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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「【『パシフィック・リム』解説 3 】 イメージの源流は “クトゥルフ神話” だった」
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岡田斗司夫の毎日ブロマガ「【『パシフィック・リム』解説 3 】 イメージの源流は “クトゥルフ神話” だった」

2018-05-23 06:00
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    岡田斗司夫の毎日ブロマガ 2018/05/23
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    今回は、ニコ生ゼミ5月13日(#230)から、ハイライトをお届けいたします。

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     【『パシフィック・リム』解説 3 】 イメージの源流は “クトゥルフ神話” だった


     さて、『パシフィック・リム』の監督を請け負うことになったデル・トロが、これから作り出そうとする巨大怪獣のイメージとして、まず持ってきたのが、これです。

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     これは、スペインの画家のフランシス・デ・ゴヤという人の作品だとされていた絵です。

     まあ、10年くらい前に美術館が鑑定した結果、「ゴヤの弟子の作品だ」と分かったんですけども。
     
     『巨人』という名の絵画作品なんですね。


     こういうふうに、下には人が住んでる村落があり、その地平線の向こうには雲よりも遥かにデカい人間がいて、何かと戦っている。

     これ、完全にファイティングポーズを取ってますよね。

     もともとは『狂気の山脈にて』で、人類の知らない旧支配者とク・リトル・リトルの戦いの歴史を描こうとしていたデル・トロ監督は、それと同じようにして怪獣と巨大ロボットを描きたいというふうに言い出したんですよ。

     こういうイメージを使う事によって、『狂気の山脈にて』で考えていた「巨大な怪物同士が戦う」というイメージをそのまま使えることが、ほぼ分かってきました。

    ・・・

     この『パシフィック・リム』の大怪獣は、太平洋の真ん中に開いた “ブリーチ” と呼ばれる海の底の割れ目から出て来て、太平洋の沿岸を襲うんです。

     タイトルにもなっている “パシフィック・リム” とは何かというと、パシフィックは太平洋のことで、リムというのは淵のこと。

     つまり、太平洋の淵である沿岸部が襲われるという意味なんです。

     サンフランシスコとか、マニラとか、日本とか、オーストラリアとか、香港とか、襲われるところは全部、パシフィックのリムなんです。

     なので、そういうタイトルの映画になっています。


     ところで、この『パシフィック・リム』には、関係者の書いた小説版がありまして、その中にこんなエピソードが書かれているんですよね。


     “イェーガー計画” という、対巨大怪獣ロボット計画の資金が膨れ上がり、「こんな計画は役に立たないから辞めろ!」と言われたことがあったんです。

     イェーガー計画を推進してたり止めたりする権利を持っている委員会みたいな、ネルフでいうとゼーレみたいなところがあるんですけど。

     その委員会の会議中に、イギリス代表の人が「今後、人類は海岸線より200km奥で暮らすことにすればいい。そうすれば、怪獣が海岸から襲ってきても大丈夫だし、イェーガーなどという巨大ロボットは必要ない!」と言い放つんですよ。

     映画の中では、イェーガー計画を主導していたペントコストという黒人の司令官は、そんな話を文句ありそうな感じの顔をしつつも黙って聞いてるんです。

     だけど、この小説版には、この時、ペントコスト司令が内面で考えていたことまで書いてあるんですよね。

     「ふざけるな。イギリスのどこに海岸線より200km奥の土地があるんだ? だいたい、お前らはパシフィックのリムにいないじゃねえか! 大西洋じゃねえか!」と。

     こんなふうに、ガンガン毒づいているシーンがあって、僕は結構、好きなんですけども(笑)。

    ・・・

     この映画に出てくる怪獣というのは、もう本当に、ただの “モンスター” ではなくって、『ウルトラマン』とか『ゴジラ』に出てくる “怪獣” に近いんです。

     まず、通常兵器では全く歯がたたない。

     まあ、核兵器を使えば、実は倒せるんですけど。
     ただ、怪獣1頭を倒すのに、核ミサイルが3発必要なんですね。

     なので、怪獣が出てくる度に核ミサイルを3発も当ててたら、地球上に人類が住める土地がなくなってしまう。

     となると、どうするのかというと、怪獣の至近距離からプラズマ砲を当てるくらいしか対抗策がない。

     「だから、巨大ロボットなんだ!」というふうに、ギレルモ・デル・トロ監督たちのチームは考えました。


     怪獣と戦う兵器というのは、飛行機みたいに華奢ではいけない。

     怪獣というのは生き物ですから、とにかく予測不能の動きをするんです。

     そんな中で、飛行機のような、ちょっと当たったら壊れたり落ちたりするような華奢な兵器では近づくことすら出来ない。


     おまけに、プラズマ砲を使うわけで、ヘリコプターよりも、もっと重い荷物や電源を運べるような兵器でないと困る。

     そして、戦車よりも丈夫でなくてはいけないし、その上、戦艦より素早く動けるものでなければならない。


     こういう理由があって、このお話の中では、「ロボットしかない!」というような結論に行きつきました。

     この映画の中で、“イェーガー” というロボットは、右腕に仕込んだ “プラズマ砲” というのを、本当に怪獣の身体のギリギリの位置でぶっ放せる、そういうスーパー兵器として作られているんです。

     「なぜ、至近距離でなければいけないのか?」については、後で説明します。

    ・・・

     この怪獣と戦うロボットのイェーガーも、さっき言った通り、イメージ元がもう “巨人” なんですよ。

     だから、当初はメチャクチャ デカくデザインされてました。

     最初、デル・トロ監督は「エンパイアステートビルよりデカい」と言ってたんですよね。

     つまり、身長450mくらい。

     ロボットも怪獣も、それくらい巨大で、人間なんてとても敵わない神話的な存在として描き、そういうのが殴り合って戦う映画というのを、やりたかったと。

     でも、「それは流石に無茶だ」と言われて、何度もデザインが直されて、今現在の100mを切るくらいというサイズに、怪獣もロボットも収まってきたんですね。

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