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  • 【岡田斗司夫のニコ生では言えない話】ガイナックスが生まれた本当の理由 第5号

    2012-10-08 07:00  
    216pt
    毎月第一月曜日はニコ生岡田斗司夫ゼミの放送日。
    今号では、9月27日(木)に放送した番外編『ニコ生岡田斗司夫ゼミ ブロマガ開始記念「誰も知らないガイナックス」+「なりすまし人生相談」 』から、運営S田(助田)がおすすめするハイライトを紹介します。

    この回のハイライトはズバリ「ガイナックスが生まれた本当の理由」でしょう。
    ガイナックスといえば、皆さんご存知『新世紀エヴァンゲリオン』や『ふしぎの海のナディア』、『トップをねらえ!』など、数々の社会現象を引き起こしたアニメを作り出している映像制作プロダクションですよね。そもそもガイナックスはなぜ、生まれたのか?
    実はいままでどの媒体にも掲載されなかった「本当の設立の理由」があるらしいのです……。


    岡田:あのねぇ、ガイナックスの事でね、これまで書けなかったことがあってね。それが何かっていうと、ガイナックスの立ち上がりの話。
    ガイナックスって、伝説的にも、まあ僕が今まで書いた文章でも、大阪にわりと優秀な奴が集まってアニメを作りたいと思った、だから東京に行ってやったんだっていう、成功的な、なんか正統派なサクセスストーリーとして書いてるわけ。
    でもね、実際はダイコンフィルムからゼネラルプロダクツっていう僕がやってたお店、そしてそこからガイナックスっていうのはね、そんな綺麗なものでもなんでもない。

    あのね、ガイナックスの直接のスタートの原因というのは何かっていうと、まぁなんて言うのかなあ、俺の人望がなかったからというか……なんだよな。
    それはなんでかっていうとね、まずスタッフの要求を、しっかり僕は汲み取れないというのもあるし、あと庵野(秀明)くんがどんなに『帰ってきたウルトラマン』という8ミリ特撮映画に命を懸けているのかを分かっていながら、スケジュール通りに上がらないという理由で庵野くんを監督から降ろしちゃったりとかさ。いろんな理由があるんだよ。
    でもねぇ、自分自身でもね、これが最大だったなぁと思うのは、なんかね、その当時の、……こっから先は本当に誰も聞いたことのない話になるので、やだなぁ~。

    その当時、俺ねぇ、俺あの、一緒にSF大会とかスタッフやっていた子とさぁ、あのー、付き合ってた彼女がいるというか、結婚までしてたんだけども、浮気しちまってさあ。
    で、その女の子が「私はこれからどうなるんですか。岡田さんにはちゃんと奥さんがいるのに…」って言ったら、俺が「まぁまぁまぁまぁ」みたいな、その場限りの誤魔化しをしてたわけだよ。
    (視聴コメントを見て)「ええええええ」とか「最低だw」とか……。そう最低です。はい。すいません。
    最低だからこれまで話できなかったしさぁ、したくなかったんだけどさぁ。もうしゃあないよ、俺の仁義の通し方はねえと(笑)。で、その女の子が他のスタッフに相談してバレて、俺はもうほとんど全員から吊し上げられたんだよ。そんなことしていいと思ってんのか、っていうのもあるし、もうお前とはやってられないっていうふうに言われたのもあって。もう僕がその時に思ってるのが……。

    (視聴者コメントを見て)「そういうやつだとは思わなかった」「斗司夫にはガッカリだよ」、悪かったな(笑)。「娘さん見てるのか」、見てないと思うけどいずれ見ることになると思うよ。俺もうねぇ、娘は十年(俺に)口をきいてくれないと覚悟しながら喋ってんだけども。で、その時にね、もう俺、これ大阪にはいられないなぁと思ったのは本当なんだ。
    それがねぇ、ガイナックススタートの、僕にとって一番デカいきっかけだ。つまり、これまで自分の身内、家族以上の存在で、一生一緒にやってくと思ってた人ら全員から「お前のことを軽蔑する」「お前となんか仕事できない」って言われて、反省して頭さげて「もう一回やってください」っていうような可愛げも俺にはなかったんだよな。

    そうじゃなくて、じゃあ大阪にいられないんだったらどうすればいいんだろうっていうふうに思った。
    その時にやっぱりね、同じように考えたのが『オネアミスの翼』の監督の山賀(博之)くんで、山賀は山賀で「このまま大阪で幸せになってたまるか」って思ったんだよな。
    なんでかっていうと、庵野とか赤井って、そこそこ大阪で幸せだったんだよ。
    庵野は、『帰ってきたウルトラマン』途中で監督降ろされたとはいえ最後まで作って、次は何を作ろうかっていうふうに考えてたし。東京で『風の谷のナウシカ』とかに呼ばれて時々東京に行ってアニメーターやって、また大阪に帰って自主映画するっていう、すごい良いバランスで生きてたわけだ。
    いわゆるなんか、博多を本拠として東京に来て稼いでいる博多華丸・大吉みたいなポジションだったわけだよな。
    で、赤井くんは赤井くんで、特撮映画やりたかったから、でも東京に行って特撮映画やるっていったら巨大なスタジオシステムっていう、映画業界の中の一番下に入って何ができるのかって。
    雨宮慶太がどこまでできるっていうのか、河崎実がどんな目に遭っているのかっていうのを考えたら、そんなところに俺は行きたくないというふうに、まぁ赤井君は言っていたよ。
    じゃあ、やっぱり大阪で自主映画、8ミリやったんだから、次は16ミリ、その次は35ミリというふうに、だんだんだんだんスケールアップする――赤井くんはそういうふうな意味ではすごい戦略家であると同時に堅実家だからさ、そういうふうに考えた。
    でも山賀だけは、このままで大阪の田舎で、自主映画ですごいメジャーな奴になるっていうだけで果ててしまうのは嫌だと。
    でも、もうこの集団っていうのはここで満足してしまいそうだというところに、降って湧いた、その俺のやつがあったわけだよ。

    で、俺の方は俺の方で「もう大阪には居てられないー」って思って、山賀のほうは山賀の方で「岡田さん、大阪にいられないんだったら東京に行きましょうよ」って(笑)。
    俺はその時に、山賀と一緒にアニメ作るっていうのを、なんだろな、ほとんど逃げていく先みたいに考えてたんだよな。
    でも、ンー……百に一つじゃないな、4対1、3対1か、25パーセントくらいの勝ち目はあるというふうに見えたんだ。
    現在のアニメ業界とか、僕らが持っているものとか、あと大阪ですべての信頼を失ったとしても、現状自分が動かせる人とか影響力から考えて、東京行って、ものすごく働いて、ものすごく良い社長になって、ものすごく良いプロデューサーになったら…成功率25パーセントか、もうちょっと上までいけるんじゃないかな、と。
    山賀の方は山賀の方で、「成功率が例え10パーセントでも、俺はもう行くしかない」というふうに言ってくれたんだよ。
    じゃあ行こうかって言って、大阪のゼネプロ…だよな、を全て抜けて行ったんだよ。だから当時の、今のガイナックスやっている、俺と山賀以外の全員だよ、ほんとに全員、ガイナックスという会社ができるなんて誰も信じてなかった。
    俺と山賀だけが信じてた、というか山賀は「できなきゃ困る」だし、俺にしてみても「できなかったら帰るところがない」っていう状態で東京に行って、たった二人で始めたんだ。
    だから、なかなかその、ガイナックスが大きくなってからでも大阪から人を呼べなかったよね。なんかそこまでの自信なかったし。

    なんだろうなぁ、S田さんがさぁ、「誰も知らないガイナックス」って書いて、ガイナックスがどうやって誕生したのかとか語ってくださいよって言ったら、俺いやこの話語るしかない。
    でも、この話しないとさあ、大阪にただ単にすごい才能のある人たちが集まって頑張ったからできたんだ、運もあったし才能もあったし良い時代だったんだって話になっちゃうじゃん。
    でもねぇ、大阪にその時いたのは、俺にしても…その最低の俺にしても、山賀にしても庵野にしても、多分ね、この番組を見ている君らとそんなに変わらないんだよ。そんなに変わらない奴らがガァーっとやってたから、こっからアニメ作るぞ、と。
    バンダイにプレゼンして3億円とか4億円の劇場の映画作るぞって言っても、ほんとに誰ひとり信じてくれなかったんだよな。だから、なんかねぇ、あんまり英雄談みたいに考えてほしくないっていうのはあるなー。

    (企画・編集:ドワンゴ 助田徹臣)


    ◆【今週の書き起こし】ニコ生岡田斗司夫ゼミ番外編 9月27日放送分 全文書き起こし
  • 【岡田斗司夫のニコ生では言えない話】誰も知らないガイナックス「ナディアのお蔵入りシナリオ」第3号

    2012-09-24 07:00  
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    数カ月前、ニコ生岡田斗司夫ゼミの放送終了直後。 ドワンゴスタッフが機材撤収をしている中、岡田先生が突然キラキラした目で、「S田さん、ナディアでは使われなかったエンディングがあるんだよ。どんなシナリオか聞きたい?」と話しかけてきたことがあった。 (なぜ番組中にその話をしないんだ?)と思いながらも、「是非、その企画で今度番組をやりましょう!」と軽い返答をして、そそくさと帰社。そのまま、その番組企画はたち切れになってしまったことがあった。 ちなみに「ナディア」とは 、発明好きの少年ジャンと謎の少女ナディアが万能潜水艦ノーチラス号に乗り込み冒険を繰り広げる、1990年にNHK総合で放送されたガイナックス製作のアニメ作品「ふしぎの海のナディア」のことである。以後、ナディアという単語を聞くと「お蔵入りになったナディアのエンディングって!?」という疑問で頭がよぎる日々が続いた…。 幾月が経ち、場所は岡田先生同席のブロマガ編集会議。数ヶ月も企画を放置してきた申し訳なさよりも、好奇心が上回り、つい「以前お話されてたナディアのお蔵入りシナリオの話、教えていただけませんか?」と口に出してしまった。すると岡田先生は、あの時とまったく同じキラキラとした目で「じゃあ、『誰も知らないガイナックス』というタイトルでブロマガの記事、やりましょうよ」と、ノリノリで返答してきたのだ。 そして後日、FREEexの編集の方から「資料」なるものが送られてきた。 今回はブロマガでは、その資料全文を掲載したいと思う。 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 「使われなかったエンディング」 ナディアの最終回をどういうふうにまとめるのか。 チェスのコマ、つまり「使えるキャラクター」がどんどん少なくなっていく状況です。しかも僕が突っ込んだような本編の矛盾要素は、その他にもいっぱいある。 結局ネオアトランティスは何をしたかったのか。 彼らのプロジェクトである人類を支配するってのは具体的にどういうふうな事なのか。 実はこれ、全部種明かしができていません。棚上げになったまま、お話自体は終わってしまうんです。 これに対して回答を出そうと思えば多分出せるんですけども、庵野監督が選んだ最終回は違うんですね。回答を提示するのではなく、キャラクターの行く末を見せることだったんです。 どうやって、全てのキャラの笑顔をこのお話の最後に作っていくのか。そこに力を注ぎこんだわけです。一年間このアニメを見てきてくれて、みんな絶対にハンソンやサンソン、グランディスを始めとして、ナディアもジャンもエレクトラもマリーも好きになってるはずだと。じゃあ、好きになってる心の決着点を作る必要がある。そこに庵野監督は集中しました。 でもガイナックスの負け組、当時の僕や貞本君、前田君たちが考えたのは、さっきも話したバランス、「心の温度管理」をしながら、冷まさないままでも、どういうふうにすれば、このお話全体が決着するのか。キャラクターではなくて、お話とか指し示すもの自体が、どういうふうに決着するのかってずっと考えていたんです。 なので、最終回のシナリオが上がるまでずっと候補にあったのが、もう一つのエンディングでした。 もう一つのエンディング、ラストは一九四五年です。 僕らが考えていた設定では、まず最終話前半で、大人になったジャンとナディアが描かれます。 ジャンは科学者になり、ナディアはニューヨークタイムスの記者になります。発明好きのジャンが科学者は当然として、ナディアは彼女の持っている正義感や環境に対する危機感がジャーナリストの仕事に生かされて成功するわけです。やっとナディアが「アトランティスの末裔」以外で自分が役立つことを証明できた、そんな彼女の人生を描きたかったんです。 一九〇五年、ジャンは世界で初めて飛行機による大西洋横断に成功します。パリからニューヨークまで飛行機で飛んできたジャンをニューヨークで迎えるのが、ニューヨークタイムスのナディア記者。二人の恋の成熟も予感させるクライマックスです。 で、ラストのラストは一九四五年。月日は四十年も流れて、第二次大戦が終結する瞬間です。 なぜ一九四五年なのか。 実際の最終回であったナディアのお兄さんを生き返らせた残酷なやり方を、ガーゴイルは「これが科学の力だ」と言うシーンがありました。それを聞いたジャンは「科学の力……」とつぶきます。 これは一話からずーっと、ジャンというキャラクターが信じてきた科学というものの根拠を疑った瞬間です。 それまでもちろん、ノーチラス号の中で人が死んだりはするんですけども、紆余曲折はありながらも科学というものに対してジャンは、否定的な考えを持ったことがない。 科学は、色々悪い人がいれば悪いように使われるかもしれないけど、人間を幸せにするための道具であり文明の象徴であって、人が喧嘩したり奪い合いをするのも、たとえば科学の力で食料が一杯出来ればそういうふうなことがなくなる、天国への階段だというふうに思ってる。 ジャンは、科学が発展する方向に必ず人々の幸せが存在すると信じています。科学を信仰しているんです。 一九〇五年、ジャンは単独大西洋横断をして、ナディアがそれを迎えてくれる。このシーンはジャンの人生の頂点です。 ジャンにとって科学は輝いて見えます。 しかし一九四五年のパリ、ナチスドイツに蹂躙されたパリの街並がどこまでも広がります。その片隅で、老夫婦になったジャンとナディアが終戦のニュースをラジオで聞いています。 「ヒロシマとナガサキで新型爆弾が使用され、日本は降伏した。正義の科学の力でようやっと戦争は終結した」という放送です。 ジャンは科学者ですから、その爆弾とは何を意味するのか、想像がつきます。ついに人類は核兵器を使ってしまった。人間がまたガーゴイルに一歩近づいたと解るわけですね。 開けてはならないパンドラの箱。自分たちが命を賭けて守ったはずの箱。ナディアのお父さんが命を賭けて人類から隠して、滅ぼした筈の箱。 ガーゴイルが持っている悪の科学の力を、人類自身の手によって開けられた瞬間だと、ジャンは知ってしまうんです。 日本に新型爆弾が落ちて、もちろんパリの街は万歳万歳です。連合国が勝ったんだから。実際の歴史でも、世界中が「これで戦争が終わった」とお祭り騒ぎでした。 当時のアメリカでは、アトミック・カクテルという飲み物が流行りました。「俺たちの原子爆弾のおかげで別れた恋人が再開した」というレコードが吹き込まれて発売され、正義の力「核兵器」みたいなキャンペーンがはられました。 それは、政府が「核兵器が良い物だ」というキャンペーンをしようとしたのではありません。 「あの呪わしいファシスト達が起こした戦争を核兵器がようやくおさめてくれた」と言う勝利の凱歌、民主主義の凱歌だったんです。 でもジャンとナディアはそうではないことを、少年少女時代に知っています。 科学の力をジャンはなんとか信じようとしていたけど、二度の世界大戦と原子爆弾の投下によって決定的に心が折れてしまうんです。 ラストシーン。 年老いたナディアがラジオのスイッチを消します。同じく年老いたジャンに「ジャン、あれは出来たの?」と聞く。「出来たよ」って屋根裏に行くと、すごく古びたロケットがあるんです。ジャンがそのシーツをぱっとはがすと、老夫婦のジャンとナディアは若い頃の姿に戻って、ピカピカのロケットに乗って宇宙へ飛んでいく。 そういう最終回を僕らは考えてたんです。 (中略) ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 『ふしぎの海のナディア』について、さらに詳しい話を9月27日20時30分から放送予定です。 http://live.nicovideo.jp/watch/lv109074177