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  • 【鈴木千裕戦!】金原正徳「ボクに勝ったら大したもんだと思う」

    2024-04-15 11:391
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    鈴木千裕戦直前! タイトルマッチ挑戦を控えた金原正徳11000字インタビューです!

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    ・「佐山先生をUFCの殿堂に!」……川口健次✕朝日昇、青春のシューティング対談!!



    ――
    タイのトレーニングキャンプは所(英男)さんと一緒に行かれてたんですね。

    金原 そうそう、英男くんと一緒に行ってきました。今回はタイガームエタイをメインにやらせてもらって。
    ――タイガームエタイってジムの隣にあるゲストハウスに泊まれるんでしたっけ?

    金原
     ゲストハウスもあるんですけど、ボクらはちゃんとしたというか……まあいいオジサンなんで、さすがに泊まれればどこでもいいやみたいな感じじゃなくて(笑)。

    ――ハハハハハ。

    金原
     キッチン付きのホテルを借りれるんですね。ボクは減量があったんで、あんまり外食したくないし、偏食なんで食べれるものがけっこう決まっちゃうんですよ。だから自炊したいなと思ってて、今回はスーパーで食材を買っての自炊がメインで。

    ――
    所さんと部屋は別々ですか?

    金原
     さすがに同じ部屋ではないです(笑)。2人とも気使いなんで、あの人は年上だけどボクに気使うし、ボクが気使われるのもイヤだし。格闘技以外は干渉しないように別々に。お金がない若いときだったらまあしょうがないですけど、まあ2人とも一応それなりに稼いでいるんで(笑)。

    ――
    経済的余裕があるってことですね。

    金原
     そこは自己投資ですね。ボクは今回の試合で回収できるんですけど、あの人まだ試合が決まってないから、キャンプ費用を回収できないという現実はありますね(笑)。

    ――
    あ、所さんは試合が決まってないのにタイに出向いたんですね。

    金原
     ボクはクレベル(・コイケ)戦の前にタイに行ったじゃないですか。あの人も(アラン“ヒロ”)ヤマニハ戦が決まってたから誘ったんですよ。「ボクらもこれが最後の試合になるかもしれないからタイで頑張りましょうよ」って。でも、あの人は都合がつかなくて行けなかったんですよね。で、ヤマニハ戦が終わってから「行っておけばよかったです」みたいなことずっと言ってて。今回「今度こそ行きましょうよ」って冗談半分で誘ったら「行きます!」と。それでタイでのトレーニングしながら「半年前に来てればヤマニハに勝ってた……」ってずっとボソボソ言ってました(笑)。

    ――所さんが後悔するくらい充実したキャンプだったわけですね(笑)。

    金原
     そうです。「こんだけやって負けたらしょうがねえな」っていう諦めはつくんですよね。自分も「もうちょっとできたんじゃないか」と後悔することはいっぱいあったし、「こういうふうにやっとけばよかったな」って思うことはいままでたくさんあったんで、そういう後悔はしたくない。この歳だといつ終わってもおかしくないじゃないですか。だからその後悔だけはしたくなくて、100%自分ができることをやってみる。で、前回クレベル戦の前にキャンプを張ってすごく調子がよかったんで、今回も同じようにやってみようかなってまた行ったんですね。

    ――
    今回もやり切りましたか。

    金原
     100点満点だと思います。大きなケガもなかったし、自分がやろうとしてたメニューは一応妥協なくクリアはできたんで、まあ1人だとちょっとね、途中で帰ろうかなって思うこともあって(苦笑)。前回もそうですけど、いろんな意味で苦しくなるところもあったんですけど、試合も決まってないオジサンが一生懸命頑張ってるんだから。

    ――
    オジサン2人が共に支え合って乗り越えたファイトキャンプ(笑)。

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    金原
     ホントですよ(笑)。まあ、オジサン2人が身体のあちこち痛いとか言いながら一生懸命キャンプをクリアしました。もうできないですけどね。

    ――
    もう無理ですか?

    金原
     もう行かないです。やっぱキツイっすよ。こんだけのトレーニングキャンプは年齢が限られるなと思いますね。それにボクらはベテランになってくるとラクしたいじゃないですか。いかにラクしてリングに上がって、いいギャラもらって、いい仕事をするかみたいなことを考えるんですけども(笑)。ボクは不器用だからそれができない。100%仕上げてリングに上がって、パフォーマンスで発揮して、見てくれる人を喜ばせることしかできないからラクできないんですよね。

    ――それくらい追い込むわけですね。

    金原
     そうそう。メンタル的に厳しい部分があるから「最後なんだから」「いい思い出なんだから頑張ろう」とずっと自分に言い聞かせてやってて。芦田(崇宏)戦で復帰したときから「もうこれで最後だ」ってずっと思ってますよ。

    ――
    次の「これが最後だ」があるかもしれないんですか?

    金原
     うーん、それはそんなときになってみないとわからないですけどね。その相応の相手と戦えるのか、「コイツだとそこまで練習しなくてもいいや」と思うかもしれないし、そこはわからないですよ。

    ――
    いまのタイってファイトキャンプのメッカになってますけど、他の日本人選手はいましたか?

    金原
     最初はRENAもいたし、ブレイブの若い子2人もいたし、あとウチのジムからも若い子が3人来たりとか。別便で1週間だけですけど、今度ネオブラに出る20代前半の子。ボクが来るタイミングもあって、世界を知っておきたいみたいな。そこは自己投資じゃないですけど、ボクも初めてアメリカに行ったのも20代前半だったんで必要な経験かもしれないですね。世界を見るだけでも価値観は変わってくると思う。自分の実力だったり、周りがどういう風に頑張ってるのか。ああいうところで練習している人たちって、格闘技に人生を懸けている人たちばかりなんで。自分たちがどんだけ甘い環境でやってるかっていうのもわかるかな。

    ――
    「甘い環境」ですか。

    金原
     はい(笑)。

    ――
    若い子は経済的に1週間なんですね

    金原
     まあそうですね。バイトしてお金を貯めて行く若い子たちが多いので。それはボクの若い頃そうでしたよね。こっちも練習があるから向こうでかまってあげたりすることはできないですけども、まあ少しジム代を出してあげたりとかのサポートはしてあげましたけども。

    ――
    金原さんがタイに行ってるあいだRIZINの記者会見があってですね……。

    金原
     あれは全部、佐伯繁が悪いです!(笑)。

    ――
    ハハハハハ! 金原さんが会見に出なかったことを対戦相手の鈴木千裕選手が怒ってたんですよね。「そのぶん練習できるのはズルい」と。

    金原
     俺は佐伯さんにタイに行く日程を伝えていたし、会見があることさえも知らされてなかったし、練習が終わったらいろんな人からDMが来て「鈴木千裕が怒ってますよ」と。なんのことかと思ったら、俺めちゃくちゃとばっちりじゃんと思って(笑)。

    ――
    このカードは大晦日に発表はされていたんですけど、あの日も金原さんが不在でしたよね。

    金原
     大晦日に北海道の家族旅行を入れちゃったんですよ。そうしたら大晦日に発表することになったらしくて、大会中カード発表するときに電話でもいいから出られないか?と。

    ――
    榊原さんがリング上からの電話で皇治選手に「朝倉海とやってくれない?」って交渉したことがありましたけど、そんなRIZINテレホンショッキングが再び(笑)。

    金原
     電話でやりとりするはずだったんですよ。で、大晦日当日の便で北海道に行く予定だったんですけど、飛行機が大遅延しちゃって。リングで発表したときは雲の上だから電話できなくて(笑)。

    ――
    ハハハハハハハ! 

    金原
     向こうはそのへんのことは何も知らなかったんじゃないですか。わかんないですけども。

    ――
    鈴木千裕選手をインタビューしたら、そのへんの事情をあとで知ったみたいで「マジですいませんでした」って謝ってましたね(笑)。

    金原
     まあでも彼なりに盛り上げようとする気持ちももちろんあるだろうし。ボクも会見に行かない理由はとくにないわけじゃないですか。練習したいからサボったことなんていままでないし、意外にそういうとこ真面目なんで。それにケンカをやるんだったらなんか目の前でやりたいし、ネットを通じてだと気が付かない場合もあるじゃないですか。

    ――
    挑発リプを見逃してしまう場合もある(笑)。

    金原
     周り言われて「あっ、そうなんだ」って気付く時点でケンカにならないんで。だからそういう場があるんだったら行きますよ。あとこの件で本気で怒ってDMを送ってくるアンチもいるんですよ。「オマエはチャンピオンに対して礼儀がなってない!」とか。

    ――
    うわー、面倒くさい(笑)。

    金原
     そんなやつにいちいち説明するのもめんどくさいですけど。ボクにも言いたいことはあるけども、歳が倍くらい違うんで口ケンカしてもしょうがないし。結論としては佐伯繁が悪いってことで(笑)。

    ――ハハハハハ! タイトルマッチの流れとしては、金原さんがクレベルに勝って、ケラモフvs鈴木千裕の勝者と大晦日もやるという話でしたよね。

    金原
     最初、向こうがケガしてるから連絡待ちみたいな感じでしたね、自分としては大晦日にやるつもりで準備はしてました。結局大晦日は難しいから、あらためて春にやるという話になって。RIZINがどう考えていたかはわからないけど、ボクの希望としては最後の試合になるかもしれないから、周りの人や自分のジムの人たちの前で試合したいから東京でやりたいと。そういうことがあって4月になった感じですね。

    ――
    準備期間もだいぶ取れたわけですね。

    金原
     そうですね。クレベル戦が終わってから半年以上、空いてますね。自分は2ヵ月あれば準備できるんですけど、年1試合くらいでも全然問題ないので。試合が早く決まっても、長すぎると逆に早く仕上げすぎちゃうんで。早く仕上げすぎずにタイでちゃんと身体を作ってきて、日本に帰ってきて最終調整している感じですね。タイでちゃんとキャンプを張れたことは、自分の中ではすごく大きいと思います。

    ――金原さんとの試合のあとに、鈴木千裕選手は6月のKNOCKOUTで五味隆典さんとのボクシングルールをやることが発表されたじゃないですか。これを受けて金原さんは「よし!決めた!次の試合は腕十字で決める!!」とXにポストしましたけど、やっぱり怒りはあるんですか?

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    https://ch.nicovideo.jp/dropkick/blomaga/202404

     
  • ジョビンチャンネルでできなかった髙田延彦の「八百長」「搾取」の話

    2024-04-15 11:302
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    ジャン斉藤が語るジョビンチャンネルについて(ニコ生配信したものを再編集した記事です)


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    ・怪物デイブ・メルツァーと『レスリング・オブザーバー』■斎藤文彦INTERVIEWS



    ハローハロー、ジャン斉藤です。ボクは生きてますよ!

    ジョビンさんのYouTubeチャンネルがボクが登場した回を最後に丸ごと削除されてしまって「八百長に触れたことが問題になったんじゃないか」なんて囁かれていますね。そこではボクがかつて某格闘技関係者に軟禁されたネタも話しているから、尾ひれがつきやすい物騒な内容だったことはたしかですが、ジョビンさんのアナウンスによればチャンネルを削除したという話も聞こえてきます。スタン・ハンセンがボディスラムで投げ損なってブルーノ・サンマルチの首をケガさせたんだけど、ラリアットが原因だったことにして因縁ストーリーを作り上げた……ように、ボクがジョビンさんのチャンネルを潰したことにすべきですかね(笑)。

    Dropkickの配信と違って、かなりブレーキをかけてますし、そんなに大した話はしてないんですよ。復旧したらわかるはずですけど。ボクも喋っててあんまり手応えがなかったですけどね。その理由は不特定多数の人が見ているし、前提を共有していない人が多いわけじゃないですか。とくにジョビンさんのチャンネルですよ!(笑)。ジョビンさんが「高田延彦は許せない!」って吠えたら、ボクが「怒りたくなるのはわかります。でも、あの時代は……」なんて背景を説明していたわけですけど、しつこく説明をしていくと「なにぃ、ジャン斉藤は高田をかばうのか!?」って発狂する視聴者が現れたはずなんですよね。だからほどほどの説明に抑えました!

    ジョビンチャンネルでできなかった髙田延彦の「八百長」「搾取」の話の続きは会員ページへ!

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  • 令和の女子プロ! 小佐野景浩の東京女子プロレス講座

    2024-04-12 22:00
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    プロレスラーの壮絶な生き様を語るコラムが大好評! 元『週刊ゴング』編集長小佐野景浩の「プロレス歴史発見」――。今回は中嶋勝彦を見よう/「プロレスの仕組み」論す!


    <1記事から¥100から購入できる連載記事! クリックすると試し読みできます!>

    中嶋勝彦を見よう/「プロレスの仕組み」論

    東京スポーツ新聞社制定「2023年度プロレス大賞」

    追悼“テキサスブロンコ”テリー・ファンク

    G1クライマックスに圧倒的な価値観を!

    ALL TOGETHERに見えたリアルな関係 

    【永田三冠議論百出】全日本プロレスは大丈夫

    清宮海斗の「顔面蹴り」と「平和ボケ」

    プロレス大賞の選考は毎年難しい

    岩谷麻優vsKAIRI IWGP女子王座の勝負論

    私が愛した“若獅子”アントニオ猪木

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    頑固一徹! 追悼・ターザン後藤さん

    大谷晋二郎選手の試合中の事故について

    『至高の三冠王者 三沢光晴』を書いた理由

    新日本プロレスvsノア対抗戦から見えた個人闘争の炎

    令和の横アリ大実験!新日本vsノア対抗戦

    プロレスと結婚した風間ルミさん

    武田有弘☓小佐野景浩 「これまでのノアと、これからのノア」



    ――
    今回のテーマは小佐野さんが解説をやっている東京女子プロレスなんですが、ボクはそこまで女子プロレスは詳しくないですし、東京女子プロレスに至っては今回の両国大会でめて第1試合からメインまで通して見たというくらいの超ぼんやり層です。

    小佐野 へえ、この前の両国を全部見たんだ。どうだった?

    ――
    初見に近いのに感想なんか言っていいんですかね(笑)。

    小佐野
     やっぱりパッと見た印象も大事だよ(笑)。

    ――
    えーと、なんだろうな。プロレスの世界とは無縁だった女の子たちがたまたま入り込んで頑張っていく姿を応援するというか……昔の全女とは全然違うし、スターダムとも異なる印象でした。こんなことをいうと、なんか怒られそうだな(笑)。

    小佐野
     私も東京女子の解説をやるようになってから見るようになったんだけど。東京女子の選手たちってプロレスラーに憧れて入ったわけでなかったんだよね。初期メンバーは全員プロレス志向ではなかった。新しい子たちは東京女子の先輩たちの試合を見て、「プロレスをやってみたい」ってことで入ってくるケースが増えてきている感じなんだけど。

    ――
    初期メンバーは何か他に理由があってプロレスをやるようになったわけですね。

    小佐野
     たとえば一番多かったのはアイドルになりたいと。あとはお笑い芸人だったり、プロレスでいろんなことが表現できるんじゃないかと。それで実際にプロレスを始めてみたら、のめり込んでいって……。今回のメインイベントを張った山下実優なんかは強さの象徴として君臨しているけど、あの子だって本当はアイドルになりたかったわけだから。

    ――
    山下実優はけっこう本格派っぽいかんじでしたけど。

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    小佐野
     あの子は中学まで空手をずっとやってたんだけど、アイドルになりたいと思って東京に出てきて、巡り巡って高木三四郎と出会い、「ちょっとプロレスをやってみないか」と誘われて東京女子に入った。入団会見では「歌って踊れるプロレスラーになりたい」って言ってね。それがいまやエースの風格が漂ってるわけだよね。その山下からベルトを取った渡辺未詩なんかもアイドルの志向。アップアップガールズ(プロレス)のオーディションを受けたから当然プロレスの仕事もやることは覚悟していたみたいだけど、オーディションでロックアップや受け身をやらされたり、ここまでガッツリ試合をやらされるとは思ってなかったみたいだから(笑)。

    ――
    渡辺未詩こそプロレス向きですよね。あのパワー!!

    小佐野
     東京女子の解説仕事を始める前に渡辺未詩の試合を見たんだけど、その試合ぶりから「プロレスが大好きな子なんだろうな」と思ってたわけ。ひとつひとつの技もきっちりしてるし、ソフトボールもやっていて運動神経抜群。プロレスラーになりたくて入ってきた子なんだろうなと思ったら全然違った(笑)。本人はアイドルとしてあまり筋肉をつけたくなかったみたいでね。

    ――
    そうなるとテーマ曲の「チョコっとラブ ME ドゥー (feat. 渡辺未詩)」も深いものに聞こえてきますよね。「みんなプロレスは好きかー?」から始まるのに。これだけプロレスを見てきた小佐野さんがそんな東京女子プロレスの解説をやることにちょっと抵抗はあったんじゃないかなと。

    小佐野
     いや、そんなに抵抗はなかったけど、初めはやっぱり歌のコーナーから始まるでしょ。あれを見たときに「ちょっと俺は無理かも……」と思ったわけ。

    ――
    女子プロレスは昔から歌と密接な関係ですよね。

    小佐野
     そうだよね。昔だってビューティ・ペアは歌ってから試合をしていたわけだから「やっぱりその系統か」という印象はあったんだけど、初めて見たときの第1試合が鈴芽vs遠藤有栖。両国でタッグのベルトを取った2人のシングルマッチで、有栖のデビュー戦だったわけ。「どんな試合をするのかな」なんて高をくくって見てたら、がっつりグランドから始まって。7~8分の試合だったんだけど、5分まではほぼグラウンドの攻防だったんじゃないかな。

    ――
    ちゃんと基礎を学んでいるってことですね。

    小佐野
     いきなりお腹を蹴ってロープ飛ばして……という試合じゃない。「しっかりしているな。誰が教えているんだろう?」って興味が湧いて、これは解説もちょっとやってみたいなと。それでいろいろと話を聞いてみたら、もともと東京女子はマットレスリング、要はリングやロープもないマットの上でスタートしたから、ロープを使わない試合運びを覚えないと戦えないと。そういうルーツがあることを知って納得したんだよね。東京女子の特色でいえば、他のレスラーのマネをしないし、誰かのパクリをしない。なぜならば、みんなもともとプロレスファンじゃなかった。真っさらの状態で始めたから、良くも悪くも他のレスラーの影響を受けてないんだよね。それこそ初めは「プロレスってなんなんだろう?」っていうところから始めている。

    ――なんの知識もなくプロレスラーになるって想像以上に大変ですよね。

    小佐野
      どう戦えばいいのか、どうやったら勝利に結びつくのかはまったくわからないで始めてるわけだからね。フィニッシュ・ホールドを教わったとしても、そこにどうやって持っていくのかは最初はわかんないわけだから。

    ――
    最近プロレスデビューした佐々木憂流迦の評価がすこぶる高いですけども、彼はプロレスファンだったからイメージがつきやすい。でも、東京女子の選手たちは手探り。

    小佐野
      それこそ未詩に聞いたら「ドロップキックはどっちがやられてるのか最初はわからなかった」と(笑)。

    ――
    よく考えたら、たしかにわかりづらい(笑)。

    小佐野
      知っていたプロレス技はジャイアントスイングだけ。それは「めちゃイケ」で加藤浩二がやっていたから(笑)。プロレスで知ったわけじゃないんだよね。

    ――
    渡辺未詩の得意技はジャイアントスイングですね。

    小佐野
      彼女はあの技を使いこなせるパワーがあるし、「あとあと他のアイドルを回せることができるかな」という感じでやってみたらしいんだけど。

    ――いやあ、東京女子を通じて、あらためてプロレスの難しさがよくわかりますね。プロレスファンはあたりまえのようにスリーカウント決着を理解してますけど。

    小佐野
     格闘技を何かやってた人と、まるっきり格闘技をやったことすらない人でも差はあるよ。「ロックアップは大事な基本だから」と教わっても、格闘技をやったことがないとまず組むことの意味がわからないだろうし。

    ――
    試合に勝つために戦うけど、相手に致命的なケガを負わせちゃいけないという暗黙の了解もあったりするわけですもんね。

    小佐野
     いろいろ勉強していくうちにプロレスが好きになっていった子は多かったと思うんだよね。たとえば上原わかなという大食いアイドルや舞台もやってる子がDDTの「夢プロレス」という企画に参加した。企画の趣旨は自分の夢を叶えるためにプロレスを始める。全部クリアできたら夢を叶えてあげますよっていうことで、べつにプロレスラーにならなくてもいい。そこではアジャコングがプロレスを教えるんだけど、アジャが上原わかなに「アンタのやってることはまったく人の心に響かない。上っ面だと人の心は動かせないよ。私のことをおもいきり殴ってみろ!」と。それでも上原わかなはおもいきり殴れないんだけど、そこを殴らないと殴られるのがプロレスだよね。アジャに抑え込まれて身動きが取れなくされて「今度はオマエが抑えてみろ」とポジションを変えるんだけど、アジャは簡単に返しちゃう。

    ――
    アジャさんは全力で物事に取り組む大切さを教えたんですね。

    小佐野
     人の心を捉えるのはどういうことかといえば、一生懸命やる、力いっぱいやる。そうしないと人の心は動かせない……ということをアジャは教えた。上原は「夢プロレス」の卒業試合をやったあとに「これからどうしますか?」と聞かれて「プロレスを続けます」と答えて、いまでもプロレスを続けてるわけだ。

    ――いい話です!女子プロレスを知り尽くしたアジャさんが親身にレッスンをしてくれるのはありがたいことですね。

    小佐野
     アジャは東京女子のことを気に入ってるのか、大きな大会のときは必ず試合に出てくれるんだよね。

    ――
    アジャさんが全女でやっている時代と比べると、女子プロレスのあり方もだいぶ変わってますよね。

    小佐野
     そう。いまはあの頃の全女の匂いがまったくしないプロレスだからね。たとえばDDTにジャイアント馬場やアントニオ猪木の匂いがしないと同じかもしれない。それでいえば昔のレスラーからすれば、東京女子の選手は仲が良すぎるように見えるかもしれないね。

    ――そこも聞きたかったんですよね。全女の抗争はリング外でも激しかったですよね。一線を越えていた。

    小佐野
     本当に足の引っ張り合いがすごかったし、私生活でもメンタル強くなければやっていけないし、試合でも何をされるかわからない緊張感はあったよね。

    ――アジャさんとバイソン木村さんはブル中野に反旗を翻したあとは、巡業バスにも乗れないし、控室も用意されない。それこそ天龍さんと阿修羅・原さんのように電車やリング屋さんのトラックに乗って巡業についていって。

    小佐野
     そこは男子も少なからずそうだったわけでしょ。たとえば武藤敬司や蝶野正洋から当時の新日本道場の話を聞くと、とてもじゃないけど美しい青春物語じゃないよ。「アイツ早くやめねえかな」「1人やめて競争相手が減ったぜ」と喜ぶ世界。どこまでいっても競争だから仲良くはなかった。

    ――プロレスの勝負論の世界でレスラー同士が仲良いわけがないですよね。格闘技の場合、わりとスッキリしてるじゃないですか。

    小佐野
     格闘技だと結果で白黒はっきりしちゃうからね。プロレスの場合は「アイツばっかプッシュされて」というふうに感情的になるよね。

    ――
    東京女子の選手の仲はどうなんですか?

    ・スターダムと東京女子は対抗戦をやらなくていい
    ・東京女子は初期ジャパン女子?
    ・東京女子はしっかりとレスリングから
    ・アイドルレスラーの根性は半端じゃない……続きは会員ページへ
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