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記事 63件
  • 「海鳴り」

    2024-01-01 07:00  
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     海鳴りのような轟音で目を覚ました。まだ真夜中だった。眠っている妻と娘を起こさぬようベッドを出る。カーディガンを羽織ってリビングに向かう。水をひとくち飲んで窓の外を見ると暗闇の中で白波が狂乱し、幾度も岸壁で砕け散っていた。風が唸っていた。神々しいうねりがイルカの群れのように絶え間なく押し寄せて来る。強烈な寒波だった。
     

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  • 「猫」

    2023-12-06 07:00  
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     三浦半島――特に南端の三崎は猫の多い町だ。
     

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  • 「人生に勝ち負けはあるのか」

    2023-10-20 07:00  
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     人生に勝ち負けなんてないと最初に言ったのは誰だったのだろう。すべてを手に入れた勝者か。あるいは這いつくばって悔しがる敗者か。それともどちらでもない神なのか。その言葉は羨望の眼差しを回避するための慰めか。あるいは劣等感を塗り潰すための強がりか。それとも真実なのか。
     

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  • 「2050年の大根飯」

    2023-09-22 07:00  
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     おろぬき大根の季節だ。畑で小ぶりなほうれん草くらいの大根葉を引っこ抜くと5センチから8センチくらいのひょろひょろした白い根が顔を出す。そう、おろぬき大根とは間引きした大根のことである。
     

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  • 「チゴガニのダンス」

    2023-05-08 07:00  
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       一年でもっとも湘南の海が混雑する5月の大型連休。天の邪鬼なぼくらは、森へ行った。
     

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  • 「みどりの日」

    2023-05-05 07:00  
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     新緑の香りがする南風が心地良い朝だった。
     

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  • 「余白の効用」

    2023-03-08 07:00  
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     海を見ている日々のせいだろうか。心の中に余白が生まれたように思う。
     

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  • 「フードロス」

    2022-12-16 07:00  
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     都会から来た車がたまたま通り掛かった精肉店から1m以上ある三浦大根を抱えて出てくる人を見掛けたら間違いなく別の店で買ったものだと思うだろう。ならその大根を精肉店に入る前は持っていなかったとしたら―――。
     

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  • 「12月」

    2022-12-09 07:00  
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      12月になるたびに辿ってきた足跡を振り返ってはやり残したことを指折り数えて溜息をついてきた―――30代までの話だ。
     

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  • 「寒卵」

    2022-12-07 07:00  
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     卵は冬だ。海が冷たさを増すほど魚に脂が乗って美味しくなるように、卵もまた寒さが増すたびに美味しさを増す。海辺の町で暮らすようになるまで知らなかった。近所の養鶏場で朝生んで貰ったばかりの卵を買う生活になるまで知らなかった。季節で卵の味が変わることを。
     

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