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レオナ・ペタス「K-1という船を沈めるわけにはいかない。だから宮田を追放する」
宮田充K-1プロデューサーに噛みつくレオナ・ペタス1万字インタビューです!(聞き手/ジャン斉藤)
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――レオナ選手と宮田(充)K-1プロデューサーのバトルは「台本がある」なんて言われがちですが、プロレスが守備範囲のボクからすると何も決まってないんじゃないか……ってことで取材に来てみました!レオナ いや、ホントそうなんですよ。実際には何も決まってないです。――やっぱり!
レオナ ひとつだけわかっていることは宮田は最悪ってことです。――宮田さんは最悪!
レオナ アイツをK-1プロデューサーの座から引きずり下ろすために、これからもK-1で戦うってことはわかってますね。
――この取材はいちおうK-1を通してるんですが、K-1の広報の方は誰も同席しないと……緊張してます!
レオナ まあ自分もK-1とやりとりは一切してないですからね。今回も、K-1とあいだに入っている会長から話を聞いて、取材も受けることにしたんですけど。――今後のことは何も決まってないのに、先日のK-1のリングに上がって宮田さんを批判したんですか?
以下、レオナ・ペタスのマイク「防衛戦とかオファーがない状態で、K-1から(ベルトを)返上しろ、返上しろって言われて。返上したとたんに、王座決定トーナメント。宮田プロデューサー、どこいますかね。マジでポンコツすぎて、終わってると思うんですよ。だからK-1じゃなくてRIZINとか他の格闘技に奪われてると思ってて。プロデューサーに対して不満に思ってる選手は多いと思うんですね。そんな不満に思ってる選手、ボクのところに集合してください! これから面白いことをやろうと思ってます。宮田のK-1ぶっ潰そうと思ってるんで」
レオナ いつになるかはわからないですけど、試合をすることは決まってますね……いや、試合もK-1次第なんですけどねぇ。ホントにいまのK-1は何を考えてるのかわからないですから。だからリングに上がったときも緊張しましたね。リングから降りたとき脇汗がホントにすごかったです。だって台本があったらそれどおり言えばいいけど、そんなものはないわけだから。そもそも1年振りのリングなのに試合じゃなくマイクですからね(苦笑)。――こんなに緊張するマイクはいままでなかったわけですね。
レオナ いや、ないですね。
――だからこそ「裏で何が決まってるんじゃないか」と言われると腹が立つと。
レオナ でもまあそういう風に見えてるということは、うまくマイクができたんじゃないかなと思って。
――たしかにそういうことですね。そもそもK-1とここまでこじれたのは何があったんですか?
レオナ いや、わからないですけど……2024年3月にK-1とRISEの対抗戦があったじゃないですか。
――3月17日にRISE、20日にK-1のリングで10試合の対抗戦がありましたね。
レオナ ボクもそこで試合をする予定だったから、最初の記者会見に出てるんですよね。でも、試合は組まれなくて。そのあと5月のKrushのオファーがあったんですよ。「なんでK-1チャンピオンなのにKrushなんだ?」と思いながらオッケーしたんですけど。しばらくしてSNSで「明後日Krushの会見がある」ことを読んで。メインに出る俺が会見を知らなかったんですよ。
――会見があることを聞いていなかったと。
レオナ 代表に連絡してもらったらK-1から「確認します」って返事があったんですけど、そのあと連絡がずっとなくて。会見の2時間前になって「もともと予定していた相手とは試合が組めない。一般公募するからそれでいいかどうか1時間以内に決めてほしい」と。見合う相手と言ってたのに一般公募なんておかしいし、予定の試合ができないことがわかっていたのになんで連絡がギリギリなの?って話じゃないですか。「もういいです。今後のことも考えます」って返事をして、そこからずっと……。
――前向きな話し合いはしてないんですか?
レオナ 何もないですね。
――なぜこんな対応をしてくるのか。心当たりはありますか?
レオナ ないですね。まあでもボクだけじゃないですよね。見てればわかるどおり、与座(優貴)選手も不満を書いてるし、そういう感じなんですよ、いまのK-1は。
――いつぐらいから対応が変わったんですか?
レオナ どうすかねぇ。まあ、宮田・カルロス体制になったぐらいじゃないですか。
――選手とプロモーターってお互いの言い分がぶつかることはよくありますけど、そういう衝突でもないんですかね?
レオナ ボクはもともとKrushから出てきたじゃないですか。Krushのときから宮田に冷遇されてたんですよね。たとえば、ボクに負けた奴が先にタイトルマッチをやってチャンピオンになったり。こっちは連勝してるのになんでそっちがタイトルマッチなんだよ?って。そういう扱いがけっこうあって冷遇されてました。
――それは宮田さんとの仲が何か悪かったんですか?
レオナ いや、ボクはとくに何もなかったんですけど。向こうはボクのことが嫌いなんじゃないですかね。ボクのことが嫌いな奴は嫌いになるんで、この際、徹底的に潰しちゃおうと。
――まあ自分のことが嫌いな人のことは好きになれないですよね(笑)。何かきっかけがあったわけじゃないんですね。
レオナ きっかけはわかんないですね。なんで嫌っているのかもわからず。
――たとえばK-1では誰が優遇されてるんですか?金子晃大選手とか?
レオナ 金子くんも実力があるんで優遇という感じではないですよね。冷遇されてるのは軍司(泰斗)とかかな。軍司はちょっとかわいそうかなと思ったり。
――宮田さんとはこのあいだK-1事務所で話し合いをされたそうですけど、それまでに宮田さんと話す機会はあったんですか?
レオナ いや、ないですね。だから「なんでこんな扱いをされるんだろう」って感じなんで。会場でも向かってくるんだったら、宮田は選手じゃないですけど、もうボコボコにしちゃうくらいに思ってますよ。
――12月のKrushの会場で宮田さんから無視されたとポストされてましたよね。宮田さんにその件を聞いたら「目が悪くてわからなかった」と言ってるんですけど、それはごまかしていると思いますか?
レオナ もう視力0.003というレベルだったらわかりますよ。それだったら全然、見えないですよね。でも、普通に見えてるじゃないですか。
――レオナ選手が後ろ向いていたからわからなかったとも言ってるんですよね。
レオナ 後ろからでも見えてるじゃんって思いません?
――誰なのかを気にしていなかったと。
レオナ まあまあ、それが人柄なんじゃないですかね。
――そんな宮田さんとK-1事務所ではどんなお話をされたんですか?
レオナ いや、とくに何も話はしてないですね。
――えっ、どういうことですか?
レオナ あれはベルト(スーパーフェザー級王座)を返しに行っただけなんで。――今後のことを話したわけではないんですね。宮田さんもニット帽を被ったままだったり、なかなか異様な雰囲気であることは写真からも伝わってきましたけど……。
レオナ まあ、かなり殺伐としてましたね。
――レオナ選手のほうから宮田さんに言ったりしたんですか?
レオナ とくに何も言わないですね。心の中で「覚えてろよ」って(笑)。K-1からベルトを「返上しろ、返上しろ」ってうるさかったんで、もういいや、返そうと。それでボクはK-1を抜けようと思ってたんですよ。でも、いままでK-1から離れた奴らって、みんなベルトを返上したり、契約満了を待って外に出て行ったけど、なんで自分は悪くないのに出て行かないといけないの?って。こっちのほうがK-1を愛してるんだから「オマエらが出て行けよ!」って。
――レオナ選手からすれば「K-1から出ていく=負けた」になっちゃうわけですね。
レオナ あまり言わなかったんですけど、武尊選手とタイトルマッチで戦ったときに試合後のリング上で「K-1を頼むよ」って言われたんです。男としてその約束も守らなきゃいけない。ここでボクが外に出るのは簡単だけど、内部から変えるほうがやりがいがあるなと思ってますね。
――ベルト返上直後の宮田さんのポストも攻撃的ですよね。「チャンピオンがベルトを返上したことで、かつてここまで多くの歓声が集まったことがあっただろうか そういう意味では今回、レオナ・ペタス選手には感謝しかない」。このポストはどう思ったんですか?レオナ 「おお……こういう感じでケンカを売ってくるんだな」って(笑)。いいよ、やってやるよって。そこに皇治も湧いてきてたことによって、ま~た茶番なんじゃないかと思われてるっぽくて。皇治のことだから、もっと早く絡んで来るだろうと思いながら。――「皇治のことだから」(笑)。
レオナ 皇治もそうだけど、いままでK-1を抜けた奴って、ある意味で逃げたんじゃないかなと。道が塞がっていたから抜け穴を見つけて他の団体に行った。ボクはそうじゃなくて、道が塞がってんだったら、その道をぶっ壊して新しい道を作っていかなきゃいけないと思ってますね。あと本当に大きいのは武尊選手から「K-1を任せた」と言われたことですね。あの言葉がなかったらボクも他の選手と同じように、他の団体にヒューッと行ったと思います。
――元K-1組が他団体で知名度を得てることに羨ましさはありませんでした?・他の団体で上がるならONE・K-1は選手を手放していいのか・返上したベルトを取り戻してやるよ・次の世代のために動きたい・皇治は格闘家として終わってる・朝久泰央と共通しているのはK-1愛
・宮田を引きずり下ろす……1万字インタビューは会員ページへ続く
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【RIZIN狂った季節】斎藤裕「朝倉未来選手とは一緒に船を作っていたんだよなあ……」
斎藤裕がコロナ禍のRIZINを振り返るインタビューです!(聞き手/ジャン斉藤)
★以前配信されたものを再構成した記事です
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――どうもDropkickのジャン斉藤です。今日のDropkickニコ生スタジオのゲストはこの方です!斎藤 はい、斎藤裕と申します。よろしくお願いします。
――いつも試合前後にしか取材しないので、とくに何かあるわけでもなく取材するのは新鮮な感じです(笑)。
斎藤 そうですね(笑)。
――朝倉未来選手が一旦引退したり、朝倉海選手がUFCに行ったり、那須川天心選手がボクシングに転向したりして、いまのRIZINは新章がスタートしているんですけど。今日は斎藤選手にコロナ禍のRIZINを振り返っていただきたいなと。
斎藤 狂乱の時代を駆け抜けてきましたからねぇ。
――澄ました顔してますけど、誹謗中傷の嵐に遭われてましたね(笑)。いまは格闘技以外の件で忙しそうですね。
斎藤 いまはラーメン屋さんの開店準備に追われていますね。毎日すごく忙しいです(笑)。
――RIZINに上がる前ってラーメン屋をやる構想はありました?
斎藤 いやあ、まったくないですね。まず選手をいつまで続けるのかもわからなかったし、RIZIN初参戦はコロナ真っ只中のときで。自分の人生がどういう風に進んでいくんだろうと。将来の不安はかなり大きかったですね。
――斎藤選手がRIZINに参戦したのは2020年ですが、RIZINがスタートした2015年の頃の選択肢は2つあったと思うんですよ。ひとつはUFC、もうひとつはONEですね。
斎藤 自分が修斗のチャンピオンになったのが2016年なんですけど、一応チャンピオン契約があって気軽に他の団体に行けるという状況ではなかったと思います。防衛戦をやらなければ、その先にシフトしていけないというか。なので、ずっと修斗で戦うという選択もあったんですけど、やっぱりキャリアアップという面で見ると、ONEかUFCか。あとアジアでいえば、ROAD FCやPXCとか。選択肢は意外とあったんですけど。ボクは海外に縁がなかったというか、タイミング的にもなかったんですよね。
――おそらく一番現実的だったのはONEですよね。
斎藤 そうですね。2019年頃から修斗がONEと提携をしたので、その流れで契約はあるのかなという時代でしたね。
――実際ONEの日本大会に出場する話はあったじゃないですか。修斗とパンクラスの4階級の王者対決が組まれたんですが、なぜか斎藤選手のフェザー級だけ試合がなかったという。
斎藤 なんでフェザー級だけ試合がなかったのかボクが聞きたいぐらいです(笑)。当初聞いていた話では各階級のチャンピオン対決があるってことだったんですけど……。
――あの対抗戦は勝てば5万ドルのウインボーナスがありますから出たいですよね。
斎藤 それとはべつにファイトマネーが入ってくるわけですからね。
――あのときの状況を簡単に説明すると、斎藤選手の対戦候補はパンクラス王者のISAO選手だったんだけど。ISAO選手はUFC志望という理由もあって対抗戦に出なかったと発言していますね。斎藤 実際のところどうなのかわからないんですけど、ISAOさんの意思が尊重されたようなかたちになったのかなと思います。でも、あそこで出られなかったことで吹っ切れた感じがしましたね。やっぱりこういうのはめぐり合わせですから。修斗やパンクラスからONEに進んでいる選手もいた中で、自分がそうならなかったのはやっぱりご縁がないのかなと。自分の階級でONEと契約している選手も若い選手が何人かいたので、そうなると自分が行くところではないのかなって直感で感じていました。
――たしかにISAO選手との試合がなくてもONEと契約してもおかしくない状況でしたね。
斎藤 あのときフェザー級でいえば、松嶋こよみ選手や中原(由貴)選手もONEと契約してたんじゃないかな。20代で有望な選手たちが選ばれた。自分はそのとき31歳ぐらいだったはずなので、年齢の事情もあったのかなと。そこも巡り合わせです。
――ボクが驚いたのは、斎藤選手のマネージャーの遠藤(正吾)さんが「ONEに出れなくて逆にチャンスだと思った」と振り返っていたことなんですよ。あのとき日本格闘技界は「ONEこそが理想郷」という雰囲気だったから慧眼だなと。斎藤 遠藤さんとはミーティングを頻繁に重ねていたというか、ONEに出ることや修斗で誰と戦うか。将来のビジョンの打ち合わせをずっとしてたんです。でも、ONEのチャンピオン対決に出れないってなったときは「……この先どうなるんだろうなあ」とは思いましたね(苦笑)。
――でも、遠藤さんは「これでRIZINに絞れる」と喜んだわけですね(笑)。
斎藤 ハハハハハ。結果的にはあそこが自分にとっての分かれ道だったと思うんですよね。自分とマネージャーの目線は違ったんですけど、自分も「そうだよな」って腑に落ちる感じもありました。だから変に落ちることもなく「次の試合をしっかり頑張ろう」という話をしたことを覚えています。
――そこで遠藤さんが猛烈にONEにプッシュしてたら契約しててもおかしくなかった。とはいっても当時のRIZINはフェザー級は稼働してなかったですよね。
斎藤 朝倉未来選手が矢地(祐介)選手と70キロ契約で試合してましたよね。
――朝倉選手はライト級GPに出る・出ないみたいな話もありました。RIZINからのオファーはあったんですよね?斎藤 あったんですけど、「これは自分がやる試合なのかな?」と思ったことはありました。
――これは明らかにされていることなのでいいますけど、平本蓮選手とのキックルールのオファーがあったりするわけじゃないですか。BELLATOR JAPANで平本選手と芦田(崇宏)選手がやりましたが、もしかしたら斎藤選手だった可能性があったんですよね。・RIZINキックルールを断った理由・朝倉未来の挑発をスカしたのは…・誹謗中傷の嵐・興行を背負うということ・朝倉未来との再戦でみんなを救った・RIZINという船を作った…13000字インタビューは会員ページへ続く
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北米MMAを知り尽くした男・水垣偉弥がここ最近のMMAシーンを語りまくります(聞き手/ジャン斉藤) ☆この記事はDropkickニコ生で配信されたものを再構成したものです
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――今日は水垣さんに鶴屋怜選手のUFC第2戦を語っていただく予定だったんですけど、もはやUFCフライ級恒例となってしまったカード消滅という事態になってしまって。それでもニュースは充実しているので、いろいろとお話を聞かせていただきます。まず水垣さんがUFCで対戦したことのある天才ドミニク・クルーズが2月20日に引退試合を行うはずがケガで欠場。そのまま引退することになってしまいました……。水垣 ずっとケガに悩まされていた選手なので、ドミニクらしいといえば、らしいんですけど……最後の試合は見届けたかったですよね。
――ドミニク本人も悔いが残りますよね。今回のケガは肩の脱臼ということですけど、そこが治ってからまた試合をする……という次元じゃないってことなんですかね。
水垣 おそらくそうじゃないですかね。以前も肩をやってるし、もうクセになってるというか、全然ダメなんでしょうね。ヒザも3~4回手術してるし、最後まで調整したけど、もう無理だという判断なんだと思ってます。
――ドミニクはUFC在籍15年間で10戦しかやってないんですよね。
水垣 そうかあ、試合数自体は少ないんですね。ボクとやるときも1年半空いていて、ケガ明けの一発目だったんです。そのあともタイトルを取ったけど、またケガで1~2年空いてますし。ケガで休んでる期間のほうが長いですよね。
――試合をやりたくてもできない。ケガとずっと向き合う生活だったわけですね。水垣 ボクはドミニク・クルーズが最初のヒザのケガで長期離脱しているときに彼のジム(アライアンスMMA)に練習に行ってるんですよ。当然ケガをしてるんで練習は全然できないんですけど、シャドーとかできることをやっていて。あとずっと若い選手に激を飛ばしたり、いろんな手伝いをしたり。ボクがジムのファイターとガチスパーをやるってなったときはボクのところにきて、グローブの紐を全部結んでくれました。それでスパーリングを見て、終わったあとアドバイスを言ってくれたり。常にジムにいて、リーダーシップをとってたんですよね。それが日課だと思うので、本当にストイックな人だなって感じましたね。
――格闘家の才能に「練習ができる」ことがありますよね。どんなに強くても練習ができないと上にはいけない。そこは本人の心がけがありますが、もうひとつの才能「ケガをしない」は、持って生まれたところもあるんですか?
水垣 まず身体が丈夫というのが大事ですね。そのぶんいっぱい練習できますし、それも才能だと思います。
――水垣さんは現役時代にケガで気をつけていたことはあります?
水垣 ボクはスパーリングのときは、試合でしか使わない領域をなんとなく線を引いてやってました。スパーでも解放しちゃうと、たぶん解放癖がついちゃって、試合でしか使わない力を常に使ってしまって、ケガが多発すると思うので。ガチスパーでも「ここまでしかやらない」と決めてましたね。――ガチスパーでもガチではないと。水垣 だからなのかボクは大ケガってほとんどないんですよね。でも、その線引きが難しいところです。線を引きすぎても、たぶん一流にはなれなくて、ボクはそこが届かなかったところだと思います。もうちょっと線を超えたほうがよかったんじゃないかなって思ってて。
――練習で解放するからこそ得られるものもあるってことですね。
水垣 それが行き過ぎちゃうと、今度はケガで泣かされるようなことになっちゃうと思いますし……そこはすごくセンスが問われる大事な部分だと思いますね。ボクはボクシングのスパーではけっこう解放してたんです。ただ組みやレスリング、サブミッションで開放すると、やっぱりヒザ、首、腰をケガしやすくて。そこはある程度、超早めにタップしたり、無理しないで全然頑張らないことを意識してましたね。
――打撃と組み技ではケガのリスクが違うのは、後者のほうが予想外のケガが起きやすいってことですね。水垣さんが無理しないことを心がけていても、相手が解放するタイプだったりする場合もあるわけじゃないですか。
水垣 「こいつは危ないな……」と思ったらすぐにやられます(笑)。
――ハハハハハ!
水垣 だけど、やられてムカついて、ムキになっちゃったりするときがあるんですけど、そういうときは反省をして「今度はやられちゃおう」って(笑)。
――「練習番長」みたいな危ない相手との練習は回避することもあるんですか?
水垣 いやあ、それもなかなか難しいんですよね。ボクの場合は練習に行かせてもらうことのほうが多かったので、出稽古先で相手を選別するのはやっぱり失礼じゃないですか(笑)。そこはある程度やるんですけど、自分の身は自分で守るしかないので、無茶しないでやることを心がけてましたね。――それはそれで緊張感のある練習ができるってことですよね。常に油断できない。
水垣 でも、週2回でも緊張感の高い練習ばっかりやってると集中力も持たないと思うんですよ。ケガの要因にもなりますし。あとはスタミナをつけるためにのスパーリングは絶対にやらないようにしてました。それをやっちゃうとケガをしやすくなります。体力をつけるときは、走ったりとか人とコンタクトしないような練習をしてました。そういう分け方もすごく大事だと思います。でも、ドミニクにケガが多かったのは、身体の使い方が独特だからですよね。
――打撃でも組みでもどこから攻撃をしてくるかわからない変幻自在のシャッフルスタイル。
水垣 あのフェイントやステップはすごくヒザに負担がかかりますよね。普通の人だったらフェイントじゃないだろう、動きは止められないだろう……というところから止まったり、動きを変えたりするんで。だから相手はフェイントにひっかかるし、動きが読めないんですけど。正しい身体の使い方ではないので、そのぶんケガをしやすい。
――ヒザが壊れるわけですよね……。
水垣 あのステップができる才能がある選手がいたとしても、勧めるかは微妙ですよね。ケガする可能性がすごくありますから。
――選手生命と引き換えに悪魔的な強さを手に入れたわけじゃないですけど……スイッチは定着してるけど、ドミニクほどのシャッフルの使い手は出てきてないですもんね。
水垣 やっぱり身体に負担がかかるものですからね。
――だからこそあのドミニク・クルーズのシャッフルは、当時のMMAにとっては革命的なことだったんですね。
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