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大会直後恒例となっているRIZIN広報・笹原圭一氏インタビュー。台風の影響で試合順変更となったRIZIN.13を総括します!!
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――笹原さん! 今回のRIZIN.13はいろんな意味で歴史に残るイベントになりましたねぇ。天心ならぬ天災、台風vs雷神vs大砂嵐ですよ(笑)。
笹原 ボクも長いこと格闘技興行に携わっていますが、ここまでドタバタしたのは記憶にないですねぇ。大雪が降った大晦日の『PRIDE男祭り』がありましたが、今回のに比べたらかわいいもんですよね(笑)。今回は、あんまりにも大変すぎて、途中から面白くなってきましたからね。「こんな経験めったにできないぞ!」って、トラブル・ハイみたいな感じでした(笑)。
――台風の影響で電車の運行停止は想定してました?
笹原 台風が接近していることは当然わかっていましたが、天気図を見ても都心を直撃するのは興行後だったので、想定していなかったわけではないですが、まさか当日のあの時間帯にJRがそういった決断を下すとは思いもしませんでしたね。
――夜20時以降の運行停止を発表したのは、大会当日の正午過ぎあたり。ここ最近は災害対策の意識も変わりつつある中で、JRが早めの決断を下したということですよね。
笹原 ということだと思います。ボクが会場入りしたのが8時前くらいで、物販のためのロビー開場が11時だったんですが、天気もそこまで崩れてなくて予定どおりの感じだったんです。そうしたら昼ぐらいに「JRが20時に止まるぞ!」という情報が入ってきて。で、最初は「は? まだ全然天気もつんじゃね?」くらいの感じで真に受けていなかったんですよで、各所にいろいろ確認したらどうも本当らしいと。しかも一度そういう発表をすると、すぐに解除されるようなこともないし、JR以外も同様の対応をするだろうと。もう台風vs雷神vs大砂嵐vs JRみたいな感じですよ(笑)。
――頑張れJR(笑)。
笹原 で、緊急でフジテレビ、制作チーム、主催者が集まって対応を協議しました。19時までに大会を終わらせないと、お客さんが電車で帰ることができない。大会は15時開始ですから、どうやっても19時に終わらせることは不可能なんですけどね。
――全13試合ですから、煽りVなし、入場なしの5分✕2Rにしてやっとですよねぇ。
笹原 電車の都合でメインの天心vs堀口を見られないまま会場をあとにするお客さんも出てくる。だったら最大の目玉である天心vs堀口を前に持ってくる試合順に変更しようという話になったんです。この試合順であれば天心vs堀口が19時には終わるという計算までしました。そこから選手たち、制作チーム、テレビ局……と各方面の調整に走ったんです。
――「試合順変更」以外の選択肢ってありましたか?
笹原 あるとすれば、何試合か中止にする……ということですけど、それも現実的な話ではないんですよね。ファイトマネーを払うから中止にするといっても、選手からすれば全身全霊を懸けて試合の準備をしてきたわけですから。
――同日のX JAPANは無観客ライブに変更されましたが、中止という決断はありえましたか?
笹原 さいたまスーパーアリーナの屋根が飛んだとか、河川が氾濫して東京と埼玉が分断された、みたいな物理的に開催できないようなことがないかぎり、中止は考えていませんでした。
――ライブや野球と違って振替興行は難しいところもありますか?
笹原 そういう意味では一回性が凄く高いスポーツですよね。格闘技の場合は後日あらためて振替興行というわけにはなかなかいかないですし。
――野球といえば、こないだ名古屋に中日ドラゴンズvsヤクルトスワローズの観戦をしてきたんですけど、ナゴヤドームだから雨天中止はありえないじゃないですか。ところが大雨の影響で広島から用具を運ぶトラックの到着が大幅に遅れたので、選手は揃ってるのに中止になりましたからね(笑)。
笹原 そんなことってあるんですね(笑)。格闘技興行は極端な話、選手とレフェリーがいれば試合はできるんですけどね。あとはリングか。
――たとえば前日にJRが運行停止のアナウンスをしていたら、どうしていましたか?
笹原 うーん、そうなってみないと正直対応の仕方はわからないですね。あんまり考えたくはないですけど(笑)。
――夜にはフジテレビの地上波放送もありましたし、なんとかやるしかないですよねぇ。
笹原 万が一のことを考えて事前にフジテレビともやり取りはしていたんです。ただ、お昼にはその決断を下すような状況に置かれるなんて想像していなかった。なので放送の対応も超大変でしたねぇ。生中継前提で秒単位のスケジュールが組まれてたんですよ。天心vs堀口の試合順を早めるということは、予定していた生放送もとりやめるということですし、番組構成をイチから作り直さないといけないわけですから。じつは相当な判断だったんです。
――できることなら試合順も変更せず、生中継もあのまま実施したほうが興行としての事故は起きにくかったはずですよね。
笹原 興行以外の事故を防ぐために、そういった対応をしないといけなかったということですよね。開会式をカットして、試合後のマイクもカットして……それでも天心vs堀口の開始時点で想定より10分くらい押してたんですけど。
――1ラウンドで終わる計算だったボブ・サップvs大砂嵐が判定までもつれ込む想定外の事態も起きたり(笑)。
笹原 本当はリング上でサップのマイクも聞きたかったですよ(笑)。でも今回は前半戦のマイクはすべてカットして、進行も巻きで進めるしかなかったんです。
――いままで試合順を変えたことってありました?
笹原 2006年の『やれんのか!』のときにヒョードルvsチェ・ホンマンと三崎和雄vs秋山成勲をTBSで生中継するために大会途中で試合順を変えましたね。
――ああ、ありましたね!(笑)。
笹原 今回は予定どおりの試合順だったとしても、生中継開始の時間までに試合が消化できそうになかったら、第10試合に予定していたイリー・プロハースカvsジェイク・ヒューンの試合を最終試合に持っていくプランも用意していたんですよ。前回の大会で生中継に合わせるために会場のお客さんをだいぶお待たせしまった反省から、そんなバックアッププランも用意してたんですよ。
――そうやって時間調整することは海外の興行でよくありましたね。
笹原 で、そういう判断をするときに、なによりも大切なのはお客さんにどうやってアナウンスするかなんです。これを失敗すると、どんなに最善の判断だったとしても、まったく真逆の反応になっちゃうことがある。
――いまの社会って発表の仕方次第で炎上しますし……。
笹原 今回は、スカパー!のPPVだと放送されなかったんですが、大会開始前に社長がリング上から試合順変更のアナウンスをしたんです。「なんとか興行を成立したい。苦肉の策ですが皆さんご理解いただけますか?」って。で、その説明をしたときにお客さんの反応が非常に好意的だったんです。感情的過ぎてもダメだし、かといって事務的過ぎてももっとダメですから、中庸なところでお客さんに説明するのって至難の技なんですけど……はっきり言って、今大会のMVPは社長のマイクだと思います(笑)。
――榊原さんのマイクがMVP!!(笑)。まぁでも前代未聞の事態にお客さんも気分が高揚してたんでしょうね。
笹原 「あの興行に現地で見たんだ!」って永遠に語り継がれると思いますよ。NHKの台風関連ニュースでもRIZINは取り上げられたみたいですし。
――会場外で取材されたお客さんが「青梅まで歩いて帰ります」って言ってたみたいですね(笑)。
笹原 はい。私もそのニュースを運営本部で後片付けしながら見ていました。その言葉を聞いたら「もう、俺んち泊まんなよ!」って言いたくなりましたよ(笑)。本当にお客さんには無理をさせてしまったことは申し訳けないと思っていますし、新しいチャレンジだったe-sportsもこんなドタバタの中でやるはめになっちゃいましたし。
――試合順に関していえば、大砂嵐vsボブ・サップのあとに休憩がないのもキツイんじゃないかと思ったんですね。試合順が発表されたときに「なんで大砂嵐の試合が浜崎朱加や越智vs砂辺のあとなんだ?」って声があったんですが、大砂嵐vsサップって直後の試合を無効化するパワーがあるじゃないですか(笑)。
笹原 そうなんです。大砂嵐vsサップのあとって、いったん休憩を入れて会場の空気の入れ替える、というのが興行側の「定石」ですよね。でも、まさかあんなふうに突き抜けた試合になるとは……まさにビビって、たじろぎました(笑)。
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