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2021年9月の記事 4件

<菊地成孔の日記 2021年9月27日午後4時記す>

 秋になると、自分の忙しさがいきなり実感されるようになる。気温が下がるからだ。今月からリアルサウンドで映画批評の連載が再開されるし、写真集に1曲選曲してエッセイを書く。という連載もいい調子で続いている。当コンテンツでも、藤井風の分析と、自作歌詞の分析を準備しているところである。「UOMO」は(とうとう)ウエブ版が出たら「新連載良いですね」とったメールが(案の定)来るようになった。UOMOの連載は、僕の連載史上、最も長く続いていて、今まで誰の話題にも上がらない完全な真空状態だったのだが、これがネットだ。そろそろネットでのインタビューも止めようかと思う。それしか言ってない奴になる。というか、今、ネットに出てこない人間はミッシングパーソンで、とんでもない昔の発言から、ついこのあいだの発言までを好きなように繋げられて、名も知らぬ奴が結論を出す。そして書籍は読んで泣けるやつしか売れない。昭和とさほど変わらないとはいえ、世界は変わった、つまり、秋が来て良かった。    音楽家としてはcurejazzという、ちょっとした大仕事が終わり、今はオーニソロジーのアルバム制作に入った。正午の空は暗く、用意された楽曲は素晴らしいものばかりで、肌寒い気温の中でうっとりする。どの曲の歌詞に「カーボンニュートラル」を入れようかと思うとワクワクする「カーボンニュートラルとか言っちゃって、何が本当で嘘か分からないくせに、僕を好きというの?グリルを食べにゆこう。ワインもつけて。ガソリン車で」「カーボンにニュートラルな君は、パパにしたかった叱責を僕にし始めて止まらなくなった。口から溢れ出る止まらない二酸化炭素と、付けっ放しの家電。少なくともニュートラルな時間じゃなくない?」  

<菊地成孔の日記 2021年9月14日午後4時記す>

 curejazzの初日が終わり、2日目の本番前控え室で書いている。UAはメイク、ヘア、ファッションと一族郎党、7人ぐらい連れ込んでバンマス部屋を占拠しているので、僕はメンバー詰所を区切って第二簡易バンマス部屋を作ってもらい(頼んだわけではない。念の為)、でかいソファで横になれないので、椅子とかを巧みに使って、ソファ風にしているのだが、結局はただの長椅子なので、横になっても綱渡りのロープの上みたいだ。諦めてこれを書き始めた。    とにかく眠くてしょうがない。今は「8~9時完全撤収、店の入りは1時」とかが普通なので、個人練習を1000回やってもそれは夜中の1時から6時まで、とかなので、それから風呂に入って、タバコを吸いながら頭を整理して、寝ると8時だ。長沼の迎えが12時半にくる。サウンドチェックから終焉まで、基本的に眠い。もう国への嫌がらせに、緊自宣下ではライブはやめようかと思う。あるいは、ヒロポンをもう一度合法にしてもらうか、あるいはステージ上全体に布団が敷いてあって、ゴロゴロ寝るだけの現代音楽のライブならやりたい。寝返りを打つ音とかを観客に聞かせてお金を取るのだ。くたった演奏はしない。ベートーヴェンの第九とかをやる。ゴロゴロ寝ながら。    いきなり話が変わる。昨日、新宿駅南口まで散歩したら、ルミネの看板に「先の見えない時代だからって、恋することを諦めちゃダメだ」と書いてあって、久しぶりで苦笑らしい苦笑をした。  

ビュロ菊だより

「ポップ・アナリーゼ」の公開授業(動画)、エッセイ(グルメと映画)、日記「菊地成孔の一週間」など、さまざまなコンテンツがアップロードされる「ビュロ菊だより」は、不定期更新です。

著者イメージ

菊地成孔

音楽家/文筆家/音楽講師 ジャズメンとして活動/思想の軸足をジャズミュージックに置きながらも、ジャンル横断的な音楽/著述活動を旺盛に展開し、ラジオ/テレビ番組でのナヴィゲーター、選曲家、批評家、ファッションブランドとのコラボレーター、映画/テレビの音楽監督、プロデューサー、パーティーオーガナイザー等々としても評価が高い。

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