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記事 412件
  • 「子どもを寝かし付けているうちに寝落ちしてしまう理由」

    2021-09-17 07:00  
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     残暑も峠を越し、彼岸花が咲き誇る季節に入った。午後8時過ぎ、山側に面した寝室の窓を開けると鈴虫の声とともに秋風が通り抜けていく。静かな夜だね、と家族三人でベッドの上で大の字になる。間に挟んだ娘から保育園であったことをあれこれ聞きながら、妻と顔を見合わせ、今日も無事に過ごせたことに感謝する。もう1年半以上こんな暮らしだ。世界はどんな夜を迎えているんだろう。かつては眠らない街と言われた東京も、夜8時以降は眠るようになったのだろうか。去年の秋頃だったか、渋谷のラジオのサテライトスタジオで午後10時に生放送を終え、車を停めていたスクランブルスクエアまで歩いたときは怖いくらい街に人がいなかった。
     

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  • 「夏休みの練習」

    2021-09-15 07:00  
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     緊急事態宣言は延長されたが、一時は100人を越えた市内の感染者が一桁まで減ったところで、1ヶ月に及ぶ登園自粛協力を解除することにした。「長い夏休みたのしかったよ」 久し振りの登園で家を出たところで僕を見上げて娘が言った。親に気を使っているのかもしれない。だって久し振りに先生や友達と遊べるうれしさが全身から溢れ出していたから。「1ヶ月がんばってくれて本当にありがとう」と僕は両親の在宅勤務につきあってくれた娘に礼を言った。
     

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  • 「サイレント・プロテスト」

    2021-09-10 07:00  
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      朝食の後、娘と二人で浜辺を散歩する。1㎞先まで続く砂浜には誰もいない。当然だ。平日の午前9時。多くの人は働いている時間だ。本来なら僕も娘を保育園に送り届けてパソコンに向かっているところだ。書きかけの原稿を気に掛けながら「まったくもう」と独りごちる。「誰もいないね」と娘も淋しそうに呟く。こちらも当然だ。もう二週間近く友達と遊べていないのだ。
     

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  • 「2021年8月31日」

    2021-09-06 07:00  
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      朝起きて、歯を磨いた。明け方こそ浅い眠りだったが、トータルで7時間近くは眠った。ぬるい白湯を飲んで、脇の下に体温計を入れる。安定の36.5℃。免疫力が高いことの証明だ。とはいえ、昨日から便通が悪い。ストレスで腸の動きが悪くなっているのが自分でも分かる。
     2021年8月31日。なんだか夏休み最後の日を迎えた小学生みたいな気持ちだ。朝食は昨日娘が突然食べたいと言い出した赤飯。おめでたいときに食べるものなのよ、と妻が教えた。赤紙が届き、出征を翌日に控えた日本人はこんな気持ちだったのだろうか。おめでとう、という見送りの言葉をどんな気持ちで聞いていたんだろう。
     

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  • 「母が遠くなる」

    2021-09-01 07:00  
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     それは、4歳の娘を膝の上に乗せて母とビデオ通話しているときに発覚した。「ワクチンの予診で子どもの頃に薬や予防接種でアレルギーを起こしたことがあるかどうか聞かれたんだけど」 成人後に市販薬でアナフィラキシーを起こしたことがあると申告したら確認しておくよう言われていた。
     

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  • 「あたらしい文字」

    2021-08-30 07:00  
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     日記をつけ始める人が増えているそうだ。一寸先は闇という混沌とした世界の中で〈生きた証〉を刻みつけておきたいという根源的な欲求なのだろうか。
     

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  • 「夏が終わった」

    2021-08-23 07:00  
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      夏が終わった。一度も半島の外に出ることができないまま、ぼくらの夏が終わった。窓の外にはまだまだ夏の名残りがあるけれど、その夏を心から楽しむことが今年はもうできそうにない。
     

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  • 「海の心を見つめ、風の歌を聞き、星と話そう」

    2021-08-20 07:00  
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    「あ、いちばんぼしだ!」
     夕闇が迫る空を見上げて娘がうれしそうに声を上げる。そして「星がまたたいていると明日は雨なんだよ!」とか「かさ雲が見えると明日は雨なんだよ!」などと明日の天気を予報してくれる。 
     天気予報という与えられる情報をまだキャッチできていない娘は夕暮れの空で明日の天気を予想する。そこには人類の文明が進化を遂げてきた過程を見せて貰っているような感慨がある。
     

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  • 「つまんないつまんない」

    2021-08-18 07:00  
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    8月17日火曜 曇り時々小雨
     四歳の娘がヨシタケシンスケさんの「つまんないつまんない」という絵本ばかり読んでいる。
     緊急事態宣言下での自治体からの「保育園の利用を最小限にして下さい」という通達。子どもたちの感染リスクを少しでも減らす為に保育施設の利用は医療従事者やエッセンシャルワーカーに留め、それ以外の方は自宅での保育に協力して欲しいというお願いだ。登園自粛要請と何が違うのかといえば、営業補償が必要かどうかというものらしい。頭では理解できるが、その狡猾さに対する腹立たしさもある。と言うと、そもそも三歳以上は保育料無償で預かっているんだからと批判されてしまいそうなのだけれど。登園させて感染しても、登園させずに仕事が滞って収入が落ちても自己責任という納税者に丸投げの姿勢が腹立たしい。
     

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  • 「時間どろぼう」

    2021-08-16 07:00  
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      小さな壁掛け時計を買った。時針は黒、分針は赤とそれぞれ文字盤の色と対になっている子どもにも優しいデザイン。娘が保育園で時計を見て生活することを始めたのにあわせての購入だった。辿々しくもしっかりとした言葉で確認するように時を告げる。目が覚めたら朝で、陽が沈んで眠くなったら夜と太陽と体内時計だけで時を計っていた娘が、古代エジプトで生まれた「時刻」を読み始めたのはまるで人間の進化を目の当たりにしているかのようでなんとも感慨深い。一方で、この世界に新しく入って来た人に何の説明もないまま、生まれる前からのルールを受け入れさせるのってフェアじゃないんじゃないの、という危惧も心の片隅にはある。
     

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