• このエントリーをはてなブックマークに追加

チャンネルと同時入会でプレミアムが初月無料!(0円)

記事 363件
  • 「夏が通り過ぎていく」

    2020-09-16 07:00  
    110pt
     海沿いの国道を走り始めたら、秋だった。 湿り気を含んだ涼風。湿気に反応して汗を搔くのに、肌の表面は風に吹かれて冷えていく。ようやく夏の暑さに慣れた身体が気候の変化に追いつけていない。 追いつけていないのは身体だけじゃない。
     

    記事を読む»

  • 「ラジオ」

    2020-09-09 07:00  
    110pt
     週に一度、仕事机に置いたTASCAM製の音声収録機器でラジオの録音を始めて半年が経った。意図したわけではないけれど大抵決まった曜日の決まった時間だ。
     

    記事を読む»

  • 「音のない打ち上げ花火」

    2020-09-02 07:00  
    110pt
     八月三十一日の夕暮れに感傷的になってしまうのは少年時代の名残りなのだろうか。今年は例年以上に何かをやり残したような静かな後悔に襲われた。と言っても何をやり残したのかすらわからない茫漠としたものなのだけれど。
     

    記事を読む»

  • 「2020年8月31日」

    2020-08-31 07:00  
    110pt
     八月三十一日について書くのはこれで何度目だろう。そのくらいぼくにとって八月三十一日は特別なのだ。子どもの頃の八月三十一日の過ごし方がぼく自身の生き方を決めたとさえ言ってもいい。 
     

    記事を読む»

  • 「祭りのあと」

    2020-08-28 07:00  
    110pt
    2
     青い空に夏休みの宿題で描いた水彩画のような入道雲がのんびりと漂っている。国道を埋めつくしていた車列も最近はまばらだ。砂浜を彩っていたテントも消えた。梅雨明け以来、砂を巻き上げて濁っていた海にも高い透明度が戻った。
     

    記事を読む»

  • 「母が見ていた風景」

    2020-08-14 07:00  
    110pt
     ぼくが暮らす秋谷は農漁村であると同時に別荘地でもある。古来より風光明媚な地として知られる立石の絶景は江戸時代に安藤広重によって描かれ、明治時代には葉山御用邸を訪れていた陛下お気に入りの場所となり茶寮が作られた。夏目漱石がその才能を高く評価した作家泉鏡花「草迷宮」の舞台でもある。大正昭和には企業の保養所が次々と建設された。ぼくが生まれるまで銀座で働いていた母も夏休みに会社のみんなと泊まりがけで訪れたことがあると話していたから少なくともその頃にはもう都会で暮らす人々にとって束の間の非日常を味わう場所になっていたのだろう。
     

    記事を読む»

  • 「元に戻ろうとすればするほど元に戻ることができなくなっていく」

    2020-08-07 07:00  
    110pt
     梅雨明けと同時に連日の猛暑だ。去年までと同じようで、違う夏だ。雲の白さも海の青さも去年までと同じはずなのに違って見えるのはそれを見つめているぼく自身の心が去年までとは違ってしまったからなのだろう。普段はその変化から目を背けるように生きているのだろう。家族三人で顔を付き合わせて食卓を囲んでいるときなんかは特に。そこには以前と変わらない日常があると信じていたかったのかもしれない。無意識のうちに。テレビではなく、ラジオばかり聴いているのと同じように。
     

    記事を読む»

  • 「未来を予測するもっとも簡単な方法は」

    2020-08-03 07:00  
    110pt
    1
     リモートワークになったのを機に郊外への移住が少しずつ始まっている。その動きを知ってか知らずか政府は観光とリモートワークをセットにした「ワケーション」なるものを推進しようとしている。一方で飲食業やアパレル業、観光業やぼくも生業としている娯楽文化を提供するサービス業の業績は転落の一途を辿っていて、新しいビジネスモデルへの転換やあたらしい働き方への変化を迫られている。
     

    記事を読む»

  • 「一進一退」

    2020-07-31 07:00  
    110pt
     幕が上がるかどうか分からない舞台の稽古をしている人たちがいる。公開日が決まらない映画の仕上げをしている人たちがいる。ぼくも似たようなものだ。一進一退。すべてが感染状況と二転三転する国家権力の対応に振り回されている。ぼくらの自由や基本的人権、そしてひとり一人の命の重さとそれを命駆けで守ってくれている人たちのことなど彼らの目には見えていないのではないだろうか。感染収束と経済復興という大命題。その難局を乗り越えるという大義名分の下ではすべてが許されると思っているような気がしてならない。
     

    記事を読む»

  • 「旅するように暮らす」

    2020-07-27 07:00  
    110pt
     ここではないどこかへ―――。 なんて魅惑的な響きなんだろう。三十代まではいつもその甘美な影を切実に希求していた。その影を追い掛けるように移動していた。ときにはオートバイで、そしてときには自分の足で。さすらうことに憧れていたんだと思う。「さすらう」という言葉を実感を込めて使ってみたくて。たぶん、小さな子供が「冒険」という言葉を使いたがるのと同じように。
     

    記事を読む»