マル激!メールマガジン 2019年5月15日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム https://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第944回(2019年5月11日)
「無償化」では解決しない日本の保育事情
ゲスト:寺町東子氏(弁護士)
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幼児教育・保育無償化のための「改正子ども・子育て支援法」が5月10日、成立した。10月から実施となる。
無償化の対象は、3歳から5歳児については全世帯、0歳から2歳児については住民税非課税世帯、およそ計300万人。年間8,000億円となる財源は10月に税率が引き上げられる消費税増税分を充てるという。
「無償化というと聞こえはよいが、心境は複雑だ」と、保育の問題に長年取り組んできた寺町東子弁護士はいう。実際に「無償化」の実態を詳しく見ていくと、寺町氏の懸念の理由がよくわかる。確かに、3歳から5歳児の認可保育所と認定こども園などは完全に無料となる。これまでは収入に応じて保育料を負担する応能負担だったので、この措置によって年収が高い世帯がもっとも負担軽減の恩恵を受けることになる。
一方、基準がゆるい認可外保育施設に対しては、補助額に月額で3万7,000円、0歳から2歳児には4万2,000円という上限が設けられる。問題は5年間は経過措置として届け出のみでよいとされたことで、待機児童対策として認可外保育施設が増え、指導監督が行き届かないおそれがあることだ。この点は国会審議でも指摘されてきた。そもそも、就学前のこどもたちが通う施設の態様は様々で制度も複雑だ。親が自由に選べる状況にあるとはとても言えない。これは認可外施設にこどもを預けざるをえない親たちにとっては大きな不安となる。
保育施設での事故は、今も後を絶たない。寺町氏によれば、認可外保育施設での死亡事故の発生数は認可施設の25倍になるという。子どもを失った親たちとともに保育施設の安全対策を訴え続けた結果、3年前に重大事故に対して調査・検証する仕組みがやっとできてはいる。しかし、まだその結果が根本的な制度改革につながらないまま、待機児童対策の名のもとの規制緩和の波に飲み込まれているおそれが払拭できない。それが今回の「無償化」の懸念点だ。
「無償化」の陰に、現在の日本の保育のどんな実態が隠されているのか。「無償化」で保育の質を確保できるのか。保育士資格も持つ寺町弁護士に、社会学者の宮台真司氏とジャーナリストの迫田朋子が聞いた。
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今週の論点
・幼児教育/保育のアンバランスな「無償化」
・複雑怪奇な施設の区分け
・問題の根本にある保育士の「配置基準」
・「保育の質」をどう測り、どう高めるか
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■幼児教育/保育のアンバランスな「無償化」
迫田: 今回のテーマは「保育」です。収録日は5月10日なのですが、ちょうど今日、幼児教育無償化の法律が成立しました。そこで同法と日本の保育事情についてお話を伺いたいと思うのですが、マル激で保育を取り上げるのは初めてですね。
宮台: そうですね。昔ラジオで、民主党がやろうとした認定こども園の話をしたことがありましたが、複雑でよくわかりませんでした。
迫田: 今回もいろいろと調べましたが、やはり複雑です。この「無償化」とは一体なんなのか、課題はどこにあるのかについて,保育士の資格を持ち、社会福祉士でもいらっしゃいます、弁護士の寺町東子さんに伺っていきたいと思います。
まず、本日、冒頭に申し上げた無償化法、正確には改正子ども・子育て支援法が成立しましたが、どんなご意見をお持ちでしょうか。
寺町: 「無償化」という言葉はいいことのように思えますし、子供にお金を使おう、という姿勢が示されたこと自体はよかったと思います。ただ、やはり手放しでよかったと言えない部分が多く、複雑な気持ちです。
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