マル激!メールマガジン 2015年1月14日号
(発行者:ビデオニュース・ドットコム http://www.videonews.com/ )
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マル激トーク・オン・ディマンド 第718回(2015年1月10日)
日本が日本であり続けるための条件
ゲスト:小熊英二氏(慶應義塾大学総合政策学部教授)
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これから日本社会はどうなっていくのか。年始のマル激は、社会学者で慶應義塾大学教授の小熊英二氏を招いて議論した。
昨年末の総選挙の結果で自公政権が安定多数を得たことで、安倍政権の掲げる諸政策が当面は継続される見通しだ。その中にはアベノミクスと呼ばれる経済政策や集団的自衛権の行使を可能にする憲法解釈の変更、秘密保護法制、原発の再稼働などが含まれる。安倍政権はメディアに対する影響力も強めており、一見、権力基盤は盤石であるかに見える。
しかし、小熊氏は、安倍政権は決して強い政権とは言えないと語る。安倍首相は大きな政策変更を成し遂げているように見えて、実際はそれほど大きなことはできていないというのが、その理由だ。小熊氏は現在の安倍政権の政策の大半は別の勢力が政権の座についていても、実施されている可能性が高いものだと指摘する。安倍首相は経済政策を前面に打ち出し、金融緩和や公共事業で株価が維持され、つかの間の好況感が続く間に、戦後レジームからの脱却と言われる施策を一つでも実現したいと思っているように見えるが、今の日本では政治が世論と大きく乖離した政策を実現することは所詮難しいだろうと小熊氏は言う。
むしろ深刻なことは、自民党の支持基盤が既得権益を維持しようとする特定の業界、いうなればオールド・オールジャパンに偏っているため、現在の政策が続く間は日本の衰退が続くことが避けられないことではないかと小熊氏は言う。
もはやジャパン・アズ・ナンバーワンの時代の栄華は望むべくもないが、かといって日本の現状は決して悪くないと言う。世界のどの街を見ても、日本以外に住みたいと思えるところはないからだ。しかし、治安の良さ、清潔さ、礼儀正しさ、勤勉さといった「日本らしさ」を支えている社会的共通資本も、ここに来て急速に劣化が進んでいる。このままそれを放置すれば、治安の悪化や社会インフラの劣化など、途上国でよく見かける光景が早晩日本で起きてもおかしくはない。
そのような最悪の事態を食い止め、経済的な豊かさはほどほどでも、分厚さを持った社会を作っていくために、われわれは今何をしなければならないのか。変化のきっかけをどこに求めればいいか。ゲストの小熊英二氏とともに神保哲生と宮台真司が議論した。
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今週の論点
・安倍政権は「強い政権」ではない
・低下し続ける日本の社会力は、回復できるのか
・「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の夢を捨て、目指すべきもの
・安倍政権での「気づき」を次に活かせるか
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