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記事 12件
  • 「都会の憂鬱、田舎の憂鬱」

    2023-03-29 07:00  
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     都会の憂鬱なんて言葉がある。言葉にするとボードレールやランボーのような文学的格調もあるけれど、実際にはまるで良いものじゃない。生の空虚さなんて煙草と同じで健康に支障をきたすだけだ。かくいうぼくも都会暮らしの頃はいつも鬱々としていた。様々な化学物質の粒子で霞がかった空のような、奥歯の小さな痛みが消えないときのような心持ちでいることがほとんどだった。事実都会暮らしには郊外や田舎暮らしと比べて鬱病の発症リスクが20%高いというデータもあるそうだ。
     

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  • 「運慶」

    2023-03-06 07:00  
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     仏師という生き方に憧れを抱くようになったのは海辺の町で暮らし始めてからだ。欲望を掻き立てる繁華街もない。そういう俗世間の欲望と距離を置いたせいだろうか。それともただ単に年齢のせいだろうか。都会に出た頃、懐に入れていた「分不相応な金を稼ぎたい」というギラギラしたモチベーションも波が石を磨くように角を削がれすっかり丸くなった。これが足るを知る、という奴なのだろうか。育てる野菜は自分たちが食べる分だけでいい。二十代の頃のように自分を磨り減らしてまで働くこともなくなった。だったら妻や子どもとの時間を大切にしたいと思うようになった。もっともあの頃は仕事以外に夢中になれるものがなかっただけなのかもしれないけれど。
     

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  • 「海の中で何が起きているのか」

    2023-03-03 07:00  
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     ワカメがおいしい季節だ。朝収穫されたばかりの黒々としたワカメを沸騰した湯の中に丸ごと放り込む。みるみる緑色になっていく。それをザルに開け、まな板の上で刻んでポン酢で頂く。葉もおいしいが、やっぱり茎ワカメのシャキシャキ感が塩気と相まってたまらなくうまい。三浦半島の春の味のひとつだ。
     

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  • 「びーだんだん」

    2023-02-24 07:00  
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     子どもが海に行くたびに砂浜でBB弾を拾い集めてくる。数年前までは「びーだんだん」と間違って覚えていた。かわいいからそのままが良かったけどいつの間にか「BB弾」に修正されていた。オレンジ。緑。白。みんなで取り合いになるんだそうだ。「これ、何に使うものか知ってる?」
     

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  • 「河津桜」

    2023-02-20 07:00  
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     海辺の河津桜の蕾がゆっくりと小さな花を咲かせている。凪の海も柔らかな光を放っている。小春日和だ。絵に描いたような平和な週末だ。荒れ狂う2023年の世界が嘘のようだ。
     

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  • 「ありそうでなかったもの」

    2023-02-15 07:00  
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      この辺りはタコが名物だ。 凧ではない。足が八本で黒い墨を吐く、あの蛸である。黒潮による栄養豊富な海流のおかげでタコの餌となるアワビやサザエなどの貝類や伊勢エビなどの甲殻類が数多く生息するおかげで、神奈川県内でも水揚げ量はトップクラス。丸々太った身は歯ごたえがありつつも柔らかく、噛めば海の滋味が口の中に溢れてくる。「佐島の地ダコ」といえば、ちょっとしたブランド品にもなっている。
     

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  • 「キャンプみたいだね」

    2023-02-10 07:00  
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     朝、リビングのエアコンが停止した。 メーカーにエラーメッセージを伝えると基盤故障とのこと。生産から10年が経過しているため交換部品もなく修理不能だという。「新しい製品への買い換えをご検討下さい」
     

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  • 「そして、海辺暮らしに戻っていく」

    2023-01-04 07:00  
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  • 「2022年12月26日」

    2022-12-28 07:00  
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     娘はまだクリスマスの余韻に浸っている。朝、ぼくが仕事に出掛ける時もサンタの帽子を被り、白髭をつけて「赤鼻のトナカイ」を歌い踊っていた。
     

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  • 「2022年12月24日」

    2022-12-26 07:00  
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     大時化だった。日本海側を吹雪に見舞っている強い寒気の影響で前日から波浪警報が出続けていた。風が悲鳴を上げていた。シラス船は連日休漁で、昨日は大きな波のうねりを捉えようとしていたサーファーの姿も今朝はもうなかった。
     

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