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記事 79件
  • IWGP女子王座の違和感の正体■斎藤文彦INTERVIEWS

    2022-10-15 21:09  
    150pt

    80年代からコラムやインタビューなどを通して、アメリカのプロレスの風景を伝えてきてくれたフミ・サイトーことコラムニスト斎藤文彦氏の連載「斎藤文彦INTERVIEWS」。マット界が誇るスーパースターや名勝負、事件の背景を探ることで、プロレスの見方を深めていきます! 今回のテーマはIWGP女子王座の違和感の正体です!

     

    Dropkick「斎藤文彦INTERVIEWS」バックナンバー■WWE総帥ビンス・マクマホン引退


    ■新日本プロレスが丸ごと直輸入された『FORBIDDEN DOOR』
    ■新日本プロレスvsAEW「禁断の扉」の行方

    ■さらばストーンコールド、トリプルH、テイカー!! レッスルマニア38


    ■追悼“レイザー・ラモン”スコット・ホール
    ■【お家騒動】シェイン・マクマホンがWWEをクビに?


    ■対抗戦?交流戦?新日本vsNOAHから見えてくる2022年
    ■アメリカで英語化されたPURORESUプロレス
    ■AEWはWWEのライバルになりえるのか


    ■コロナに散った『ワールドプロレスリング』海谷ディレクターを偲ぶ
    ■前田日明の「噛ませ犬」だけではないポール・オーンドーフの功績
    ■WWE☓新日本プロレス業務提携の噂、その出元
    ■ドラマが現実化するプロレス版・星野源&新垣結衣は?■NWAの最期を看取った男ジム・クロケット・ジュニア
    ■ビンスの黒衣、猪木の親友パット・パターソン

    ■晩年のロード・ウォリアーズ
    ■ロード・ウォリアーズの衝撃

    ■追悼! 佐山タイガー最大の難敵・初代ブラックタイガー

    ■全女消滅後の女子プロレス新世界

    ■木村花さんはドウェイン・ジョンソンのようなスーパースターになるはずだった

    ■女子プロレスの景色を変えた女帝・ブル中野■マッハ文朱が女子プロレスというジャンルを変えた

    ■新日本プロレスの“ケニー・オメガ入国妨害事件”という陰謀論■WWEvsAEW「水曜日テレビ戦争」の見方■WWEペイジの伝記的映画『ファイティング・ファミリー』■AEWチャンピオンベルト盗難事件■「ミスター・プロレス」ハーリー・レイスの偉大さを知ろう■ウルティモ・ドラゴンの偉大なる功績を再検証する■都市伝説的試合映像ブレット・ハートvsトム・マギー、ついに発掘される ■【追悼・爆弾小僧】すべてはダイナマイト・キッドから始まった
    ■プロレス史上最大の裏切り「モントリオール事件」



    ■なぜ、どうして――? クリス・ベンワーの栄光と最期

    ■“怪物脳”に覚醒したケニー・オメガ■怪物デイブ・メルツァーと『レスリング・オブザーバー』■新日本プロレスのMSG侵攻は「WWE一強独裁」に何をもたらすのか■怪物ブロック・レスナーを通して見えてくる「プロレスの作り方」■追悼・マサ斎藤さん……献杯はカクテル「SAITO」で■皇帝戦士ビッグバン・ベイダーよ、永遠に■ジャイアント馬場夫人と親友サンマルチノ、2人の死――■ベルトに届かず…されど「世界に届いた中邑真輔」のレッスルマニアを語ろう ■ステファニー・マクマホン、幻想と現実の境界線がない生活■ロンダ旋風、中邑&ASUKAダブル優勝!! ロイヤルランブル1万字総括■アメリカンドリーム、ゴールダスト、コーディ……ローデス親子それぞれの物語■ジェリコvsケニー実現で考える「アメリカから見たプロレスの国ニッポン」■みんなが愛した美人マネージャー、エリザベス!■職業は世界チャンピオン! リック・フレアー!!■怪死、自殺、大事故……呪われた鉄の爪エリック一家の悲劇■ミスターTからメイウェザーまで! WWEをメジャー化させたセレブリティマッチ
    ■WWEの最高傑作ジ・アンダーテイカー、リングを去る■『1984年のUWF』はサイテーの本!
    ■プロレス史上最大の裏切り「モントリオール事件」


    ■オペラ座の怪人スティング、「プロレスの歴史」に舞い戻る



    ■超獣ブルーザー・ブロディ

    ■「プロレスの神様」カール・ゴッチの生涯……
    ■『週刊プロレス』と第1次UWF〜ジャーナリズム精神の誕生〜




    ■伝説のプロレス番組『ギブUPまで待てない!!』 
    ■SWSの興亡と全日本再生、キャピトル東急『オリガミ』の集い
    ■ジェイク“ザ・スネーク”ロバーツ…ヘビに人生を飲み込まれなかった男■追悼ジミー・スヌーカ……スーパーフライの栄光と殺人疑惑

     
    ――今回は、新たに設立されるIWGP女子王座について語っていただきたいですのが、そのIWGPを設立した猪木さんがお亡くなりになりました。
    フミ 日本中の人たちがアントニオ猪木さんの思い出を語ったり、ビデオで猪木さんの試合をまた観たり、猪木さんに関連する本を読んだりしていますね。誤解を恐れずにいえば、天皇が崩御されたときのような雰囲気ですね。
    ――猪木さんに関してはあらためて振り返る機会もつくるとして……猪木さんが設立したIWGPに女子王座ができるわけですが、本日スターダムの記者会見があったそうですね。
    フミ ついさっき、その記者会見から帰ってきました。今日は「秋の大発表祭り」と銘打って3部構成。2時間ちょっとの記者会見だったんです。
    ――かなり長い会見ですね。
    フミ 3部構成で発表されたことは4アイテム。10月19日に新宿住友ビルで開催されるNEW BLOODという若手中心の興行のカード発表。2つ目が10・22後楽園ホールでトーナメント第1回戦が行われるIWGP女子王座決定トーナメント1回戦に関するお話。それから5★STAR GPというシングルのトーナメントが終わったばっかりですが、今度は10月23日からスタートするタッグリーグ戦。16チーム32名の出場メンバーが発表され、主な顔ぶれがチームごとにコメントを出したんです。
    ――32名全員ってなかなかすごい。
    フミ 4つ目が11月3日の広島サンプラザのビッグマッチのカード発表。赤いベルト(ワールド・オブ・スターダム王座)と白いベルト(ワンダー・オブ・スターダム王座)のそれぞれのタイトルマッチがあって両国国技館クラスのカード編成。記者会見自体がどちらかといえばYouTube生配信番組用の構成になっていた。
    ――いまの発表内容を聞くだけで、スターダムが乗りに乗ってる感じが伝わってきますね。
    フミ スターダムに1軍、2軍という分け方はありませんが、番付でいえば横綱、三役クラスから平幕、十両まで30名近くの選手たちが一度に壇上に並ぶわけです。スターダムの勢いを感じましたね。
    ――肝心のIWGP女子王座はどのような発表があったんですか?
    フミ IWGP女子王座決定トーナメントの概要なんですが(https://wwr-stardom.com/news/iwgppressconference/)、そこには選手間にも温度差があるというか……。選手たちからすればスターダムには赤いベルトという最高権威のものがあって、それとは別のもうひとつの価値観として白いベルトがあるわけですよね。
    ――赤いベルト、白いベルトという呼び方は全女時代から受け継がれていたものですね。
    フミ ロッシー小川さんは全日本女子プロレスからずっとプロレスのビジネスを手がけてきた方ですから、チャンピオンベルトの系譜はその流れを汲んでいる。全女にはWWWAの赤いベルトと、オールパシフィックの白いベルトというレイアウトがしっかりありました。スターダムもその歴史にならってるわけです。これらのベルト以外にも、フューチャー・オブ・スターダム、ハイスピードベルト、SWAとシングルのベルトがありますが、スターダムにはその赤いベルト、白いベルトを目指す闘いがある。では、この新設されるIWGP女子王座はいったいどこに位置するものなのかという素朴な疑問があるわけです。IWGPはもちろん新日本プロレスの最高権威のチャンピオンシップです。その女子王座新設とはいっても、やはりそれは新日本プロレス的な価値観の上に立った発想ですよね。あくまでも男性のプロレス、あるいは男性のプロレス観から眺めた景色だと思うんです。
    ――IWGPには長い歴史があるわけですし。
    フミ 女子プロレスのほうの景色、女子プロレスの価値観からはなんとなくその展望が見えてこないタイトルなんです。ひょっとしたら、IWGPのほうから見れば、赤いベルトや白いベルトよりも上にあるサムシングという発想がどこかにあるのかもしれない。今回のスターダムの記者会見を取材して、初代王座決定トーナメントに出場するスターダムの選手本人たちが、IWGPというものにあまりピンときていないように感じたんです。猪木さんの現役時代とIWGPが誕生した大河ドラマを知らないのは世代的に仕方がないとしても、オカダ・カズチカの活躍は知っているはずですよね。
    ――でも、IWGP女子王座をどういうベルトとして捉えていいのかわからない。
    フミ 王座決定トーナメントにエントリーしている選手のひとりである渡辺桃は、そこらへんが妙に正直だったというか、「IWGPとかよくわかんないんですけど……チャンピオンになったら新日本のイッテンヨン・ドームで防衛戦ができるって話なので、それだったらほしいです」とコメントしていた。
    ――面白いですね、そこまで正直で話をしたうえに団体側が統制しないのは(笑)。
    フミ そこで「こういうところではこう言うんだよ」と発言をプロデュースされていたら、本音は覗けなかったかもしれないですけど。たとえばプロレスリング・ノアという世界観で生きている選手たちは、三沢光晴さんが立ち上げたGHCというベルトこそ最高の権威だという感覚でリングに上がっているわけですよね。スターダムの選手たちがIWGPがイマイチわからないというのはウソでもなんでもないと思います。それにこの記者会見でIWGP女子王座の発表に使われた時間は全編2時間のうち、ほんの15分、20分だった。


    この続きと追悼・猪木、西川大和、平本蓮、スマックガール、ベラトール……などの10月更新記事が600円(税込み)でまとめて読める「15万字・記事16本」の詰め合わせセット」はコチラ
     
    https://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar2125440
     
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  • WWE総帥ビンス・マクマホン引退■斎藤文彦INTERVIEWS

    2022-08-15 00:00  
    140pt

    80年代からコラムやインタビューなどを通して、アメリカのプロレスの風景を伝えてきてくれたフミ・サイトーことコラムニスト斎藤文彦氏の連載「斎藤文彦INTERVIEWS」。マット界が誇るスーパースターや名勝負、事件の背景を探ることで、プロレスの見方を深めていきます! 今回のテーマはWWE総帥ビンス・マクマホン引退です!

     

    Dropkick「斎藤文彦INTERVIEWS」バックナンバー
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    ■ジェイク“ザ・スネーク”ロバーツ…ヘビに人生を飲み込まれなかった男■追悼ジミー・スヌーカ……スーパーフライの栄光と殺人疑惑

     
    ――今回はWWE最高経営責任者ビンス・マクマホンの引退についてお伺いします。フミさん、大変なことが起きてしまいました。
    フミ 大変な事件というか、歴史的な出来事ですね。でも、ビンス・マクマホンは77歳という高齢ですから、この日はいつかはやってくるものだったのでしょう。
    ――ただ、まさか不倫騒動がきっかけになったのは意外でした。
    フミ そういったやや意外な衝撃はありました。アメリカ国内では今回のこの不倫騒動は大きなニュースになっていました。いわゆるセックス・スキャンダルですね。不倫騒動そのものよりも、事実関係が判明しているところでは過去16年間に4人の契約タレント、元社員らにそれぞれ100万ドル単位の示談金が支払われていた(そのうちのひとりには750万ドル)。そこに注目が集まっていた。それは法的には示談金、慰謝料といった名目になるし、ビンス的には手切れ金、口止め料ということになるのでしょう。『ウォールストリート・ジャーナル』紙の記事によれば合計12ミリオン超(1200万ドル以上)。いまは円安ですから合計18億円ぐらいですか。今回、問題になっているのはそのお金の出どころです。この示談金の支払いにWWEの資金が使われたかどうかですね。会社のお金を使っていたとすると特別背任罪などに問われる。
    ――個人のお金であれば問題はなかった。それでもその金額には卒倒します(笑)。
    フミ WWEは株式を公開している上場企業ですから、年に4回、四半期ごとに1ドル1セントの単位までその収支が株主に公開されます。そこで会社のお金をそういうことに使ったとなると、共同オーナーでありCEO(経営最高責任者)であり大株主であるビンスが会社の資金を私用に横領したかたちになってしまうんですね。ただ、ビンスを擁護する立場があるとすれば、金額そのものはそれほどではなく、帳簿上の支払いの名目について比較的どうにでもなる……という論法が成立しないこともない。ちなみに公開されているWWEの株式のうち現在のビンスの持ち株の総額は2.4ビリオン(24億ドル)、日本円で約3268億円といわれています。
    ――すごい金額!
    フミ リンダ・マクマホン夫人の持ち株の総額は2.6ビリオン(26億ドル=約3536億円)で、ビンスのそれをやや上回っている。長女ステファニー、その夫のトリプルHはそれぞれ150ミリオン(1億5000万ドル=約204億円)の株式を保有しています。
    ――その規模からすると10億円ぐらい……ってなっちゃいますね。
    フミ 実際に会社のお金を使ったのかどうかはまだわかりませんが、FBIや検察サイドではそういう見立てができあがっていて、新聞メディアの記事もそれなりの裏づけがあるのでしょう。ビンス自身はまだ逮捕されたわけではないけれど、逮捕・起訴されて裁判になる前に経営最高責任者の座から退いたという見方が一般的です。今回の退陣は7月22日の金曜の午後1時にビンス自身のツイッター・アカウントで突如発表されました。そして同日、その7時間後にオンエアされた『フライデーナイト・スマックダウン』の生番組冒頭にステファニー・マクマホンが登場してきて「本日、父がリタイアしました」と正式発表したわけです。
    ――そのときビンスは出てこなかったんですね。
    フミ ビンス本人は番組には出てこなかったのですが、そこがプロレスファンの防衛本能みたいなところなのかもしれないけれど、この正式発表さえもアングルだろう、新しいストーリーラインだろう……と思っちゃった人たちが一定数いました。日本のプロレスファンもそうかもしれないけれど、なんでもかんでも疑っちゃうクセがありますよね。
    ――しかもWWEはこの手のストーリーがあたりまえでしたし。
    フミ もしくは引退とはいっても、どっちみちバックステージではWWEのテレビ番組をプロデュースし続けるでしょ……という見方もあるのですけが、ボクは今回は本当にビンスは引退したと考えています。ビンス自身がつねづね苦手だと公言していたツイッターを使って、わざわざ全世界に向けて同時発信したことも重要なポイントです。
    ――なるほど。ツイッターからの発信がポイントなんですね。
    フミ いまから20年ちょっと前でしたか、いよいよネットの社会になった時点でも「インターネットって何?」っていう程度の理解というかスタンスだったんですね。ソーシャルメディア、日本でいうところのSNSに関しても同じで、ビンスはわりとメディアの進化・発展に無頓着なところがあった。そのビンスが今回はツイッターを公式アナウンスの場所に選んだ。
    ――不倫騒動が初めて流れた6月17日翌日の『スマックダウン』には、ビンスがオープニングに出てきて。不倫には触れずに挨拶しましたが、あれがWWEにおける最後の登場になりましたね。
    フミ あのときはまだ「俺は全然元気だよ」みたいな感じで、ビンスがライブに出てくれば、会場のお客さんからはやんやの大喝采を浴びますよね。世間を敵に回しても、会場に集まってくれる2万人超の観客はやっぱり自分の味方なんだということを確認したわけです。
    ――猪木さんの政界スキャンダルのときもそんな感じでしたね。世間からは叩かれていたけど、新日本の会場に来れば歓声を浴びると。
    フミ そこはプロレスファンのいいところだし、プロレスファンは一般世間的にはちょっと虐げられている場合があるので、試合会場、つまりライブ空間ではそういう仲間意識がおたがいを支え合うというか、共有する思いを持った人たちが同じ場所に集っている。だからビンスにブーイングを浴びせる観客はほとんどいないというのもまぎれもない現実でしょう。
    ――フミさんは完全に引退だとおっしゃっていましたけども、ビンスはWWEの筆頭株主のままではありますね。
    フミ 会社の役職を降りたとしても持ち株は保有しつづけるだろうし、大株主であることに変わりはない。もう無理に働かなくても暮らしていけるわけですから、本人がそのつもりなら本当はもうちょっと早く引退はできたのでしょう。ビンスは1945年8月生まれの77歳です。第二次世界大戦の終戦のときに生まれました。
    ――そんな翁が現代プロレスをプロデュースを指揮していたのは奇跡ですね。
    フミ ずいぶん長くやりましたよね。お父さんのビンス・マクマホン・シニア(ビンセント・ジェームス・マクマホン)が大プロモーターだったことから、日本の活字メディアではかなり長いあいだ、ビンス・マクマホン・ジュニア(本名ビンセント・ケネディ・マクマホン)と表記されていましたが、70年代にビンスがWWFの実況アナウンサーだった時代から、アメリカのテレビ番組の画面上のテロップには「ジュニア」が付けられていたことはないんです。
    ――経営者としてはビンス・マクマホンであり、WWEの登場人物としてはミスター・マクマホン。
    フミ 1982年6月、ビンスが36歳のときにお父さんのシニアからWWE(社名はキャピタル・レスリング・コーポレーション)を買いました。譲渡されたわけではない。当時のお金で35万ドル(約4000万円)といわれていますが、シニアから正式に会社を買い取った。そして、“1984体制”から興行テリトリーを従来の東海岸エリアからいっきに全米マーケットへと拡大して、アメリカというよりも世界のプロレス界に革命を起こした。それでもライバル団体WCWを買収して全米完全制圧に成功したのは2001年ですから、ビンスの力をもってしても世界征服には20年近くの時間がかかったということですね。
    ――それから20年近く経った2022年にビンスが引退すると。あとを引き継ぐのは娘のステファニーですが、トリプルHの健康状態がよくないこともあって、ちょっと前に休養を発表したばかりでしたね。
    フミ 今回の新人事とその新体制発足を受けてステファニー&トリプルH夫妻が現場に復帰することになりました。すでに発表されている新人事は、ステファニー・マクマホンとニック・カーンの2名の共同CEO(経営最高責任者)就任です。
    ――AEWオーナーがトニー・カーンだから紛らわしいですけど、WWEのほうはニック・カーンですね。

    この続きと星野育蒔、所英男、寺田克也、ビンス引退、齋藤彰俊などの8月更新記事が600円(税込み)でまとめて読める「14万字・記事16本の詰め合わせセット」はコチラ
    https://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar2117637この記事の続きだけをお読みになりたい方は下をクリック!1記事130円から購入できます!
     
  • 新日本プロレスが丸ごと直輸入された『FORBIDDEN DOOR』■「斎藤文彦INTERVIEWS」

    2022-07-22 09:35  
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    80年代からコラムやインタビューなどを通して、アメリカのプロレスの風景を伝えてきてくれたフミ・サイトーことコラムニスト斎藤文彦氏の連載「斎藤文彦INTERVIEWS」。マット界が誇るスーパースターや名勝負、事件の背景を探ることで、プロレスの見方を深めていきます! 今回のテーマは新日本プロレスが丸ごと直輸入された『FORBIDDEN DOOR』です!

     

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    ――今回はフミ斎藤さんにAEW対新日本の対抗戦を振り返っていただきたいと思います。フミさん、よろしくお願いします。
    フミ よろしくお願いします。
    ――ざっくり聞きますけど、大会の印象はどのように感じました?
    フミ 今回のAEWと新日本プロレスの合同興行の大会名は『FORBIDDEN DOOR』(禁断の扉)。以前にもお話したことですが「禁断の扉が開いた!」は、本来は当事者ではなくて第三者の評価というか観察、分析であるべきところではありますが。
    ――“禁断”としているのは自分たちに理由があるわけですよね。
    フミ 今回は自分たちの手で「禁断の扉をこじ開けたぞ!」ということなのでしょう。『FORBIDDEN DOOR』は本戦が9試合、プレショーで4試合がラインナップされていて合計13試合。試合以外の登場人物を含めると出場選手50人数名。AEWの実況・解説のジム・ロス、トニー・シヴァーニ、タズ、エクスカリバーらが「スリーイヤーズ・イン・ザ・メイキング!」というコメントを繰り返していました。AEW設立発表が2019年の1月1日ですから、3年がかりでついにこのイベントが実現したという意味ですね。
    ――3年で新日本とコラボイベントができたと。
    フミ 「石の上にも三年」じゃないけれど、それくらいネゴシエーションに時間をかけた大きなコラボレーションだった。現AEW世界ヘビー級チャンピオンのCMパンクが負傷欠場となったため、暫定世界ヘビー級選手権というかたちで新日本代表の棚橋弘至と、AEW代表ジョン・モクスリーがメインイベントで対戦。コラボイベントとしてはベストのカードをラインナップしたと思います。
    ――超満員のアメリカのお客さんたちは新日本のレスラーたちに相当詳しい印象がありました。
    フミ 会場はシカゴのユナイテッド・センター。WWEがPPVイベントを、それこそサマースラムを開催するような大都市のビッグアリーナです。今回は1万6000人の観客が集まっていましたが、WWEのそれよりもマニア層、気合の入ったプロレスファンが多かったこともあって、新日本の選手たちに対してはすごく歓迎ムードだった。メインイベントの棚橋vsモクスリーも先に入場したがモクスリーで、あとから入場してくるのが棚橋という順番になっていた。これはAEWサイドの選択だった。
    ――それだけ棚橋を大物として扱っていると。
    フミ 今回の『FORBIDDEN DOOR』の2週間前に行われたAEWのTVショーに棚橋ら新日本勢が登場して対抗戦の予告編をやりました。そのときモクスリーは「俺がプロレスラーになる前から目標としていたのがアンタなんだ」っていうことを棚橋に訴えた。要するにモクスリー自身にとって棚橋戦は夢の一戦だといことを連呼したわけです。この時点で棚橋のほうが格が上であるという“初期設定”が明らかにされた。「“チャンピオン”とかいろんなニックネームを持つ人はいるけれど“エース”という称号を持っているのは棚橋だけだ」「棚橋、アンタに勝って、俺がエースという称号を奪い取る」ということもモクスリーはアピールしたんです。
    ――“エース”という新日本のニックネームがアメリカにも届いてるわけですね。
    フミ それくらい棚橋はものすごい大物として紹介されていた。ただ、会場にはマニア系のファンが集まっているといっても、PPVの一般視聴者層も想定しなくちゃいけないので、コメンテーター陣は、視聴者に対して親切な説明をするわけです。興味深かったのは、イベントの日付が日本時間では6月27日の月曜の午前でしたが、アメリカ時間では6月26日の日曜日の夜。そこで「いまから46年前の6月26日、アントニオ猪木とモハメド・アリが闘った」という史実についてもコメントしていた。
    ――すごいところを引っ張ってきますねぇ。
    この続きと、佐藤大輔、『Breaking Down』、青柳館長、ターザン後藤などの7月更新記事が600円(税込み)でまとめて読める「13万字・記事17本の詰め合わせセット」はコチラhttps://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar2113070この記事の続きだけをお読みになりたい方は下をクリック! 1記事130円から購入できます!
     
  • 新日本プロレスvsAEW「禁断の扉」の行方■「斎藤文彦INTERVIEWS」

    2022-06-20 09:53  
    130pt

    80年代からコラムやインタビューなどを通して、アメリカのプロレスの風景を伝えてきてくれたフミ・サイトーことコラムニスト斎藤文彦氏の連載「斎藤文彦INTERVIEWS」。マット界が誇るスーパースターや名勝負、事件の背景を探ることで、プロレスの見方を深めていきます! 今回のテーマは新日本プロレスvsAEW「禁断の扉」の行方です!

     

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    ■【お家騒動】シェイン・マクマホンがWWEをクビに?


    ■対抗戦?交流戦?新日本vsNOAHから見えてくる2022年
    ■アメリカで英語化されたPURORESUプロレス
    ■AEWはWWEのライバルになりえるのか


    ■コロナに散った『ワールドプロレスリング』海谷ディレクターを偲ぶ
    ■前田日明の「噛ませ犬」だけではないポール・オーンドーフの功績
    ■WWE☓新日本プロレス業務提携の噂、その出元
    ■ドラマが現実化するプロレス版・星野源&新垣結衣は?■NWAの最期を看取った男ジム・クロケット・ジュニア
    ■ビンスの黒衣、猪木の親友パット・パターソン

    ■晩年のロード・ウォリアーズ
    ■ロード・ウォリアーズの衝撃

    ■追悼! 佐山タイガー最大の難敵・初代ブラックタイガー

    ■全女消滅後の女子プロレス新世界

    ■木村花さんはドウェイン・ジョンソンのようなスーパースターになるはずだった

    ■女子プロレスの景色を変えた女帝・ブル中野■マッハ文朱が女子プロレスというジャンルを変えた

    ■新日本プロレスの“ケニー・オメガ入国妨害事件”という陰謀論■WWEvsAEW「水曜日テレビ戦争」の見方■WWEペイジの伝記的映画『ファイティング・ファミリー』■AEWチャンピオンベルト盗難事件■「ミスター・プロレス」ハーリー・レイスの偉大さを知ろう■ウルティモ・ドラゴンの偉大なる功績を再検証する■都市伝説的試合映像ブレット・ハートvsトム・マギー、ついに発掘される ■【追悼・爆弾小僧】すべてはダイナマイト・キッドから始まった
    ■プロレス史上最大の裏切り「モントリオール事件」



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    ――今回のテーマは新日本プロレスvsAEWの対抗戦なんですが、その新日本の飯伏幸太選手がSNSで暴走しています。
    フミ 非常に現代的な騒ぎですね。これを問題とするか、問題としないのかは意見がわかれるところではあると思いますが、飯伏選手が公開したLINEの画面はすごく生々しくてリアルでした。あのLINEのやり取りがツイッターに公開されると、ほぼ瞬時にポジティブなものもネガティブなものもありとあらゆるレスポンスがたくさんついていって、それがずっと長く延びていくのもたいへん現代的だと思いました。
    ――プロレスのスキャンダルっていまに始まったことじゃないんですけど、こういったかたちで露出するのはSNS社会ですね。
    フミ まさにソーシャルメディアの時代、SNS全盛の現実そのものが現代的だし、登場人物の飯伏幸太も非常に現代的なプロレスラー。彼は新日本の野毛道場出身ではありません。新日本のヤングライオン出身の選手だったら、ああいうふうにツイートすることでメディア(というか世間)に情報を開示することに二の足を踏むというか、沈黙を守ると思います。野毛の合宿所育ちのヤングライオンとヤングライオン卒業生たちは、いい意味でも悪い意味でもコメントにブレーキをかける訓練、あまりよけいなことはいわずだいたいのことは黙っておくというお作法みたいなをたたき込まれているし、それが美徳であり一種の処世術になっている。
    ――飯伏選手は新日本流の教育を受けてきてないわけですね。
    フミ DDTという団体のメインイベンターだった選手が、メジャー新日本に発掘され、スカウトされるかたちで年間契約し、正式に入団して、G1を制覇してIWGP世界ヘビー級チャンピオンにまでなった。ものすごいことです。でも、飯伏が野毛道場育ちで、もし元ヤングライオンだったとしたら、こういったトラブルが表に出る可能性はすごく低かったと思います。アメリカのマニア層のこの騒動に対する反応がまた面白いんです。英語圏の人たちは飯伏がどんなツイートをしているのか興味があるので、Google翻訳にかけるわけですね。でも、飯伏の日本語はGoogleでは翻訳できないというか、うまく英語化しないんです。
    ――飯伏言語は翻訳できない日本語(笑)。
    フミ ロスト・イン・トランスレーションじゃないけれど、理路整然とした日本語だってGoogleの翻訳機にかけると、変な翻訳が出てきますから、飯伏のツイートがきっちり日本語のニュアンスどおりに翻訳されていないこともあって、今回の話にはおかしいくらい尾ひれがついていきました。アメリカのマニアのあいだでは、日本から観察しているとずいぶん荒唐無稽なストーリーがかなりすごいスピードで広がっていくんです。もちろん、個人の感想とか個人レベルでの予想とか、どう見ても不正確と思われる情報とこれは正確と判断するに足りると思われる情報とがまったく同じスピードで画面にアップされていく。でも、情報内容がソートされずにです。これもまたSNSの現在進行形的な現象です。
    ――ユークス体制の新日本プロレスで、ここまでのスキャンダルはそうそうなくて。昔の新日本は頻繁に起きて、リングで活かそうとしてうまく転がったり、不発に終わったり。
    フミ それがアントニオ猪木の世界論であるならば、揉め事はすべてリングの中に持ち込め、リング上で決着をつけろとなるかもしれないですね。しかし、その場合も選手同士の行き違いを試合に昇華しなさいという発想ですが。生産的といえばひじょうに生産的な発想なんです。
    ――今回は新日本プロレスの関係者とのあいだのトラブルですね。
    フミ この騒動がどうなるかは推移を見守るしかないですが、飯伏の気持ちになって考えてみるとを、このまま元のサヤに収まって新日本プロレスのリングに上がることはむずかしいんじゃないかなと感じます。SNSにコメントを公開した時点で、もう、気持ちが切れちゃっているんじゃないかなって。新日本は新日本で、首脳陣の話ですが、それはそれで仕方ないと納得しなければならない部分もある。やっぱり新日本の選手層は厚いし、プロレスラーの感覚からすると、自分より上にいた選手が1人抜けることはチャンスなんですね。そういう状況そのものを(自分にとって)ポジティブに受け止める選手もけっこういるんじゃないかな思いますね。
    ――プロレスは「俺が、俺が!」の世界ですもんね。飯伏問題はこのあとの展開を見るとして……新日本プロレスが電撃的に発表した、アメリカのプロレス団体AEWとの対抗戦です。
    フミ イベントのタイトルが「禁断の扉(Forbidden Door)」。「禁断の扉が開いた」というのは本来、第三者が“評価”として言うべきことで、当事者が言うことじゃないんですけどね(笑)。
    ――以前から新日本からAEWに選手が派遣されていたので、もともと開いていたんですが、トップレスラー同士の接触は初ですね。
    フミ どちらかといえば、アメリカのマニア層のほうがこの対抗戦に興奮しているんですね。今回の対抗戦は6月27日(現地時間は6月26日)にシカゴで行われますが、開催場所が日本でないこと、新日本はそれまでジュニアのリーグ戦やIWGP世界ヘビー級王座を巡る流れがあったりしますから。6月に入らないとなかなかプロモーションは難しい。5月中旬の大会発表の時点では日本とアメリカでファンの温度差はすごくあったんです。
    ――アメリカのマニアには新日本プロレスのことはWWEに次ぐ団体として認知はされているけど、AEWは勢いはあるとはいえ発足して数年だから、日本のファンはそこまで詳しくなかったりするかもですね。
    フミ 実際、新日本ワールドのほうでも、ようやくAEWのテレビ番組『ダイナマイト』と『ランペイジ』が日本語の実況・解説付きで配信されるようになった。レギュラーで映像がないと、日本のファンにとってもあまりピンと来ない。新日本ワールドの中にレギュラー番組というかたちで届けられるわけだから、これは両団体の業務提携に関してはこれまでよりも何歩も何歩も前進したことはたしかですね。アメリカ開催のPPV、今回の対抗戦は日本時間では月曜日午前9時開始だから、ライブ視聴が無理なファンも多いですよね。
    ――社会人は有給を取るしかないですねぇ。
    フミ もちろん動画配信なので、時間に関係なくオンデマンド方式でいつでも観られるのですが、やっぱりライブ(生配信)の価値が高いですよね。PPV1番組あたりの値段は4980円。アメリカではPPVはすでに30年以上、テレビ文化の日常として定着しているので、これくらいのグレードのイベントだったらそれほど理不尽に高い価格設定ではないです。だけど、新日本ワールドに毎月1000円払って見ている契約世帯が、さらに1番組あたり4980円を払いなさいって言われると、なかなかいい値段だなっていうイメージはたしかにありますね。
    ――日本のプロレスにPPVはまだ根付いてないですね。フミ 今年1月、横浜アリーナで開催された新日本プロレスとプロレスリング・ノアの交流戦もPPV生配信(視聴は1回のみ)で約4000円が課金されるシステムでした。ビッグイベントに対して4000円、5000円クラスの“チケット代”の設定は、ネット上のビジネスモデルとしてすでに定着しつつあるのかなという感覚はありますね。
    ――おそらく新日本とノアのPPVに強烈な手応えもあったんでしょうね。フミ いろんな他ジャンルの同年代の友人、知人たちに話を聞いても、日本人、外国人を問わずビッグアクトのコンサートを生配信で観るには4000円、5000円は高くないですよという返事が来る。「動画配信なのに5000円は高くないか」というのは、あくまでも東京や関東エリアに住んでいて比較的会場に足を運びやすい人たちの感覚で、地方在住のお客さんは東京のライブを観に来るために交通費や宿泊費など余分な出費がかかったりするわけです。5000円程度でライブ配信が観られるのであれば決して高くはない。消費者のほうでこの新しいビジネスモデルを認めている。
    ――PPVは昔からあるシステムですけど、ビジネスモデルにしっかりと組み込まれていくってことですね。
    この続きと、天心vs武尊、平良達郎、渡辺華奈、張り手事件、イリー戴冠…などの6月更新記事が600円(税込み)でまとめて読める「15万字・記事20本の詰め合わせセット」はコチラ https://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar2106753この記事の続きだけをお読みになりたい方は下をクリック! 1記事130円から購入できます!
     
  • 追悼“レイザー・ラモン”スコット・ホール■斎藤文彦INTERVIEWS

    2022-03-20 21:53  
    130pt

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    ■超獣ブルーザー・ブロディ

    ■「プロレスの神様」カール・ゴッチの生涯……
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    ■ジェイク“ザ・スネーク”ロバーツ…ヘビに人生を飲み込まれなかった男■追悼ジミー・スヌーカ……スーパーフライの栄光と殺人疑惑
    ――今日はフミ斎藤さんの連載インタビューの配信版ということで、フミさんよろしくお願いいたします。
    フミ よろしくお願いします。
    ――今月のテーマは悲しい出来事が起きてしまいました。レジェンドレスラーのスコット・ホールがお亡くなりになってしまいました。
    フミ ボクはスコット・ホールと友達だったので本当に悲しいです。この世代のアメリカのスーパースターの中では、彼らも亡くなりましたが、 ホーク・ウォリアー、テリー・ゴーディ、バンバン・ビガロらと並び、ボクにとってはたいへん親しい人でした。何年か前のレッスルマニアではスコット・ホール、シックスパックことショーン・ウォルトマンと一緒にホテルのスイートルームをシェアして、何日間か楽しく過ごしながら寝泊まりしました。
    ――素晴らしい経験をしてますね(笑)。
    フミ あのときがスコット・ホールと過ごした最後の時間になってしまいました。スコットの息子のコーディ・ホールが新日本道場に留学していたときに「息子をよろしく頼む」ということだったので、コーディとよくいっしょにご飯を食べにいったりもしていました。
    ――とても近い存在だったわけですね。
    フミ スコットホールがジョージア州マリエッタの病院で亡くなったのは3月14日でしたが、その2日前の3月12日に同病院でヒップ・リプレースメント、つまり臀部に人工関節を入れる手術を受けたんです。その直後、両足のふくらはぎできていた血栓が原因で血流に障害が生じ、同日、短時間に3回の心臓発作を起こして危篤状態に陥ったとのことです。集中治療室で延命治療(生命維持装置)を受けていましたが、それから数時間後、盟友ケビン・ナッシュは自身のインスタグラムでスコットの家族が病院に到着したら家族の了承を得て延命装置を外すことになるだろうとの投稿をしました。すると、まだ亡くなってもいないのにSNSに「RIP(レスト・イン・ピース=安らかに眠れ)」というメッセージが溢れてしまったことに、ショーン・ウォルトマンは「まだ心臓は動いてるよ!」と怒っていましたね……。
    ――盟友たちからすれば、受け入れがたい現実ですよね。フミさんとスコットとの付き合いはいつから始まったんですか?
    フミ スコットが新日本プロレスに初来日したときからですから、1987年(昭和62年)です。その年に3回来日しているんですが、3回目のときはジャパンカップ争奪タッグリーグ戦で坂口征二さんをパートナーにエントリーしたんです。
    ――すごいタッグチームですね(笑)。
    フミ なぜ外国人レスラーなのに坂口さんのパートナーに抜擢されたかのというと、かつてのハルク・ホーガン的な外国人ベビーフェイスの売り方がプランニングされていたんです。その5年前、ホーガンは猪木さんとのタッグで日本でスターになっていきましたよね。
    ――NEXTホーガンを見込まれるくらいの逸材だったことですね。
    フミ もうちょっと時間のテープを巻き戻します。スコット・ホールは83年からプロレスの修行を始めていました。じつはヒロ・マツダ道場からスタートしています。
    ――名伯楽のヒロ・マツダさん。 
    フミ ハルク・ホーガンやポール・オーンドーフの後輩に当たり、レックス・ルーガーやロン・シモンズよりもやや先輩になります。ヒロ・マツダさんは「これはモノになる」という大型ルーキーしかコーチしないんですね。スコット・ホールもその身体と素質を見込まれてヒロ・マツダ道場でコツコツ練習を始めたんだけど、なかなかデビューの目処が立たなかったんです。
    ――それは何か理由があったんですか?
    フミ そこはやっぱりタイミングということだったと思うんですね。それで84年のある日、フロリダ州タンパのスーパーで食料品の買い物をしていたとき、バリー・ウィンダムにばったり会ったわけです。
    ――大型2世レスラーのバリー・ウインダム。
    フミ バリー・ウィンダムに「ボクもレスラーの卵なんですけど……」と話しかけたら、ちょうどそのときNWAフロリダ地区でブッカー、プロデューサー、トップスターを兼ねていたダスティ・ローデスがノースカロライナのNWAクロケット・プロに移籍するタイミングだったんです。バリー・ウィンダムとその相棒だったマイク・ロトンドもローデスと一緒についていくと聞いたので、スコット・ホールも「俺も行っていいですか?」ということでカバンに荷物を詰めて、ダスティ・ローデスに会いにノースカロライナまで行っちゃったんです。
    ――偶然の出会いから。
    フミ だからヒロ・マツダ道場は卒業はしていません。フロリダでもデビューさせてくれるかもしれなかったんですけど、痺れを切らしてノースカロライナに行って、そこで“アメリカンドリーム”ダスティ・ローデスのレクチャーを受けるわけですが、稽古する場所は当時シャーロットにあったリッキー・スティムボートのジムだったんです。そこでは、リック・フレアーにもプロレスを教えてもらったりしたそうです。
    ――メンツが豪華すぎますね!
    フミ ただノースカロライナには選手がたくさんいたことで、ローデスの指示でミズーリ、カンザス2州のNWAセントラルステーツ地区に送り込まれました。このエリアは昔はNWAの総本山だったんですが、この時期は経営難になっていて、NWAクロケット・プロが買収してルーキーを集めるファーム・テリトリーに模様替えするプランが進んでいたんです。
    ――それで新人のスコット・ホールが送られたんですね。
    フミ 稽古仲間だったダニー・スパイビーとアメリカン・スターシップというタッグチームを結成して、いよいよデビューするわけです。スコット・ホールがコヨーテ、ダニー・スパイビーがイーグルというリングネーム。当時はまさにロード・ウォリアーズ全盛の時代で、とにかく身体がデカい新人は筋肉マン・タイプのタッグチームを結成するのがブームだったんです。若かりし頃のスティングとアルティメット・ウォリアーもルーキー時代、テネシーでロード・ウォリアーズそっくりのタッグチームとしてデビューしましたね。
    ――ロード・ウォリアーズのそっくりさんみたいなチームがやたら多かったですね。
    フミ スコット・ホールはデビューした当時26歳だったんですけど、ダニー・スパイビーのほうはデビューした時点でもう34歳だったので、とにかく早くお金を稼げるようになりたいということでWWEに行っちゃったんですね。
    ――当時は年齢高めのデビューが多かったですね。
    フミ フットボールを長くやっていてNFLには行けなかったけれど、プロレスに……という人が多かったこともありますね。アメリカン・スターシップが解散したことでスコット・ホールはひとりになってしまったんですが、85年にAWAからスカウトされたんです。当時は前年にハルク・ホーガンがAWAからWWEに移籍して全米ナンバーワンのスーパースターの道を歩み始めた時代で、AWAはビンス・マクマホンにどこよりもたくさんの主力選手を持っていかれた団体だった。ホーガンだけでなく、ジェシー・ベンチュラ、アドニス、ジム・ブランゼル、悪党マネジャーのボビー・ヒーナン、名物アナウンサーのジーン・オーカランドらがWWEに行ってしまった。AWAオーナーのバーン・ガニアと、老プロモーターのウォーリー・カルボはスコット・ホールを見て「ブロンド(ホーガン)が逃げたらブルネット(スコット・ホール)が来た」って感じだったんですね。
    ――粋な言い方をしますね(笑)。nWoのヒントは昭和・新日本プロレスにあった!? スコット・ホール13000字語りはまだまだ続く!

    この続きと、平本蓮、ジモキック問題、関根シュレック、ハヤブサ、浜崎朱加…などの3月更新記事が600円(税込み)でまとめて読める「15万字・記事17本の詰め合わせセット」はコチラ
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  • 【お家騒動】シェイン・マクマホンがWWEをクビに?■斎藤文彦INTERVIEWS

    2022-02-20 16:37  
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    80年代からコラムやインタビューなどを通して、アメリカのプロレスの風景を伝えてきてくれたフミ・サイトーことコラムニスト斎藤文彦氏の連載「斎藤文彦INTERVIEWS」。マット界が誇るスーパースターや名勝負、事件の背景を探ることで、プロレスの見方を深めていきます! 今回のテーマはシェイン・マクマホンがWWEをクビに?です!

     

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    ■ジェイク“ザ・スネーク”ロバーツ…ヘビに人生を飲み込まれなかった男■追悼ジミー・スヌーカ……スーパーフライの栄光と殺人疑惑
    ――今回のテーマはシェイン・マクマホンWWE解雇の件です。シェインはWWEオーナーのビンス・マクマホンの息子にしてフロントの一員であり、ビッグマッチでは自ら試合もする人物ですが、解雇は確定なんでしょうか。
    フミ 確定というか事実ですね。プロレスのこういうニュースでアメリカで一番信頼できるメディアはやっぱりデーブ・メルツァーの『レスリング・オブザーバー』ですが、いまはネットメディアが後追いでそのニュースについてメルツァーを取材するというパターンが頻繁にあります。メルツァーは、今回のシェインの解雇は事実であるとコメントしている。事件が起きたのはさる1月29日の『ロイヤルランブル』終了直後。バックステージでビンスとシェインが大ケンカをしたということです。WWEのレスラーや関係者たちの中には、額面どおりに「2人は決裂した」と考えている人もいれば、「いまは本当にケンカをしているかもしれないけれど、やがてそのケンカがアングル、ストーリーラインになって、シェインは戻ってくる」というふうにとらえている人たちもいる。いずれにしても、シェインが現時点でWWEを離れていることは事実ですね。
    ――シェインの解雇理由は明かされているんですか?
    フミ まず、シェインはWWEの社員でも専属契約選手でもないので、解雇という表現は正確ではない。退団あるいは脱退といったニュアンスに近いのではないかと思われます。いくつかの理由が推測されていいて、たとえば『ロイヤルランブル』の演出を巡ってビンスとシェインが衝突したという説。散らばってしまったパズルのかけらを拾い集めて繋ぎ合わせていくと、今回の『ロイヤルランブル』ではそのシェインが昨年のレッスルマニア以来1年ぶりに試合をしたという事実がある。『ロイヤルランブル』の時間差バトルロイヤルで、シェインは出場30人のうちの28番目でエントリーしてきた。つまり、簡単にいえば、番付けがすごくいいということです。
    ――優勝争いに絡めるポジションですね。
    フミ シェインは28番目の男として入場してきてファイナル3人まで残りました。優勝したのは最後の30番目に出てきたブロック・レスナーでしたが、4月には年間最大イベント『レッスルマニア38』を控えるなかで、シェインもその主要カードに関わってくるであろうことを予想させるポジションだった。『レッスルマニア38』ではシェインと売り出し中の若手ヒール、オースティン・セオリーのシングルマッチがラインナップされるというウワサもあった。でも、イベント終了後に何かしらの理由でビンスと衝突してしまって、その後の『ロウ』や『スマックダウン』の番組収録にも姿を現さず、2・19PPV『イリミネーション・チェンバー』が開始されたサウジアラビア・ツアーにも帯同しなかった。だから、『レッスルマニア』に向けてすでに練られていたいくつかのプランもすべてペンディングになってしまったことはたしかなのです。
    ――そもそもビンスとシェインはどういう関係性だったんでしょうか。
    フミ まず経歴から簡単に説明すると、マクマホン家の長男シェイン・マクマホンは1970年生まれの52歳。いまをさること32年前、1990年4月13日、WWEと全日本プロレスと新日本プロレスの合同興行『日米レスリングサミット』が東京ドームで開催されましたが、そのときWWEクルーの中に混じって、まだ20歳だったシェインがレフェリーとして来日していたんです。WWEにおけるテレビデビューは1998年。ビンスの息子として表舞台に現われました。ミレニアムの頃のWWEはマクマホン一家の物語が連続ドラマの中心にあって、ビンスの奥さんのリンダさんやシェインの妹のステファニーも登場して、最初はドラマの中の1コマだったステファニーとトリプルHの略奪結婚劇が、現実の世界でも結婚という“小説よりも奇なり”という展開を生んだりしました。
    ――そのWWEという会社を経営者として動かしているのもマクマホン一家なんですね。
    フミ ここがわりとわかりにくいところなのですが、御大ビンスがCEO(チーフ・エグゼクティブ・オフィサー)でWWEの最高経営責任者です。比較的新しい登場人物ではニック・カーンという社長がいます。この人は雇われ社長で株主です。ステファニーはCBO(チーフ・ビジネス・オフィサー)で日本語に訳すと最高業務責任者。その夫トリプルHはCOO(チーフ・オペレーティング・オフィサー)。これは最高執行責任者ですね。
    ――いろんな最高職があるわけですね(笑)。
    フミ 日本の会社組織だったら代表取締役社長のほかに代表取締役会長、それから取締役か何人かいたりしますよね。WWEでは最高経営責任者のビンスがトップで、ナンバー2がステファニーとトリプルHの2人。不思議なことにシェイン1人だけ肩書きがついていないのです。解雇された、または現場からいなくなったといっても、シェインがいまでもWWEの大株主のひとりであることに変わりはない。WWEはもともとファミリー企業で家族が株を持っていましたが、いまはニューヨーク市場に上場して株式を公開、一般人でも株が買えるようにはなっています。しかし、それでも株式全体の何十パーセントは家族で所有していて、たとえばビンスの持ち株は2.1ビリオン、日本円で約2100億円分を持っている。
    ――気が遠くなる金額ですね(笑)。
    フミ リンダさんは約1600億円分、ステファニーは約150億円分、シェインに肩書きないとはいっても、約100億円分の株を所有しています。
    ――さすが世界一のプロレス団体ですねぇ。
    フミ それでもアメリカではスモールビジネス=中小企業のカテゴリーなんですけどね。シェインは以前にもWWEから離れていた時期がありました。もう10年以上前のことになっちゃうんですけど、2010年から2016年の丸6年間。そのときはちゃんと辞表を出してやめましたが、辞職理由は明らかにされず、「いったい何があったのか?」と詮索されましたが、3人目の子どもの育児休暇がその理由だったんです。やや蛇足になりますが、シェインの子どもたちは男の子ばかり3人で、ステファニー&トリプルHの子どもたちは女の子ばかり3人。このビンスの孫6人もやがてWWEの大河ドラマの登場人物になるのでしょう。お話を戻すと、シェインの場合はイチ選手なり、イチプロデューサーがクビになったのとはまったく違うんです。現在はなんの肩書きもついていないとは言っても、やっぱり現場での発言力は大きかった。また、大株主なのでWWEとは切っても切れない関係。今回シェインがビンスと大ゲンカしてWWEから出ていったことは、おそらく事実なのですが、家族であり大株主であるという関係性から、いずれは戻ってくると考えるのが妥当なのでしょう。
    ――演出の方向性だけでここまで揉めるということは、以前から火種はあったということなんでしょうね。

    この続きと、ドミネーター、鈴木千裕、中井祐樹、菊地成孔、三浦孝太…………などの2月更新記事が600円(税込み)でまとめて読める「15万字・記事19本の詰め合わせセット」はコチラ
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  • プロレスに言葉が必要なのか?金剛ノーコメント批判を考える■斎藤文彦INTERVIEWS

    2022-02-02 00:00  
    120pt

    80年代からコラムやインタビューなどを通して、アメリカのプロレスの風景を伝えてきてくれたフミ・サイトーことコラムニスト斎藤文彦氏の連載「斎藤文彦INTERVIEWS」。マット界が誇るスーパースターや名勝負、事件の背景を探ることで、プロレスの見方を深めていきます! 今回のテーマは金剛ノーコメント批判を考えるです!

     

    Dropkick「斎藤文彦INTERVIEWS」バックナンバー
    ■対抗戦?交流戦?新日本vsNOAHから見えてくる2022年
    ■アメリカで英語化されたPURORESUプロレス
    ■AEWはWWEのライバルになりえるのか


    ■コロナに散った『ワールドプロレスリング』海谷ディレクターを偲ぶ
    ■前田日明の「噛ませ犬」だけではないポール・オーンドーフの功績
    ■WWE☓新日本プロレス業務提携の噂、その出元
    ■ドラマが現実化するプロレス版・星野源&新垣結衣は?■NWAの最期を看取った男ジム・クロケット・ジュニア
    ■ビンスの黒衣、猪木の親友パット・パターソン

    ■晩年のロード・ウォリアーズ
    ■ロード・ウォリアーズの衝撃

    ■追悼! 佐山タイガー最大の難敵・初代ブラックタイガー

    ■全女消滅後の女子プロレス新世界

    ■木村花さんはドウェイン・ジョンソンのようなスーパースターになるはずだった

    ■女子プロレスの景色を変えた女帝・ブル中野■マッハ文朱が女子プロレスというジャンルを変えた

    ■新日本プロレスの“ケニー・オメガ入国妨害事件”という陰謀論■WWEvsAEW「水曜日テレビ戦争」の見方■WWEペイジの伝記的映画『ファイティング・ファミリー』■AEWチャンピオンベルト盗難事件■「ミスター・プロレス」ハーリー・レイスの偉大さを知ろう■ウルティモ・ドラゴンの偉大なる功績を再検証する■都市伝説的試合映像ブレット・ハートvsトム・マギー、ついに発掘される ■【追悼・爆弾小僧】すべてはダイナマイト・キッドから始まった
    ■プロレス史上最大の裏切り「モントリオール事件」



    ■なぜ、どうして――? クリス・ベンワーの栄光と最期

    ■“怪物脳”に覚醒したケニー・オメガ■怪物デイブ・メルツァーと『レスリング・オブザーバー』■新日本プロレスのMSG侵攻は「WWE一強独裁」に何をもたらすのか■怪物ブロック・レスナーを通して見えてくる「プロレスの作り方」■追悼・マサ斎藤さん……献杯はカクテル「SAITO」で■皇帝戦士ビッグバン・ベイダーよ、永遠に■ジャイアント馬場夫人と親友サンマルチノ、2人の死――■ベルトに届かず…されど「世界に届いた中邑真輔」のレッスルマニアを語ろう ■ステファニー・マクマホン、幻想と現実の境界線がない生活■ロンダ旋風、中邑&ASUKAダブル優勝!! ロイヤルランブル1万字総括■アメリカンドリーム、ゴールダスト、コーディ……ローデス親子それぞれの物語■ジェリコvsケニー実現で考える「アメリカから見たプロレスの国ニッポン」■みんなが愛した美人マネージャー、エリザベス!■職業は世界チャンピオン! リック・フレアー!!■怪死、自殺、大事故……呪われた鉄の爪エリック一家の悲劇■ミスターTからメイウェザーまで! WWEをメジャー化させたセレブリティマッチ
    ■WWEの最高傑作ジ・アンダーテイカー、リングを去る■『1984年のUWF』はサイテーの本!
    ■プロレス史上最大の裏切り「モントリオール事件」


    ■オペラ座の怪人スティング、「プロレスの歴史」に舞い戻る



    ■超獣ブルーザー・ブロディ

    ■「プロレスの神様」カール・ゴッチの生涯……
    ■『週刊プロレス』と第1次UWF〜ジャーナリズム精神の誕生〜




    ■伝説のプロレス番組『ギブUPまで待てない!!』 
    ■SWSの興亡と全日本再生、キャピトル東急『オリガミ』の集い
    ■ジェイク“ザ・スネーク”ロバーツ…ヘビに人生を飲み込まれなかった男■追悼ジミー・スヌーカ……スーパーフライの栄光と殺人疑惑
    ――今日はフミ斎藤さんに電話でつながってまして。月イチの連載の配信版を行ないますので、よろしくお願いします。
    フミ こんばんは、フミ斎藤です。
    ――新年1発目の今回は、1・8の新日本プロレスvsノアの対抗戦についてお伺いします。
    フミ よろしくお願いします。試合や対抗戦そのものについては、各方面ですでに報じられているので、今回はボクなりに考えたいくつかのポイントを中心にお話ししていきたいと思います。
    ――フミさんはどういうかたちで対抗戦をご覧になったんですか?
    フミ ボクは知人と一緒にスマホとにらめっこしながら初めてABEMA TVのPPVを購入しました。3000ABEMAコイン、現実のお金だと3600円でした。
    ――ABEMAのPPVは初購入なんですね。
    フミ ボクらのようなおじさん世代にとっては購入動作そのものがわかりにくいところがあって、画面に入っていって、どんどんボタンをクリックしていくわけなんですが、まずABEMAコインというバーチャル貨幣が必要だということを知らなかったんです。
    ――そこからなんですね。
    フミ この番組を視聴するには3000ABEMAコインかかりますと画面に表示される。そして、3000ABEMAコインを買うにはどうやら円レートで3600円が必要ですと。そもそもクレジットカードがスマホやパソコンに連動していないと料金を支払うことさえできない仕組み。この場合は1番組の視聴料金が3600円。新日本ワールドやWRESTLE UNIVERSEの月額1000円程度の料金システムとは違って、1番組ごとの料金設定があり、しかも一度しか視聴できない形態ですね。まず、この3600円を高いと受け取るか、安いと受け取るかですね。
    ――フミさんは高いと思ったんですか、安いと思ったんですか。
    フミ 安くはないと感じました。映画よりは高いですね。でも、コンサートのチケット代よりは安い。まあ、外で食事ができる値段ではあります。ネットPPVがプロレスの一番新しいビジネスモデルなんだろうなということがなんとなく認識できた段階です。
    ――最近は国内ボクシングのPPVも大々的にやりだしたことで、PPVビジネスが議論になってるんです。MMAシーンはPPV自体の歴史が長いのでもう慣れちゃってるんですけど。
    フミ そんな感じなんでしょうね。
    ――日本プロレス界初のPPVは新日本の長州力vs大仁田厚の有刺鉄線電流爆破デスマッチで、その後もいくつかの団体がやりましたが定着せずで。
    フミ 今回はABEMAで観れば生配信で3600円だけど、1週間待てば新日本ワールドやWRESTLE UNIVERSEの会員であればまた観ることができるわけですから、そこの判断もちょっと難しい。
    ――1週間ちょっとガマンするという選択肢はある。
    フミ 新しいビジネスモデルとして消費者に提示されているということは理解しています。プロレスだけの動きではなくて、映像ビジネスは実際にネット上のストリーミングにすごいスピードで変換されつつある。ありとあらゆるジャンルにおいて最新映像がテレビからネットに移行されていくプロセスは遅かれ早かれかならずあったと思いますが、新型コロナのパンデミックがそのスピードをぐっと早めたというか、実用化を早めた。ボクのなかでは、これもまたコロナのひとつの副産物なのだろうという感覚があります。
    ――ネット配信をどう駆使するかが問われてるわけですね。
    フミ 話題は対抗戦からちょっと外れるかもしれませんが、今回の大会を報じた一部スポーツ紙の記事が大炎上しましたね。
    ――スポーツ○○の……。
    フミ その記事をYahooニュースが拾ったことによって拡散され、いつもはスポーツ○○を読んでいないであろう多くの人たちの目にも触れた、ということですね。その記事は最後まで読むとわかるのですが、試合リポートではなくて「記者コラム」だった。試合リポートとコラムの根本的なカテゴリーの違いはボクらだったらわかるんですけど、読者によっては、とくにネット読者層はその違いをあまりよくわかって読んでいなかったのかもしれない。実際、そこに書かれていたコラムの内容そのものが大炎上を呼んだわけですが。
    ――コラムを要約すると、試合に敗れてノーコメントだったノアの金剛はどうなのか、というプロの姿勢を糺すものですね。
    フミ そこの判断はプロレスファンとしてのキャリアによっても大きく異なるところです。マイクアピールがなければ、あるいは言葉によるフォローがなければプロレスが伝わらないと本気で信じている層が確実に存在する。そのあたりは、近年の新日本プロレスの長編ドラマとその登場人物のキャラクター設定だけを通じてプロレスと接している人たちの一種の常識みたいなものが基準になっているのかもしれない。
    ――比較的新しいファンだと、マイクがあるのがプロレスだと捉えている。
    フミ ボクのこの感覚がオールドファッションなんだよと言われてしまえば、それまでのことなのかもしれないけれど。そもそも、マイクアピールは決してプロレスに必要不可欠なものではないんです。今回の対抗戦で、プロレスリング・ノアと新日本プロレスがちょうどうまい具合に何から何まで比較される一枚のお皿の上に並べられたことはたしかですよね。アントニオ猪木、長州力の流れを汲み、いまの現在進行形の新日本プロレスがあるとすると、たしかに試合と言葉の両方が必要なプロレスという流儀のようなものがあります。しかし、プロレスリング・ノアは、全日本プロレス、ジャイアント馬場さんからジャンボ鶴田さん、三沢光晴さんをリーダーとする四天王の流れを汲むプロレスです。その歴史を紐解けば、そこにはマイクワークは存在すらしないわけです。馬場さんは試合後にマイクで誰かを挑発したことはないし、ジャンボさんもマイクをつかんで対戦相手やタイトルマッチの次期挑戦者をなじったりしたことはないんです。基本的な所作に違いがあるんです
    ――天龍さんは「何も話すことはない」が代名詞だったときありますね。
    フミ 天龍さんの場合は控室に戻ってからボソボソとしゃべって、その言葉を番記者が拾って、それこそ阿吽の呼吸で記事にするというお作法もあることはありました。むしろ天龍さんよりもさらに一世代若い四天王世代はコメントさえあまり出さない。マイクワークは一切やらずに四天王プロレスが成り立ってきた歴史もあるわけです。流儀のちがいとか哲学のちがいとか言っちゃうと、ちょっと大げさかもしれないけれど、馬場イズムを受け継いでいるプロレスリング・ノアと、アントニオ猪木の流儀を受け継いでいる現在進行形の新日本プロレス。今回の対抗戦は、このまったく異なるプロレス哲学、プロレス道がぶつり合ったという実感はすごくありました。その部分を、言葉がなければお客さんには伝わらないという結論づけでは、中立的な分析、価値観の比較にはならない。新日本のスタイルを基準にして見ちゃうとノアの選手たちが無言で帰っていったのは理解しにくかったのかもしれないけれど、ノーコメントはプロとしておかしいというような論点だったり、またはなぜコメントをしなかったのかという点を追跡取材もせずにコラムに書いてしまったのは、ファンの感想文と同じだということでネット上で一気に炎上したのでしょう。
    ――スポーツ紙とか新聞系の人にありがちなのは「コメントしないとは何事だ」っていう姿勢があるんです。マスコミの存在を否定されたように受け取っちゃうんですよ。
    フミ でも、試合後に選手が必ずコメントを出すという不文律はないですよ。それがプロレスの試合の一部分だという大前提なんてないですよ。ここ10年ほどの新日本のやり方をすべてのプロレスの基本形として捉えている人たちにとっては、マイクもプロレスのひとつのパーツだと思いがちなのかもしれないけれど、実際はそうではない。そもそも、マイクワークやコメントがなかったらプロレスが成立しないとなったら、プロレスというジャンルには「言葉の壁」があることになってしまいます。
    ――あと最近のネットの風潮でいうと、なんでも説明がないと納得がしない人が増えてんだろうなって。行間を読むことを放棄してるという。
    フミ それはもうプロレスを観るスタート地点にさえ立っていないのではないか。そう感じます。プロレスというスポーツエンテーテインメントは観る側のイマジネーションがすごく大切なのです。イマジネーションを膨らませる、どうしてだろう、なぜだろう?とあれこれ考える感性の作業を放棄している思考停止状態がコメント主義なんです。最近プロレスを観はじめたビギナーならわかりますけど、選手たちのコメントからいま見た試合の意味を知ろうなんて、どうなんですか。プロレスはプロレスラーが言葉でもって提示するものではないでしょう。

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  • 対抗戦?交流戦?新日本vsNOAHから見えてくる2022年■斎藤文彦INTERVIEWS

    2021-12-23 16:25  
    110pt

    80年代からコラムやインタビューなどを通して、アメリカのプロレスの風景を伝えてきてくれたフミ・サイトーことコラムニスト斎藤文彦氏の連載「斎藤文彦INTERVIEWS」。マット界が誇るスーパースターや名勝負、事件の背景を探ることで、プロレスの見方を深めていきます! 今回のテーマは対抗戦?交流戦?新日本vsNOAHから見えてくる2022年です!

     

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    ■アメリカで英語化されたPURORESUプロレス
    ■AEWはWWEのライバルになりえるのか


    ■コロナに散った『ワールドプロレスリング』海谷ディレクターを偲ぶ
    ■前田日明の「噛ませ犬」だけではないポール・オーンドーフの功績
    ■WWE☓新日本プロレス業務提携の噂、その出元
    ■ドラマが現実化するプロレス版・星野源&新垣結衣は? ■NWAの最期を看取った男ジム・クロケット・ジュニア
    ■ビンスの黒衣、猪木の親友パット・パターソン

    ■晩年のロード・ウォリアーズ
    ■ロード・ウォリアーズの衝撃

    ■追悼! 佐山タイガー最大の難敵・初代ブラックタイガー

    ■全女消滅後の女子プロレス新世界

    ■木村花さんはドウェイン・ジョンソンのようなスーパースターになるはずだった

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    ■プロレス史上最大の裏切り「モントリオール事件」



    ■なぜ、どうして――? クリス・ベンワーの栄光と最期

    ■“怪物脳”に覚醒したケニー・オメガ■怪物デイブ・メルツァーと『レスリング・オブザーバー』■新日本プロレスのMSG侵攻は「WWE一強独裁」に何をもたらすのか■怪物ブロック・レスナーを通して見えてくる「プロレスの作り方」■追悼・マサ斎藤さん……献杯はカクテル「SAITO」で■皇帝戦士ビッグバン・ベイダーよ、永遠に■ジャイアント馬場夫人と親友サンマルチノ、2人の死――■ベルトに届かず…されど「世界に届いた中邑真輔」のレッスルマニアを語ろう ■ステファニー・マクマホン、幻想と現実の境界線がない生活■ロンダ旋風、中邑&ASUKAダブル優勝!! ロイヤルランブル1万字総括■アメリカンドリーム、ゴールダスト、コーディ……ローデス親子それぞれの物語■ジェリコvsケニー実現で考える「アメリカから見たプロレスの国ニッポン」■みんなが愛した美人マネージャー、エリザベス!■職業は世界チャンピオン! リック・フレアー!!■怪死、自殺、大事故……呪われた鉄の爪エリック一家の悲劇■ミスターTからメイウェザーまで! WWEをメジャー化させたセレブリティマッチ
    ■WWEの最高傑作ジ・アンダーテイカー、リングを去る■『1984年のUWF』はサイテーの本!
    ■プロレス史上最大の裏切り「モントリオール事件」


    ■オペラ座の怪人スティング、「プロレスの歴史」に舞い戻る



    ■超獣ブルーザー・ブロディ

    ■「プロレスの神様」カール・ゴッチの生涯……
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    ■伝説のプロレス番組『ギブUPまで待てない!!』 
    ■SWSの興亡と全日本再生、キャピトル東急『オリガミ』の集い
    ■ジェイク“ザ・スネーク”ロバーツ…ヘビに人生を飲み込まれなかった男■追悼ジミー・スヌーカ……スーパーフライの栄光と殺人疑惑
    ――2022年1月8日、横浜アリーナで開催される新日本プロレスとノアの対抗戦はアメリカではどんな反響でしょうか?
    フミ 反響はすごいです。WWEに飽きちゃっててAEWに拠り所を求めてるアメリカのマニア層からすると、新日本とノアのストリーミング配信に英語の実況解説がついたことで以前にも増して日本のPuroresuに対する注目度、関心が高まっているんですね。 でも、全カード発表となってフタを開けてみたらメインイベンタークラスのシングルマッチが実現しないということで……。
    ――あ、そこはアメリカのファンもちょっと肩透かしを食らった感じなんですね。
    フミ そのあたりは「対抗戦か、交流戦か」という日本的な解釈にも関係してくると思うんです。発表された全カードを見ると若手以外はシングルマッチはなしで、タッグマッチや6人タッグ、10人タッグなどがズラリと並んでいますよね。
    ――メインが10人タッグということには、ちょっとビックリしましたね。
    フミ 試合そのものの勝敗がついても、勝負としての白黒つかないこの感じをどう解釈したらいいのか。開催決定記者会見のときの武藤敬司のコメントは「殺伐とした対抗戦の時代じゃないだろう」というニュアンスのものだった。 闘魂三銃士や四天王と呼ばれた世代の中で唯一現役の武藤選手は、かつての対抗戦の雰囲気を知ってるプロレスラーですよね。
    ――UWFインターナショナルとの全面対抗戦では新日本の大将でしたね。あの対抗戦に参加して今回も出場するのは武藤敬司に永田裕志、あと桜庭和志ですか。
    フミ 新日本vsUインターのとき永田選手と桜庭選手はまだ若手で第1試合のタッグマッチで戦いましたが、3人とも置かれた状況は当時と現在とではまったく違いますよね。
    ――武藤さんと桜庭さんはノア側ですもんね。 信じられない。
    フミ 他に表現がないから今大会を「対抗戦」と銘打ってはいますが、はっきりと勝者と敗者をイメージさせるようなシングルマッチがカードにはなかったのは、もちろん武藤選手の意思が働いたわけではないでしょうけれど、結果的に対抗戦というよりは交流戦に近いものになった。 武藤選手のあの発言は今回の対抗戦をどう捉えるかの大きなヒントになりますが、それでも団体同士の対抗戦にはシングルマッチを期待するのがプロレスファンですよね。 今回発表された対抗戦のキービジュアルには新日本とノアの3選手が睨み合ってるものでした。鷹木信悟は中嶋勝彦と、棚橋弘至は武藤敬司と、オカダ・カズチカと清宮海斗が睨み合っている。これを見るかぎり、この選手たちのシングルマッチが実現することを想像させるものでしたよね。
    ――ところがどのシングルマッチは実現せず……。
    フミ 棚橋弘至vs武藤敬司あたりがひとつの落とし所になるのかなと思ったらそれもなかった。 タッグ版のオールスター戦なのかなぁと思っちゃうところはありますよね。今回の1・8横浜アリーナが始まりで、今後も新日本とノアの対抗戦は続くんだろうという予想はできるんですけが。今大会は新日本ワールドでは生配信されませんし、テレビ朝日のワールドプロレスリングでも中継はされない。
    ――サイバーファイトの『WRESTLE UNIVERSE』でも後日配信ですね。
    フミ ビジネスにおける交渉事は「誰がボールを持ってるか?」という話になりますが、今回はこの対抗戦を生配信するABEMAがボールを持ってるように見えますね。これはABEMAプロデュースのイベントなんですよという明確なエビデンス。 かつては存在しなかったネット上の有料動画配信というまったく新しいビジネスモデルが成立していて、これからのプロレスは配信の時代なんですよということを伝えるものかもしれない。 
    ――今回はABEMAがボールを持ってるからこそ白黒つけるまでには至らないと。
    フミ 白黒ついちゃったというケースとしては先ほどちょっとお話した1995年10月9日の新日本とUインターの全面対抗戦がありました。全面対抗戦で負け越して、武藤敬司vs高田延彦の大将戦のも落としたUインターは翌96年には団体が崩壊してしまったという歴史的事実がある。団体対抗戦というものは、そもそもおたがいの存亡を懸けた戦いでなければ成立しないのではないか? もちろん、ひとつの仮説ではありますが。
    ――対抗戦にはそういう幻想はありますね。
    フミ そこで次に考えるべきなのは、いまの時代はプロレスというジャンルのその成り立ちのような部分が昔よりもはるかにオープンに議論にされるようになっていて、プロレス用語として存在しない「勝ちブック」「負けブック」という誤った造語がネット上ではあたりまえに使われている現実があります。実際にプロレスラーや関係者はそんな言葉は使わないんですが、それでもネット世代にはプロレス用語として認知されている。
    この続きと、吉成名高、平本蓮、堀口敗戦、中村大介、伊澤星花、YA-MAN……などの12月更新記事が600円(税込み)でまとめて読める「14万字・記事23本の詰め合わせセット」はコチラhttps://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar2072140この記事の続きだけをお読みになりたい方は下をクリック! 1記事110円から購入できます!
     
  • WWE番組放送終了が意味するもの■斎藤文彦INTERVIEWS

    2021-12-08 10:24  
    110pt

    80年代からコラムやインタビューなどを通して、アメリカのプロレスの風景を伝えてきてくれたフミ・サイトーことコラムニスト斎藤文彦氏の連載「斎藤文彦INTERVIEWS」。マット界が誇るスーパースターや名勝負、事件の背景を探ることで、プロレスの見方を深めていきます! 今回のテーマはWWE番組放送終了が意味するものです!

     

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    ■アメリカで英語化されたPURORESUプロレス
    ■AEWはWWEのライバルになりえるのか


    ■コロナに散った『ワールドプロレスリング』海谷ディレクターを偲ぶ
    ■前田日明の「噛ませ犬」だけではないポール・オーンドーフの功績
    ■WWE☓新日本プロレス業務提携の噂、その出元
    ■ドラマが現実化するプロレス版・星野源&新垣結衣は?
    ■NWAの最期を看取った男ジム・クロケット・ジュニア
    ■ビンスの黒衣、猪木の親友パット・パターソン

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    ■ロード・ウォリアーズの衝撃

    ■追悼! 佐山タイガー最大の難敵・初代ブラックタイガー

    ■全女消滅後の女子プロレス新世界

    ■木村花さんはドウェイン・ジョンソンのようなスーパースターになるはずだった

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    ■新日本プロレスの“ケニー・オメガ入国妨害事件”という陰謀論■WWEvsAEW「水曜日テレビ戦争」の見方■WWEペイジの伝記的映画『ファイティング・ファミリー』■AEWチャンピオンベルト盗難事件■「ミスター・プロレス」ハーリー・レイスの偉大さを知ろう■ウルティモ・ドラゴンの偉大なる功績を再検証する■都市伝説的試合映像ブレット・ハートvsトム・マギー、ついに発掘される ■【追悼・爆弾小僧】すべてはダイナマイト・キッドから始まった
    ■プロレス史上最大の裏切り「モントリオール事件」



    ■なぜ、どうして――? クリス・ベンワーの栄光と最期

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    ■ジェイク“ザ・スネーク”ロバーツ…ヘビに人生を飲み込まれなかった男■追悼ジミー・スヌーカ……スーパーフライの栄光と殺人疑惑
    ――これまでスカパーJ SPORTSとケーブルJ-COMで放送されていたWWEの番組がすべて年内で終了することが発表されました。
    フミ WWEの日本向けの放送がなくなってしまうのは、とてもショッキングなニュースですね。
    ――MMAでいえば、UFCなんかもそうですけど、日本がビジネス対象国として低いランクなんですよ。
    フミ WWEもきっとそのとおりの状況なんでしょうね。
    ――ただ、UFCというスポーツは日本語実況解説や字幕なしでも試合そのものは楽しめるんです。WWEの場合はストーリーの説明抜きでは難しいですよね。
    フミ もちろんです。バックステージのスキットであったりマイクパフォーマンスであったりと、試合に向けてのありとあらゆサイドストーリーがきちんと翻訳または言語化されないとその全体像が伝わりにくいタイプのエンターテインメントです。日本には「WWEしか見ません」という献身的なWWEユニバースもいますし、日本のプロレスと並行しながらWWEを現在進行形で見続けるファンもたくさんいます。そのどちらもJ SPORTSの映像でWWEを楽しんでいたんです。17年と18年はDAZNが現地からのライブというかたちでロウとスマックダウンを生配信して、ボクも解説と同時通訳のお仕事をさせていただきましたが、この2年間は例外として、おしなべてWWE映像はこれまでJ SPORTSが一手に引き受けていた。WWEの定期的な日本ツアーが始まったのが2002年ですが、それ以前の96年からスカパーの前身のパーフェクTVで放送開始。もう25年もやっていたんです。ところが11月25日付の「重要なお知らせ」というツイートで以下の発表がされました。
    『「WWEロウ」「WWEスマックダウン」が放送終了、及びJ SPORTSSオンデマンドの「WWEパック」がサービス終了となります。「WWEパック」ご加入者の方は解約手続きが必要となります。
    本件に関する詳細は下記ページにてご確認ください。』
    フミ ロウとスマックダウンの英語版、日本語字幕版、ハイライト版の6番組。オンデマンドサービスの「WWEパック」は年間12大会のPPVが見られましたが、それらがすべて12月放映分を持って終了。1時間モノのダイジェスト番組WWEディス・ウィークだけがかろうじて残る方向のようです。ボクとJ SPORTSのお付き合いでいえば、PPVの日本語解説をカイリ・セイン選手とやっていたのですが、それも今年8月のサマースラムで終了。こちらに関してはなんの正式発表もなく、ボクには「まだオフレコなんですが、じつは…」という説明がありました。
    ――予兆はあったんですね。
    フミ なぜJ SPORTSはWWEの放送をやめることになったのか。
    この続きと、吉成名高、平本蓮、堀口敗戦、中村大介、伊澤星花、YA-MAN……などの12月更新記事が600円(税込み)でまとめて読める「14万字・記事23本の詰め合わせセット」はコチラhttps://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar2072140この記事の続きだけをお読みになりたい方は下をクリック! 1記事110円から購入できます!
     
  • AEWはWWEのライバルになりえるのか■斎藤文彦INTERVIEWS

    2021-10-04 15:37  
    110pt

    80年代からコラムやインタビューなどを通して、アメリカのプロレスの風景を伝えてきてくれたフミ・サイトーことコラムニスト斎藤文彦氏の連載「斎藤文彦INTERVIEWS」。マット界が誇るスーパースターや名勝負、事件の背景を探ることで、プロレスの見方を深めていきます! 今回のテーマはAEWは「WWEのライバルになりえるのか」です!

     

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    ■なぜ、どうして――? クリス・ベンワーの栄光と最期

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    ――AEWに元WWEスーパースターのCMパンクとブライアン・ダニエルソンの加入して、ますますAEWが勢いづいています。
    フミ この2人の加入は本当に大きいんですが、AEWについていえば「WWEのライバルになりえるのか」ということが最大のテーマなんだと思います。
    ―― 日本のプロレスファンからしても、新興勢力としての期待度が異常に高くなってますね。 
    フミ ここ20年近くWWEのライバルになりえる団体は存在していなかったわけですが、90年代にはWWEとWCWの2大メジャーがしのぎを削っていました。毎週月曜日の同じ時間帯に6年間にわたってWWEの『ロウ』と、WCWの『ナイトロ』の視聴率を競ったいわゆる月曜テレビ戦争です。そのぶつかりあいによって、全米にプロレスブームが巻き起こったという歴史的な事実は残っていますね。 
    ――赤字が膨れ上がったWCWは2001年3月にWWEに買収され、月曜テレビ戦争の終止符が打たれました。
    フミ いま30代のプロレスファンにとっては幼少期の出来事ですし、40代の人たちからしても少年時代のお話です。 ネット世代の20代のファンからすると、リアルタイムの出来事でさえありません。中には過去を振り返って勉強や検証したりするファンもいるのかもしれませんけど。たとえば最近「1997年から観ているベテランファンです」という方がいたんですが、その方でさえ暗黒時代以降のファンなんですよね。基本的にはネット世代のファンなので活字プロレスの時代を生きたファンとはまた違う層なのです。月曜テレビ戦争の決着がついた2001年がどういう時代だったかといえば、ネット時代には突入していたんですが、ネットの中では動画はいまほど動いてなかったんです。 
    ――いまみたいに気軽に動画でプロレスを楽しめる時代ではなかったと。
    フミ いまはWWEとAEWの2大メジャーの時代になったのか、観客を奪いあってるのかという話なんですが、いまのところAEWという団体はマニアによって支えられている段階なんです。大前提としてアメリカというか世界的にはWWEだけを見ている層が圧倒的に多いんです。WWEの歴史は長いですし、市場規模が巨大でとにかく有名ですから、メディアが取り上げると「レスリング=WWE」になってしまうんです。WWEだけを習慣的に視聴する層はかなり大きくて、AEWを見ているファンはマニア層ですから当然WWEも同時にチェックしてるんです。
    ――プロレスマニアはどちらもチェックしているわけですね。
    フミ WWEだけで飽き足らないからAEWも応援したい。月曜はWWEの『ロウ』、金曜日は『スマックダウン』がある。水曜日はAEWの『ダイナマイト』を見るし、土曜日にはAEWの『ランペイジ』という第2の番組が始まりました。WWEのNXTまで見るとなると、マニアじゃないと抑えきれないんです。ただ、月曜テレビ戦争の時代と違うのは、ライブだけでなくオンデマンドでに映像が見られるということですよね。自分の好きな時間に番組頭から見ることができる。それがいまのネット世代にはあたりまえのことですし、テレビ番組の成り立ちがそもそも変わってしまった。それはプロレスに限ったことではなくて、 テレビでやっていたドラマがNetflixやAmazonプライムで見ることができますよね。 そうすると「何曜日の何時から見る」という視聴習慣の議論すらあまり意味を持たない。月曜テレビ戦争のように同じ時間帯に裏番組をぶつけるというコンセプト自体が吹っ飛んでしまうんです。 
    ――ひとつの評価として、AEWはWWEと比べて若い世代のコア視聴者数(18歳から49歳)までの男性が多いというデータが出てますね。
    フミ 18歳から49歳までの男性といっても、それもまたざっくりとした捉え方だなあとは思ってしまうんですけどね。
    ――いわゆる購買層ですよね。 購買意欲のない高齢層向けに番組を作っても仕方がないと。日本においてもテレビ番組の作り方がコア視聴者数という指標が変わりつつあって。
    フミ それはプロレスの番組がというよりは極めてテレビ的な発想ではありますよね。テレビ的にはWWEもAEWもターゲット層は同じなんでしょうけど、プロレスファンのなかにもされに分断される層が存在しているとすれば、さっきも言ったように「WWE は見るけどAEWは見ていない」という層はかなり多いんですね。
    この続きと、斎藤裕、平本蓮、破壊王、AKIRA、クレベルvsRIZIN…などの10月更新記事が600円(税込み)でまとめて読める「14万字・記事18本の詰め合わせセット」はコチラhttps://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/ar2059994この記事の続きだけをお読みになりたい方は下をクリック! 1記事110円から購入できます!