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  • 【岡田斗司夫のニコ生では言えない話】岡田斗司夫に12万円も払おうなんて「どうかしてるぜ!」第47号

    2013-08-26 07:00  
    220pt
    FREEex入って一年半が経過しました無銘のマサフミです。
    7月7日FREEexプライベート説明会の模様を、前回とは別の参加者を迎えてお届けします。

    前回・今回と、文字起こしはFREEexの新メンバー達の手によるものです。
    自分たちの発言を自分で文字起こしした初仕事の成果と、彼らの今後にご期待ください。

    こうしてFREEexに集まってくるのは一体どんな人達なのか?
    私がこれまで見たところでは、職業も趣味も関わり方もバラバラで傾向を掴むことはできませんでした。
    唯一の共通点は岡田斗司夫に12万円も払う「どうかしている」人達ばかりであるということ。

    「もしかして、私もどうかしてしまったかも……」とお心当たりのある方は、FREEexプライベート説明会までお越しください。

    いま来ないなんて、どうかしてるぜ!


    ************************************
    <参加者A>
     昨日、メールを見させて頂いて思ったんですけど。
     岡田さんは最初、2、3年前までは自分を無料化するという考えで、「ああ、それはすごいな!」と思っていたんですけど。
     昨日のメールを見る限りでは、やっぱり無料だけじゃなくて、有料化もいれないといけないって感じがするんですね。

     で、その構造を見てますと、なんだろう?
     言い方はひどいかもしれませんけど、社員のみなさんが岡田さんを持ちあげて、岡田さんを独り占め……っていうかな? あまり外に出さないような感じがするんですね。

    <岡田>
     ほうほうほう。

    <参加者A>
     まあ、有料化ということで——

    <岡田>
     有料化。
     ええと、あれの有料化は何かというと、「メンバーは僕を使って儲けていい」という意味なんです。

     なんだろうな? たぶん、 有料化の最大のポイントは2つあって。
     1つは、全てを無料にすると見てもらえなくなる。
     普段、有料のもの、例えば、金曜ロードショーでジブリがジブリ映画を無料で見せると急にみんなが見るのと同じように。
     基本的には有料の枠をはめておいて、好きなタイミングで無料化することによって、見る人を増やすことができる。

     ずっと無料にしているというのは“図書館”みたいなもので、実は閑古鳥が鳴いている。
     そうではなくて、もし“ツタヤ”みたいなものがあって、週に1回無料デーっていうのを作ってたら、そういうツタヤには行列ができるんですね。
     じゃあ、ずっと無料で公開できる図書館がなんでガラガラで、週に1回無料デーを作ったツタヤは行列ができるのかって言うと、これは「いつでも無料化できる」というパワーなんですね。
     無料というのはツールであって、手段であって、目的ではない。
      僕らにとって「岡田斗司夫のコンテンツを無料にする」っていうのは、手段であって、目的はなにかというと「その普及」なんですね。
     というのが、その有料化の理由の1つ。

     で、もう1つは……これはもう本当にぶっちゃけの話なんですけども。
     メンバーが3年も在籍していると、彼らの経済状況がどんどん変わるわけですね。
     これは法則でもなんでもないんですけども、 「FREEexに入ろう!」と決心した時が一番、仕事もなんとかいけそうで、そして年間12万払える自信があるタイミングなんです。
     で、こっから先、それが落ちていく可能性が高いわけですね。「あ、なんか今年無理だ」とか。
     その時に、「じゃあ、もう無理だからやめようか」というふうになっちゃうと、そこで付き合いが切れてしまって、なかなかもったいないんでですね。僕らとしても。

     だから、 本業ほどではないんでしょうけども、月に1万円とか2万円ぐらい稼げるような場としてのFREEexというのを作ろうと思ったんですね。
     それが有料化のもう1つの理由で。


     だから、例えばブロマガでやっている『ニコ生岡田斗司夫ゼミ』ってありますよね。
     あれも、ニコ生に登録している人だったら、ほとんど無料で見れるんです。有料で見る人もいるんですけど。
     その有料はなんでかというと、「後でタイムシフトで見る人は有料でないと見れない」とかですね。無料で見れる人を最大化して、「有料にしたらこんなオプションがつきますよ」というようなのをつけているんです。

     そうやって有料にしたお金はどうなるのかっていうと。
     そのタチワニっていう会社が儲けて、ヤムアキくんみたいな所に給料がいったり、今、下に“タチワニカー”っていうタチワニで買った車があるんですけど、こういうのがあったりするんです。
     あとは、結構、豊富な機材を買っていて。
     現在、僕らは最初カメラ1台しか、それもメンバーの人が手持ちで出したビデオカメラしか持ってなかったのが、今はビデオカメラが3台あって。
     それの切り替えのスイッチャーとかも、これらもブロマガで儲けたお金で買ったものです。
     だから、有料っていうのを有利に使いたいと思っていますけれども。


      独占っていうのは、どうでしょうね?
     岡田斗司夫を独占しているということでは……ああ、そうなのかもわからないですね。
     逆に言えば、僕、FREEexのメンバー以外の人とはあまり親しく話す必要を感じないんですね。

     そりゃ、外部の人とは話しますよ。
     例えば、来週、僕は“小飼弾”のところへ行ってちょっと話したり、“田中圭一”さんという漫画家の人と打ち合わせをしたり、いろいろ打ち合わせするんですけども。
     それは外部の人と「このアニメの企画どうでしょうね?」とか、「システムどういうふうに組んだらいいのか?」っていう話で。
     ところがそれを持って帰ってきて、「こんな話してきたんだ」って話す相手は、やっぱりFREEexのメンバーになるんですね。
     はいはい。

     で、それでも僕、構わないと思うのは。
     普通のアーティストとか、普通のクリエーターっていうのは、わけのわかんない取り巻きに相談してるんですよ。
     そうじゃなくて、 「俺はその、わけのわかんない取り巻きを有料化している! おまけにメンバーも全て公開していて、限定にしてるぞ!」 っていうのが圧倒的にクリアなんです(笑)

     同じ様な事を、実は、たぶん、メディアに出ている人は全員やってるんですけど、それが誰かはわからないんです。
     お気に入りの後輩かもわかんないし、家族かもわかんない。とりあえず不透明なんですね。
     これをこちら側は徹底して透明にやっている、と。その場合、12万円もらっているわけなんですけど。
      その代わり、その12万円以上取り返すチャンスというのを、みんなに渡している。

     というわけで、 こないだまではFREEexは“参加費”と言っていたんですけど、今はたぶん投資に近いんです。
  • 【岡田斗司夫のニコ生では言えない話】岡田斗司夫の最終面接、次の面接官は君だ!第46号

    2013-08-19 07:00  
    220pt
    FREEexに入るまでは、岡田斗司夫に会ったことがなかった無銘のマサフミです。
    7月7日に行われたFREEexプライベート説明会の模様をお届けします。

    東京・大阪で毎月開催されているプライベート説明会は、FREEex参加を考えている方々が岡田斗司夫に直接会って、疑問や不安など何でも質問できる場となっています。
    本来プライベートな内容ですが、本文中<参加者>と記されている新メンバーの方々の許可を得て、個人面談を除き公開します。

    FREEexは「社員が社長に給与を払う会社」と喩えられてきました。
    では入社も、「入社希望者による社長の面接」をした上で一緒に働くかどうか決めるべきでしょう。
    興味を持たれた方は、説明会の日程を公式ブログ「岡田斗司夫なう」で随時ご確認ください。性別・年齢・学歴不問でお待ち致しております。

    どんな質問にも答えてくる岡田斗司夫の最終面接を、次回はぜひ一対一でお楽しみください。


    ************************************
    <岡田>
     こっから先はですね、向こうにもう一つ部屋があって、それは僕の仕事部屋で。
     あの、今いるここも仕事部屋は仕事部屋なんですけども。よくあそこの席でニコ生ゼミをやってますよね?
     ただ、ここは“見せるための仕事場”でありましてですね。こんな片付いた環境で人間仕事なんてできるはずがないんですよね。
     で、あっちに“カオスの部屋”がありましてですね。皆さん、ちょっと1人ずつそのカオスの部屋に来ていただいて、それぞれのプライベートの面談というか、質問があったら……他の人の前では聞きにくい質問があったらしていただいても構いませんし、あと、FREEexに関係なく「ちょっと個人的にこういうふうなところで悩んでる」という話でも構いません。
     1人ほぼ20分くらいいけると思いますんで。で、その20分はもう皆さんの好きなようにお使いください。

     で、ここではですね。
     一応、前日までに皆さんにメールを送ったんですけども、あのメールで……僕らもですね、このシステムで説明会を行うのは初めてなんですね。
     前回までは、だいたい僕は一時間ぐらい、あのメールに書いていたような内容を、ダーッと説明して。
    「いかがですか?」、「わかりますか?」っていうふうに言って、「じゃあ、個別に面談を〜」ってやってたんですね。
     ただ、そうすると個別の面談の時間があまりとれないんですよ。
     なので、今回からはちょっとこういうシステムにしてみました。

     ってことで、そうですね、15分か20分くらい皆さんの質問に答えたいと思うんですけど、なんか聞きたいことありますか?
     ——はい、どうぞ。



    <参加者A>
     FREEexの、あのシステムからいうと、金額の上下を抜きにすると、いわゆる“定額制のファンクラブシステム”じゃないですか?
     で、まぁそれがたまたまちょっと、普通のファンクラブと比べると10倍くらいって感じなんですけど、その値段付け以外に、この「いわゆる定額制のファンクラブとは違うんだよ!」ってのはありますか?
     もちろん、仕事を回すとか、そういうシステムはあるんですけど、その「もっともここが根本的に違うよ!」っていう点があれば。


    <岡田>
     フリラックっていうのがあの中に書いてあったと思うんですけど、あそこがたぶん1番違います。

     で、 なにかっていうとFREEexのメンバーは、僕らのコンテンツをベースにしてビジネスすることができると。
     で、それでお金稼ぐことができるんですけども、そのお金稼いだ場合ですね、稼いだお金のほぼ儲かった額の半分くらいを“フリラック室”というところに入れるんですね。
     つまり、会社の所得税みたいなもんなんですよ。そうするとそのフリラック印税というのになってですね、そのフリラック印税は全員に分配されるんですね。

     なので、 12万円払うんですけども、返ってくるシステムっていうのを今年の4月から始めました。
     で、初年度の目標は「メンバー1人あたり1万円から3万円をペイバックする」ですね。
     2年目3年目からはもうちょっと大きくしていって、僕の目標では3年目ぐらいには12万円を返すというのを目標にしてます。
     そうすると、皆は年間12万円払って12万円返ってくるから、実は実質上払ってないっていう。

     つまり、 FREEexへの参加を“投資”にしてもらおうと思ってるんですね。これまでは一方的に払い切りの仕組みだったのを投資にすると。
     そうやって、例えば社内では働く人に社内通貨でお金を、普通のバイトよりは安いんですけど、払うことによって金額的なインセンティブっていうんですかね、動機付けみたいなものを得てもらう。
     で、 なんでこんなことをやるのかっていうと、「起業ごっこがやりたいから」ですね。
     メンバー1人ひとりが会社を作る楽しみというのを感じてほしい。これだったら、ものすごく小額のマネーと小さいリスクで会社を作れるんですね。

     だから、現にうちのメンバーの中でも僕のコンテンツを使って電子出版始める人が結構いるんです。
     電子出版っていうのは本当に、お金ゼロでできるんですね。会社を作ったら、会社の登記とかでお金かかっちゃうんですけど、“個人商店”にしちゃったらもう登記すらかからない。
      ほんとにゼロ円ではじめて、で、幾ばくかのお金を稼ぐことができる。
     で、稼いだらすぐに他の人を、ものすごく安くでもいいから雇って、お金を回すっていう練習をしてくれと。
     普通のところで会社作って、で、ダメだったら倒産ってしていくと、すごいダメージ大きいし、チャレンジとして大きいんですけど。
     これだったら、1日に30分とか1時間っていう仕事の片手間で起業できて、自分で会社を作って、他の人を雇って、ダメだったら、「あ、ごめん」て言ってペタンと潰しちゃえるんですね。

      あの、よく“会社を起業する塾”っていうのはあるんですけど、倒産させる塾って絶対ないんですね。
     でも、僕、倒産させる方がずっと大事だと思うんですね。ダメだと思った時にいかに早く、辞めて痛み少なくして次のチャレンジするのか。
     今後3年間とか5年間で3つくらい会社作って、で2つくらいダメだったから1つ生き残ってるってやり方が1番確実に、なんか自分のやりたいことやる方法じゃないかなと思って。
     こういうフリラックシステムっていうのと同時に、メンバーがうちのコンテンツを使って、自由にビジネスを始める仕組みというのを作りました。
     で、それを、できるだけ推薦してます。

     ここが1番の差ですね。はい。

    <参加者A>
     ありがとうございます。
  • 【岡田斗司夫のニコ生では言えない話】僕の中の11歳のSF少年が「小野不由美ダメでしょ!」と叫ぶ。第45号

    2013-08-12 07:00  
    220pt
    はーい。ついてきてくれましたかあ~?  「岡田斗司夫のSFの読み方」いよいよ最終回です。 会場からの質問に答える岡田の舌鋒ますます冴え渡ります。 “歩くTED”岡田がついに明かす、プレゼンテーションの技法! 面白い本を勧めたいときに、「これはやっちゃいけない!」のは何? そして、“これからのSF”とは?  岡田が「全力で止める」こととは? SFの読み方だけでなく語り方までしっかりお持ち帰りください。“読書のミホ”でした。 ************************************
    <質問者>
    岡田さんの中で「これはダメだ!」というSFの見分け方、ありますでしょうか? <岡田> ダメなSFですか。 あのねぇ、“SFの黄金期”の定義を、さっき僕は「1950年代です」って言ったんですけども。 こういう、時期で定義する方法と、もう一つあって。 「SFの黄金期は“11歳”」 つまり、その人が11歳の時に読んだ本が一番面白いって考え方なんですね。 自分の人生で11歳の頃の、自分の目をひらくようなSF。SFファンは、“センス・オブ・ワンダー”って言ってるんですけども。 僕、小学校の時に、林間学校で高野山に行って。星空観測ってのがあったんですよ。 理科が得意な先生が、「あの一つ一つの星は実は太陽と同じで、周りに惑星が回っていて、そこの上に人間みたいのがいて、そいつらがまたやっぱり山ん中で合宿しながらこっちを見てるかも知れない。それが無限にあるのが宇宙だ」って。 なんかゾッとするような、いきなり自分の世界が「うわぁっ!」と広がるような感覚があったんですね。 その“センス・オブ・ワンダー”を感じられるのは、11歳から13歳ぐらいの時が一番強いと思うので、その時代に読んだSFはやっぱいいSFだと思います。 逆に言えば…… 人から勧められて、「これいいよ!」って言われても、面白くないものはいっぱいあるんで、どうしようもないです。 たとえば僕、小野不由美の『屍鬼』が嫌いで嫌いでしょうがないんですよ。(会場笑) 僕はもう、『屍鬼』という小説一本で小野不由美という作者を評価してて、「お前はスティーブン・キングの『呪われた町』をパクった人だね?」っていうふうに決めちゃってるんです。 たぶん、小野不由美のファンが聞いたら全員反論すると思うんですけども、僕は2冊並べて1ページ目から比較しながら、「ほら、小野不由美ダメでしょ」って言えるんですよ。 これは、僕が11歳の頃に小野不由美を先に読んでたら、全く逆だと思うんですよ。 それくらい、この自分の「うわぁっ!」っていう感覚をひらいたのは、スティーブン・キングが先で。二十歳くらいの時だったから、ものすごいびっくりしたんですね。それと似たようなものを見たら全部“偽物”に見えちゃう。 だから、ダメなSFっていうのは、たぶん自分にとって“近親憎悪”なんですね。 「ギリギリ近くまで来てるのに、なんでそこ外すの?」とか、そういうのが…… 小野不由美さんごめんなさい(笑) <質問者> 私が何かを勧めると、絶対それを誰も読んでくれないって現象が起こるんです。でも、先生のお話を聞くと全部読んでみたいと思うんですね。 この、なにかを語るときの、人に紹介するときの、こう……なんて言うんですかね? <岡田> プレゼンテーションの技法? (質問者、頷く) それを、“歩くTED”と呼ばれる僕に説明しろと? (笑) なんでしょうね? 「一カ所しか説明しちゃダメ」なんですよ。 『百億の昼と千億の夜』でいったら、冒頭部分のプラトン、ブッダ、キリストが一番面白いんですよ。 ここを重点的にやって、あとは後半にある面白そうな部分をパンパンとやったら、聞いてる人が頭ん中で勝手に想像しますよね? この “勝手に想像する部分” を作るんですよ。 自分が「ここまで言おう」と思ったら、その一つ手前で止めるとか。あと、ある風景だけを想像させて、それ以上説明しないとか。 さっきの『スターキング』という話だったら、やっぱり僕が語りたい部分ってのはすごい単純で。 「会計士がニューヨークに帰って星空を見た時にどう思ったか?」の瞬間。そこだけ説明すれば、この感覚がわかる人は読んでくれるだろう、なんですよ。 やっちゃいけないのが全部説明することだったり、面白さそのものを言おうとすること、だと思います。 <質問者> 「これからのSFはこんなんじゃないのか?」とか、「これからSF作るんだったら、こんなの作る」というのが、もしあれば、お伺いしたいです。 <岡田> SFというのは、“時代の要請”で生まれるんです。 メジャーな文芸ジャンルというのは、所詮、時代の要求で生まれるんですね。 戦争があって、テクノロジーで自分たちの生活は変わるということになると急にSFがガーッと進化する。 しかし、そういう要請がなかったら、スペースオペラとか、『ハリー・ポッター』みたいな形で、日常的なお話の中にまみれていってしまうんですね。 今の僕らの世界というのは、ネット社会があるから、SFとしてはネタが出しやすいかというと、すごく“出しにくい”んですね。 1950年代以前の時代だったら、「次はロケットだ! ロボットだ! 電子計算機だ! ヘリコプターだ! 空飛ぶ車だ!」というふうに、単純に予想しやすいんですけども。 アイデアを思いついても、それを商品化することができないぐらい技術的な障壁が高かったわけです。 そこにはSF小説が生まれる余地があるんですけど。 ネット社会の場合は、誰かが思いついたら、商品化とかツール化することができてしまう。 これが一番大きな差です。 つまり、 現実の商品企画そのものがSFになってしまった。 だから僕は、iPhoneとかiPadみたいなものが現代のSF作品だと思っているんです。 便利さを買ってるんではなくて、そこにあるストーリー性とか、「それによって僕らの生活がどういうふうに変わっていくのか?」という“可能性込み”で買ってるんだと思うので。 SFというのは、今、お話ではなく、映画でもなく。 1950年代までのSFというのは小説だったんですけども、60年代からテレビドラマになり、80年代から映画になった。 2000年代、特に2010年から以降は、SFというのは商品となって僕らの中に入ってくる。 こうなると、“SF小説”というのはなかなか生きていけないので、もう僕は、「これからのSFはどうなっていくのか?」ではなくて、 今回僕が勧めたように、あえて古いのを読むのが一番楽しくて、いいSFの楽しみ方だと思います。 だから、これからSF作家になろうと思うという人がいたら、僕は止めますね、全力で。 「それは無理!」というふうに。
  • 【岡田斗司夫のニコ生では言えない話】ファンのマゾヒズムを刺激する海外SF、萩尾望都も匙を投げた日本SF。第44号

    2013-08-05 07:00  
    220pt
    この連載のおかげで、長年本棚に眠っていた、レムの『ソラリスの陽のもとに』(2001年27刷)とクラーク『2001年宇宙の旅』(2001年14刷)をついに読んだ“読書のミホ”です。 みなさんも、岡田斗司夫のお薦めSFをどれか読んでみましたか? さて、いよいよ佳境です。どこを切っても、ありえないほど濃ゆ~い“岡田味”のSF解読、70年代から一気に現代まで駆け抜けます。 今日の課題図書にもなった『神の目の小さな塵』。70年代のSF代表作の一つです。 これは“ファーストコンタクトもの”というやつです。“わかりやすく派手なスターウォーズ”と“内面や社会を描く時期”のちょうど間の時代だったもんだから、いいとこ取りをしてるんですね。 左右非対称で不思議な“モート人“という宇宙人が出てきます。 舞台となってるのは、今から千年後の“銀河帝国”です。銀河全体には“地球文明”というのが広がって、その結果、帝政ローマのような帝国主義を築くことに成功している。 地球人は、どこまで行っても、原始生物とか動物みたいなもの以外、宇宙人と会ったことがない。「結局、この宇宙には人類以外に知的生命体なんかいなかったんだな」と思い始めて500年ぐらい経って。 いきなり銀河の向こうから宇宙船がスーっと入ってきて、それが太陽に向かってると。 一生懸命そいつを捕まえたら、中の宇宙人は死んでしまってて、それが左右非対称で、右腕が2本、左腕が1本しかない。さらには首がなくて……という不思議な姿をしてるんですね。 「ひょっとして、人間だって、右腕が2本のほうがうまく物事ができるんじゃないのか?」と考えてしまうほど、うまく合理的に進化した生物だったんですよ。 その宇宙人を発見したことにより、宇宙船が改良されて、モート人の惑星に行って、彼らとコンタクトする。 すると、地球人にとっていろいろ衝撃的な、何でこんな社会を作ってるのか……モート人というのは、技術者とか王族とか医者とか、あらゆる階層ごとに“形態”が違うんですね。 その種族間では結婚できない。身長も違えば生殖器まで違うから、子供を作ることすらできない。 そのように分化した種族の中で、“コミュニケーター”と呼ばれる各種族間の意思疎通だけをする種族がいる。 それが地球人に向かってきて、あっという間に英語を覚えて、コミュニケーションをとりだす。 彼らは、生物の本能として、考え方がわからない他の種族と考えを共有することができるという珍しい種族なんです。 そういうモート人たちと地球人たちと出会いの物語が『神の目の小さな塵』です。 これは、ほんのちょっと前の50年代ぐらいのSFだったら、“ストレートなSF”として書かれたんですけども、なんせ『スターウォーズ』の世界の影響をそろそろ受けてるんですね。 つまり、“単純化による面白さ”というのの影響を受けてるから、あくまでキャラクターとしてのモート人のかわいさ、面白さというのがかなり出ちゃってる作品なんです。 だから、読みやすい。 あと、これは他のSFと違って、“ベストセラー小説”として作られた。 アメリカのヒットしたテレビドラマは、いろんな人物の考えてることやいろんな物事が同時進行することによってお話が進んでいくんですよね。 それと同じように、艦長だけでなく、その恋人、青年士官、科学者、犯罪者でもあり宇宙一の金持ちでもある老人、いろんな人が自分の立場からのお話をずうっと進行することで、ものすごい厚みというのを作ってる。 「これぞアメリカのベストセラーの作り方!」という、見本みたいな本です。 (…中略…) でね、クラークさん。『2001年宇宙の旅』とか、『地球幼年期の終わり』を書いた、イギリス人の作家、アーサー・C・クラーク。 この人の『宇宙のランデヴー』という作品が、70年代にポンッと出てきました。 これ、すごい不思議な話なんですね。 ここまでのSFの進化で出てきた“SFを読みやすくする工夫”が一切入ってないんです。 2030年ぐらいに、宇宙の彼方から巨大な円筒形、シリンダーがやってくるというだけの話。 (ホワイトボードに巨大な円筒形を書き込む) “地球に向かってくる”んじゃないんですよ。直径7キロのこの円柱が、まっすぐ、地球を抜けて、太陽のほうへ向かって落ちていくんですね。 「“300年とか何世代もかけて星から星を旅する宇宙船”じゃないか?」って地球人が考えて、“エンデヴァー号”という宇宙船を飛ばす。 どんどん近づいていくと、“ロケットの噴射口”もなにもない。どうやって星の間を行く速度に加速したのか、どうやって飛んでるのかもわからない。ただゆっくり回転してまっすぐ飛んでるだけ。 回転速度を調べてみたら、中の重力がちょうど地球と同じぐらいだというのがわかる。 もう、その辺で、みんな嫌な予感がしてるんですよね。 「これ絶対、内部に生命住んでるよ!」と。 「そうでなかったら、こんなちょうどぐらいの遠心力で重力なんか作れるはずがないし、こんなに面が真っ平らで、正確な円形のものを作れるはずがない。これ人造物だよ!」と。 エンデヴァー号は、でっぱりと点がある中心付近に着陸する。着陸した瞬間にその合理性がわかるんです。 そっから先も、見ただけで、圧倒的に僕らの文明より進んだ、どんな未開人にも使えるような仕組みで。でも、この物体、表面の劣化とかを計算しても、どう考えても40万年以上前のものなんですよ。 それで、延々、中へ降りていくと、わけのわかんない生物の、わけのわかんない機械だけが並んでるっていう小説なんですけども。で、生きているものが1つもないんすよね。 僕が言ってる話、かなりわけわかんないでしょ? ただ、ものすごく面白いんですよ。(会場笑) こんな、女1人も出てこない、恋愛沙汰もない、エンデヴァー号の船長と地球とが交信してて、「ナニソレ?」「いや、わかんないよ!」って言ってるだけの話が面白いんですね。 船長はどんどん奥へ行くんですけども、タイムリミットがある。 こう、地球をかすめて、太陽に向かって落ちていって、そのまま太陽に飲み込まれて、死んでしまう。 だから、「取れるだけのデータを取ろう」と、いろんなものを持ち出そうとするんですけど、博物館みたいな感じで、あらゆるものが台座から動かない。 「もうだめだ。脱出するしかない!」「さあ、脱出しよう!」って瞬間に、中の灯りが“ババババッ”と点くんですよね。 実はこいつ、延々、太陽のエネルギーを表面で受けてたんすよ。 で、氷がとけて、遺跡だと思っていた自動機械たちがゆっくり動き出して、彼ら本来の活動を始めるんですね。メンテナンスとかを一斉に。 その場にいる人間たちを無視して、この宇宙船は動き出すんですけど、それでも太陽に向かって落ちていく。 「もう逃げなきゃいけない!」  写真だけ撮って、エンデヴァー号がやっと逃げて行って。 「ああ、あんなに高度な、40万年後も動くような自動機械を作っていた宇宙人たちの宇宙船も滅びてしまうのかあ!」と思っていたら。 太陽に向かって“バーッ”と落ちてたものが、どんどん白熱化してエネルギー貯めてたかと思うと、急にコースを“ギュウーン!”って、ありえない方向に変えて宇宙の彼方へ行っちゃうんですよ。 見ていた科学者たちが 「ああ、ニュートンの第2法則が消えていく……」 って言う(笑) まったく理解できない方法で“ギューン”と。で、エンデヴァー号が“ギュワー”って航路が動いちゃうんですね。 まるで、でっかい船の近くを通った小舟が、波の影響で動いちゃうかのように、何もないはずの宇宙空間で、いきなり方向転換した「ラーマ」っていうこの巨大な物体のおかげで、“ギューッ”と自分の船たちが回転していって。 消えてくのを見るしかない。 ……すごい不思議な話なんですよ。 ラストで、科学者がハッと顔を上げて、「ちょっと待てよ!」と。 「ラーマ人は何でも“3”だよな……?」と思ったら、レーダーの彼方にもう“2つ”、映ってるんですよね(笑) それで終わるっていう話で。 あの、たぶん、皆さんはこれ買わないだろうと思って、俺もう全部言っちゃってるんですけども(笑)。 こういうですね、SFも先祖帰りをして、あえて古典的な「技術っていうのにどんな面白いことがあるのか?」を突き詰めた作品です。 そして、“宇宙人と地球人が出会う”っていうのは、単に「ハン・ソロ、お前の命をもらった!」とか「俺はメタンガスしか吸えねーぜ!」みたいな、そういうのじゃなくて。 この『宇宙のランデブー』で書かれているのは、圧倒的な、絶望するぐらい遠い、地球人類のレベルと宇宙人のレベルの差なんですよ。 これは、なんでしょうね?  僕らSFファンの“マゾヒズム”って言うんですかね?  「地球人じゃ全然かなわねーよ! でも、宇宙に行ったらあんなスゲーヤツらがいるのかもしれない!」っていう。それともあの『ドラゴンボール』で悟空が言う「オラ、なんだかゾクゾクしてきたぞ!」みたいな。 あんな感覚がして僕は好きです (…中略…) さて、「じゃあ、日本人にはそういうスケールのデカいSFは書けないのか?」 ……書けます。 光瀬龍が書いた『百億の昼と千億の夜』というSFモノがあります。 これ、とんでもない作品でですね、最初にプラトンが出てきて。 プラトンが旅してたら、「アトランティスてのを知っているか?」「いや、知らない」と。 紀元前の世界に、“パラボラ・アンテナ”とか“電子レンジ”のようなものが存在している寂れた村があって、そこでアトランティス伝説が語られる。 その夜、プラトンは「アトランティスがなぜ沈んだのか?」の夢を見る、っていうのが“プロローグの1”としてちょっと語られて。 プロローグの2が、いよいよシッダルタ太子がシャカ王の元を離れて……(会場笑) 「やめてください、あなた! 私たちを捨てて行かないで! 」 「私は“仏教”というものを作るのじゃ!」 「じゃあ、この子を踏んでいって!」 「オッケー!」 “ぎゅう”って赤ん坊を踏む、という、有名なブッダの旅立ちのシーン。 4人のバラモン僧がシッダルタを待っていて、亜空間にそのまま連れて行かれる。(会場笑) そこで“銀河同士の戦い”ってのを見る、と。 銀河と銀河が総力を挙げて“コバルト爆弾”を落としながら青いレーザー光が進む中、アシュラ王という、天の神様に対抗する軍団がもう数億年戦い続けているという話を聞く。 「勝てるはずがないのになんで彼は戦うことをやめないんだろうか?」 「ではシッダルタ太子よ、アシュラに会ってみるか?」と。 そのアシュラ王が、“絶世の美少女”で。 周りで原子爆弾がバンバン炸裂してる中、二人で「まぁ、勝てないのはわかってるんだけど戦うんだよ」みたいな話をして。 次の話が、いよいよ“ゴルゴダの丘でキリストが磔にされる”という話で(笑) 「なにこれー!?」っていう、すっげーエピソード3連発のあと、全ての文明が崩壊して、人類が崩壊して、この地球上からあらゆるものがなくなってしまった“超未来”に……なんだろ?   “不思議な3人組” ですね。 プラトンの生まれ変わりと、釈迦の生まれ変わりと、アシュラ王の生まれ変わりが、宇宙を旅して、最後、「56億7000万年後に弥勒菩薩が救済に来る」という伝説の正体をつきとめに行く、っていうスゲー話です。 萩尾望都が漫画にしたんですけども、あまりのスゴさに、上下巻2巻で「無理!」って言って逃げたっていう(笑) 次は、『天地明察』で賞を取った、冲方丁の記念すべき代表作、『マルドゥック・スクランブル』です。これは、先ほどのSF史的に言うと“ネット社会”以後のやつです。