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修斗、リングス、K−1、PRIDE…90年代を漂流した格闘家・本間聡ロングインタビュー
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修斗、リングス、K−1、PRIDE…90年代を漂流した格闘家・本間聡ロングインタビュー

2018-09-30 12:10
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    黎明期のシューティングでデビューし、リングス、PRIDE、UFC……とさまざまなリングを渡り歩いた総合格闘家・本間聡ロングインタビュー。成瀬昌由との2連戦やPRIDEでの佐野巧真戦は「プロレスvs格闘技」の決闘感が溢れた勝負として語り草となっている。現在は故郷・佐渡で生活する本間に、異常な熱を帯びていた90年代を振り返ってもらった(聞き手/ジャン斉藤)



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    ――
    本間さんはいまでも正道会館所属なんですね。

    本間 なんだかんだ20年近く正道会館にお世話になってるんですよね。

    ――
    本間さんって流浪されているイメージがあって。

    本間
     そんなことはないんですけどね(笑)。シューティング(修斗)を4年やって、そこからずっと正道会館ですから。まあ、いろんなリングには上がってはいるんですけど。

    ――
    シューティングから始まって、リングス、PRIDE、UFC……と。 

    本間
     まぁ全部、中途半端ってことですよね(苦笑)。自分なんかはホント大したことなかったですから。

    ――
    シューティング出身で、U系のリングで戦ったのは本間さんと山田(学)さんぐらいなんですよ。

    本間
     山田さんは、団体の中に入っちゃいましたけどね。

    ――
    本間さんとU系レスラーの試合は果し合い、決闘というイメージが強くて。

    本間
     自分の中ではそんな意識はなかったんですけどね。向こうはどう思ってるかはわからないですよ。それより当時はリングスに上がるというだけで、周りから冷たい視線が浴びたんですよ(苦笑)。

    ――
    ええと、それは「真剣勝負をやっているのか?」ってことですね。

    本間
     ですね。自分の試合は全部真剣勝負だったんですけど、やっぱり若い頃って純粋じゃないですか。『フルコンタクトKARATE』に「リングスに上がった本間は裏切り者だ!」みたいに書かれるのがイヤだったんですよ(笑)。

    ――
    うわー、それは若くなくても気になります(笑)。

    本間
     いま振り返れば、そこまで気にしないでよかったかな……って思えるんですけどねぇ。

    ――
    それくらい当時の格闘技界はピリピリしてたってことですよね。

    本間
     リングスに上がっていた頃は「ゼンショー総合格闘技部」所属で、すき家の店頭に立って働きながら格闘技をやってたんですよ。朝日(昇)さんから「身体の大きい奴がいないから練習に来てくれ」ってことで木口道場に行ったら、桜田(直樹)さんや草柳(和宏)さんが怖い顔してて(苦笑)。

    ――
    「リングスの人間が来やがったな」ってことなんですかね(笑)。

    本間
     リングスの人とは、しゃべったこともないんですけどね。

    ――
    本間さんはもともとプロレスファンだったんですよね?

    本間
     もちろんプロレスファンです。アントニオ猪木の大ファンで。思春期で多感な時期にああいうのを見るとキますよね。ベタなんですけど、猪木と矢沢永吉とローリング・ストーンズのキース・リチャーズ。この3人にきらめいていたんですよ、中学のときは。ハッキリ言って佐山先生はそこまでファンではなかったんですよね(笑)。 

    ――
    初代タイガーマスクの全盛期も見てますよね?

    本間
     タイガーマスクはそんなにピンとこなかったんですよね。やっぱり猪木vsウィリー・ウィリアムスの異種格闘技戦とか。「猪木が死ぬんじゃないか……」ってドキドキしてましたから。

    ――
    猪木さんの影響で何か格闘技を始めたんですか?

    本間
     高校のときは野球をやっていて。佐渡の田舎なので、何か格闘技をやろうという選択肢がなかったんですよ。高校を卒業したら、親が「大学に行け」と。大学に入ったら格闘技をやろうと決めてて。大学は千葉商科大学なんですけど、それで津田沼道場に通うようになったんですよ。

    ――
    初代シューターの田中健一さんの。 

    本間
     大学には2浪したんですけど(笑)、1浪したときはそのままUWFに入ろうかな……って思ったりしてて。新生UWF旗揚げの後楽園ホールも見に行きましたよ。前田(日明)さんと山崎(一夫)さんの試合。ただ、荒井(勉)さんの本のとおりなんですよね。真剣勝負ではないなって。

    ――
    荒井さんはプロレスミニコミ誌の『わしらは格闘技探検隊』は「UWFは真剣勝負ではない」と書いてましたねぇ。

    本間
     エスエル出版会から出た本にも「猪木vsブロディのカミソリ流血シーンはこうだった」みたいなことが書いてましたけどね。

    ――
    あの時期って内幕本がけっこう出てましたよね。そういった本を読んでどう思われたんですか?

    本間
     うーん、微妙でしたねぇ。UWFに行かなくてよかったかなあと思いましたね。

    ――
    やるんだったら真剣勝負だと。

    本間
     「やるんだったら」ってことですね。『格闘技通信』に津田沼にシューティングの道場があることを知って。見学に行ったら佐山先生がたまたまいらしたんですよ。

    ――
    当時の津田沼道場ってどんな感じだったんですか?

    本間
     車庫の中にマットを敷いただけですね。自分を含めて4人でやってました。月謝が3000円だったかな。自分が入って半年後くらいに一緒に練習していた藤倉(光雄)さんという方が川口(健次)さんと試合をしたんですよ。体重差が10キロぐらいあって負けちゃったんですけど、その負けがショックで藤倉さんは道場をやめちゃったんですよね。

    ――
    ただでさえ人がいないのに。

    本間
     自分もやめようかな……とも考えたんですよ。とりあえず続けたんですけどね。当時は人数が少ないですから、試合に出れば選手になれるって感じですよね。学校の学園祭みたいなところでも試合をしたこともありましたし。たしか法政二校だったかな。学園祭のイベントの一環でアマチュアの試合をやったんです(笑)。 

    ――
    学生プロレスみたいな扱いなんですかね(笑)。

    本間
     後年になってアマチュア修斗を見たら、当時とはもうレベルは違いますよ。自分は身体が大きかったので極めっこなると、そんなにやられたことってなかったんですよ。でも、単なるプロレスファンですからね。レスリングや柔道をやってたわけじゃないので、デビュー戦後2連敗したんですね。藤原(喜明)組長の寝技を見よう見まねでおぼえたプロレスファンが勝てるわけないですよ(笑)。

    ――
    ハハハハハハ!

    本間
     それからボクシングの宮田ジムにも通ってたんですよ。そこで阿部健一さんと出会って。阿部さんのジムにも練習に行くようになって平(直行)さんと知り合ったんです。津田沼では田中さんと寝技をやって、宮田ジムでボクシングをやって、阿部さんのところにも行くようになって。そうしたら山田(学)さんたちにも勝てるようになったんですよね。 

    ――
    スーパータイガージムでは練習しなかったんですか?

    本間
     三軒茶屋のゴリラビル(スーパータイガージム)には1回ぐらいしか出稽古に行ったことないです。朝日(昇)さんのデビュー戦の相手だった斎藤(友行)さんという人と一緒に行って。川口さん、桜田さん、草柳(和宏)さんがいて。俺、プロレスファンだったんで寝技のときにプロレスラーみたいな呼吸法やったんですよ。「ハァハァ!」みたいな。そうしたらメチャクチャ怒られて(笑)。

    ――
    ハハハハハハ! 

    本間
     それから二度と行かなくなりましたね(笑)。あの頃はみんなカリカリしてましたよね。

    ――
    それだと佐山さんとの接点はあまりなかったんじゃないですか?

    本間
     俺はあんまり期待されてなかったし、なんとも思われてなかったんじゃないですかね。入って3ヵ月目ぐらいに合宿に行ったんですよ。

    ――
    シューティングの鬼合宿ですね。

    本間
     そのとき参加した8人はシューターで、俺だけ素人なんですよ。

    ――
    もう大変だったんじゃないですか?

    本間
     いやもう、ホントにキツかったですねぇ。練習中に佐山先生から「オマエら最強になりたいだろうっ!?」と激を入れられて。練習がつらくて吐きそうでそれどころじゃなくて、やる気のない感じだったんでしょうね。佐山先生に「なんだ、その目は!?」って殴られて(笑)。

    ――
    ハハハハハハ! YouTubeにアップされているシューティング合宿の映像でも佐山さんがボコボコしてるじゃないですか。

    本間
     あー、ミットを持ってるのは津田沼の子で、殴られたのは関島(康人)さんのジムの子で。蹴り方が関島さんと同じなんですよね。

    ――
    あの佐山さんは「本気で怒ってない」ってみんな言うんですよ。

    本間
     演技なんでしょうね、たぶん。俺が佐山先生に殴られたのは、その1回きりだったんですけどね。いまとなっちゃいい思い出ですけど。

    ――
    よく続けましたね。

    本間
     いやー、格闘技が好きだったんでしょうねぇ。あの頃はレベルが低かったので、それなりに練習していれば、それなりに強くなるし、結果も出たんですよね。勝ったら嬉しいし、負けたら悔しいしの繰り返しで。

    ――
    選手会であるシューター会議にも出てたんですか?

    本間
     1回出たことあるんですけど、あんまり行きたくなかったんですよね。リーダー格だった石川(義将)さんが仕切ってて、佐山先生はいないんですけどね。下っ端の俺が出ても意味ないじゃないですか。黙ってるだけですし。

    ――
    どんな話をするんですか?

    本間
     うーん、やっぱり一番は金ですね。ファイトマネー全然出てなかったですから。俺は大学生だったし、バイトもしてたんで、金はどうでもいいってわけじゃなかったんですけど、金のことで揉めるのはイヤだったんですよ。だから要求したこともなかったですし。それよりも試合に勝ちたい気持ちのほうが強かったんで。あとになって佐山先生の本を読んだら、先生の自宅まで行ってギャラをもらってた人もいたとか。「そんなことしてたんだ?」ってビックリしました。ギャラなんてデビュー戦のときに3万円もらっただけですよ。

    ――
    シューターたちは先行きが不安だったということですよね。

    本間
     それはそうでしょうね。だからなのかカリカリしましたからねぇ、みんな。でも、あたりまえですよ。『1984年のUWF』でターザン山本さんが「UWFの選手は金と女の車しか興味がなかった」って言ってますけど、それの何が悪いの?って思いますよ(笑)。

    ――
    つまらない正論ですよね、あれ(笑)。

    本間
     田中さんは金じゃなくてグローブがどうだとか、そういう不満はよく言ってましたけどね。俺からすると佐山先生に一番文句を言ってたの田中さんなんですよ。一番文句言ってた田中さんがいまでも佐山先生と一緒にいるのは面白いですね(笑)。

    ――
    不満を抱えたままだと、途中でやめちゃうんでしょうねぇ。

    本間
     朝日さんも「そんなに長く続けることはない」って言ってたんですけどね。朝日さんは俺の先輩なんですけど、デビューした時期はそんなに変わんなくて。「プロになる気はない」って言ってた記憶ありますよ。

    ――
    新生UWFの大人気ぶりはどう見てたんですか?

    本間
     その頃はシラけて見てましたよね。シューティングのみんなは自分たちのやってることが認められなくてイライラしてましたよ。中井(祐樹)さんなんかも気が強かったですからね。いまはあんなにニコニコしてますけども。

    ――
    じつはヤバイ人ですよね(笑)。

    本間
     木口道場で最初にスパーリングしたときに、足関節を取ったら怒っちゃって。あとから「本間さん、今度はシューズを脱いでやりましょう……」なんて耳打ちしきて。シューズだと足関節は逃げにくいですからね。

    ――
    怖い!(笑)。

    本間
     リングスに上がったときも、中井さんから「坂田亘が生意気だから、ヤッちゃってくださいよ」とか言われましたし(笑)。


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