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追悼・小林邦昭さん■小佐野景浩の「プロレス歴史発見」
2024-11-18 10:25200ptプロレスラーの壮絶な生き様を語るコラムが大好評! 元『週刊ゴング』編集長小佐野景浩の「プロレス歴史発見」――。今回は追悼・小林邦昭さんです!
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冬木弘道は「俺はやっぱり死ぬんだな」とニヤリと笑った…
――今日は先日お亡くなりになった小林邦昭さんを語っていただきます。おさのさんはもうかなり古い付き合いだったんですよね。
小佐野 邦昭さんと初めて会ったのは、ボクが新日本プロレスのファンクラブを作った高校2年生の16歳のときだから、1978年ですね。
――はっはー、46年前ですか!(笑)。
小佐野 会った場所は1978年6月1日の日本武道館。そこでアントニオ猪木vsボブ・バックランドのWWWF&NWFのダブルタイトル戦があったんですよ。会場で初めて会った新間(寿/当時・新日本プロレス営業本部長)さんにいきなり声をかけて、藤波(辰爾)さんのインタビューを試合前にやらせてもらって。
――アポなしでファンに取材させてくれるって牧歌的な時代です(笑)。
小佐野 新間さんが「いいよ、坊や、入ってきな」ってことで藤波さんのところに連れてってくれて。ついでにいろんな選手のサインをもらっちゃったりして。ただね、邦昭さんだけはサインをしてくれなくて印象がよくなかったんですよ。長州さんだってサインをくれたのに。
――気難しい方だったんですか?
小佐野 それには面白い話があってね。ボクはマスコミとしてプロレス業界に入ってから、同い歳のヒロ斎藤さんと仲良くなったわけですよ。ヒロちゃんはもともとファン出身だから「ファン時代にサインくれなかった選手っていた?」って聞いたら、邦昭さん。きっと男のファンが好きじゃなかったんじゃないかな(笑)。
――ハハハハハ! 小林さんといえば、モテてしゃーない方ですよね
小佐野 やっぱりね、高校生の汚い男が来たら邦昭さんもイヤだったのかな(笑)。いつから喋るようになったのかは記憶がない。ファンクラブ時代も道場に行ったりしてたから、自然に喋るようになっていったんだと思うんだよね。
――道場まで乗り込む小佐野さんの行動力も凄まじいです(笑)。
小佐野 ファンクラブ時代はまだパーマ頭だった長州さんにもインタビューしてるし、あと上田馬之助さん、剛竜馬さん、栗栖正伸さんなんかも取材してたね。
――道場の小林さんにはどんな印象がありました?
小佐野 あのね、やっぱり女の子のファンには優しかった。
――またそれですか!(笑)。
小佐野 本当に優しいお兄さんという感じ。当時の新日本の女の子って藤波さんのファンなんですよ。年齢的にも中学生や高校生。そういう子に手を出すとかそういうトラブルはなく、非常に優しいお兄さんという感じですね。
――紳士だったわけですね。「プロレスラー小林邦昭」はどう見てたんですか?
小佐野 いわゆる普通の若手で、ちょっと身体が固いイメージだった。邦昭さんは海外修行先のメキシコから帰ってきてから売れたんだけど、やっぱりあのパンタロン姿が印象的だったよね。
――キックの怪鳥ベニー・ユキーデの影響ですけど、当時はかなり斬新でしたよね。
小佐野 プロレスラーでパンタロンをコスチュームにする人はいなかったけど、メキシコ時代の佐山聡がそうで。佐山さんがイギリスに転戦するときにもう使わないことでパンタロンを置いていったものを邦昭さんがコスチュームにした。それから邦昭さんは自分に合ったパンタロンを作ったんだよね。佐山さんのパンタロンはベルボトムじゃないけど、ちょっと幅があってヒラヒラしてて、蹴りを使うとすごく映えるようにできていた。邦昭さんの場合はスピンキックは使っていたけど、蹴りのスタイルではないから、動きやすいパンタロンにしたんじゃないかな。
――メキシコから凱旋帰国したときに、小林さんの代名詞であるフィッシャーマンズ・スープレックスを持ち帰ってきたんですね。
小佐野 フィッシャーマンズ・スープレックスはメキシコでも使っていたのかなあ。そのへんは定かではないんだけど、邦昭さんのすごいところはいかに注目を集めることができるか?という感性に優れていた。メキシコから帰ってきたら、後輩の佐山がタイガーマスクとしてブレイクして、長州さんは噛ませ犬発言で人気爆発。「じゃあ自分はどうやったら目立てるか」って考えてタイガーマスクにケンカを売った。マスク剥ぎで邦昭さんは一気にクローズアップされていくでしょ。これは晩年の邦昭さんが言ってたんだけど、タイガーマスクとの抗争は1年もやってない。邦昭さんは82年10月に帰国して、翌83年の夏に佐山さんは引退してるから1年弱ですよ。
――長期間抗争をしていたイメージがありますけど……。
小佐野 だから、あの2人の試合のインパクトが強かったかってことだよね。邦昭さんが言ってたのは、シングルマッチでマスクを破いたのは2回しかないと。むやみやたらに破いていたわけじゃないんだけど、邦昭さんとタイガーマスクといえばマスク剥ぎの記憶が強い。それこそブッチャーがテリー・ファンクの腕にフォークを刺したのは1回だけで、あとはフォークを持っただけで、ファンが勝手に突き刺す絵を思い浮かべるのと同じ。邦昭さんがマスクに手をかけただけでファンが騒ぐ。それ以外は本人的には真っ当な試合をしていたと。佐山さんとは若手の頃さんざん試合していたし、お互いがメキシコやイギリスで経験したものを付け加えただけ。
――試合内容は保証付きだったから、あとはいかにベビー対ヒールの構図を作るかだけだったと。
小佐野 新日本って若手がいい試合をすると、山本小鉄さんから5000円のボーナスが出たらしいんですよ。逆にしょっぱい試合をすると罰金3000円。
――ボーナスはわかりますけど、罰金も!(笑)。
小佐野 取り組みで佐山さんとの試合だとわかると「5000円ごっちゃんだ」と。絶対にいい試合になるから。逆に荒川(真)さんとやると「ひょうきんプロレス」に引っ張られて微妙の内容だから罰金だったと(苦笑)。
――ハハハハハ。
小佐野 猪木さんや小鉄さんは、荒川さんの「ひょうきんプロレス」が好きじゃないから。どこかで荒川さんとやったときに邦昭さんが控室に戻ったら、猪木さんにボコボコに殴られたって言ってましたねぇ……。
――とばっちり! 猪木さんも荒川さんをボコボコにするわけにいかないですね(笑)。
小佐野 荒川さんから罰金も取れないからね(笑)。だから荒川さんとの試合は鬼門だったみたい。
――佐山さんと小林さんは若手の頃から手が合ったし、タイガーマスクvs小林邦昭にみんなが熱狂するに決まってるという。
小佐野 そのきっかけ作りとしてマスク剥ぎは重要なポイントだったということだね。・モテてしゃーない小林邦昭
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冬木弘道は「俺はやっぱり死ぬんだな」とニヤリと笑った…
☆この記事は2018年5月に掲載されたものです。 ――小佐野さんは馬場元子さんの訃報をどのタイミングで知ったんですか?
小佐野 私は全然知らなかった。『Gスピリッツ』編集部からの電話で『東スポ』のウェブに元子さんの記事が載っていることを初めて知ったんですよ。
――小佐野さんが知らないとなると、近親者以外は誰も……。
小佐野 おそらく渕(正信)さんや和田京平さんさえも知らなかったと思う。告別式とかすべて終わった段階で『東スポ』に連絡したんじゃないかな。そこには全日本プロレスがチャンピオンカーニバル中だったという配慮もあったんだろうね。
――馬場さんが立ち上げた全日本プロレスを最後まで気にかけていたということではありますねぇ。
小佐野 あくまで私の推測ですけどね。どこにも知らせないわけにはいかないから、時期を見て『東スポ』さんに報道してもらいなさい……という流れだったんじゃないかと。
――元子さんと最後にお会いになったのはいつだったんですか?
小佐野 それは去年の1月23日、元子さんの喜寿のお祝いです。喜寿の会での元子さん。ハワイ好きの元子さんのためにハワイアンな雰囲気に。
小佐野 元子さんの体調はあまりよくなかったということで、元子さんを元気づけようという趣旨もあってね。入院されていたこともあって、電話でしゃべれる機会はここ1年はなかった。私も元子さんもハワイ好きなので、ウチの家内が作ったフラワーレイを時々送ったりはしていて、そのお礼のメールが元子さんの姪御さんを通じて送られてきたり、昨年末には元子さんからハガキをもらったりはしてたけど。
――訃報を聞いたときはどう思われました?
小佐野 やっぱりショックだった。元子さんには取材抜きにして、ずっとお世話になっていたから。元子さんはもうプロレス界の方ではないし、ここ最近は個人的な付き合いをさせてもらっていたので、知り合いの方がお亡くなりになったという寂しさですよね……。
――小佐野さんと元子さんのお付き合いは相当長いですが、初めてお会いしたのはいつなんですか?
小佐野 1980年、私が大学1年のときに『月刊ゴング』でアルバイトを始めたんだけど、そのときに竹内(宏介、当時『月刊ゴング』編集長)さんに全日本の会場で「馬場さんの奥さん」として紹介されて。もう驚きましたよ。その当時、馬場さんが結婚していたなんてことは公にはされてなかったから。
――噂にもなってなかったんですか?
小佐野 何も知らなかった。プロレス界の中で隠してるわけでもなかったけど、わざわざ記事にする人もいなかった。プロレス業界の人はみんな知っていて、みんな馬場さんの奥さんとして接してるんだけど、世間には知らされてないだけ。公表されたのは82年の夏のことだから。
――小佐野さんが『月刊ゴング』でバイトを始めた2年もあとですね。
小佐野 馬場さんと元子さんはもともと1971年にハワイで結婚式を挙げてるんですよ。それからは一緒に住んでいるし、元子さんは巡業もついて回っていた。これは聞いた話だけど、ハワイで結婚式を挙げたときにある週刊誌にスクープされそうになった。でも入籍はしてない。そこは元子さん側の親の反対とかいろいろな理由があったみたいで。
――だから結婚式だけで籍は入れなかったんですね。
小佐野 だからその週刊誌には「記事にはしないでくれ。入籍したら記事にしていい」という話をして。そこの編集長は了解してくれて、その週刊誌の編集長が馬場さんとの約束を代々受け継いで、82年に入籍したときに「じゃあ書きますよ」と。そうなったら馬場さんもダメだとは言えない。
――それで元子さんの存在を公表することになったんですね。
小佐野 82年の七夕の日に、馬場さん1人で記者会見をやって結婚してることを明かしたんですよ。
――七夕に!(笑)。それまで世間的には馬場さんは独身として通ってたわけですよね。
小佐野 私だって馬場さんは独身だと思ってたくらいだからね。当時の私は18歳、元子さんは40歳、馬場さんは42歳ですよ。それから『ゴング』が週刊化されて、私は全日本プロレスの担当記者になったんだけど。広報の担当はいるんだけど、重要な取材のゴーサインを出すのは元子さんだった。
――その若さで馬場夫妻と向き合うのは大変だったんじゃないですか?
小佐野 巷でも言われてることだけども、元子さんは厳しい方だったからね。こっちも血気盛んなだから当然ぶつかるし。元子さん「これはなぜダメなんですか?」って聞いたら「私がイヤだからよ!」って言われてね(笑)。
――ハハハハハハハ! 「私がイヤだから」と言われたら困りますよ(笑)。
小佐野 「それじゃあ話にならないですよ!」なんて食い下がってね。そんな会話の繰り返しですよ。マスコミの中には元子さんが苦手だっていう人が多かった。私も何度かケンカしながらこうして最後まで付き合えたのは、何かあっても後に残らなかったからだと思う。元子さんもガーッと言うけども忘れちゃうし、私もあまり気にしない。何か言われたからといって元子さんのことが嫌いにはならなかった。・小佐野さんが「敵」認定されたとき
・馬場元子と三沢光晴、決裂の理由
・「それは馬場さんが悪い」と擁護しれくれた
・馬場さんのターザン山本に対するボヤキ……12000字インタビューはまだまだ続く
この続きと馬場元子、長井満也、“Show”大谷泰顕、曙、AKIRA……などの5月バックナンバーが450円(税込み)でまとめて読める「8万字プロレス記事詰め合わせ」セットはコチラhttps://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar2200075この記事の続きだけをお読みになりたい方は下をクリック!1記事200円から購入できます!
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最高のプロレスラーだった曙さん■小佐野景浩の「プロレス歴史発見」
2024-05-18 16:26200ptプロレスラーの壮絶な生き様を語るコラムが大好評! 元『週刊ゴング』編集長小佐野景浩の「プロレス歴史発見」――。今回は最高のプロレスラーだった曙さんです!
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冬木弘道は「俺はやっぱり死ぬんだな」とニヤリと笑った…
――今回のテーマは先日お亡くなりになりました曙さんです。世間的にはどうしてもボブ・サップにKO負けしたイメージが強くて、そのあとプロレスで大活躍していたことはあまり届いてないんですよね。
小佐野 そうなんだよねぇ。おくやみ記事を見ても、ほぼプロレスラー曙としてフィーチャーされてなかったことが非常に残念だった。
――プロレスラー・関係者の追悼ポストを見ると、曙さんのいい話や人柄が伝わるものばかりで、プロレス界には大きな足跡を残していたことがわかるんですけど、ニュースになるとプロレスよりは相撲や格闘技だったという。
小佐野 大相撲の横綱だったことが大きな見出しにはなるのはわかるんだけど、そのあとの格闘技のイメージが強いんだろうね。たとえば「プロレスで三冠ヘビー級王者になりました」というニュースは出てこない。
――曙さんが三冠王者だったことを知らない人のほうが多いかもしれないですね。曙さんのプロレス転向話を聞いたときはどう思われました?
小佐野 K-1に出ていた曙さんが2005年のWWEの日本公演で挨拶をして、レッスルマニアでデビュー戦をなし崩し的にやったじゃないですか。
――ビッグショーとの相撲マッチがプロレスデビュー戦なんですよね。
小佐野 W-1でグレート・ムタとやったあとに、全日本プロレスで正式にプロレスラーとして活動を始めた。ボクはあそこが彼の本当のプロレスデビューだと思ってるんですよ。
――レッスルマニアやムタ戦は違うと。
小佐野 だって、それまで受け身も何も教わってなくてリングに上がってたわけだから。ムタ戦のあとに全日本の道場で教わった。そのときのコーチはカズ・ハヤシだったんですよ。カズ・ハヤシから受け身やロープワークとか、いわゆるプロレスの基本的なことを教わって。本人いわく「自分は相手をロープに飛ばすほうで、飛ばされることはないんだけど、やろうと思えばちゃんとしたステップでロープワークできますよ」と。受け身に関しては、とくに後ろ受け身はキツかったらしいですよ。
――やっぱりあの巨体ですからねぇ。
小佐野 あとはコーチがジュニアヘビー級のカズ・ハヤシだから、どうしても横綱の体型と合わないわけですよ。あの当時に全日本に参戦していたジャマールやジャイアント・バーナードから聞いたら一発でできるようになったみたい。「彼らに教えてもらったら、後ろ受け身が取れるようになったから、やっぱり身体が違うとプロレスも違うんだなって思った」って。横綱にとってプロレスのイロハを教わったのがカズ・ハヤシだけど、大きな身体の使い方を学んだのはジャマールやジャイアント・バーナード。しかも練習パートナーがまだデビュー1年も経っていなかった諏訪魔だったこともよかったのかもしれない。曙さんの相手ができる日本人はなかなかいないからね。
――大相撲からの転向組は多かったんですけども、横綱クラスになっちゃうと大物すぎてうまくいかなかったこともあって、曙さんの期待値は正直あまり高くなかったところはありましたよね。
小佐野 たとえば輪島さんは本当に必死にやったんだけど、38 歳で全日本入団という年齢的な壁があった。北尾(光司)さんの場合はちょっとプロレスを舐めてたかなあ。「本気でやったら俺のほうが強いよ」って自信がありすぎたのかな。
――北尾さんがプロレス界で起こしたトラブルの根っこはそこですもんね。
小佐野 たとえば天龍さんにしたって前頭筆頭からの転向だから「ケンカだったら俺のほうが強いよって昔は思っていた」っていうし、あの田上明は十両まで昇進したけど、十両もなかなかなれるもんじゃないからね。
――要は選ばれし者としてのプライドが高かったってことですよね。
小佐野 田上より2ヵ月早く入門してた小橋建太は勝手にライバル視してたんだけど、田上にしてみれば年齢も違うし、そこらへんのアンちゃんと一緒にしてくれるなよって思うのは当然でね。逆に曙さんはうまくプロレスに順応したし、横綱として偉ぶった感じがまったくなくてすごくフランクな人だった。感心したのは第64代横綱が自分より若いプロレスラーに対して敬語を使っていたこと。「さん」づけで呼んでいた。曙さんからすれば「プロレスでは向こうのほうが先輩でしょ」って割り切りができていた。そうはいっても、なかなかできることじゃないんだけどね。
――K-1で負けが続いたことで「プロレスに懸けるしかない」という姿勢がそうさせたんですかね?
小佐野 いや、そういう必死さではなかったかなあ。もともとそういう性格だったんだろうし、純粋にプロレスを頑張っていたって感じかな。もともと子供の頃はハワイでプロレスを見てたって言ってたから。たとえばロック様(ドウェイン・ジョンソン)のお父さんのロッキー・ジョンソンやドン・ムラコの試合を見ていたし、やるつもりのなかった相撲よりプロレスのほうが馴染みがあったと。
――相撲をやるつもりはなかったんですね。
小佐野 彼はバスケットボールのスカラシップでハワイの大学に進んだけど、ホントは勉強したいのにバスケしかやらせてもらえないってことで大学をやめちゃったんだよ。曙さんは大学でホテルの経営学を学ぼうとしてたんだよね。ほら、ハワイは観光地だから。そんなときに東関親方(元・高見山)から声がかかって、「日本語を覚えるために日本で相撲をやろう」と。
――バスケをやるのはホテル経営学、相撲は日本語学習のため!(笑)。
小佐野 相撲で成功しなくても、3年くらい住めば日本語を覚えられる。ハワイに帰って観光の仕事をやるときに、日本語ができたほうがいいという理由だったみたい。新弟子は電話番もやらなきゃいけないから日本語が喋れないとどうにもならない。実際に1ヵ月で喋れるようになってたって言っていた。
――日本語習得が理由だったのに横綱まで登りつめたんだからすごい!(笑)。若貴兄弟というライバルにも恵まれたこともあって相撲ブームが起きましたね。
小佐野 若貴と一緒だし、あと力皇なんかも一緒だったはずだよ。
――いまは奈良でラーメン屋をやっている力皇さんですね。車が店に突っ込んでシャッターが破壊されてしばらく休業を強いられて大変だったみたいですけど。横綱はK-1デビューする前、天龍さんのWARに入るはずだったそうですよね。・WAR入り断念の顛末
・マネージャーをつけなかった理由
・貴乃花との再会舞台裏
・曙と元子さん、『王道』設立の真相
・馬場元子バッシングに思うこと……まだまだ続く
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冬木弘道は「俺はやっぱり死ぬんだな」とニヤリと笑った…
――今回のテーマは小佐野さんが解説をやっている東京女子プロレスなんですが、ボクはそこまで女子プロレスは詳しくないですし、東京女子プロレスに至っては今回の両国大会でめて第1試合からメインまで通して見たというくらいの超ぼんやり層です。
小佐野 へえ、この前の両国を全部見たんだ。どうだった?
――初見に近いのに感想なんか言っていいんですかね(笑)。
小佐野 やっぱりパッと見た印象も大事だよ(笑)。
――えーと、なんだろうな。プロレスの世界とは無縁だった女の子たちがたまたま入り込んで頑張っていく姿を応援するというか……昔の全女とは全然違うし、スターダムとも異なる印象でした。こんなことをいうと、なんか怒られそうだな(笑)。
小佐野 私も東京女子の解説をやるようになってから見るようになったんだけど。東京女子の選手たちってプロレスラーに憧れて入ったわけでなかったんだよね。初期メンバーは全員プロレス志向ではなかった。新しい子たちは東京女子の先輩たちの試合を見て、「プロレスをやってみたい」ってことで入ってくるケースが増えてきている感じなんだけど。
――初期メンバーは何か他に理由があってプロレスをやるようになったわけですね。
小佐野 たとえば一番多かったのはアイドルになりたいと。あとはお笑い芸人だったり、プロレスでいろんなことが表現できるんじゃないかと。それで実際にプロレスを始めてみたら、のめり込んでいって……。今回のメインイベントを張った山下実優なんかは強さの象徴として君臨しているけど、あの子だって本当はアイドルになりたかったわけだから。
――山下実優はけっこう本格派っぽいかんじでしたけど。
小佐野 あの子は中学まで空手をずっとやってたんだけど、アイドルになりたいと思って東京に出てきて、巡り巡って高木三四郎と出会い、「ちょっとプロレスをやってみないか」と誘われて東京女子に入った。入団会見では「歌って踊れるプロレスラーになりたい」って言ってね。それがいまやエースの風格が漂ってるわけだよね。その山下からベルトを取った渡辺未詩なんかもアイドルの志向。アップアップガールズ(プロレス)のオーディションを受けたから当然プロレスの仕事もやることは覚悟していたみたいだけど、オーディションでロックアップや受け身をやらされたり、ここまでガッツリ試合をやらされるとは思ってなかったみたいだから(笑)。
――渡辺未詩こそプロレス向きですよね。あのパワー!!
小佐野 東京女子の解説仕事を始める前に渡辺未詩の試合を見たんだけど、その試合ぶりから「プロレスが大好きな子なんだろうな」と思ってたわけ。ひとつひとつの技もきっちりしてるし、ソフトボールもやっていて運動神経抜群。プロレスラーになりたくて入ってきた子なんだろうなと思ったら全然違った(笑)。本人はアイドルとしてあまり筋肉をつけたくなかったみたいでね。
――そうなるとテーマ曲の「チョコっとラブ ME ドゥー (feat. 渡辺未詩)」も深いものに聞こえてきますよね。「みんなプロレスは好きかー?」から始まるのに。これだけプロレスを見てきた小佐野さんがそんな東京女子プロレスの解説をやることにちょっと抵抗はあったんじゃないかなと。
小佐野 いや、そんなに抵抗はなかったけど、初めはやっぱり歌のコーナーから始まるでしょ。あれを見たときに「ちょっと俺は無理かも……」と思ったわけ。
――女子プロレスは昔から歌と密接な関係ですよね。
小佐野 そうだよね。昔だってビューティ・ペアは歌ってから試合をしていたわけだから「やっぱりその系統か」という印象はあったんだけど、初めて見たときの第1試合が鈴芽vs遠藤有栖。両国でタッグのベルトを取った2人のシングルマッチで、有栖のデビュー戦だったわけ。「どんな試合をするのかな」なんて高をくくって見てたら、がっつりグランドから始まって。7~8分の試合だったんだけど、5分まではほぼグラウンドの攻防だったんじゃないかな。
――ちゃんと基礎を学んでいるってことですね。
小佐野 いきなりお腹を蹴ってロープ飛ばして……という試合じゃない。「しっかりしているな。誰が教えているんだろう?」って興味が湧いて、これは解説もちょっとやってみたいなと。それでいろいろと話を聞いてみたら、もともと東京女子はマットレスリング、要はリングやロープもないマットの上でスタートしたから、ロープを使わない試合運びを覚えないと戦えないと。そういうルーツがあることを知って納得したんだよね。東京女子の特色でいえば、他のレスラーのマネをしないし、誰かのパクリをしない。なぜならば、みんなもともとプロレスファンじゃなかった。真っさらの状態で始めたから、良くも悪くも他のレスラーの影響を受けてないんだよね。それこそ初めは「プロレスってなんなんだろう?」っていうところから始めている。
――なんの知識もなくプロレスラーになるって想像以上に大変ですよね。
小佐野 どう戦えばいいのか、どうやったら勝利に結びつくのかはまったくわからないで始めてるわけだからね。フィニッシュ・ホールドを教わったとしても、そこにどうやって持っていくのかは最初はわかんないわけだから。
――最近プロレスデビューした佐々木憂流迦の評価がすこぶる高いですけども、彼はプロレスファンだったからイメージがつきやすい。でも、東京女子の選手たちは手探り。
小佐野 それこそ未詩に聞いたら「ドロップキックはどっちがやられてるのか最初はわからなかった」と(笑)。
――よく考えたら、たしかにわかりづらい(笑)。
小佐野 知っていたプロレス技はジャイアントスイングだけ。それは「めちゃイケ」で加藤浩二がやっていたから(笑)。プロレスで知ったわけじゃないんだよね。
――渡辺未詩の得意技はジャイアントスイングですね。
小佐野 彼女はあの技を使いこなせるパワーがあるし、「あとあと他のアイドルを回せることができるかな」という感じでやってみたらしいんだけど。
――いやあ、東京女子を通じて、あらためてプロレスの難しさがよくわかりますね。プロレスファンはあたりまえのようにスリーカウント決着を理解してますけど。
小佐野 格闘技を何かやってた人と、まるっきり格闘技をやったことすらない人でも差はあるよ。「ロックアップは大事な基本だから」と教わっても、格闘技をやったことがないとまず組むことの意味がわからないだろうし。
――試合に勝つために戦うけど、相手に致命的なケガを負わせちゃいけないという暗黙の了解もあったりするわけですもんね。
小佐野 いろいろ勉強していくうちにプロレスが好きになっていった子は多かったと思うんだよね。たとえば上原わかなという大食いアイドルや舞台もやってる子がDDTの「夢プロレス」という企画に参加した。企画の趣旨は自分の夢を叶えるためにプロレスを始める。全部クリアできたら夢を叶えてあげますよっていうことで、べつにプロレスラーにならなくてもいい。そこではアジャコングがプロレスを教えるんだけど、アジャが上原わかなに「アンタのやってることはまったく人の心に響かない。上っ面だと人の心は動かせないよ。私のことをおもいきり殴ってみろ!」と。それでも上原わかなはおもいきり殴れないんだけど、そこを殴らないと殴られるのがプロレスだよね。アジャに抑え込まれて身動きが取れなくされて「今度はオマエが抑えてみろ」とポジションを変えるんだけど、アジャは簡単に返しちゃう。
――アジャさんは全力で物事に取り組む大切さを教えたんですね。
小佐野 人の心を捉えるのはどういうことかといえば、一生懸命やる、力いっぱいやる。そうしないと人の心は動かせない……ということをアジャは教えた。上原は「夢プロレス」の卒業試合をやったあとに「これからどうしますか?」と聞かれて「プロレスを続けます」と答えて、いまでもプロレスを続けてるわけだ。
――いい話です!女子プロレスを知り尽くしたアジャさんが親身にレッスンをしてくれるのはありがたいことですね。
小佐野 アジャは東京女子のことを気に入ってるのか、大きな大会のときは必ず試合に出てくれるんだよね。
――アジャさんが全女でやっている時代と比べると、女子プロレスのあり方もだいぶ変わってますよね。
小佐野 そう。いまはあの頃の全女の匂いがまったくしないプロレスだからね。たとえばDDTにジャイアント馬場やアントニオ猪木の匂いがしないと同じかもしれない。それでいえば昔のレスラーからすれば、東京女子の選手は仲が良すぎるように見えるかもしれないね。
――そこも聞きたかったんですよね。全女の抗争はリング外でも激しかったですよね。一線を越えていた。
小佐野 本当に足の引っ張り合いがすごかったし、私生活でもメンタル強くなければやっていけないし、試合でも何をされるかわからない緊張感はあったよね。
――アジャさんとバイソン木村さんはブル中野に反旗を翻したあとは、巡業バスにも乗れないし、控室も用意されない。それこそ天龍さんと阿修羅・原さんのように電車やリング屋さんのトラックに乗って巡業についていって。
小佐野 そこは男子も少なからずそうだったわけでしょ。たとえば武藤敬司や蝶野正洋から当時の新日本道場の話を聞くと、とてもじゃないけど美しい青春物語じゃないよ。「アイツ早くやめねえかな」「1人やめて競争相手が減ったぜ」と喜ぶ世界。どこまでいっても競争だから仲良くはなかった。
――プロレスの勝負論の世界でレスラー同士が仲良いわけがないですよね。格闘技の場合、わりとスッキリしてるじゃないですか。
小佐野 格闘技だと結果で白黒はっきりしちゃうからね。プロレスの場合は「アイツばっかプッシュされて」というふうに感情的になるよね。
――東京女子の選手の仲はどうなんですか?・スターダムと東京女子は対抗戦をやらなくていい
・東京女子は初期ジャパン女子?
・東京女子はしっかりとレスリングから
・アイドルレスラーの根性は半端じゃない……まだまだ続く
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中嶋勝彦を見よう/「プロレスの仕組み」論■小佐野景浩の「プロレス歴史発見」
2024-02-26 22:07200ptプロレスラーの壮絶な生き様を語るコラムが大好評! 元『週刊ゴング』編集長小佐野景浩の「プロレス歴史発見」――。今回は中嶋勝彦を見よう/「プロレスの仕組み」論です!
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東京スポーツ新聞社制定「2023年度プロレス大賞」
追悼“テキサスブロンコ”テリー・ファンク
G1クライマックスに圧倒的な価値観を!ALL TOGETHERに見えたリアルな関係
【永田三冠議論百出】全日本プロレスは大丈夫
清宮海斗の「顔面蹴り」と「平和ボケ」
プロレス大賞の選考は毎年難しい
岩谷麻優vsKAIRI IWGP女子王座の勝負論
私が愛した“若獅子”アントニオ猪木この旦那にしてこの妻あり!! 天龍源一郎を支えたまき代さん
頑固一徹! 追悼・ターザン後藤さん
大谷晋二郎選手の試合中の事故について
『至高の三冠王者 三沢光晴』を書いた理由
新日本プロレスvsノア対抗戦から見えた個人闘争の炎
令和の横アリ大実験!新日本vsノア対抗戦
東京スポーツ新聞社制定プロレス大賞2021
プロレスと結婚した風間ルミさん
武田有弘☓小佐野景浩 「これまでのノアと、これからのノア」
『ゴング』と東スポの元記者が語るプロレスマスコミ黄金時代/小佐野景浩☓寿浦恵一
【14000字対談】小橋建太☓小佐野景浩「あの頃の全日本プロレスを語ろう」
北尾はなぜ大成しなかったのか■柴田惣一☓小佐野景浩 マスコミ大御所第2弾柴田惣一☓小佐野景浩 プロレスマスコミ大御所対談「スクープ合戦はガチンコの闘いだった」全日本プロレスの「うっかり八兵衛」が明かす全日本秘話あの日の全日本プロレス、SWSを語ろう■北原光騎×小佐野景浩嗚呼、阿修羅・原……修羅ごときそのレスラー人生!!
冬木弘道は「俺はやっぱり死ぬんだな」とニヤリと笑った…
――小佐野さんが配信の解説もやっている全日本プロレスがいろいろ大変なことになっているんですけど、現場はどんな状況なんでしょうか。
小佐野 そちらで事情通Zというコラムでいろいろやっているようだけど(笑)。
――恐縮です! あの記事から選手・関係者みんなが一気に喋りやすくなったみたいで。
小佐野 今年の全日本の会場の雰囲気は悪くないんだよね。選手たちは一致団結してるじゃないけど、とにかくいい方向に持っていこうとしている感じがした。
――現場監督的ポジションだった石川修司選手は離脱しましたけども。
小佐野 結局、残った選手たちみんなでリングを盛り上げていこうという前向きな空気を感じているね。裏を返すと中嶋勝彦や、その裏にいる「黒幕」とされている人たちは大ヒールなんで(苦笑)。
――現実に起きている混乱がリングにも組み込まれて面白くなるのがプロレスの醍醐味ではありますね。
小佐野 ヒールがいるとみんな一致団結する。それは一般社会でもそうだけど、会社にイヤな上司がいたら結束したりするでしょ。
――古いたとえでいえば、ドリフターズのいかりや長介のような「権力者」を弄ることで他のメンバーが輝くってやつですね(笑)。暗黒・新日本時代のプロデューサーだった猪木さんもそんな立ち位置でしたし。
小佐野 それで2月20日の大会は平日の後楽園なのにお客さんが入っている。むしろ以前よりお客さんが熱いんだよね。第1試合目が諏訪魔vs鈴木秀樹だったから最初からお客さんが熱いわけ(笑)。
――最高のカードですよね!(笑)。
小佐野 「いい試合だ!」っていう声が出たくらいで。試合に勝った諏訪魔が鈴木をおぶって帰る感動的なシーンだったんだけど、鈴木が背後からスリーパーで締め上げて、またバカバカ問答を始めるっていうオチだった(笑)。
――ハハハハハハ!
小佐野 全日本ファンは諏訪魔vs鈴木秀樹に昔の全日本を追い求めてるんだと思うよ。鈴木秀樹は本当に頭を使っているし、全日本にとってはかなり重要だと思う。
――伝え聞く話では、全日本は中嶋勝彦参戦前から上り調子的なところがあって、そこに今回の騒動が重なったことで……。
小佐野 どの要因かはわからないけど、騒動の効果は出てると思う。中嶋勝彦もああいう感じでやってるけど、リング上に関しては決して悪くないわけだから。試合は面白いし、彼のコンディションはいつも素晴らしい。ちゃんとした試合をやらないと「☓☓スタイル」のキャラクターに飲み込まれちゃうからね。
――キャラだけだったらキワモノ扱いされますよね。
小佐野 そう、単なるキワモノになっちゃうから。それだとメインを任せられないし、お客さんだって惹かれないでしょ。
――鈴川真一の挑発に乗っかって中嶋勝彦を馬鹿にする一部のファンがいたんですけど、どう見たって実績やパフォーマンスは比べ物にならないんですけどね。中嶋勝彦の周りに誰かいるのはたしかなんですけども、彼が全部言いなりになってやってるとは思わないというか、あのキャラも背中に張り付いてないとできることじゃないですし。
小佐野 やってることが「どこまで本当なの?」っていう感じが面白いんだろうね。「闘魂STYLE」で謝罪したあとに三冠戦前日にスペアリブをむしゃむしゃ食っていたり(笑)。それまでの中嶋勝彦のイメージを完全に消している。周りに何を言われてもどこ吹く風のメンタルの強さを感じるよね。
――普通は日和ってもおかしくないですよ(笑)。
小佐野 だって15歳の中学生のときにWJに入団して、X1で格闘技デビューして、16歳の誕生日前にプロレスデビューもしてるんだから。そして16歳で佐々木健介・北斗晶の家に住み込み。昔インタビューしたときに「よく佐々木さんのところで持ちますねみたいなこと聞かれるんですけど、ボクはそこしか知らないんですよ」と言ってたから。
――プロレスが好きでプロレスラーになる選手がほとんどの平成の時代に、中嶋勝彦は「メシを食う」ために中卒で入ってきた。ハングリー精神が違いますね。
小佐野 健介オフィスの初めは勝彦ひとりきりで、やめていく選手も多い中、最後の最後まで彼は残ったんだから。
――佐々木健介引退と健介オフィスは事実上の活動停止だから、所属を変えてもいいはずなのに、そのあともしばらく在籍しましたよね。
小佐野 やっぱりね、並のハートじゃないし、生き抜く力は持っていますよ。結果的に全日本のリングがピリピリし始めたわけだから。何が起こるかわからないし、まさに猪木さんじゃないけど「一寸先はハプニング」的なものも感じてるんじゃないかな(笑)。
――まさに闘魂STYLE!(笑)。
小佐野 いや、ホントに。もしかしたら全日本はここからすごい低迷期に入るかもしれないし、突き抜けるかもしれない。そんな面白さがあるよ。
この続きと鶴屋怜、スターダム、武尊本、佐藤将光、ビンス、中嶋勝彦…などの2月バックナンバー記事が700円(税込み)でまとめて読める「15万字・記事15本」の詰め合わせセットはコチラ https://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar2188442この記事の続きだけをお読みになりたい方は下をクリック!1記事200円から購入できます!
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東京スポーツ新聞社制定「2023年度プロレス大賞」■小佐野景浩の「プロレス歴史発見」
2023-12-18 10:57200ptプロレスラーの壮絶な生き様を語るコラムが大好評! 元『週刊ゴング』編集長小佐野景浩の「プロレス歴史発見」――。今回は東京スポーツ新聞社制定「2023年度プロレス大賞」です!
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追悼“テキサスブロンコ”テリー・ファンク
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プロレス大賞の選考は毎年難しい
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私が愛した“若獅子”アントニオ猪木プロレス界の歌ウマ王は誰だ?
この旦那にしてこの妻あり!! 天龍源一郎を支えたまき代さん
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【14000字対談】小橋建太☓小佐野景浩「あの頃の全日本プロレスを語ろう」
北尾はなぜ大成しなかったのか■柴田惣一☓小佐野景浩 マスコミ大御所第2弾柴田惣一☓小佐野景浩 プロレスマスコミ大御所対談「スクープ合戦はガチンコの闘いだった」全日本プロレスの「うっかり八兵衛」が明かす全日本秘話あの日の全日本プロレス、SWSを語ろう■北原光騎×小佐野景浩嗚呼、阿修羅・原……修羅ごときそのレスラー人生!!
冬木弘道は「俺はやっぱり死ぬんだな」とニヤリと笑った…
――今回は小佐野さんが選考委員を務めているプロレス大賞、謎の中嶋勝彦の「闘魂」路線、NOAHの試合順についておうかがいします!
小佐野 よろしくお願いします。
――本題に入る前に……昨日、和牛という人気お笑いコンビが急遽解散しちゃったんですけども。
小佐野 はいはい。
――きっかけは相方の遅刻みたいなんですけど、遅刻といえばプロレス格闘家も欠かせないエピソードだなと思いまして。小佐野さんは取材でどれくらい待たされたことがありますか?
小佐野 取材で待たされたことはないよ。これは前回のテリー・ファンクのときにも話したけど、私が寝坊して1時間遅刻、テリーがさらに1時間遅刻したときくらいかな(笑)。
――ダブル遅刻!! プロレスラーの遅刻といえば蝶野(正洋)さんですよね。何かで6時間遅刻したとか……そこまでいくと遅刻の定義からは外れるんでしょうけど(笑)。
小佐野 蝶野さんのことは何回か取材したけど、1回も遅刻はなかったんだよね。約束の時間より早く来るのは武藤(敬司)さん。あの人は本当にしっかりしてる。
――三銃士の蝶野さんと橋本(真也)さんは巡業中、定刻にバスに乗らないから、遅刻1分につき1000円の罰金制が導入されたんですけどね。
小佐野 全日本で遅刻がすごかったのはファンクスだね。兄貴のドリーもルーズ。よく兄弟揃ってNWA世界チャンピオンとしてやっていけたなって。
――チャンピオンとして全米各地をサーキットするわけですもんね。
小佐野 噂ではドリーは乗り遅れるからってことで、飛行機を止めたとか、遅らせたとか(笑)。アメリカの国内線くらいだったら、そんなに時間にうるさくないだろうから、ホントにやっていたかもしれないね。
――時間といえば、ボクは詳しい事情はよく知らないんですけども、プロレス大賞の情報解禁は朝5時だったのに、なぜかその前からツイッターで情報が駆け巡っていて。
小佐野 みたいだよね。何時くらいから出ていたの?
――コメント欄によれば、いちばん早いのは2時40分らしいですね。
小佐野 そうなんだ。私が朝5時に受賞者とそれぞれの短評をツイートしたら、もうすでに結果が出てたら「どういうことだろう?」って。少なくとも会議に出た選考委員やマスコミは絶対に時間厳守だから。1分でも早く出しちゃマズイわけですよ。
――小佐野さんのあのツイートは予約投稿ですか?
小佐野 以前は予約投稿でやったときもあったんですが、どうしても時間差が出ちゃうんですよ。今回は4時50分に起きて手動でツイートしましたよ。
――ごくろうさまです! 朝5時じゃなくて昼間の発表にすると朝のスポーツ紙に載せられない事情も出てきちゃうんでしょうね。
小佐野 朝5時前に情報が漏れるとすれば、刷り上がった朝刊が新聞配達されたときに知ってしまうことはあるかもしれないね。
――なるほど! 関係者から聞いた人間が承認欲求を満たす以外だと、それしかない。ネット時代に紙の新聞の重要性がクローズアップされた!
小佐野 なんだかんだアナログが一番早いっていうことだよね。プロレスファンがすごいなと思ったのは、ツイートしたら朝5時なのに反応がすごいんだよね。
――みんな早起きして待ってるんですね。小佐野さんも早起きしたかいがあるという。
小佐野 あとプロレス大賞が発表されると毎年ブーイングが起きるんだよね。「この受賞はおかしい!」とか。
――そこも毎年恒例行事ですね(笑)。
小佐野 でも、選考委員は本当にガチでやってる。拳王じゃないけど、忖度はないから。たとえば毘沙門が最優秀タッグだから、バランスを取って斉藤ブラザーズが新人賞に振り分けた……みたいな書き方をされるんだけど、そんな風に決めてないからね。
――ちなみにどういう順番で賞の話し合いはされるんですか?
小佐野 毎回MVPから決めます。やっぱりMVPが決まらないと他の賞も決まらないでしょ。
――柱をドンと打ち込まないと家は建てられないってことですよね。
小佐野 そう。どの選考委員がどの選手を推したのか、投票したのか、は公表しちゃいけないんだけど、投票前の話し合いで戦い方があるんですよ。いまどきこんなにオープンな選考会もないと思うんだよね。投票箱に票を入れるやり方じゃないし、誰に投票したかその場でわかるからね。
――可視化されてるから“戦い”になりやすいんですね。
小佐野 「その意見はおかしいだろ!」と険悪になるときもあったんですよ。「その選手が選ばれるのは許せない」とか。
――許せないまで!
小佐野 いまだに門馬(忠雄)さんが「ボブ・サップと大仁田厚のMVPだけはありえなかった」って言うんだから。
――うわー、その2人はもう許してあげましょうよ(笑)。
小佐野 そのぐらいみんな熱くやってるんですよ。かつて選考員だった菊池(孝)さんもそこは譲らなかったし。
――菊池さんは『週刊ゴング』のレギュラーコーナー「三者三様」でも歯に衣着せぬ感じでしたよね(笑)。
小佐野 だから和気あいあいでやってるわけじゃない。そこは理解してほしいなと思います。門馬さんでいえば、今年で選考委員を引退されるんですよ。プロレス大賞は今年で50回目の節目なんですけど、門馬さんは第1回から参加してるんですよね。
――第1回のときはボクですら生まれてないですよ(笑)。
小佐野 第1回のとき門馬さんは35歳、今年で85歳。いまもなおプロレスを熱く語るわけですよ。
――85歳でプロレスを見て熱く語れるってすごいなあ。自分にその自信はないです!
小佐野 第1回のときはボクは中学1年生かな。それから50年経ったから当然還暦を過ぎて。門馬さんがご勇退されると、私が最年長者になっちゃうかもしれないですね(笑)。
――2023年今年のMVPは新日本プロレスの内藤哲也が4度目のMVPということで。・選考委員が語る「2023年度プロレス大賞」
・選考は「戦い」である
・情報解禁前に情報漏洩した件
・台風の目だったウナギ・サヤカ
・先が読めないから面白い中嶋勝彦
・NOAHの試合順問題で拳王vs征矢に興味が増した…
この続きとUFC訴訟、高田延彦、ジョビン、長井満也、平本丈…などの12月バックナンバー記事が600円(税込み)でまとめて読める「12万字・記事13本」の詰め合わせセットはコチラ
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追悼“テキサスブロンコ”テリー・ファンク■小佐野景浩の「プロレス歴史発見」
2023-10-28 21:06200ptプロレスラーの壮絶な生き様を語るコラムが大好評! 元『週刊ゴング』編集長小佐野景浩の「プロレス歴史発見」――。今回は追悼“テキサスブロンコ”テリー・ファンクです!
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G1クライマックスに圧倒的な価値観を!ALL TOGETHERに見えたリアルな関係 ■小佐野景浩の「プロレス歴史発見」
【永田三冠議論百出】全日本プロレスは大丈夫
清宮海斗の「顔面蹴り」と「平和ボケ」
プロレス大賞の選考は毎年難しい
岩谷麻優vsKAIRI IWGP女子王座の勝負論
私が愛した“若獅子”アントニオ猪木プロレス界の歌ウマ王は誰だ?
この旦那にしてこの妻あり!! 天龍源一郎を支えたまき代さん
頑固一徹! 追悼・ターザン後藤さん
【サイバーフェス】中嶋勝彦vs遠藤哲哉の張り手事件
大谷晋二郎選手の試合中の事故について
『至高の三冠王者 三沢光晴』を書いた理由
新日本プロレスvsノア対抗戦から見えた個人闘争の炎
令和の横アリ大実験!新日本vsノア対抗戦
東京スポーツ新聞社制定プロレス大賞2021
プロレスと結婚した風間ルミさん
武田有弘☓小佐野景浩 「これまでのノアと、これからのノア」
『ゴング』と東スポの元記者が語るプロレスマスコミ黄金時代/小佐野景浩☓寿浦恵一
【14000字対談】小橋建太☓小佐野景浩「あの頃の全日本プロレスを語ろう」
北尾はなぜ大成しなかったのか■柴田惣一☓小佐野景浩 マスコミ大御所第2弾柴田惣一☓小佐野景浩 プロレスマスコミ大御所対談「スクープ合戦はガチンコの闘いだった」全日本プロレスの「うっかり八兵衛」が明かす全日本秘話あの日の全日本プロレス、SWSを語ろう■北原光騎×小佐野景浩嗚呼、阿修羅・原……修羅ごときそのレスラー人生!!
冬木弘道は「俺はやっぱり死ぬんだな」とニヤリと笑った…
――今回のテーマは先日お亡くなりになったスーパースター、テリー・ファンクさんです。コメント欄に「懐かしい」という書きこみが出るぐらい“テキサスブロンコ”が遠い時代になってしまいましたが、小佐野さん、よろしくお願いします。
小佐野 よろしくお願いします。私はテリー・ファンクのことを彼の初来日のときから見てるんですよ。テリーの初来日は1970年だから昭和45年です。
――ボクでさえ生まれてないです!(笑)。
小佐野 私が小学校3年で9歳のときですね。ちなみにいまは62歳です(笑)。
――もう50年以上前の話ですね……。
小佐野 当時のテリーはブロンドヘア。あとあとインタビューしたときに「なんであのときブロンドだったんですか?」って聞いたら「とくに考えもなくブロンドにしてみようかな」と思ったみたいで。それは白髪交じりのおじいちゃんになってからの取材だったから「いまになると黒髪にしたい」と言っていた(笑)。
――テリー初来日前の評判はどういうものだったんですか?
小佐野 そのときはドリー・ファンク・ジュニア2回目の来日でもあったんですよ。NWA世界チャンピオンと兄弟揃って来日するということで、日本プロレスのパンフレットの表紙もファンクスだったし、中にはファンクス物語という読み物がついていて。だからかなり注目されていましたね。
――初来日前から評判は高かったということですね
小佐野 ドリーの初来日はその前年の69年12月。お父さんのドリー・ファンク・シニアがマネージャーとしてついていて、ちょっと悪いことをしたりしてヒールっぽくはあったんだけど、新しい時代の世界チャンピオンとしての期待感があった。そのときにドリーが猪木さんと60分フルタイムドローをやってますね。
――猪木さんがベストバウトのひとつに挙げる名勝負ですね。
小佐野 若き本格的なテクニシャン。あとあと冷静沈着な兄ドリー、やんちゃな弟テリーに色付けされていくんだけどね。
――そもそも兄弟揃ってNWA世界王者になるってすごいことですよね。
小佐野 そこは父親のドリー・ファンク・シニアがちゃんと2人を鍛えてたってことだよね。ドリーはちゃんと大学を卒業してレスラーになったんだけど、テリーもお父さんから「プロレスでどうなるかわかんないから大学を卒業しておけ」と言われたのに、大学4年のときにやめてプロレスの世界に飛び込んじゃった。
――ひじょうにテリーらしい(笑)。
小佐野 テリー本人は子供の頃から「自分はプロレスラーになる」と決めていたから「学校なんかどうでもいいや!」みたいな感じだったんでしょう。
――兄弟の性格の分かれ方が最高ですね。
小佐野 本当に性格は全然違うよね。かといって、ドリーが超貴重面でマジメな人間かいうとまた違うから。時間に超ルーズ。まあテリーもルーズなんだけど(笑)。『月刊ゴング』時代にテリーにインタビューしたんですよ。そのときに私は寝坊して3時間遅刻したんですよ……。
――致命的な寝坊(笑)。
小佐野 「ヤバイ」と思って取材場所のホテルに慌てて向かったら、テリーはさらにその1時間後に起きてきた(笑)。
――ハハハハハ! さすがです(笑)。
小佐野 お互い何事もなかったかのように取材ができたよ(笑)。だから、よくあの兄弟2人がNWA世界チャンピオンとしてスケジュールをこなしてたなって。昔はNWAに加盟しているプロモーターのところをチャンピオンはサーキットして回っていたでしょ。
――そこの地区のチャンピオンと戦うわけですよね。
小佐野 NWA世界王者は年間スケジュールが決まっている。今週はフロリダ、来週はロサンゼルス……時間にルーズなあの2人がちゃんとこなしていたのは、まあまあ不思議だなって。
――過酷なサーキットを続けられるスタミナ、精神力、そしてスケジュール管理能力が問われると。
小佐野 テリー・ファンクはどうしてもドリー・ファンク・ジュニアの弟というイメージが強かったんだけど。彼1人でも全然やれる、日本でトップを取れると誰もが思ったのは、全日本プロレスの旗揚げシリーズに参加したとき。あのときはテリー1人でやってきたんですよ。シリーズ通してのエースはブルーノ・サンマルチノだったんだけど、前半でブルーノと並んでエースを務めたのがテリー・ファンク。テリーはその役目を見事にはたした。全日本の旗揚げということは、要はアマリロ地区のプロモーターだったシニアと全日本が提携して初めてのシリーズ。送り込まれたテリーがエースの役目を務めたことはすごく大きかったと思う。
――馬場さんの信頼を得たことでアマリロからの外国人ルートも活発化していったんですね。
小佐野 たしか後半戦はお父さんのシニアも来てたんだけど、シニアと入れ替わりでテリーはアマリロに帰った。前半戦をテリーに任せていたってことは、お父さんのシニアもテリーを信頼していたってことだね。
――日本ではファンクスとしての兄弟コンビのイメージも強いですけど、シングルプレイヤーとしても一流だったということですね。
小佐野 兄弟揃ってNWAの世界チャンピオンにもなってるわけだしね。しかもお父さんのシニアが亡くなったあとで、後ろ盾がないのにチャンピオンになってるからね。
――プロモーターも好き嫌いがあるでしょうから、後ろ盾は必要ってことですね。
小佐野 各地のプロモーターを前にして、何か後ろ盾がないとチャンピオンとしても大変だったと思うよ。テリーの場合は兄のドリーが後ろ盾なんだろうけど、政治的なものを絡めれば、シニアのほうが存在としては絶対に大きかったわけだから。もちろんレスラーの実力は問われるよ。各地のプロモーターが「コイツがチャンピオンじゃダメだ」と思われたらやっていけないし、「彼がチャンピオンだとお客が入る」と歓迎されないといけないからね。
――シングルプレイヤーとしても偉大なレスラーですけど、ボクの子供の頃はザ・ファンクスとしてのイメージが強くて。
小佐野 そうかもしれないね。シングルマッチで大きな試合が日本であったかっていったら……ドリーなんか常に猪木さんとのシングルマッチが語られるんだけど、全日本時代のテリーはあんまり聞かない。結局日本ではライバルがいなかったよね。ブッチャーとの抗争はすごかったけど、それはまたちょっと違うでしょ。ちょうどいい相手といえば、ジャンボ鶴田になってしまうんだろうけど。ジャンボだとやっぱりキャリアが違うから。
――ジャンボ鶴田とは師弟っぽさもありますし。
小佐野 これもテリーの弟子なんだけど、スタン・ハンセンが新日本から全日本に移籍してきたのはよかったと思うんだよね。まあハンセンの移籍を画策したのはテリー本人なんだけど(笑)。
――ファンクスと超獣コンビ(ブルーザー・ブロディ&スタン・ハンセン)の激闘ですね。
小佐野 ドリーがブロディ、テリーがハンセンと対峙する図式だよね。ハンセンはテリーとシニアにスカウトされてプロレスに入ったんですよ。いわゆる師弟関係なんだけど、いざ全日本のリングに来たらお互いにトップを取り合う。しかもその戦いはかなりすごかった。プロレスの範疇をちょっと超えてるというか……。
――一線を超えたプロレスだったと。
小佐野 これは明らかにビジネスを超えてるだろうと。ハンセンなんかに言わせると、テリーは大学のときから先輩で、日本に来てからも先輩である。この関係を突き崩さないと自分たちはトップに行けない。だったら、あのぐらいやらないと、ファンクスの支配からは解き放たれないという思いがあったんだよね。
――精神的な戦いでもあったんですね。
小佐野 テリーもそこも承知の上。リアルな人間関係があったから、日本のファンが熱狂してくれたというのが2人の共通認識。日本のファンはリングの上でダンスが見たいんじゃないだろう、フィジカルなレスリングが見たいんだろうと。それが俺とスタンのやり方なんだよと言っていた。11000字インタビューはまだまだ続く
この続きと金原正徳、佐藤将光、長井満也、万智、猪木映画…などの10月バックナンバー記事が600円(税込み)でまとめて読める「13万字・記事14本」の詰め合わせセットはコチラ
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G1クライマックスに圧倒的な価値観を!■小佐野景浩の「プロレス歴史発見」
2023-08-21 23:01200ptプロレスラーの壮絶な生き様を語るコラムが大好評! 元『週刊ゴング』編集長小佐野景浩の「プロレス歴史発見」――。今回はG1クライマックスです!
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冬木弘道は「俺はやっぱり死ぬんだな」とニヤリと笑った…
――今回はG1クライマックスがテーマです!
小佐野 会場には一度も行けなかったんですが、新日本WORLDでは見てました。準決勝と決勝、あとは清宮海斗の試合は全部見てますね。
――新日本WORLDで視聴できるとはいえ、32人参加のリーグ戦を全部追っかけるのは難しいですよね。
小佐野 昔は週1回のテレビ放送だけだったからG1を全試合見ようにも見られなかったよね。そのテレビ放送だって1時間だからダイジェストなわけだし、専門誌で結果を追うだけで。
――いまは見ようと思うけど見れちゃうから、すべてチェックできてないことの罪悪感がありますね(笑)。
小佐野 全試合見てるファンってどれくらいいるんだろうね?
――まず家族持ちのライブ視聴はハードルが高いと思うんですよね。夜はほとんど時間を取られちゃうわけですし、あとからチェックするにしてもどんどん試合が溜まっていくという。
小佐野 自分の好きな選手の試合を優先して見るって感じなのかな。今回いちばん注目度が高かったのは、清宮と令和闘魂三銃士(辻陽太、海野翔太、成田蓮)の若手が集まったAブロックだったよね。
――ボクもAブロック全力派でした。怒られそうですけど、新日本ぼんやり層からすると「オカダの3連覇かかってる」って全然ピンときてなくて。
小佐野 たしかに大会前にオカダや内藤に興味が行ってなかったんだよね。どっちかっていうと、若いレスラーに興味があって。でも、試合が始まってみると、やっぱりオカダたちはすごいなって。若手はリーグ戦を誰も突破できず、準決勝はオカダ・カズチカvsEVIL、内藤哲也vsウィル・オスプレイ。決勝はオカダ・カズチカvs内藤哲也で優勝は内藤哲也。
――新鮮さや話題性はないけど、安定感のある感じで。
小佐野 落ち着くところに落ち着いたメンバーが残ったから、過程を見てないと「いつもと風景が変わってない」という印象はあるのかもね。でも、試合のクオリティはやっぱりすごいんだよね。
――勝つべき人間が勝ち上がったと。Aブロックから何かG1の風景が変わるんじゃないかという期待があったんですけどね。
小佐野 だから、いろんな意味で第1回のG1ってすごかったんだと思うよ。あのときのG1で三銃士(橋本真也、武藤敬司、蝶野正洋)が一気に大ブレイクしたけど、他のメンバーは藤波辰爾、長州力、ベイダー、ビガロ、ノートンでしょ。いまなら令和闘魂三銃士にオカダ・カズチカ、内藤、SANADA、ザック・セイバーJr.やオスプレイが争って、そこから令和三銃士がボーンと飛び抜けるようなものでしょ。
――しかもいちばん地味な存在だった蝶野正洋が優勝しちゃうんだからビックリしますよね。
小佐野 雰囲気的にいくと、成田蓮が優勝しちゃうみたいなもんだよね。でも、いくら会社が若手を売り出そうとしても、力量の問題はあるから。今回のG1を見るかぎり、トップと若手の力量の差は確実にあったと思うよ。
――札幌の開幕戦で海野vs成田で実況・解説が「なんでこのカードがメインじゃないんんだ」的な話をしてたんですが、この内容でメインはまだ厳しいなあと思ったんですよねぇ。
小佐野 今回のリーグ戦は20分一本勝負になったことが物議を醸したけど、若い選手のためのルールかなって気がした。これが30分一本勝負だったらちょっとつらかったんじゃないかな。たとえば内藤やオカダって、間をうまく取りながら試合を進めるから、彼らにとって20分一本勝負はけっこうな制約になったと思う。間をうまく使えないとなれば、普段とテンポを違ってくるしね。普段の試合も結果的には20分は超えてなかったりするだろうけど、そこはリミットを意識しない結果だから。20分一本勝負は長い試合を好むレスラーにはやりにくいルールだと思う。
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ALL TOGETHERに見えたリアルな関係 ■小佐野景浩の「プロレス歴史発見」
2023-06-26 10:30150ptプロレスラーの壮絶な生き様を語るコラムが大好評! 元『週刊ゴング』編集長小佐野景浩の「プロレス歴史発見」――。今回はALL TOGETHER、清宮G1参戦などです!
<1記事から¥100から購入できる連載記事! クリックすると試し読みできます!>【永田三冠議論百出】全日本プロレスは大丈夫
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冬木弘道は「俺はやっぱり死ぬんだな」とニヤリと笑った…
――小佐野さんは新日本、ノア、全日本の合同興行「ALL TOGETHER AGAIN」(以下AT)はどうご覧になりました?
小佐野 やっぱり3団体が揃えば内容的には面白くはなりますよね。メインの棚橋弘至&宮原健斗&清宮海斗vsオカダ・カズチカ&青柳優馬&拳王にしても見ごたえあったんだけど……。ただ、プロレスファンが今回のATに思ったより食いつかなかったところが問題で。
――たしかに両国という大会場なのに余裕があるカード編成だったなと。
小佐野 やっぱり交流戦より対抗戦のほうがいいんだろうね。敵対じゃなくて交流という感じになってしまったことで、ファンの食いつきがいまいちだったのかなって思うし。だったら三軍対抗戦をやればいいんですよ。かつて全日本プロレス、国際プロレス、韓国の三軍対抗戦が昭和の時代にあったけど(笑)。
――渋すぎる三軍対抗戦!(笑)。
小佐野 変な話、純粋な新日本の興行だったらもっとお客さんは入っていたかもしれないね。今回の主催者はAT実行委員会となっていたけども、まあ新日本の興行ですよ。いまの新日本ファンは全日本やノアとの絡みにはそこまで興味がなくて、純粋な新日本のカードを組んでいたら、もっと反響は違っていたのかもしれないなっていうふうにも感じた。
――かといって新日本としても、ノアや全日本と交流しながら何かやっていきたい狙いもあるわけですよね。
小佐野 いまの新日本は他団体に選手を派遣してるわけだしね。永田裕二は三冠王者だし、ATで永田、小島聡の2人は全日本の控室から入場。“全日本側”として出てるわけですよ。G1にはノアから清宮が初参戦してくる。
――小佐野さんは昭和の頃から新日本を見てらっしゃいますけど、最近の他団体との交流の仕方はどう思われます? 昔のプロレスの交流戦・対抗戦って、どちらが損している印象が強かったんですけども、最近はWin-Winで進めているなと
小佐野 まず国内では新日本がもうダントツのプロレス団体ですよ。全日本にしてもノアにしても、新日本と絡むことによってどうやって自分たちのネームバリューを広げるか、発信力を得るか……的なところはあるよね。新日本は“業界の盟主”として、いろんな団体にメリットをもたらしつつ、自分たちもメリットを……みたいな印象を受ける。たとえばこのATにしても、11年前の前回はまだ団体間のバランスが取れてたと思う。いまはどう考えても新日本一強だけど、新日本自体もたぶん一強はマズイと思ってるはずで。やっぱり対立するものがなければ業界は盛り上がらないから。たぶん過去の歴史から学んでわかってるはずですよ。変な話、いまプロレス専門誌は『週刊プロレス』しかないけれども、『週刊プロレス』と『週刊ゴング』があったからお互いに切磋琢磨できたところはあった。向こうがこういう記事をやるなら、こっちは別のほうに振り切ろうとなるから。
――新日本の対抗馬はビジネス的にはWWEやAEWになるんでしょうけども、やっぱり海の向こうの団体だから対立概念として見るのは難しいですもんね。
小佐野 これは女子プロレスにも言えることなんだけど、いま上を目指すとなったらやっぱりスターダムになっちゃう。男子のプロレスでさらなるステップアップを目指すとしたら、新日本かWWEでしょう。それがいまの現実なんだろうなって思いますよ。
――しかし、前回のATは11年前なんですね。時間が経つのが早い(笑)。
小佐野 あの頃はノアも元気のある時代……っていうと、語弊があるけれども。
――ノアはあれからいくたびの体制変更がありましたからね。前回のATにはオカダ・カズチカは上がってないんです。凱旋帰国前後だったこともあって。
小佐野 宮原健斗だって当時はノアに上がっていた健介オフィスの一員だった。バトルロイヤルでの出場だったからね。
――武藤さんや小橋建太さんタッグを組んだり、森嶋猛がいたりして時代を感じます……。
小佐野 11年8月27日の第1回大会のときの全日本にはまだ武藤がいて、三冠は諏訪魔、ノアのGHC王者が潮崎豪、新日本は棚橋弘至。バランス的にはいい感じだったんですよ。
――それが10年経ったら……ってことですね。
小佐野 ずいぶん勢力図は変わったところはあるね。今回のATでいえば、いちばんアピールできたのは全日本だと思うんだけど。ということは、裏返せば、それだけ全日本の選手が知られてなかったということだから。
――初めて見る新鮮さもあったと。
小佐野 たとえば斉藤ブラザーズ。彼らはジェフ・コブよりデカかったりするわけよ。もともと相撲出身だから、荒っぽい試合になったら強いし、打たれ強いし、とにかく頑丈。「こんな選手が全日本にいたんだ!」って驚いたファンも多かったんじゃないかな。
――プロレスファンにディスプレイされたわけですね。
小佐野 全日本でいえば、拳王とオカダに挟まれた青柳優馬もよかった。普通のプロレスファンなら「こんなメンツの中で青柳はどうすんの?」って思ったはずだけど、図太い神経と彼独特のセンスで溶け込んで、いい潤滑油になった。きっちりおいしいところを持っていったわけだから。――逆にいうと他団体ファンからすれば、全日本勢は埋もれてたところがあるってことですね。
この続きと斎藤裕、横山武司、臼田勝美、ケラモフ、計量失敗…などの6月更新記事が600円(税込み)でまとめて読める「13万字・記事14本」の詰め合わせセットはコチラhttps://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar2156132この記事の続きだけをお読みになりたい方は下をクリック!1記事150円から購入できます!
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2023-04-11 11:36150ptプロレスラーの壮絶な生き様を語るコラムが大好評! 元『週刊ゴング』編集長小佐野景浩の「プロレス歴史発見」――。今回は武藤引退、永田三冠などです!
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冬木弘道は「俺はやっぱり死ぬんだな」とニヤリと笑った…
――ちょっと前の話題ですが、あらためて武藤さんの引退のお話を聞きたいなと。
小佐野 もうはるか昔の出来事になっちゃったよね(笑)。まだ2ヵ月は経ってないんだけど。
――いまはニュースが溢れてるから、すぐに昔に感じちゃいますね。
小佐野 あと引退後も精力的に活動してるから、引退した感じがしないのかな。ひとつの区切りがついたんだけど、まだ現役感たっぷりだしね。
――武藤さんのWWE殿堂入りが発表されましたけど、WWEで1試合もしてないのに即殿堂入りしちゃうのもすごい話ですよね。
小佐野 すごいよねぇ。WCWでグレート・ムタとしてスターになったけど、90年に新日本に呼び戻されて、そのまま日本に定着したでしょ。考えてみたらWCWで活躍したのって本当に1年ちょっとなんだとね。89年の頭ぐらいに出てきて90年4月に帰ってきてるわけだから。いかにムタのインパクトがすごかったかってことなんだけど。当時のWCWはWWEと競ってるときでビッグマッチを連発していたから、ムタの知名度も上がったと思うんだけど。その後、日本で武藤敬司とムタの2つの顔を使ったことで、またムタの存在が磨かれていって。
――ムタはアメリカで生まれたんですけど、いまのムタは帰国後に日本で作られたものだから、アメリカからすると未知の強豪感もあったんでしょうね。
小佐野 ムタもいつのまにかスタイルチェンジしてるからね。WCWのムタのファイトスタイルは日本の武藤敬司そのもので、ペイントしてオリエンタルムードを出していただけ。だから日本用のムタを作り上げて、それがまたアメリカに輸出されたってことだから。
――スキンヘッドにしたことでムタのビジュアルも変わりましたよね。このあいだ「ムタって武藤敬司なんですか?」ってツイートしている人がいたんですが、たしかにペイントじゃなく特殊マスクのムタしか知らないと違いがわからないなと(笑)。
小佐野 意外に特殊マスクの年数は長いでしょ。あれを使い始めたのは2002年からだから。
――あー、もうペイント時代より長いんですねぇ。
小佐野 2000年の大晦日にスキンヘッドになって、2002年の2月に全日本に移籍したでしょ。そして6月に特殊マスクのムタが始まってるから。
――スキンヘッドのムタはやってないですね。
小佐野 特殊マスクはこれはこれですごい発明だよね。あのマスクが壊されて高山善廣に三冠を獲られたことがあったけど。
――普通のマスクにしなかったのがさすがですよね。それだと怪奇さがなくなっちゃいますし。
小佐野 あれを考えたのもすごいけど、ちゃんと用意できたのもすごいですよ。特殊マスクについて『ゴング』でインタビューして表紙にした記憶あるもんね。特殊マスクにかぎらず、いろんな意味で革命を起こした人だよ。
――引退試合前にヒザが悪化しちゃいましたけど、試合自体はいかがでしたか?
小佐野 試合はやっぱり動けてないけど、本当に一生懸命やってたなって。引退試合後の蝶野正洋戦もすごかったけどね。
――武藤さんの内藤哲也に対する扱いはけっこう酷いんじゃないかなと。引退相手として呼ばれたはずなのに試合後に“真”の引退試合が始まって。
小佐野 まあねえ。これってたとえば天龍さんがオカダ・カズチカと引退試合をやったけど、その直後にいきなり長州(力)さんや藤波(辰爾)さんを呼び出して試合をやるのと一緒だから(笑)。普通に考えたら「内藤かわいそうじゃん」って話なんだけど、まあ武藤敬司らしさが出てたなって。そんな武藤敬司の大ファンだった内藤としては、それもまたよしでしょう。
――ある意味で一生忘れられない試合になりましたね。
小佐野 でも、武藤が引退を発表したときに相手は蝶野をリクエストしていたけど、実際に蝶野で締めちゃったわけだからね。これはすごいよね。
――この手は考えつかなかったですねぇ。
小佐野 デビュー戦で勝った相手に最後に負けて終わる。ちゃんとストーリーを完結させてるんだもん。いまのコンディションで試合を受けちゃう蝶野も大したもんだけどね。
――蝶野さんは解説席に座るときに、花道から登場する演出でしたよね。あのとき杖を突いて歩くくらいの状態だったのに、リングの中では往年の動きを見せて。
小佐野 急遽レフェリーを務めたタイガー服部さんが最初からシューズを履いていたとか野暮な話が出てたけど、いまの蝶野がリングで試合をするってホントに大変なことだよ。
――武藤さんも内藤戦だけでもう動けなくなる可能性もあったわけですからね。
小佐野 蝶野だってリングに上がった瞬間、「やっぱり無理……」となっちゃう恐れもあるわけだから。リングに立った人しかわからないですけど、リングの距離感って難しいんですよ。久しぶりのリングでちゃんと動けた時点ですごいなって思いますよ。
――やっぱりプロレスラーなんですね。
小佐野 思い出したのはマサ斎藤さん。昔インタビューしたときにパーキンソン病で調子が悪くて本当に動けない。でも、レスリングのタックルの取り方の話になったら、「こうやって入るんだ」ってパッと動けるんだよ。やっぱりプロレスラーなんだなぁってびっくりしたよね。
――武藤さんも普段は車椅子だったりするのにリングだと走れますからねぇ。
この続きと萩原京平、サトシ、鬼越トマホーク坂井、ぱんちゃん璃奈…などの4月更新記事が600円(税込み)でまとめて読める「13万字・記事16本」の詰め合わせセットはコチラhttps://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/202304この記事の続きだけをお読みになりたい方は下をクリック!1記事150円から購入できます!
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