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<菊地成孔の日記 2024年3月18日~3月24日記す>
2024-03-25 10:00220pt103月23日(土)
ぺぺトルメントアスカラールのレコーディング疲れが抜けきれないまま週末まで仕事と宿題に対応していたのだが、今日、中国のドキュメンタリー作家、王兵(ワン・ビン)の最新作「青春」という作品を観た。
毎度お馴染み細かいことは書けないのだが、「素晴らしいのは分かっているのだが、どうも王兵は、重いし長いので苦手、、、、」という方々にもオススメの作品である。
何せ、ドキュメント映画に標準装備されている(&特にいつもの王兵マナーである=中国は常にシリアスな問題を抱えているので)「社会的な問題」に対する、重厚な対峙、が、かなり穏やかにスライドし、タイトルにある通り、撮影対象は長河沿岸にあるデルタ地帯の、子供服を製造する町工場で働く、年若い労働者。なので、見応えとして看板に偽り無し、甘酸っぱいぐらいの青春の煌めき。が力強く爽やか、そして何と尺が、たったの3時間!! 革命的に軽い(何せ王兵は、9時間越えする作品がザラではない。というスーパー長尺監督なので)!!笑。
先日「オッペンハイマー」に関して書いた通り、インターネットカルチャーがどんどんショートコンテンツ化しているという状況の前で、地上波のテレビと映画界が、「3時間平均」化している。
「オッペンハイマー」は前述のとおりだが、エマ・ストーンが文字通り体当たり演技で(臨月のまま自殺を試み、失敗した女性が、科学者によって、胎児の脳を移植されて、、、という、原作ありの長大な成長物語)、オスカー受賞おめでとうございます!の「哀れなるものたち」もほぼ3時間だ。
主人公は、<幼児的性欲を、大人の身体のまま貪れる>が故に、パリで娼館の売春婦となり、、、、という流れで、エマ・ストーンが昭和のピンク映画よりボカシが少ない、ハードなセックスシーンを熱演しまくる映画だ(=「体当たり」の所以)。
その後、売春婦仲間にクレオールの共産主義者がいて、売春婦から共産主義者に転向して、幼児的制欲が昇華され、、、という流れは、かなりのベタだと思うけれども、まあまあ、「今風」と申しましょうか、十全にフェミニスティックであり、ハードなセックスシーンが、一応、作り手の狙い通り、とするが(どんなことでも人が欲情を来す可能性はあるので)、エロくはないし、また痛々しくもない。
と、こうした流れの中、王兵が、「自分的には短めで軽い」というベクトルで3時間強、でシーンに合流したのは、いわゆる「逆コース」になるけれども笑。
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<菊地成孔の日記 2024年3月10日~3月17日記す>
2024-03-18 10:00220pt133月17日(日曜)
ぐあーもうダメだ。この1週間何をやったか全く覚えていない笑。今は日曜の深夜で、作曲の最後の詰めを明日やり、明後日がぺぺの全体レコーディングで、それが終わると、ダビングと編集が待っている。今、仮ミックスが届いたんだが、10年ぶりでレコーディングしたら、今までで一番良い作品になった気がする。
多くの方がもうご存知だと思うが、僕は、少なくとも芸術用にAIを使うことに全く躊躇がない。今までもテクノロジーに躊躇があったことはないが、AIはもう、僕の感受性の奥深くにあって、僕の音楽家としての未来像はAIが決定していると言って良い。スマホが息子だが、AIは孫だと言えるだろう。
AIが素晴らしいのは現状、「幻覚(ハルシネーション)」を必ず含んでいて、これが消えることは、どれほどAIが発達しても無くなりはしないと思われる。
例えば2期スパンクスの「ethic」のジャケットは、新音楽制作工房の田島さんという、元々、現代美術系にいた方の成果物だが、まず車のウインドウがガラ空きだし、ぱっと見、ハンドルに手をかけている女性の右手と左手が、見れば見るほどおかしい。例えは悪いが、昭和における「心霊写真」のような側面が平然と入っている。バリエーションの中には、オープンカーのフロントウインドウが、後方に付いているのがよく見るとわかる。というもの凄いのもある。
前回書いたが、僕の音楽を駆動しているのは<夢>でしかない。中南米文学のマジックリアリズム、筒井先生が日本版をたくさん書いた、あの<夢>の感覚が懐かしい。小説ではできる。筒井先生は、「難しい文学理論ではない。単に<夢そのものを文学化>するのだ」と言って名作「エロチック街道」を皮切りに「ヨッパ谷への降下」「虚人たち」等々の名作を連発した。
でも、音楽で意図的に設計して、スコアに<夢>のマジックリアリズムを含ませることは、シェーンベルクやラベルでさえ、良いところまで行ったが、手が届かなかった。
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<2期スパンクハッピーの一夜限りの再結成に際し、代役の公募を取り下げさせて頂きます
2024-03-14 10:004菊地成孔です。胸の中に、2期スパンクスへのラヴとリスペクトを抱いている、全ての皆様。あなたを愛しています(岩澤さんもどこかできっと)。
まだ、数通しかいただいていない段階ですので、これ以上増えてしまい、落胆させてしまう方を増やしてはいけないという判断も加味されて、いきなり感は拭えませんが、改めまして<2期スパンクハッピー / 6月14日の、ワンナイト・リボーンに際して、私のパートナーとして代役をしてくださる方を「公募」する>ことは全面的に取り下げさせていただきます。
応募の準備をされていた皆様に心よりお詫び申し上げます。あなたの気持ちは、痛いほどよくわかっています。本当にごめんなさい。
理由は、先日DOMMUNEにおきまして「セカンドスパンクハッピー・レトロスペクティヴ前夜祭<EVE OF FES>」というイベントを行いましたが、その最中に、あの、国内最高級であるDOMMUNEのサ -
<新曲 / 最後の、未完成の、発掘された、ヴィンテージ・ポルト>
2024-03-11 13:00スパンクハッピーのレトロスペクティヴを心待ちにしている愛好家の皆様、あなたを愛しています(岩澤さんもどこかできっと)。
現在私は、松永天馬さん(アーバンギャルド)、長田左右吉さん(電影と少年CQ proud / MG)等の、非常に頼もしい御協力の元、2度のイベントをより美しくすべく尽力しています。画像、ライブ音源共々、ご提供してくださった方々にも深く感謝致します。有難うございました。
そんな中、いわゆる「埋蔵音源」にあたる音源が(大袈裟ではなく、そう申し上げるしかないのですが)<奇跡的>としか言いようがないタイミングで目の前に現れましたので、熟考の末、サブスクリプションに追加させて頂きます。
私は、この曲のことを忸怩たる思いではっきりと記憶していましたが、正直、一生、聴くことは出来ないだろうと思っていました。ミッシング・パーソンやミッシング・ソング、あらゆる「失われたものたち」は -
<菊地成孔の日記 2024年3月4日~3月10日記す>
2024-03-11 10:00220pt63月4日(月曜)
レコーディングの準備が大詰めに入った。今、レトロスペクティヴ2併走、映画音楽本の併走で脳内ワヤクチャになりかけているし笑、ぺぺの今年は、5月以降も全て情報公開したら、古参のファンの方でも「うんわー!トムクルーズ助けてくれー!」と叫ぶほどいっぱいあるので笑、ちょっと気が緩むと、たった今、何に集中すればいいのか失いかけてしまう笑。
ぺぺの曲を書いていると、良いところで行き詰まる。息抜きにスパンクハッピー・レトロスペクティヴの準備にと、音源を聴いたりすると、入り込んでしまい(「聴き惚れて」ではないですよ。「どの曲をDJ用に音量調整するか?」とか「どの曲をライブでやるか?」とか考~え始めると、疲れてしっまーうっほーどー)、あっちゅう間に3時間ぐらい経ってしまうし、ダメだダメだとダブセクテットのライブ動画を見たら最後、「今から当日までに、これだけ吹きまくれる体力が整っているか」 -
<菊地成孔の日記 2024年2月26日~3月3日記す>
2024-03-04 10:00220pt14これがアップされる頃には雛祭りも終え、しかしペペトルメントアスカラールのアルバム・レコーディングが既に開始されているのだった!これを書いているのは初日の前の前の深夜である。
早朝に近いというのに、隣のダンススタジオからは大音量でハウスが流れていて、スタジオの扉をロックしても、キックの振動が伝わってくるのであった。もの凄い元気が溢れてきて圧倒されそうでーす。
今、ピアノの前で作詞作曲編曲を、、、というか、曲がイマジネーションの空の彼方からやってくるのを、恋をするように待っている時間である。
というわけで、今週は1日分だけで勘弁して下せえー(平伏)。
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