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2026年4月の記事 9件

<菊地成孔のアンダーグラウンドX(26/4/26=No.34)>

 なんだか知らないが、僕を現代音楽から縁遠いか、ひょっとしてちょっと嫌いぐらいに思っている人がいてもおかしくない。そいつはバカではなく、「パブリックイメージ」の同一性がほぼ完全に散逸し、しかも誤解や偽記憶に関して、フロイディアンほど自覚的でない、が故に、強烈である民が、黒澤の「羅生門」なんて児戯以下よ、というぐらい、無茶苦茶なイメージを信じ込んで平然としている世の中になったからな。AIのお陰で。    なので、正解としては僕は現代音楽が死ぬほど好きな現代音楽マニアで、今日初めて実際に演奏した。のでもう関係者だ。神話破壊とまでは言わないし、権威に対してスカートめくりをしたがる道化の属性もそんなにないけれども、信じがたいリアルを記すことにする。    今、「高橋悠治 Vol.2    MULTIPLE」の全員一緒の楽屋にいて、そこはそこそこ狭くて、大体、6畳間とかそういう感じだ。そこに高橋悠治、渋谷慶一郎、石上真由子、朝吹真理子(まあ「朝吹」と言えば我が世代のシス老人はケイトで決まりなんだが、真理子先生は、親戚の集まりに必ずいる、一番若くて全員に可愛がられる子のポジション。を取りにかかる、写真のイメージからも、ついでに朝吹ケイトからも程遠く、「ひゃあ、ひゃあ、その楽器(バリトンサックス)おっきいですね。バイクみたい!!一回倒れたら起こすの大変そう!!」とか言って、僕は知らないが、スタジオジブリとかの作品にも出てくるキャラクター設定かもしれない)、菊地成孔、あと、渋谷さんのライブには必ずいる、渋谷さんの取り巻きというか、なんか世界を股にかけた仕事をなさっている人もいて、ぶっちゃけ密です!はいそこ密です!という感じなのだが、渋谷慶一郎さんと、取り巻きの「イランと仕事をしている」らしい人、と、朝吹先生しか喋っていない。トランプはどうしようとしてるとか、ワイトハウスの内部はこうなってるとか、ああなってるとか。    ヴァイオリン奏者の石上さんは、ものすごくシリアスな人で、美しいが怖い。という類型にあまりにもバッチリはまりすぎて、「ひょっとしてこんなにハマるという事は、完全な演技ではないか?」と思うのだが、紳士協定ならぬ淑女協定、などと言っては老害まっしぐらだが、朝吹先生の「ねえ、なんか最近、夜寒いよねえ。ねえ、寒くない?」という声掛けに、「そうだねえ。昼間暑いのにコートが手放さないよ笑」と、静かに口を開いたのだが、その「革のコート」は高い確率でエルメスなのであった。  

<菊地成孔のアンダーグラウンドX(26/4/13=No.33)>

 2回続けてCoachellaの話をするなんて若作りしてるみたいで嫌なんだけど、最近はJBがJBではなくJBであること、彼がマイスペースとYouTubeで発見された時のことを知らない人も多く、サブリナ・カーペンターとJB(ジャスティン・ビーヴァーね。正解は)の舞台設計は、同じステージ制作会社によるもので、どちらも同じぐらい成功したとしか言いようがない、やはり21世紀はサイジングの時代だなと思うばかり。    しかし最近「僕を推して下すっている人々は、どんなもんが好きで、どんなことを知っているのだろうか?」という市場に関する問いをAIに問うてみたいような、悪くないような、というのも、今日ドミューンで「これから一回死んだ<東側 / 西側>という言い方が、前と逆転して使われるようになる」という話から、ちょこっとイスラームの話になり、「これからのイケてるスーツルックは、青いスーツに黒いシャツ、もしくはマオカラーの白シャツで、要するにノー・タイになる。つまり、現在のイランの公式スーツのスタイルである」という話に至り、「ええ、そんな鋭い話~(ファッションの話などもされるのですね)」といった反応があったり、なんかそれだけでは無いのだが、色々とね。    まあそもそも「M/D」をドカンと置いて始まったんだけれども、あれを通読した人はひょっとして、この場に絶無ではなかろうか?と思うと、ヌルいような冷たいような、あるいはとてもアツいような、とても奇妙な気分。最近いつも思うのは「今までの人生を<粋な夜電波>前と後に分けて、<前>にしたあらゆる仕事、話題、等々について、もう一回ずつ全部使えるのでは?」と思っており、それはとても奇妙な気分笑、これが僕の「現在は、ツイストした20世紀、あるいは近代の刷り込み直しが強力に推進されている」という史観と繋がっているのは言うまでもない。  

<菊地成孔のアンダーグラウンドX(26/4/10=No.31)>

中野のスタジオでルアンさんのリブート用アー写/ デジタルジャケットといった宣材写真の撮影を終えたところだ。スタジオのレンタル時間は5時間で、その間でホリゾンドの設置から、ルアンさんのメイク、ヘアを作り、衣装を着てもらって微調整し、かなりの点数の撮影を済ませ、と、タイパも凄いんだが、内容もヤバい。   我々とルアンさんの目的は電少の市場という元手から、あらゆる方向に扉をこじ開け、ルアンさんのポテンシャルと我々のポテンシャルを世界に示すことであるけれども、シンプルな話、音楽もビジュアルもぶっちゃけ「変わらず電少のルアンちゃんだー」とは、どんなに思おうにも8%は超えられないと思う。まあでも「声」は同じだけどな。   撮影も突貫だが、その撮影の合間にメイク待ちしていると、こないだ終わったばかりのヴォーカルレコーディングの仮ミックスが届く、という突貫ぶりで、「うわー。いま楽曲が届きました!」「聴きましょう聴きましょう!」「うわー無茶苦茶カッコいい!カシャ!カシャ!カシャ!(シャッター音)」といった感じで、景気が良いというか忙しいというか。  

<菊地成孔のアンダーグラウンドX(26/4/4=No.27)>

よく「病み上がりで仕事をするのは良くない」というけれども、前の回にある通り、もう腹の底からズシンとくるストレスを数ヶ月溜め、帰ってデモ見て、発熱し、その日は売薬で済まし、翌日医者に行って「喘音化します」と言われて、ぐんぐん熱がアガってゆく中、ルアンさんのレコーディングが始まった。これはドロン出来ない。   しかも初日は、レコーディング終わりで、「もう一つのテレビドラマ」のデモ制作スタジオに直行しないといけなく、発病した翌日から仕事を掛け持ちしたので、今の所、投薬(喘息用のステロイド吸引機も含め)4日目だけれども、症状はどんどん悪くなっている笑。「どんなことでもまず形から」とか言うが、例えばドラムスの外山明は喘息持ちで、他にも色々いたが、彼らは胸からヒューヒュー音を立て、ステロイド吸引していた。   僕は喘息の患者ではなく、長引く空咳の原因がガンとかではなく、昔、日に缶ピース3缶吸っていたり、リーガル時代のイタリアやドイツで大麻をバカンバカンに吸引していた事により、この歳になってツケが回ってきて、寝れないとか、非常に苦しいとかではなく、なんか咳がしつこいなあと思っていた。というストーリーラインなのに、あの、片手に収まり、カチっと回してから思いっきり口から吸いこむステロイド吸入器を手にして、朝晩吸引しているうちに、いっぱしの喘息患者に見えるようになったのだから、馬子にも衣装だ。  

ビュロ菊だより

「ポップ・アナリーゼ」の公開授業(動画)、エッセイ(グルメと映画)、日記「菊地成孔の一週間」など、さまざまなコンテンツがアップロードされる「ビュロ菊だより」は、不定期更新です。

著者イメージ

菊地成孔

音楽家/文筆家/音楽講師 ジャズメンとして活動/思想の軸足をジャズミュージックに置きながらも、ジャンル横断的な音楽/著述活動を旺盛に展開し、ラジオ/テレビ番組でのナヴィゲーター、選曲家、批評家、ファッションブランドとのコラボレーター、映画/テレビの音楽監督、プロデューサー、パーティーオーガナイザー等々としても評価が高い。

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