう自信が……まあ結果を知ったうえで見てるからかもしれないですけど(笑)。あらためて打撃の強さを見せられた。もちろん海選手の打撃を警戒をしてるんですけど、「簡単にはやられないし、そこで殴り合っても平気だぞ」という気持ちがにじみ出たというか。そうやって強いプレッシャーをかけることができたから、テイクダウンもできたんだと思いましたね。
――MMAとしての打撃はパントージャのほうが上だったということなんですかね。
水垣 パンチの殺傷能力という部分では海選手のほうが強いと思うんですけど、パントージャには“自分の戦い方”を持ってますよね。キツイ相手と競った試合をずっとやり続けている。競ったときにどう勝負すればいいかという感覚を持ってるんですよね。海選手は前回アーチュレッタに勝ったことは素晴らしいことですけど、アーチュレッタは計量オーバーでコンディションの悪さもあったし、そこは海選手が悪いわけじゃないんですけど……UFCというトップレベルでやり続けていた選手と、外から来て一発目でタイトルマッチをやった選手の差はあったんじゃないですかねぇ。
――パントージャのようなタイプとは戦ったことがないという点も……「ヒザを狙いすぎた」という意見はどう思いますか?
水垣 あのヒザは作戦として考えて、それを遂行した感じだと思うんですよね。前に出てくる相手に対して、下がりながらだとテイクダウンされにくいし、組まれないための対策でもあったし、それプラス先に仕掛けてくる相手に対してのヒザは有効かなと。
――戦術としては悪くなかったということですね。・パントージャが極められた理由
・トータルで実力差はあった
・パントージャが抱いた危機感
・日本人に足りない“試合”とは?
・井上直樹から考える指導者とは何か……14000字インタビューは会員ページへ続く
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鈴木千裕インタビュー「格闘家は安定を求めたらおしまい」【タメになる15,000字】扇久保博正が語る「格闘技の深淵」
<動画アーカイブ>・UFC対RIZIN!! 語ろうパントージャvs朝倉海■川尻達也☓笹原圭一
・水垣偉弥が分析する「パントージャvs朝倉海」
・斎藤裕「RIZINとコロナは格闘技をどう変えたのか」・語ろう「RIZIN名古屋」 ゲスト扇久保博正・RIZINマッチメイカー柏木信吾が語るジャパニーズMMA・笹原圭一「知られざるRIZIN黎明期」・【クロストーク】至近距離から見たドーピング問題【配信予定】
・2024年の「K」を語る■ゲスト宮田充
などなど550円で楽しめます!https://ch.nicovideo.jp/dropkick/live
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妥当すぎるプロレス大賞の重箱の隅をつつこう■プロレス事情通Z
2024-12-12 11:14200ptプロレス格闘技業界のあらゆる情報に精通する事情通Zのコーナー。今回のテーマは妥当すぎるプロレス大賞の重箱の隅を突こうです!――今年も東京スポーツ新聞社制定「プロレス大賞」が発表されましたけども、第一印象はどうでしょうか?
事情通Z 妥当、無難、適切、相応、問題なし!
――そこまでいくと嫌味に聞こえます!
Z いやいや、マジでぐうの音も出ないほど妥当な結果だった。
――今年のプロレス大賞に“ブック”はなかったと?
Z 無理矢理2024年のプロレス流行語大賞を使うんじゃないよ。たしかに一時期は各団体のバランスを取ったかのような受賞がちらほら見受けられたけど、今年はそういう配慮もあまり感じないし……あっ、1名だけ違和感をおぼえる受賞者があったけど、そこはあとで触れるとして全体的にいいとは思う。ただ、年々話題性が薄れてるねぇ。あとひとつぐらいは「おお、そうきたか!」という東スポらしい受賞があれば面白かったんだけど。
――そこまで活躍もしていないIGFの澤田敦士に新人賞を挙げて、澤田の柔道時代の後輩で当時MMA転向で時の人だった石井慧を授賞式に呼ぶみたいな仕掛けがほしいと。
Z 黒歴史を掘り起こすんじゃないよ!澤田敦士が新人賞だった時代からすれば、いまは健全化してるよね(笑)。<続きは会員ページへ>
いま入会すれば見られる配信アーカイブ・偏屈王・鈴木秀樹のプロレス時事放談・TAJIRIが来たりてプロレスを語る・追悼・小林邦昭さん■小佐野景浩のプロレス歴史発見・佐藤光留のハードヒット変態トーク<配信予定>https://ch.nicovideo.jp/dropkick/live
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激動のRIZIN大晦日10年間を振り返る■ジャン斉藤
2024-12-10 18:56200ptジャン斉藤がジャン斉藤をインタビューして激動のRIZIN大晦日10年間を振り返ります!【1記事から購入できるバックナンバー】・マネジメントから見たドーピング問題■シュウ・ヒラタのMMAマシンガントーク
・18歳の新星・秋元強真の時代がやってくる!!【インタビュー】
・“お隣”韓国の知られざる格闘技事情■PKヤドラン
・UFCはなぜ堀口恭司との契約を見送ったのか
――RIZIN大晦日が今年で10年目を迎えましたので「大晦日格闘技の歴史」を振り返りたいと思います。
斉藤 2023年の大晦日前にビックリしたのは「こんなカードは大晦日にふさわしくない!」という一部のファンの声だったんですよ。ボクは2001年から大晦日格闘技を見てきてますけど、興行&内容的に“勝ち確”で安心して見られたのは小川直也vs吉田秀彦がメインの2005年PRIDE男祭り、そして堀口恭司vs神龍誠、朝倉海vsアーチュレッタの2023年RIZIN大晦日の2大会だけ。あとは「お客は入るか」「PPVは売れるか」「内容はスイングするか」で不安で不安で……。
――前年の2022年RIZINvsベラトールの対抗戦の衝撃が強かったから「こんなの大晦日じゃない!」と言いたくなったんでしょうね。
斉藤 あの対抗戦はハードコアファン直撃企画だからよくわかります! でも、食べやすさでいえば断然2023年。PPV件数も大晦日記録でしたからね。誤解をおそれずにいえば、RIZINvsベラトールの対抗戦のほうが大晦日らしくないというか、あれは榊原さんとスコット・コーカーによる“最後の晩餐”だったた。PRIDEとストライクフォースそれぞれUFCに売却した男たちがMMAの歴史に残る対抗戦をやり遂げたドラマがあったんですよね。
――大晦日の枠を超えた記念碑的イベントだったと。斉藤 もともと大晦日イベントって、お正月のおせち料理じゃないけど、余り物で構成されていたんです
よ。どういうことかというと、大晦日は1年を締めくくるもの。大晦日に辿り着く前に負けてしまったり、ケガをしたことで理想のカードが組めないことも多い。00年代の12月にはK-1WGP決勝というビッグイベントがあったし、たとえば魔娑斗もK-1MAXのトーナメントをやり終えたあとだから大晦日はあくまで顔出し的なカードだった。
――なんとかカードをやりくりするから直前までカードが決まらないのが恒例だったわけですね。
斉藤 RIZINになってからは大晦日に照準を合わせたストーリー作りをしているから、かつてほどのカオス感はないんですけど。ここ数年は超RIZINをでスーパーカードを使い切ったことでの苦労はあると思いますよ。フジテレビ時代のRIZINなら朝倉未来vs平本蓮は大晦日に投入したはず。
――RIZINの旗揚げは2015年の大晦日。フジテレビ中継がありました。
斉藤 PRIDE中継を打ち切ったフジテレビがまた榊原さんと手を組むというサプライズから始まったわけですよね。まあ、また手を切るわけですが……理由は忘れましたよ(笑)。
――2015年は12月29日と31日の2DAYS。ヒョードルの現役復帰、青木真也vs桜庭和志、RENAのMMAデビュー。中1日の8人トーナメント……など企画で始まりました。
斉藤 このポスターのスカスカ感が当時の日本格闘技界のエネルギーの弱さを物語っている!(笑)。当時から選手や関係者から「RIZINは頑張ってる選手をなぜ使わない?」という声が飛んでいたんですけど、”冬の時代“が長かったこともあって興行の理解力も薄かったんですよ。
――頑張ってる選手を起用すれば、興行が回るわけではないですよね、残念ながら……。
斉藤 戦極が合戦に敗れ、DREAMが悪夢になってしまったことで、興行がうまくいくかどうかの不安が強かった。あの当時のボクは「どっちが勝つか」とかホントにどうでもよくて、とにかく盛り上がってくれ、視聴率を稼いで1年でも長く続いてくれ……というのが偽らざる心境でしたね。ボクがRIZINの会場で唯一生観戦したのはこの大晦日。それ以降、RIZINを会場で見てないのは、地上波に耐えられるかどうか考えちゃって落ち着かない。だったらテレビ画面で試合を見たほうが入り込みやすいなと。
――RIZIN旗揚げで瞬間最高視聴率を取ったのは曙vsボブ・サップの再戦。
斉藤 2003年以来の再戦で「今頃こんなカードを?」という呆れた声が多かったけど、なんだかんだお叱りカードのほうが見られるってことですよ。この大晦日は新生K-1から武尊が参戦して新生K-1ルールでワンマッチ。各方面の証言によれば、ここで天心vs武尊をやろうとした動きがあった。結果やらなくてよかった。
――引っ張って引っ張ったことで東京ドームを満員にしてPPV50万件超えですもんね。
斉藤 MMAパートでは、のちの重量級のスター候補が続々と登場しています。プロハースカやネムコフ、ブルーノ・カッペローザとか。でも、地上波が生命線のイベントだから無名の外国人は柱にならない。よく旧K-1は「外国人だけで成立していた!」と言われるけど、あの頃の外国人はK-1ブームの波に乗って、何度も何度も地上波で露出し続けたことで知名度が獲得できた。当時のRIZINは年に3回程度の地上波放送。1回2回テレビに写った程度で世間に浸透することはなかなか難しい。RENAがここでスターになったのは、この大晦日を迎えるまでの10年近く、不定期ながらテレビをはじめとする一般メディアに顔を出していたからですよね。どこかで見たことのある子がついに地上波で試合をして「こんなにすごい選手なんだ!」という反響があった。
――翌年2016年大晦日も2DAYS。
斉藤 ここで那須川天心がMMA2連戦で地上波デビューするんですよ。そして那須川天心が出ることによって新生K-1がRIZINに関わらなくなる……。
――天心はRISEのエース。当時の新生K-1は硬い外交術でしたね。
斉藤 のちに笹原さんが語るには「どっちを取るかということで那須川天心を選んだ」と。那須川天心はキックでは無双してましたけど、世間的な知名度があったわけではない。人気だけなら新生K-1のほうがあったし、スター選手は揃っていた。でも、RIZINが天心に懸けたことで格闘技界の運命は大きく変わっていきますね。
――もしそこで新生K-1との協調路線を取っていたら……。
斉藤 THEMATCHはなかった。ひょっとしたらどこかで天心vs武尊は実現していたかもしれないけど、あそこまで大きな渦にはなってなかった。ただ、RIZINが狂ってるのは那須川天心選手のRIZINデビュー戦はMMAルールなんですよね。しかも29日、31日の2連戦!
――新生K-1と天秤にかけて契約したのに未知のルールで起用!ここで負けていたらどうなっていたのか!(笑)。
斉藤 いやでもこれが大正解で。ここで普通にキックの試合をやってもチャレンジ感は出なかった。一般世間はともかく格闘技ファンにロマンを植え付けることに成功した。並のプロモーターだったらキックの試合をやらせますよ。でも、あえてMMAをやることで付加価値を付けた。地獄のプロデュースの洗礼を浴びたけど、ボクシングに転向したいまでも天心の身体にこびりついていると思いますよ。・天心vsメイウェザーのエキシビション論争
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2024-12-04 16:53200ptこのインタビューは扇久保博正選手が出演したDropkick配信「RIZIN名古屋を振り返ろう」とまとめたものです!(聞き手/ジャン斉藤)【1記事から購入できるバックナンバー】・笹原圭一の「RIZIN LANDMARK名古屋」を11,000字で語ろう
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――扇久保さん、今日は上半身裸じゃないんですね。
オギ 全世界に配信されるんで……。
――扇久保さんのYouTubeも全世界に配信されてますよ(笑)。
オギ たしかに(笑)。
――いま繋がっているのはどういう部屋なんですか?
オギ ここはボクのトレーニング部屋ですね。新居に引っ越して、ちょうど1ヵ月くらいなんですけど、トレーニング部屋ができました。
――それまで自宅にトレーニング室はなかったんですね?
オギ トレーニング室っぽい部屋はあったんですけど、本当に狭くて。トレーニングはほとんどできなかったんですけど、いまはなんとかシャドーぐらいはできます。
――やっぱり自宅にトレーニング室があると違いますか?
オギ そうですねぇ。自分の場合、ストレッチをすごくやるので、家でできるスペースがあるのはかなりいいですね。でも、筋トレの器具があってもあんまりやらないです。
――それはジムだからスイッチが入るってことですかね?
オギ うーん、自宅だと集中できないっていうか。格闘家が家にトレーニング室を作っても、あんまり筋トレはやらないってよく聞きますね。だからずっとストレッチばっかりしてます(笑)。
――ちゃんと練習している格闘家は「今日も練習か……」という憂鬱なテンションで家を出がちだと聞きますけど。扇久保さんはどうなんですか?
オギ あー、年齢を重ねてからそうなりましたね。昔は練習に行くことが楽しかったですけど、歳を取ると「疲れが抜けないな……」「今日練習したらケガするんじゃないかな……」みたいに考えちゃう日が増えましたね。
――ケガの予感ってあるんですね。
オギ めちゃくちゃありますねぇ。「今日は腰の疲労がたまってるな」「今日は首をやっちゃいそうだから、練習はどうしようかな」って。なかなか疲れが取りづらくなりますから。
――それだとドーピングしたくなる格闘家の気持ちはわかりますか(笑)。
オギ 気持ちはわからないですけど「そんなに効果があるの?」という興味はありますね(笑)。
――ドーピングって筋肉量の増加というよりは、疲労回復を早めてケガ防止の効果が大きいと言われてますよね。1日2部練、3部練が容易にできると。
オギ 正直「そんなに練習できるんだ」ってビックリしますね。
――扇久保さんがそういう感想だということは、ドーピングの効果に関する情報は日本の格闘技界にあまり出回っていないということですかね。
オギ それこそ今回の騒動で「日本でもやってる人がいるんだ」って思ったぐらいなんで。あんまりそういう話を聞いたことはなかったです。
――噂でも「◯◯がやっている」という話は聞かなかったということですね。
オギ 噂でも聞かないですねぇ。筋肉がすごい選手のことを面白おかしく「あれはやってるよ」なんて冗談を言ったりはしてましたけど。本当にやってるという話はあんまり聞いたことがなかったですね。
――2010年代以降、日本国内でやってる人はあんまり聞かなかったんですよね。2000年代だと「あの選手は……」って話はちょくちょくありましたけど。
オギ あー、日本人でもいたんですね。
――断言はできないですけど……。というわけで、扇久保選手がクリーンだということがあらためてわかったところでRIZIN名古屋を振り返ります! まず最初に白黒をはっきりさせたいのは秋元強真選手はジャパン・トップチーム(以下JTT)が育てたのか、ブラックベルト・ジャパンが育てたのか(笑)。
オギ どうなんですかね。ひとつ言えることはボクは育ててないです(笑)。
――トイレ掃除は命じてないわけですね(笑)。
オギ 命じたことはないですし(笑)、付きっきりで教えたこともあまりないですし、ジムの中にたくさんいた選手の1人って感じでしたね。
――千葉時代の秋元選手にはどういうイメージがあったんですか?
オギ めちゃくちゃ真面目で、めちゃくちゃ練習する子だなって見てて思いましたね。1回ヒザかどこかをケガしたときも、並の選手なら練習を休むじゃないですか。ジムで1人でシャドーをやったりしてたんで、すごい真面目な子だな、練習をよく頑張る子だなって。最初から打撃の才能というか、その距離感はすごく上手な選手でしたね。
――ブラックベルトの中で揉まれると組みがめちゃくちゃ強くなるイメージがありますね。
オギ 生き残った者が強くなる感じだから、ウチのジムにはマジでとんでもなく強い選手ばっかりいるんですよ。彼はその中でもみんなにガンガン極められたりしてるわけでもなかったし、普通にタックルも切ったり、自分からバックも取りに行ったりしたんで、グラップリングもすごい強い選手でしたよね。
――ブラックベルトのグッラプリングって吐き気がしそうなイメージしかないんですけど(笑)、秋元選手は10代なのに普通にこなしてたんですね。。
オギ ボクはこの試合、1ラウンドでバックチョークで極めちゃうかなと思ってて。実際最初にタックルからスタンドバックを取りましたよね。そのあと少し粘られたけど、テイクダウンして……という展開だったと記憶してるんですけど。極めるのは難しいと感じたのか、最初の攻防で疲れたのか、パウンドに切り替えたのかなって。本人に聞いてみればわからないですけど、鈴木選手も防御がすごい上手だし、1階級違いますからね。
――秋元選手はこの試合が初のフェザー級でしたね。
オギ それもあって仕留めきれなかったかなと思いますけど、完勝でしたし、まだ18歳ですからね。すごいですよ。
――扇久保さんは18歳のとき何をやってたんですか?
オギ ここでは言えないです(笑)。
――なんですか、言えないことって(笑)。いまは最初からMMAという競技を理解して入ってくる子たちが多いじゃないですか。扇久保さんたちが試行錯誤しながらやってきたことをスキップして覚えられる利点がありますよね。
オギ そこは違いますね。いまと昔では情報量が全然違うんで「この練習はいらない」「この練習をやったほうがいい」とかすぐに調べられるじゃないですか。昔の情報源って『格闘技通信』とか雑誌くらいで。ヒョードルが山登りしてる記事を読んで、ボクもひたすら山登りをしてましたよ(笑)。
――ハハハハハ!
オギ いまは無駄なものは無駄とすぐ調べられるし、早く強くなれる時代なんじゃないかなと思います。いまのボクのフィジカルは山登りで作り上げられましたけど(笑)。
――ヒョードルも山登りで世界最強になったはずです!(笑)。自分で遠回りしてみて覚えられることってないですか?
オギ うーん、どうなんですかね。
――「なぜ無駄なのか」「なぜ必要なのか」を噛み砕けるわけですよね。
オギ それはあるけど、やっぱり正しい知識というか、やらなくてもいいことはやらなくてもいいんじゃないですか。
――遠回りはしたくない。
オギ 遠回りしたくないですし。まあ、ボクはいい思い出ですけど、強くなるっていうことだけ考えたら、やっぱり無駄なことはしないほうがいいんじゃないですかね
――扇久保さんが一番無駄だった練習はなんですか?
オギ 無駄だったなと思うことですか?なんだろうなあ。打たれ強くなるために犬用の馬肉を買って。あれ、すごい固くて食べるのに2時間くらいかかるし、次の日アゴが筋肉痛になるし、あんまり意味なかったなと思って。だったらパンチをもらわない練習をしたほうがよかった(笑)。
――扇久保さんもけっこう打たれ強いですよね。
オギ 犬用の馬肉のおかげですかね(笑)。
――扇久保選手のキャリアもだいぶ長いし、フルラウンド戦い切るケースが多いですよね。ダメージはどうなんですか?
オギ ボクは幸いにあんまり感じないんですね。打たれ弱くなってないです、いまのところ。
――自覚がないだけ、というわけではない。
オギ たしかに自覚がないのが一番怖いですねぇ。でも、練習でもいまだにダウンもしてないし、まだまだ打たれ強いかなと思ってます。やっぱり犬用の馬肉ですよ(笑)。
――ハハハハハ!ここ最近のRIZINフライ級には新しい外国人が次々に登場してますね。
オギ そうですね。今回の名古屋もフライ級が4試合あって、初参戦は(アリベク・)ガジャマトフと(トニー・)ララミーですか。めちゃくちゃ魅力的な選手だし、いずれ戦いたいですね。
――北方大地選手を粉砕したガジャマトフはヤバくないですか?
オギ 打撃はかなり強くて距離の取り方がめちゃくちゃうまかったですね。ただ、組みの展開がまったく見れなかったんで、そこはまだ未知数ですね。
――扇久保さんなら、15分間じっくり漬けてくれるんじゃないかなって思っちゃうんですけどね(笑)。
オギ すごい塩漬けのしがいがある選手ですね(笑)。
――ハハハハハハ! ガジャマトフはまだ1戦目だから、もうちょっと活躍してから塩漬けしないと、扇久保さんの凄さは伝わらないです(笑)。
オギ そうなんですよ(笑)。見てる側の人たちにガジャマトフの強さが伝わってから塩漬けにしたら「オギちゃん!」コールが起きるんじゃないかなって思うんで。「コイツ、ヤベーな。誰が勝てるんだよ……」って浸透したところで漬けると。
――ジョン・ドットソンを封じたときも会場がどよめいてたのは、ドットソンの強さが浸透してたからですもんね。
オギ ただ、ボク的にはあと2~3戦ドットソンが勝ってから、戦いたかったんですよね。もうちょっと寝かしたほうがもっと伝わったかなと思うんですけど。
――「寝かし足りない」とか「漬ける」とか食材の話になってきました(笑)。
オギ ガジャマトフもあと4~5試合やっていただいて、誰も勝てなかったらボクが出ていくのが一番いいのかなと思います(笑)。
――扇久保さんがいつまで経っても試合ができないですよ!(笑)。・セフードがメラブにテイクダウンされまくった理由
・コンディション、メンタルが最大の武器
・相手に考えさせたほうが勝つ
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・堀口恭司のカーフキック
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