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2025年2月の記事 6件

<菊地成孔の日記 令和7年 2月26日>

 いきなり暖かくなった日の朝10時半に精神科に薬をもらいに行った。ものすげえ混んでいる。どうやらまた患者さんが増加傾向だそうで、歯医者が暇でぼったくり、内科と精神科は患者がオーヴァーしているわけだが、コロナの時も、震災の時も増加したらしいのだけれども、今また増えているとしか思えない。    子供の頃、麻疹が流行った時の内科の待合のように、もう椅子はいっぱい、立って待ってる患者さんや、車椅子介護付きの人とかもいて、向かいに座っている、中学生と思しきメガネの女の子が初診のあの紙あるでしょう、あれに書き込みしてるのを見ると、この子はどう具合悪いのだろうか?この紙を提出したままステージに上がったら、仲間のクルーと一緒にすげえダンスとかしそう。とか想像してしまうような女子中学生。自分が若く程度の低い映画監督とかだったら、彼女をモチーフにどうしようもない脚本とかを書いて、なんとそれが映画化されてしまいそう。な午前中が、そろそろ終わる。    昨夜は一睡もしていない。今、「刑事コロンボ研究(上)」のデジタルゲラ(とはいえ、紙ゲラをPDFファイルにしたもの)のゲラチェックを、アドベのアクロバットというソフトの結構な価格帯の奴を買って、毎日チェックしているのだが、、、、、、と、<え?今、アドベのアクロバット有料高いの買ってゲラチェックしてるって言った?アンタ紙派じゃないの?>と驚いた方もいると思うが、僕はアーミッシュとかじゃない。SUNOもUdioも実装しているし、とはいえ、ずーーーーっとアンチWord、アンチExcelだったんで、まあまあ何というか、老人に付き物とも言えるよね、算盤とか煙管とか伝票とかだったのに、いきなり普通に汎用テクノロジーに適性もっちゃう人。    

<菊地成孔の日記 令和7年 2月22日>

 これを読むのは可能な限りラジオデイズ最新回、「決闘そしてニューオーリンズ」を聴いてからにして頂きたい。もしくはこれを読んだら、すぐに「決闘そしてニューオーリンズ」を聞いていただきたい。西部劇みたいに「ニューオーリンズの決闘」としたかったのだが、決闘の相手が小田急線の自動券売機なので分節した。    母方の寿司屋は「根本」家といった。「丸子」という屋号は戦前から3代続いたもので、前回書いたように、銚子大空襲(これは有名な「東京大空襲」の帰路、「東京に落とし損ねた爆弾」を「最後に落とせる場所」が、関東最東端の銚子市だったことから、キャンプの最終日に残りの缶詰とか酒とかを全部<やっつけて>しまうのと同じで、銚子市の70%超は焦土と化し、満州から復員した父親は、国鉄の銚子駅から、半壊した実家=「きくち食堂(当時)」が見えたそうだ)を辛くも耐え抜き、戦後に新装したものの、結果、ラジオデイズある通り、花板である母方の長男である徳次郎=徳さんが潰してしまった。    戦前の銚子は勝浦、鴨川、舘山などと並ぶ千葉県の海浜リゾート地Aリーグに属していて、成田や千葉、果ては両国から観光客が来ては犬吠埼で海と海豚、日の出などを見て、歓楽街である「観音町」で観音寺詣をし、映画や大衆演劇を楽しんでから、飲食に入るのだが、「きくちの天ぷら」と「丸子の寿司と伊達巻き」は、2時間も3時間も並ばないと食えなかった。  

<菊地成孔の日記 令和7年 2月1日>

 ボブ・ディランの伝記映画(有名な自伝を元に映画化した。という意味ではない。オリジナル)「名もなき者」を試写会で見てきた。別に不快になったり、退屈したりとか、いわゆる20世紀的なネガティヴは何もない。    すっかり21世紀ハリウッドの標準装備となった「ある時代の再現性」もガッツリで、映画は60年、ハンチントン病で入院した伝説のフォークシンガー、ウディガスリーの入院見舞いに、ピート・シーガーもいる前にディランが訪れるところから始まり、65年、伝説のモンタレー・フォークフェスティヴァルで「エレキを持って、観客から命の危険を感じるほどの大ブーイングを食らう」ところで終わる。もう、AI老眼な僕だが、AIによって60年~65年のアメリカが再現されているとしか思えないものすごい精密度による再現だ。    ただ、これほど志の低い伝記映画を僕は見たことがない。呆気に取られた。アコギな商売というのは、こう言うのを指すためにある言葉だ。    この映画の価値は、「ティモシー・シャラメという、当代切ってのグランクリュの美青年が、ボブ・ディランという、風采上がらないギリギリの、異形の天才をやれるかね? やったらどうなる?」というゲスい興味、そのたった一点しかない。それ以外は、ただ、映画の時間分のシーンがくっついているだけだ。ジョーン・バエズもジョニー・キャッシュも、アルバート・グロスマンも大変良い。でも、良いだけで、映画の中で、ほとんど機能しない。  

ビュロ菊だより

「ポップ・アナリーゼ」の公開授業(動画)、エッセイ(グルメと映画)、日記「菊地成孔の一週間」など、さまざまなコンテンツがアップロードされる「ビュロ菊だより」は、不定期更新です。

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菊地成孔

音楽家/文筆家/音楽講師 ジャズメンとして活動/思想の軸足をジャズミュージックに置きながらも、ジャンル横断的な音楽/著述活動を旺盛に展開し、ラジオ/テレビ番組でのナヴィゲーター、選曲家、批評家、ファッションブランドとのコラボレーター、映画/テレビの音楽監督、プロデューサー、パーティーオーガナイザー等々としても評価が高い。

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