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岡田斗司夫のニコ生では言えない話
岡田斗司夫の解決!ズバっと 2014/12/10
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おはよう! 岡田斗司夫です。
今日も『解決!ズバッと』をお届けします。
今回は『「お金」って何だろう?』 からです。
僕が質問し、山形浩生先生に答えてもらった対談を、Q&A形式で、分載しながらお届けします。
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岡田斗司夫さん/56歳/作家/「金利はどうやって決まる?」
【質問】
岡田 金利!ついにこれを聞かなければいけないときがやってきました。ニュースでは、金利を下げるとか上げるとかよく言っていますけど、どうやって金利なんてものを調整しているんでしょう?
【山形浩生先生の回答】
山形 えーと、きちんとやると面倒なので、少し大雑把に説明しますね。各国には中央銀行、つまり銀行のための銀行があり、ここが金利の調整を行っています。日本の中央銀行は、ご存じの通り、日本銀行(日銀)です。日銀が金利を調整する方法には、大きく分けて2つあります。1つは、日銀と市中銀行(民間の銀行のこと)が取引する口座の残高を調整する方法です。
岡田 市中銀行は、日銀からお金を借りているんですか?
山形 お金を借りているわけではないんですよ。市中銀行は、保有している預金のうち、一定割合以上の金額を日銀の当座預金口座に預けておく決まりになっています。この割合を「預金準備率」といい、日銀が決定します。例えば、預金準備率が8%のとき(山形注:今の日本だと金額により累進制になっていて、0.05〜1.3%)、ある銀行の全預金が100億円だとしたら、8億円は日銀の当座預金に入れておかないといけません。
岡田 どうして、そういうことになっているんでしょう?
山形 銀行というのは、金貸しが本業なので、放っておくとお金を貸し過ぎてしまうんです。回収できなさそうな変なプロジェクトがあっても、ついつい「いいよ」と言って貸してしまう。結果的に債権が回収できないと、銀行が潰れて大変なことになってしまいます。だから、貸し出せる預金には、制限を設けているんです。
岡田 そういう制限で、どうして金利が調整できるんでしょう?
山形 預金準備率が8%のとき、日銀の当座預金に8億円入れておけば、市銀は100億円を貸し出せますよね。世の中にはお金を借りて事業をしたい人がいて、その人たちと銀行との間で貸出金利が決まります。
事業者が「今は不景気だから、金利5%でお金を借りて儲けられるプロジェクトはないなあ」と考えていたら、銀行が100億円貸し出したいとしても、60億円分しか借りてもらえない。そこで、銀行は貸出金利を下げて4%くらいにする。これでようやく銀行としては、100億円分貸し出せることになります。
金利を下げて銀行は民間に100億円貸しているけれど、日銀からすると、どうも回収できなそうな変なプロジェクトにまでお金を貸していて、意味のない建物をたくさん建てようとしていたりしてバブルが起こっているように見える。
じゃあ日銀はどうするかというと、預金準備率を8.5%とか9%に上げるわけです。今までは、日銀の当座預金に8億円入れておけば市銀は100億円を貸し出せたのに、預金準備率が上がると、もっとたくさんのお金を当座預金に入れないといけない。市銀としては、貸し出すお金を減らして、金利を上げることになります。
岡田 日銀は、個別の銀行ごとに預金準備率を変えているんですか?
山形 全部同じです(山形注:厳密に言うと、少し扱いの違うところはある。また、累進制なので銀行の規模によって変わってはくる)。
岡田 じゃあ、ある銀行の経営がよくても悪くても、日銀は経済全体を見て預金準備率を変えるわけですか? それはまた、無理のありそうなシステムですね。
山形 ええ、住宅ローンしかやっていない銀行もあれば、よくわからない海外のプラント建設に融資している銀行もあるわけで、銀行によってやっていることは大きく異なります。全体を見て「最近、お前たちお金を貸し過ぎだよ」とコントロールしようとするのは確かに乱暴ではありますが、大まかに市中に流れるお金の量をコントロールしようとしているんですね。
岡田 日銀は銀行に重しを付けることで、経済をコントロールしようとしているわけか。元気がよ過ぎて手が付けられない小学生が増えてきたら、先生が生徒全員のランドセルに キロの重りを入れて、あまり暴れられないようにするようなものですかね。この比喩で合ってます?
山形 大丈夫です。ただ最近では、預金準備率よりも、公定歩合を調整するほうが、実際の経済への効果は大きくなっています。先ほど、市銀は預金準備率以上の金額を日銀に預けておかないといけないと言いました。そのお金が足りない場合、市銀は何をするかというと、お互い貸し借りをするんです。
岡田 ほうほう。
山形 A銀行が「やべえ、俺お金を人に貸し過ぎて、日銀の口座に入れておかなきゃいけない準備金が増えちゃった。でも、すぐに預けられるお金がないぞ」ということになったとしましょう。
A銀行は、「B銀行さん、C銀行さん、ちょっとお金を貸してよ!」と頼んで回るのだけど、それでも足りないときがあって、そうなったらA銀行は日銀にお金を借りるんです。「すみません、日銀さん。どうしてもお金が足りないので、今日一晩だけいくらか貸しにしておいてくださいよ」と頼むんです。
岡田 A銀行の営業部門が頑張って200億円分の融資先を見つけてきたから、預金準備率が8%だとしたら16億円を日銀に預けておかないといけない。でも、いま手元にあるのは8億円だけ。A銀行にしてみたらビジネスチャンスを逃したくないから、何とか残りの8億円をかき集めて日銀に納めれば、あと100億円を融資できることになると。
山形 そうそう。で、日銀は足りない分のお金を市銀に貸し出すときの金利を多少調整することができます。これが「公定歩合」です。日銀は「しょうがねえな、ほんとはこういうのはダメだから高めの金利を取るからね」と市銀にお金を貸すんです。この金利が低ければ、市銀はぶつくさ言いながらも借りるし、高ければ無理な融資をしなくなります。
岡田 なるほど、日銀が預金準備率と公定歩合を調整することで、市銀が実際に融資できる金額が決まってくるんですね。
【まとめ】
民間の銀行がお金を貸し過ぎたりしないように、日銀が民間に流れるお金の量をコントロールして金利を調整している。最近では「預金準備率」より「公定歩合」を調整するほうが経済への効果は大きくなっている。
【最新著作】
山形浩生先生との対談本『お金って、何だろう? ぼくらはいつまで「円」を使い続けるのか?』は、僕が山形先生にどんどん質問して教えを乞う、という形式で進行しています。
このブロマガでは、その第二章を読みやすいサイズに分割して、順次お届けします。「経済の根本の根本」を、常識や思い込みにとらわれず、とことん質問し、かみくだいて、身もふたもなく解説してもらった第二章。
ぜひ、お気軽にお楽しみ下さい。
じゃあ、また明日。バイバイ!
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