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  • 【2030年、日本の原発はゼロになる?】津田大介の「メディアの現場」vol.44

    2012-09-12 19:30  
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    ――2030年という近い未来、日本は電力のどれくらいを原発に依存すべきか――この7月から8月にかけて、内閣府国家戦略室に設置されたエネルギー・環境会議 [*1] は、国民の意思を問う調査を行いました。パブリックコメント、意見聴取会、討論型世論調査。これら3つで構成される今回の調査は、「国民的議論」と総称されています。その結果を見てみると、「原発ゼロ」を求める声が圧倒的に多く、新聞ほかのメディアでも大きく報じられました。この国民的議論では、原発をゼロにする案を含めた「3つのシナリオ」[*2] が示され、どれを支持するか訊くという方法が採られたそうですね。
    津田:はい。電力会社が電力を供給するにあたっては、原発、化石燃料、再生可能エネルギーのように、さまざまな発電方法を組み合わせています。そのうち原発の占めるパーセンテージを2030年までにどうするか――その視点から「ゼロシナリオ」「15シナリオ」「20〜25シナリオ」が示されました。これが「3つのシナリオ」です。各シナリオでは、それを採用することで、家庭の1カ月の電気代や国の実質GDPがどう変わるかまで示されています。3つのシナリオの前提となっているのは、「原発依存度を減らす」「化石燃料依存度を減らす」「再生可能エネルギーを最大限引き上げ、省エネルギーを進める」「CO2排出量を削減する」という4つの方針です。持続可能で地球環境に優しい。時流にのっとった考え方と言えるでしょうね。
    ――今回、3つのシナリオを示し、国民的議論を取りまとめたのは、「エネルギー・環境会議」という組織ですよね。この組織の役割は何なのでしょう?
    津田:一言で言うと、国の将来的なエネルギー・環境政策を考えるために発足した組織です。2011年3月11日の東日本大震災以降、福島第一原発事故の影響で、電力をはじめとするエネルギー問題に一気に注目が集まり、「脱原発」が叫ばれるようになりました。けれど、実はその前年の2010年に作られた「エネルギー基本計画」では、総電力に占める原発の割合を2030年までに50%に引き上げるという目標を立てていたんですね。しかし未曾有の大事故が起きた今、この計画をそのまま実行するわけにはいきません。そこで2011年5月10日、当時首相だった菅直人氏は、この計画を白紙に戻すと宣言しました。[*3] その時、新たにまたひとつの問題が浮上してきます。エネルギー基本計画を含むエネルギー・環境政策全般を見直すにあたり、どこに司令塔を据えるべきか――。原子力をはじめとするエネルギー・環境政策は現在、経済産業省の外局である資源エネルギー庁が所管しています。一方、原発の安全を確保する原子力安全・保安院も、同じ資源エネルギー庁に属しているのです。つまり、原子力を推進する役所と規制する役所が同じ状態。これでは原子力を規制しようにも、ガバナンスが利くわけがありません。これから新たなエネルギー・環境政策をまとめていこうという時、少なくとも経産省にはその仕事を任せられないですよね。独立性がもっとも高い官庁はどこか――そう考えた時に浮上してきたのが内閣府の国家戦略室でした。そして2011年6月22日、国家戦略担当大臣のもと、第1回目のエネルギー・環境会議が開催されました。もっとも、国家戦略室でこの会議をとりまとめている役人は経産省から出向してる人もいるという話なので、実質的には経産省もこの問題にコミットしていると言っていいのかもしれませんが、省庁より上にある内閣という立場がこれを仕切ってやるという形にはなった。とにもかくにも、会議は立ち上がり、「革新的エネルギー・環境戦略」と呼ばれるエネルギー・環境政策の方針を2012年にもまとめるべく、今に至るまで話し合いを行ってきたわけです。この革新的エネルギー・環境戦略は、現在新たに策定中の政策――内閣府・原子力委員会 [*4] の「原子力政策大綱」、経産省・総合資源エネルギー調査会 [*5] の「エネルギー基本計画」にも反映される予定となっています。つまり国にとって、それだけ重要な戦略なんですね。パブリックコメント、意見聴取会、討論型世論調査の三本柱で行われた今回の国民的議論も、同戦略策定の一環として実施されたものです。

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