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  • 【TPP参加で知財分野はどう変わる?】津田大介の「メディアの現場」vol.56

    2012-12-31 21:19  
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    新政権をスタートしたばかりの自民党が、TPP交渉参加への方針をめぐって揺
    れています。TPPは交渉参加国間で2013年10月の合意を目指すといわれており、
    日本の参加表明の期限は2013年早々だという話も。参加するのか否か、遅々と
    して議論が進まないのは、秘密協議であるTPPの情報が開示されないためと言
    われています。国民にとって同様、政治家にとってもTPPは謎のベールに包まれ
    た存在になっているのです。そこで今回は、これまでに明らかになったTPPの
    知財分野の情報を総ざらい。2012年12月、ニュージーランドで開催された知的
    財産権に関する国際的な反TPP会合に出席したMIAU事務局長の香月啓佑(@kskktk)に話を聞きました。

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    ◆TPPで日本の著作権法はどう変わる?
      ――保護期間延長、非親告罪化、匂いや音の特許まで


    津田:2012年12月28日、自民党の石破茂幹事長がTPP(環太平洋戦略的経済連
    携協定)への交渉参加について、来年夏の参院選までに党の方針を決めること
    を明らかにしました。[*1] 自民党はTPP推進に意欲的だった民主党の野田佳彦
    前首相に対し、[*2] 「“例外なき関税障壁の撤廃”を前提とする限り交渉参
    加に反対」と慎重な姿勢を政権公約に掲げていたはずが、[*3] ここにきて交
    渉参加に前向きな意見も出始めているようです。ただ、党内には依然TPPに反
    対する声も多く、同日、有志議員180名以上が政権交代後初めてとなる「TPP参
    加の即時撤回を求める会」の会合を開催。このままではTPP交渉参加の期限と
    される2013年早々に間に合わないでしょうが、各国の交渉妥結後に加入する可
    能性も残されている、といったところです。[*4] 周知のとおり、TPPとは環太
    平洋地域の国々による経済自由化を目的とした経済連携協定で、[*5] 現在
    11カ国が交渉のテーブルについています。そこで扱われる21分野 [*6] の中に、
    著作権をはじめとする知的財産権(IP)条項が含まれていて、何やら密室で協
    議がされているようだと。そこで先日、僕が代表理事を務めるMIAU(一般財団
    法人インターネットユーザー協会)[*7] とthinkC(著作権保護期間の延長問
    題を考えるフォーラム)、[*8] そしてクリエイティブ・コモンズ・ジャパン 
    [*9] の3団体合同で、TPPの知的財産権と協議の透明化を考えるフォーラム
    「thinkTPPIP」[*10] を立ち上げました。ちょうどその頃、ニュージーランド
    で開かれた各国の反TPP団体・アクティビストのネットワーク会議「NZ デジタ
    ル・ライツ・キャンプ」[*11] にクリエイティブ・コモンズ・ジャパンやMIAU
    から数名が派遣されたわけですが、香月さんはそのうちの1人です。ぶっちゃ
    け、TPPの知財条項をめぐる今の状況ってどうなってるですか?

    香月:結論から言うと「わからない」んですよ。もちろん、TPPで交渉されて
    いる21分野の中に知的財産が含まれていることは以前から報道されていますし、
    日本の外務省が公開している資料 [*12] にも明記されています。ただ、具体
    的な協議内容については一切表に出てこない。なぜかというと、TPPは近年の
    国際通商交渉の慣例に倣い、秘密協議が貫かれているんですね。TPP交渉参加
    国の一つであるニュージーランドの外務貿易省がウェブサイトで公開している
    文書 [*13] によると、交渉国間では秘密保持について合意がなされていると。
    「全参加国は交渉文案や各政府の提案、それに付随するあらゆる資料を秘密扱
    いにする」「これらの文書は、TPP協定の発行後4年間、協定が発効に至らない
    場合も最終ラウンドから4年間は公表してはならない」という内容のもので、
    日本の野田前総理も国会答弁の中で「TPP交渉中のテキスト及び交渉の過程で
    交換されるほかの文書を秘密扱いとする旨の記述が掲載されていることは承知

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  • 【「ゼゼヒヒ」の是々非々】津田大介の「メディアの現場」vol.55

    2012-12-30 05:30  
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    2012年12月19日、津田大介が代表を務める有限会社ネオローグはインターネッ
    ト国民投票サイト「ゼゼヒヒ」をオープンしました。ウェブサイトに掲載され
    た2択の質問に答え、その理由を投稿するというシンプルな投票サイト。そのゼ
    ゼヒヒを通じて見えてくるものは何か、どんな意図が込められているのか――
    オープンから1週間を経て津田大介と開発を担当したエンジニア・マサヒコへの
    インタビューを掲載します。
    ◎インターネット国民投票「ゼゼヒヒ」
    http://zzhh.jp/
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    ◆国民投票サイト「ゼゼヒヒ」は何を変えるのか
      ――津田大介、エンジニア・マサヒコが語るゼゼヒヒの意図
    ――まずは国民投票サイト「ゼゼヒヒ」のオープン、おめでとうございます。
    津田・マサヒコ:ありがとうございます。
    津田:いやーようやくオープンできました。夏ごろから作り始めて、なんとか
    年内に間に合いました。たくさんの方からポジティブな評価をいただいたり、
    プレスリリースを出してもいないのにITmediaで記事にしてもらったりして、
    [*1] アクセス数もまあまあ集まってて、[*2] 滑り出しとしてはうまくいき
    ましたね。
    マサヒコ:オープンまでの怒涛の日々を経て、ようやくオープンできてホッと
    しています。ただ、エンジニアとしてはオープン後もまだまだ山場が続いてい
    る状態ではありますが……。

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  • 【未来型サバイバルジャーナリズム論】津田大介の「メディアの現場」vol.54

    2012-12-28 23:28  
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    今、世界中でジャーナリズムがデータとの結びつきを強めています。津田マガ
    でも今年の10月からデータジャーナリズムの連載が始まり、vol.40 [*1] と
    vol.43 [*2] では「データジャーナリズムが切り開くジャーナリズムの未来」
    を掲載しました。日本ではまだあまりなじみのないデータジャーナリズムの概
    念を紹介することで新しいジャーナリズムのあり方を今後も皆さんと一緒に考
    えていきたいと思っています。膨大なデータの中から「ストーリー」を見い出
    し、それをビジュアルに落とし込んでわかりやすく提示するのがデータジャー
    ナリズムの基本的な概念です。なぜ海外のマスメディアはこの新しいジャーナ
    リズムに注目しているのでしょうか。また、ジャーナリズムだけでなく、あら
    ゆる分野で起こりつつある「ビッグデータ」の潮流とは? 今回は、海外のデー
    タジャーナリズム事情に詳しい、駿河台大学経済学部専任講師の八田真行さん
    (@mhatta)にお話を伺いました。
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    ◆なぜ今、「データジャーナリズム」なのか?
      ──オープンデータ時代におけるジャーナリズムの役割
    津田:最近、「データジャーナリズム」「ビッグデータ」「オープンデータ」
    などに代表されるように、「データ」という言葉をあちこちで目にするように
    なりました。企業やメディアなどの産業界だけでなく、あらゆる機関や団体が
    データの価値に気づきつつある。それが顕在化したのが2012年11月に行われた
    米大統領選挙だったと思うんです。もちろん、データジャーナリズムを駆使し
    た各メディアの選挙報道 [*3] も面白かったのですが、選挙キャンペーンその
    ものにビッグデータが取り入れられ、結果を左右した。オバマの勝因は、デー
    タマイニング──大量のデータを入手し、処理・分析し、そのデータをSNSでつ
    ながった支援者たちの戸別訪問などに活かし、組織力で勝ったというのがもっ
    ぱらの評判です。日本でも衆院選が終わったばかりで、このあたりが個人的に
    興味があるところなんですけど、八田さんは米大統領選をどのように見ていま
    したか?
    八田:データマイニングの勝利と言っていいでしょうね。前回、2008年の選挙
    戦では、SNSやFacebookを駆使したネット戦略がオバマを勝利に導いたと言われ
    ましたが、[*4] 今回は共和党──ロムニー陣営も、ツイッターのフォロワー水
    増し疑惑が報じられるほど [*5] SNSに関しては万全の体制を整えていた。[*6] 
    当然、オバマ陣営も相変わらずそこは抜かりなくて、たとえばFacebook用の
    面白いアプリを配ったりしているんです。アプリをインストールすると、スウィ
    ング・ステート(Swing State)──民主党の支持層と共和党の支持層が拮抗す
    る、いわゆる接戦州に住んでいる友達が表示される。それをクリックすると、
    「オバマに1票入れてくれ」というメッセージが届くというね。知人からのお願
    いだからか、実際にメッセージを受け取った5人に1人がそのとおりに行動した
    らしいんですよ。[*7]

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  • 【2012年衆院選を振り返る】津田大介の「メディアの現場」vol.53

    2012-12-26 11:55  
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    脱原発に増税、TPP……さまざまな争点が注目されていたはずの衆議院総選挙で
    すが、いざ投票箱を開けてみれば、戦後最低の投票率、そして自民党の記録的
    な勝利という結果に終わりました。なぜ自民党は大勝できたのか? 第三極はど
    こへ消えたのか? 新政権のスタートはどうなるのか? 選挙が終わって1週間経っ
    た今、改めて振り返ってみたいと思います。
    ◆ウェブで政治は動いたのか?
      ——津田大介、2012年衆院選を振り返る


    ——11月16日に衆議員が解散して早1カ月。先週末、ついに総選挙が終わりまし
    た。津田さんも選挙公示日以降は各メディアの選挙特番への出演に終われ、か
    なりバタバタされていたみたいですね。

    津田:いやー本当に大変でしたね。確かに選挙特番が多くて普段より忙しかっ
    たのもありますが、それと並行してウェブサービスを2つ作ってましたからね……。
    本当だったら政治メディアを総選挙までにオープンさせたかったんですが、な
    かなか体勢が整わなかったということもあって選挙前のオープンは無理そうだ、
    と。しかし、選挙前に何もやらないというのもありえないだろうということで、
    衆院選までに目を通しておきたいネットの記事や各政党のマニフェスト、ボー
    トマッチサービスなどを集約した選挙情報キュレーションサイトの「tohyo.
    org」[*1] と、政策に関する論点をまとめて、議員の連絡先と組み合わせて意
    見として送るという発想のサービス「衆議院総選挙2012 意見を送ろう!」
    [*2] を選挙直前にリリースしました。後者の「意見を送ろう」は、先日発売し
    た新書『ウェブで政治を動かす!』[*3] で繰り返し述べた「情報技術を用いて
    政治を24時間365日、日常化する」というコンセプトを具体的なものに落とし込
    んだサービスとも言えます。使った人からの評判も良かったので、今後作って
    行く政治メディアの一機能として取り込めそうだな、という感触は得られまし
    たね。選挙後の今だからこそ、こういうサービスを使って政治家に直接意見を
    投げかけていくことの重要性は増していると思うので、まだ試されていない方
    はぜひ使ってみてください。それから、投票日には間に合わなかったんですけ
    ど、「ゼゼヒヒ」というソーシャルメディアと連動する投票&意見表明サービ
    ス [*4] もローンチしたところです。

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  • 担当編集が語る『ウェブで政治を動かす!』 「津田ブロマガeXtreme」第4回目書き起こし(後半)

    2012-12-11 14:27  
     津田大介さんの新刊『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)が2012年11月12日、発売されました。この日、発売を記念して放送されたニコニコ生放送番組『津田ブロマガ eXtreme(エクストリーム)』の後半部分では、担当編集者の大坂温子(おおさか・あつこ)さんを迎えて、同書の見どころについて語っていただきました。(企画・制作:ドワンゴ)
     『ウェブで政治を動かす!』は、タイトルの通り「インターネットと政治」をテーマにした本です。ラジオ番組を聞いて「津田さんはすごく良い声だ」と思った大坂さんが、出版オファーを出したのは、2009年のこと。発売まで3年もかかりましたが、それまで大坂さんは、「缶詰しているのにツイッターしていた」という津田さんを怒ることなく、根気強くサポートされたそうです。
     そんな大坂さんと津田さんが苦労を重ねて完成させた『ウェブで政治を動かす!』。大坂さんによると、「この一冊を読むだけで、近年の政治の流れがだいたいわかるようになっています」ということです。また、大坂さんは「あとがきだけでも読んでいただくのが良いかもしれない」と話しました。これを受けて、津田さんも次のように語りました。
    「いつも本を書く時は、あとがきにすごく気合を入れて書くんです。あとがきだけを読んでくれたらいいぐらいの気持ちで書いていて、あとがきに対するすごく長い助走を本の中でしている感じなんです。あとがきはちょっと良いエピソードを入れたり、希望を持てる感じにしたいので、人を感動させるような感じにしようと、いつも頑張って書いているんです。今回、感動成分は薄めですけれど、良いあとがきになったなと思っています」
     放送ではこのほかにも、なかなか筆が進まなかった津田さんと並走した大坂さんの苦労エピソードが話題となりました。『津田ブロマガeXtreme』では、今後も定期的に生放送をしていく予定です。
     この番組の全文書き起こし記事は、津田大介チャンネルに会員登録すると閲覧できます。
  • 公職選挙法違反——選挙期間中にやってはいけない行為とは

    2012-12-09 20:52  
    【選挙前特集:脱原発とネット選挙規制問題】津田大介の『メディアの現場』vol.52 より
    ◆公職選挙法違反——選挙期間中にやってはいけない行為とは (2012年12月4日 J-WAVE『JAM THE WORLD』「CUTTING EDGE」より)
    出演:三浦博史(選挙プランナー)、津田大介 企画構成:きたむらけんじ(『JAM THE WORLD』構成作家)
    津田:衆議院選挙が公示され、正式に選挙戦がスタートしたのと同時に候補者たちはブログやツイッターなどのインターネットを使った情報発信を一時的にお休みすることになりました。もし、公示期間中にブログやツイッターを更新・投稿した場合、公職選挙法違反に問われる恐れがあるためなんですが、選挙期間中に候補者や有権者、我々リスナーがやってはいけないこととは一体何なのかわからない人は多いですよね。そこで今夜は選挙プランナーの三浦博史さんにお話を伺います。よろしくお願いします。
    三浦:よろしくお願いします。
    ◇選挙公示期間中にやってはいけないこと
    津田:三浦さんは選挙プランナーとして、公職選挙法にはお詳しいと思うのですが、まず、選挙の公示期間中に候補者がやってはいけないことはどんなことなんでしょう。
    三浦:選挙期間中、ブログやツイッターを更新してはいけないというのはよく知られていますが、ほかにも細かくできないことが規定されてるんですね。たとえば、ベテラン候補者の陣営でも間違えることがあるんですが、選挙期間中はうるさいくらいに自分の名前を連呼する宣伝カーが街を走っていますよね。候補者本人が乗っている選挙カーの場合、状況によっては候補者が車から出て、商店街で街頭演説をしたりする。そういう場合、車の中ではウグイス嬢たちはマイクを使えなくなっちゃうんです。
    津田:へー! そうなんですか!
    三浦:そうなんです。選挙管理委員会から渡される [*1] 街頭演説用標旗を掲げれば、駅前や商店街など、どこでも立ち止まって演説することはできます。[*2] 通常、こういう演説は拡声器を使いますよね。でも、演説している同時刻に車の中から「誰々をよろしく」と拡声器で伝えることは一切できなくなってしまうんです。それを知らないでやっている陣営もけっこうありますね。
    津田:なるほど。では、候補者ではなく、有権者が選挙期間中やってはいけないことは?
    三浦:まず、他人にお金を渡して選挙依頼をやってはいけないというのは常識ですよね。ただ、知らずにうっかりやってしまうような選挙違反もあります。たとえば、立候補者と同じ高校の同窓生に応援をお願いしたい、という人がいたとします。その候補者を応援するために、2000名記載された同窓会名簿をもとに「◯◯高校同窓の皆さん、ぜひ△△さんに投票をお願いします」という文章をダイレクト・メールや電子メールで発信してしまった——たまにあるケースなのですが、これは文書違反にあたります。[*3]
    津田:選挙が終わってしばらくすると落選した議員の関係者や本人が選挙違反で逮捕されるなんていうニュースが流れてきますが、有権者がそうした選挙違反で逮捕されたり、書類送検されたりするケースってあるんですか?
    三浦:選挙ポスターに落書きをしたり、[*4] 剥したりする、[*5] 演説を妨害する [*6] といったことで逮捕されることはありますが、そういう突発的な行為以外はほとんどありません。選挙運動に熱心に関わる人は、遅かれ早かれ候補者の陣営や政党関係者に接触しますから、各陣営・各政党から「これをやってはいけませんよ」とか「これは大丈夫ですよ」とレクチャーを受けることが多いんです。選挙前・選挙期間中にやってもいいこと、やってはいけないことをトレーニングしてもらっているので、一般の方が選挙運動に関わる中で選挙違反をして逮捕されることはほとんどないですね。
    津田:個人的には選挙違反って大体落ちた人が逮捕されてて、当選した議員は「こんな選挙運動していいの?」みたいなことをしても議員になっちゃってるから逮捕されることはないというイメージがあるのですが……。
    三浦:昔は落選議員に集中していたかもしれませんが、最近は選挙結果で区別されることはありません。ただ、違反の取り締まりは地域によってかなり温度差があります。
    津田:なぜ地域によってそのような温度差が生じるんでしょう。そもそも選挙違反に当たるかどうかは誰が決めているんですか。
    三浦:良くないたとえかもしれませんが、高速道路の時速80キロ制限ってありますよね。ほかの車が時速100キロで走行する中、時速85キロで走っていても捕まることはまずないですよね。でも、110キロだったら捕まる可能性が非常に高い。地域の状況によって、選挙管理委員会や警察がそれぞれ判断しているわけです。同じ公職選挙法による摘発であっても、地域によってばらつきがあることは確かです。
    津田:選挙違反にはいろいろなケースがあると思うのですが、一般にはあまり知られていないけれど「こんなケースはNG」というような例ってほかに何かありますか?
    三浦:未成年者の選挙運動でしょう。最近、これまでのウグイス嬢以外に、若い男性を使った街宣活動も増えています。主に女性層をターゲットにしたもので、私は「カラスボーイ」と呼んでいるのですが、[*7] ウグイス嬢にしてもカラスボーイにしても若い人が多い。成人の大学生がたまたま自分が当番の日に熱を出し、責任感から自分の代わりに大学の後輩を寄こすということがあったとします。その人がたまたま19歳だったら——公職選挙法は未成年者に選挙運動をさせてはならないと定めていますので、選挙違反に該当します。[*8] ただ、ポスターを貼る、シールを貼るというような「労務」であれば年齢は関係ありません。
    津田:ポスター貼りやシール貼りは「選挙運動」に当たらないんですね。「選挙運動」ではなく「労務」であれば未成年者でもよい、と。
    三浦:はい。選挙運動というのは「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」と定義され、[*9] 各地域の選管もそれに従っています。[*10] それ以外の労務であれば年齢は関係ありませんし、選管が定める範囲で報酬を支給することもできます。しかし選挙運動においてお金を払う場合は、選管に登録した選挙運動員に限りますし、なおかつ20歳以上でなければなりません。このあたりでうっかりしてしまう陣営もある。大学生なら大丈夫だと思っていたら、18歳、19歳だったということもあり得ます。実際、それで逮捕されたケースもあるんですよ。[*11]
    ◇ネットでの公職選挙法違反——そしてネット選挙解禁に向けて
    津田:今話題にもなっているのは、選挙期間中の情報発信です。候補者や有権者は選挙期間中にブログやツイッターなど、インターネットを使って情報発信すると、公職選挙法第百四十二条の文書図画頒布に当たり、違法行為になるということなのですが、多くの人はどこまでならOKで、どこからがアウトなのかわからない状態だと思います。具体的にどこが線引きになるんでしょうか。
    三浦:候補者のほうの対策は徹底されていますね。公示日前日の23時59分まではウェブサイトやブログ、ツイッターを更新するけれども、公示日当日から一切動かさないようにとアドバイスしています。一方で、有権者、一般の人たちはどうかというと、自分の行為が選挙違反にあたるかどうかよくわかってはいませんから、つい「東京1区のみなさん、ぜひ◯◯候補に一票を!」と発信してしまったりします。私信という形で普段からの付き合いのある仲間だけに伝えるのであれば良いのですが、そうではなくて不特定多数の人に発信したと見なされると公職選挙法違反に問われる可能性があります。
    津田:たとえば僕はいまツイッターで23万人ぐらいのフォロワーがいるんですが、当然それは不特定多数ですよね。僕が「今回の選挙では○○党に入れましょう!」とかツイートするとアウトになる可能性が高いですか?
    三浦:23万人ですか。ちょっと多いけど「この党に入れましょう」といった程度なら問題にならないと思いますが。インターネットが規制されている一方で、電話はかけ放題で、何を話してもいいんですよ。選挙運動員が必死に電話をかけて選挙運動しようと、録音した音声を流すオートコール [*12] を使って何千件電話しようが、問題ありません。
    津田:言われてみれば、選挙期間になったら突然学生時代はほとんど付き合いがなかった小中学校のクラスメイトから電話が来て「○○党の○○さんに入れてくれ」って依頼が来たりしますもんね。でも、電話を使った選挙運動はいいのにインターネットを使った選挙運動はダメというのも、おかしいように思えます。
    三浦:ツイッターを含め、ネットを使った選挙運動がなぜダメかというと、ブログやツイッターなどのコンテンツが画面上に表示され、かつプリントアウトが可能なため、公職選挙法上の「文書図画」にあたると解釈されているためなんですね。公職選挙法では、選挙期間中、選挙運動のために頒布できる文書図画を通常葉書と二種類の法定ビラに限定していて、しかもそれらは選管に事前に登録しないといけないんです。つまり、通常葉書とビラ以外の文書図画を不特定多数に配ることはできない——だから、ネット上で選挙運動をしてはいけないんですね。
    津田:その話を聞くと、選挙についてツイッターやブログで何か書くこと自体やめようって人が増えそうですが……。たとえば、有権者が自主的に候補者の政策を比較する記事をブログやツイッターに書いて、情報発信することはどうなんでしょう?
    三浦:まったく問題ないですよ。なぜかというと、「特定の候補者を当選せしめる行為」ではないですから。僕は若い人たちに、たとえば「東京知事選挙比較.com」とか「第46回衆院選候補者比較.com」のような比較サイトをどんどん立ちあげてほしいと思っています。はじめのうちは個人の好き嫌いによって多少のバイアスがかかるかもしれませんが、そういった行為は問題ありません。「特定の候補者に投票してね」というものや、「人気投票」といったものでなければ大丈夫なんです。
    津田:となると、選挙期間に入る前に政治家がブログやツイッターに書いていたものを、選挙期間中にツイッターでリツイートしたり、フェイスブックでシェアすることも大丈夫なんですね。
    三浦:問題ありません。ただし、内容が選挙運動になっていないものに限られます。
    津田:なるほど。誤解していた人もいるかと思うのですが、つまり、公示期間には選挙の話をまったくしちゃいけないなんてことはないんですね。
    三浦:冗談じゃないですよ。どんどん選挙の話をしたほうが良いんですよ! ただ、インターネットを含めて文書図画の頒布を禁じるという古い法律で規制されていますので、いつもの調子でブログやツイッターに「◯◯候補に投票してください!」と書いてしまうと、不特定多数への呼びかけ——つまり選挙運動になってしまいます。そういう場合は公職選挙法違反に問われる可能性がありますね。
    津田:なるほど、特定の候補者への投票の呼びかけにならないように注意しないといけないということですね。では「◯◯に投票しよう」ではなくて、「僕は◯◯に投票しようと思います」という言い方であればどうでしょうか?
    三浦:問題ありません。先ほども申し上げましたが、選挙運動は「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」と定義されています。たとえば、「東京1区で立候補している◯◯さんにぜひ投票してください!」と書いてしまうと、選挙区を特定し、候補者を特定して、投票をお願いしていますから選挙運動になってしまいます。ですが、「僕は東京1区の◯◯さんに投票します」というのは、あくまでも個人の態度の表明なので選挙運動にはあたらない。「東京1区でがんばっている◯◯さんは素晴らしいね」というのも、当選を目的として投票を得ようとしているわけではないでしょうから、問題はないでしょう。
    津田:他人に依頼していないということが1つの判断基準になるということですね。もう1つ気になっているのが、今回の総選挙で橋下徹大阪市長(@t_ishin)が自身が代表代行を務める日本維新の会からは出馬していないので、ツイッターをガンガン更新している [*13] んですが、あれは大丈夫なんですかね?
    三浦:今の段階では問題ないと思います。橋下さんは今回の衆院選に立候補していませんから。「日本維新の会に投票して」と言ったら、比例代表もあるので公職選挙法違反に問われますが、TPPや原発などの政策について意見ををつぶやくぶんには自由でしょう。
    津田:橋下さんはそのあたりのことをわかっていてやっているわけですね。
    三浦:弁護士なので、そうだと思います。[*14]
    津田:それにしても、選挙におけるネット利用の制限って、時代遅れのバカげた規制だと思うんですが、三浦さんは今後公職選挙法をどのように改正すればいいと思っておられますか?
    三浦:たくさんあるのですが二点に集約していうと、まず、このネット規制を一刻も早く解禁すること。有権者がもっとも情報を求めている選挙期間中にインターネットを更新できないなど、馬鹿馬鹿しいにも程があります。世界にも大きく遅れを取っている [*15] 恥ずべき状況を早く脱するべきでしょう。[*16] もうひとつは、戸別訪問の禁止 [*17] を解除すること。アメリカ、イギリス、フランス、ドイツ、イタリア、カナダ、ロシアなどの主要国をはじめとした世界各国で、戸別訪問は禁じられておらず、[*18]「ドア・トゥ・ドア」の選挙は常識となっています。こういった日本の非常識を早く是正してほしいですね。[*19]
    津田:とても明確かつわかりやすいご提言ですね! 三浦さん、今日はありがとうございました。
    三浦:ありがとうございました。
    津田:ということで、今夜は選挙プランナーの三浦博史さんにお話を伺いました。以上、「CUTTING EDGE」でした。
    [*1] 選挙運動を行うためには、選挙管理委員会が交付する標札、表示板その他の物品が必要とされており、これらの物資は無料で交付される。これらを公営物資といい、選挙事務所の標札、選挙運動用自動車・船舶表示板、選挙運動用拡声機表示板、自動車・船舶乗車船用腕章、街頭演説用標旗、街頭演説用腕章及び個人演説会用立札等の表示などがあり、これらは俗に「選挙の七つ道具」と呼ばれている。
    http://www.pref.tottori.lg.jp/23927.htm
    [*2] 公職選挙法第百六十四条の五で街頭演説する際のルールが決められている http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO100.html
    [*3] 公職選挙法第百四十二条で文書図画の頒布ルールが決められている。この条文でインターネット上の情報も「文書図画」に当たるため、インターネットを利用した選挙運動が行えないとされている http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO100.html
    [*4] http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin2009/news2/national/20090828-OYT1T00612.htm
    [*5] http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin2009/news2/national/20090822-OYT1T00097.htm
    [*6] http://www.yomiuri.co.jp/election/shugiin2009/news2/national/20090821-OYT1T00940.htm
    [*7] http://www.election.ne.jp/56/25712.html
    [*8] 公職選挙法第百三十七条の二で未成年者の選挙運動禁止が定められている http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S25/S25HO100.html
    [*9] 公職選挙法における「選挙運動」とは、法律の中に定義規定はないが、「特定の選挙について、特定の候補者の当選を目的として、投票を得又は得させるために直接又は間接に必要かつ有利な行為」とされている。 http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/issue/0517.pdf
    このあたりは、選挙制度研究会による書籍『実務と研修のためのわかりやすい公職選挙法』(ぎょうせい)に詳しい。 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4324082170/tsudamag-22
    [*10] たとえば鳥取県の選挙管理委員会ではこのように記載されている http://www.pref.tottori.lg.jp/23973.htm
    [*11] http://www.zakzak.co.jp/gei/2004_07/g2004071403.html
    [*12] http://www.auto-call.jp/merit.html
    [*13] http://blogos.com/blogger/hashimoto_toru/article/
    [*14] http://www.nikkei.com/article/DGXNASHC29043_Z21C12A1AC8000/
    [*15] http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/issue/0518.pdf
    [*16] 三浦さんは著書『ネット選挙革命: 日本の政治は劇的に変わる』において、「日本では選挙期間中にインターネットが使えない。私が米国や韓国などの選挙コンサルタントにそのことを話すと、彼らは一様に『信じられない』と非常に驚き、次いで呆れた顔をする。よほど『政治後進国』だと思うのだろう。日本の選挙でのネット規制は、まさに中国並みと見られてもしかたない」と語っている。 http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4569779328/tsudamag-22
    [*17] 国立国会図書館発行の「レファレンス」(2010年11月号)に収録されている「我が国の選挙運動規制の起源と沿革」という記事に戸別訪問が禁止された理由が詳細に記されている。 http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/refer/pdf/071805.pdf
    日本において戸別訪問が禁止されたのは1925年に制定された衆議院議員選挙法(普通選挙法)を起源としている。禁止を定めた理由は同年に内務省が刊行した刊行した『衆議院議員選挙法改正理由書』に記載されている。理由は下記の通り。
    「選挙ノ本質ヨリ論ズレバ、人物識見又ハ主義政策ノ合致ヲ以テ、議員候補者ハ自己ノ信任ヲ問ヒ、選挙人ハ投票スベキ議員候補者ヲ定ムベキモノナルニ、戸別訪問ノ如ク情実ニ基キ感情ニ依ツテ当選ヲ左右セムトスルガ如キハ、之ヲ議員候補者ノ側ヨリ見ルモ其ノ品位ヲ傷ケ、又選挙人ノ側ヨリ見ルモ公事ヲ私情ニ依ツテ行フノ風ヲ馴致スベク。今ニシテ之ヲ矯正スルニ非ザレバ、選挙ノ公正ハ遂ニ失ハルルニ至ルベシ。如之戸別訪問ニ際シ双方ノ交渉ハ公然行ルルモノニ非ズシテ、隠密ノ間ニ行ハルルガ為、往々ニシテ投票買収等ノ不法不正ナル行為ヲ助成スルノ虞アリ」
    つまり、「情実や感情ではなく、人物識見や主義政策に基づいて投票するため」ということを理由としている。
    もう1つ、戸別訪問を禁止する理由について、帝国議会において政府委員の山岡萬之助司法省刑事局長が以下のように答弁している。
    「買収行為之ガ今日マデノ選挙ニ於テ最モ弊害ノアッタ所デアリマシテ、(中略)此財産上ノ利益ヲ以テ選挙界ヲ腐敗スルト云フコトハ、之ガ立憲政治ニ於テハ最モ忌ムベキコトデアリマス、是ハ申上ゲルマデモナイコトデアリマス、ソレヲ此度ハ選挙運動ニ於テ戸別訪問ヲ禁止シテ、仍テ其買収ト云フコトノ便宜ヲ絶対ニ奪ヒ去リ、買収行為ガ容易ニ出来ナイヤウニスルト云フコトハ、確ニ是ハ全部トハ申シマセヌガ、戸別訪問ヲ禁止スル趣旨ノ一ツデアル」
    こちらの理由は、「買収など不正の機会をなくすため」ということだ。つまり、日本の選挙では「買収を防ぐ」と「感情に流されず投票を行う」という2つの理由で戸別訪問が禁止されているということになる。
    [*18] http://www.jcp.or.jp/akahata/aik07/2007-12-15/2007121503_02_0.html
    [*19] 2012年の米大統領選でも戸別訪問が勝敗の鍵を分けたと言われている。2008年からオバマ大統領の選挙運動の草の根ボランティアを手伝っている海野素央明治大学政治経済学部教授は、日本で国民の政治参加意識を高めるため、戸別訪問を解禁すべきという考えを持っている。 http://www.youtube.com/watch?v=jr6rWLD7PS8
    http://www.nikkei.com/article/DGXNASGN0602K_W2A101C1000000/
    http://jbpress.ismedia.jp/articles/-/36433

    ▼三浦 博史(みうら・ひろし)
    1951年、東京生まれ。選挙プランナー、総合選挙プランニング会社「アスク株式会社」代表取締役。慶應義塾大学法学部法律学科卒。安田信託銀行勤務、国会議員公設秘書を経て、1989年にアスク株式会社を設立し現職。山本繁太郎山口県知事(2012年7月)、黒岩祐治神奈川県知事(2011年4月)、仲井真弘多沖縄県知事(2010年11月)など、多数の首長選、衆参院選の選挙プランニングを手がける。主な著書に『あなたも今日から選挙の達人 ネット選挙対応マニュアル』(ビジネス社)、『AKB48総選挙に学ぶ心をつかむ技術』(フォレスト出版)、『ネット選挙革命—日本の政治は劇的に変わる—』(PHP研究所)などがあり、週刊誌や夕刊紙等での選挙当落予測にも定評がある。
    ウェブサイト:http://www.e-ask.ne.jp/ ブログ:http://www.election.ne.jp/planner/ この記事は 「津田大介の『メディアの現場』」 からの抜粋です。 ご興味を持たれた方は、ぜひご購読をお願いします。

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  • 日本の脱原発は本当に可能なのか?——ドイツ10年の歩みに学ぶエネルギー政策

    2012-12-09 20:44  
    【選挙前特集:脱原発とネット選挙規制問題】津田大介の『メディアの現場』vol.52 より 11月16日、野田佳彦首相が衆議院を解散したことを受け、12月の総選挙に向けて各党が次々に公約を公開しました。国民最大の関心事の一つだったエネルギー政策に関しては、少なくとも「脱原発依存」を掲げる政党がほとんどです。しかし、政治家が描く青写真どおりに脱原発が進むのかと、半信半疑の人もいるのではないでしょうか。そこで今回は、この10月、日本の議員団に随行してドイツの脱原発事情を取材した弊社の小嶋裕一(@mutevox)に、現地の取り組みについて語ってもらいました。合意形成、法整備、代替エネルギーの普及……。ドイツの軌跡をたどり、実現可能な脱原発のプロセスを探ります。 ◆日本の脱原発は本当に可能なのか?——ドイツ10年の歩みに学ぶエネルギー政策
    津田:次の衆院選はエネルギー政策が争点になる——3.11の福島第一原発事故以来、メディアは折にふれてそう報道してきたし、僕たち国民の間にも暗黙の了解があったような気がします。しかし、いざ総選挙が決まって蓋を開けてみると、各党のエネルギー政策が千差万別になり、毎夜その話題でメディアが持ちきりになるといった状況は生まれていません。表現やいつまでに実現するのかという期間こそ違うものの、自民党と日本維新の会、国民新党以外は「脱原発」——少なくとも「脱原発依存」という点では一致しているという状況です。[*1] つまり、「脱原発」することそのものは争点ですらなく、日本の既定路線になりつつあるとも言えます。これからは原発の是非ではなく、いかに原発をゼロにするかを問うていかなければなりません。小嶋記者は10月にドイツへ行って、現地の脱原発や再生可能エネルギー推進への取り組みを目の当たりにしてきました。そのドイツ視察を振り返りながら、日本が抱えることになる課題を浮き彫りにできればと思うのですが、まずはどういう経緯でドイツへ行ったのか説明してもらえますか?
    小嶋:つい先日「日本未来の党」への合流を発表した [*2] ばかりの小沢一郎前衆議院議員や森ゆう子参議院議員らが、10月に当時の「国民の生活が第一」の議員団を率いてドイツを訪問しました。[*3]「国民の生活は第一」はかねてより脱原発を政策の一丁目一番地としていたので、[*4] 脱原発先進国であるドイツの取り組みを視察しようとしたんですね。僕は記者として視察団に同行し、3日間に渡って現地からレポートをニコ生で中継しました。[*5]
    津田:日本で「脱原発のモデル国」と言えば代名詞のようにドイツの名前が挙がりますが、実際、ヨーロッパではイタリア [*6] やスイス [*7]、デンマーク、[*8] オーストリア [*9] など、ほかにも数多くの脱原発先進国があります。その中でもドイツの脱原発はどのような違いがあるのでしょうか。
    小嶋:1986年のチェルノブイリ原発事故をきっかけに、欧州諸国では脱原発の機運が高まっていきました。各国がそれぞれに議論を続ける中、ドイツが政策として脱原発と再生可能エネルギーの推進へ舵を切ったのは2000年代初頭のことです。たった10年前までドイツは日本と同じく化石燃料と原発に頼ったエネルギー構成だったんですよ。しかしその後、2000年時点で6.4%だった再生可能エネルギーの割合は、2011年に20%を超えました。さらに今後、2020年までに35%以上、2050年前に80%以上という目標値を掲げています。[*10] 国家の経済規模や技術水準、電力産業の構造などを考えれば、今の日本の状況は10年前のドイツに近い。ドイツの歩みには、見習い、応用すべき点が多いということでしょうね。
    津田:なるほど。ドイツがこの10年間にどんな課題を抱えてきたか、どうやってそれを乗り越えてきたかが大いに参考になる、と。では、ドイツがどのように脱原発を進めてきたか、経緯を簡単に説明してもらっていいですか?
    小嶋:はい。先ほども言ったように、ドイツが国の方針として脱原発を決定したのは2000年に入ってからです。まず、1998年に発足したシュレーダー政権(社会民主党:SPDと緑の党の連立政権)が脱原発の方向性を明確化。政府は電力業界と交渉を続け、2000年6月に原発全廃で基本合意します。その合意に基づき、2002年4月には「原発と再処理施設の新設禁止」「既存原発17基の運転年数を平均32年に制限(2022年頃までに全原発停止)」などを盛り込んだ原子力法を改正。[*11] その実現のため、並行して「再生可能エネルギー法」(2000年)を制定し、太陽光や風力などの再生可能エネルギーによる電力の固定価格買取制度を導入します。[*12]
    津田:脱原発の伏線になったのは「社会民主党」と「緑の党」——左派政党の連立政権だったわけですね。
    小嶋:その後、アンゲラ・メルケル率いるキリスト教民主・社会同盟(CDU/CSU)連合が総選挙で勝利し、2005年に政権交代が起きますが、2009年までの第一次メルケル政権は、シュレーダー政権の脱原発方針を踏襲します。しかし、2009年に発足した第二次メルケル政権は、社会民主党(SPD)と連立を解消し、原子力推進派の自由民主党(FDP)と連立。脱原発に不満を抱えていた産業界や電力業界の声に押され、シュレーダー政権の脱原発政策を一部見直すことになりました。[*13] 2010年12月に改正された原子力法では、国内17基の原発の運転期間を平均12年——1980年以前の原発は8年、1980年以降の原発は14年に延長すると決定。全原発の撤廃は2036年を想定することになりました。ただし、これはあくまでも再生可能エネルギーが普及するまでの橋渡しで、同年秋に発表されていた「エネルギー計画」——総電力に占める再生可能エネルギーの割合を2020年に35%、2030年に50%、2040年に65%、2050年に80%とする導入目標、送電網やスマートグリッドの整備などを実現するための措置だとしています。[*14] また、同時に、核燃料の消費に対して電力会社に課税する「核燃料税」なども制定されました。これは電力会社に対する、原発運転期間延長の代償だと考えていいでしょうね。
    津田:しかし、その直後に福島第一原発事故が起きてしまう——。
    小嶋:ええ。原子力法改正による原発稼働期間延長からわずか3カ月後、日本で福島第一原発事故が発生します。メルケル首相は3月14日に旧型の原発7基を停止し、稼働期間の延長を棚上げして3カ月以内に包括的対応を考える「原子力モラトリアム(猶予期間)」を発令します。[*15] その後、さまざまな議論を経て、6月にはふたたび原子力法を改正。[*16] 今回の法改正では、福島第一原発事故後に停止した原発7基と故障で停止中の1基について、再稼働を認めないことが明記されました。さらに、残りの原発9基についても停止時期を定め、段階的に脱原発を進めていくとしています。2015年に1基、2017年に1基、2019年に1基、2021年に3基、そして2022年に3基が停止して原発全廃が完了する、ということですね。
    津田:2010年に一度はゆるみかけた脱原発へのスピードが、福島第一原発事故を機に前倒されることになった、と。ここまでドイツの脱原発の歴史を振り返ってきた中で、いくつかの重要なターニングポイントがあったと思うのですが、小嶋記者はどう考えていますか?
    ◇コンセンサスが脱原発の出発点
    小嶋:そうですね、これは脱原発をするための大前提だと思うのですが、まずドイツでは経済界や消費者団体、政府も含めて、国全体で脱原発をするという合意形成がすでになされているんです。2000年に政府が電力業界を説得し、脱原発について合意している。ある意味では、ここがスタート地点になったとも考えられます。
    津田:確かに、日本では電気事業連合会などが政府の原発ゼロ方針や、発送電分離に対して反発しています。[*17] 今回のドイツ視察では、現地のエネルギー水道事業連合を訪れていますよね。
    小嶋:はい、ドイツ視察の初日にエネルギー水道事業連合(Bundesverband der Energie und Wasserwirtschaft:BDEW)[*18] を訪れ、クリーガー国際関係特別代表との会談に臨みました。エネルギー水道事業連合とは、電気事業社やガス事業社、水道事業社など、エネルギー供給会社の連盟ですね。まさに、日本で言うところの電気事業連合会 [*19] と同じだと考えていただければ。
    津田:僕たち日本人の感覚からすると、電事連が脱原発に協力するというのは、にわかに信じがたい部分があるんですけど、話を聞いてみて実際のところはいかがでしたか?
    小嶋:福島第一原発事故後の法改正で、ドイツの脱原発が再び加速したことにより、大手の電気事業者が政府を提訴した——そんな報道 [*20] を日本で見ていたので、 僕も「本音では脱原発に反対なんじゃないの?」と思っていた部分はあったんです。この裁判についてストレートに質問したところ、クリーガー代表は「損害賠償請求は、脱原発に反対しての裁判ではない」と答えました。そうではなく「核燃料税」の撤廃を求める訴えなんだ、と。2010年の原子力法改正時に制定された「核燃料税」は、原発運転期間の延長と引き換えのようなかたちで電力会社に課せられるようになった税金なんです。その後、新たな法改正で原発運転期間が短縮されたのに、税金が廃止されないのはおかしい、と言うことですね。[*21] 確かにそれは電気事業者にとっては納得できない話でしょう。そのほか、原子炉を強制的に停止させられることに伴うさまざまな損害を補填するための、いわば「条件闘争」的な裁判だということでした。
    津田:この裁判そのものが脱原発の方針を揺るがすものではない、ということですね。
    小嶋:そうですね。「われわれ電気事業者も足並みを揃えて脱原発に向かっていかなければならない」と強調されていたのが印象的でした。
    津田:日本ではまだまだ合意形成に至らない状況なのに、ドイツでは10年前にそれができた。その一番の理由はどこにあると思いますか?
    小嶋:脱原発に関して、ドイツでは40年間の議論が下地にあるんですね。1967年、ドイツ国内初の商業用原子炉となるグンドレミンゲン原発A号機の運転開始を皮切りに、[*22] 次々と新しい原発が建設され、1970年代半ばから市民による反原発運動が活発になります。1986年のチェルノブイリ原発事故で、特に南ドイツの山林が放射性物質に汚染されると、国内の各所で反原発デモが盛んに行われるようになりました。それが1980年代の緑の党の躍進、そして2000年の原発全廃方針につながります。今も国民の8割以上が脱原発を支持しているので、[*23] 後戻りはできない——つまり、日本でも政府や事業者を動かすには、僕たち国民が声を上げていくしかないということではないでしょうか。政府も経済界も、民意を無視することはできませんから。
    津田:なるほど。ただ、脱原発に向けての合意という点では、原発立地自治体の問題も避けて通れないですよね。日本では今年の5月、福井県おおい町会が賛成多数で大飯原発の再稼働に同意しました。[*24] 再稼働をめぐり、東京の首相官邸前をはじめ全国で反対デモが繰り広げられていたさなかの決定に、賛否両論が起こったのは記憶に新しいところです。当然、ドイツにも原発立地自治体があると思いますが、彼らは2022年までの原発撤廃についてどう思っているのでしょう?
    小嶋:僕たちが訪れたのは、イザール原発を抱えるエッセンバッハという町です。イザール原発には2基の原子炉があり、1基は福島第一原発事故後に停止、もう1基は2022年までの稼働を予定しています。ここのフリッツ・ヴィットマン町長と会談したのですが、彼が言うには「脱原発はわれわれにはタッチできない政治決定である」と。
    津田:脱原発を受け入れているということですか?
    小嶋:ええ。日本の福島第一原発事故を受け、3カ月という短い期間でメルケル首相が脱原発を決めてしまった。イザール原発でも原子炉1基が停止し、もう1基の稼働期間が短縮されてしまいましたが、そこに口を出すことはなかったらしいんですね。「できれば原発立地自治体の意見を聞いて、声を汲み上げてほしかった」——それが本音ではあるものの、基本的には政府の決定を受け入れています。というのも、日本と大きく違う点として、ドイツの原発立地自治体には国からの交付金が落ちてこない——電源三法交付金制度 [*25] がないんです。
    津田:そもそもドイツには、日本で「麻薬」とも表現される [*26] 莫大な額の交付金がないんですね。雇用創出や事業税の恩恵は受けるものの、経済的に原発に必要以上に依存しないようになっていると。
    小嶋:町として、電力会社から得る収入は事業税だけです。ヴィットマン町長は「脱原発で町の事業税が落ち込んだとしても、国に補償を求めることはない」とおっしゃっていました。「町にある企業の収益が下がり、事業税が入ってこなくなるリスクは原発立地自治体に限ったことではない。それは企業を抱える町であればどこも同じだ」と。その覚悟はすでにあると言うんです。一つの企業がダメになったら、代わりに将来有望な企業を誘致して、町の財政と雇用をしっかり確保していく。エッセンバッハにはBMWの工場もありますし、ほかにも太陽光を含めた再生可能エネルギーなど新たな産業に投資をしていくつもりだそうです。
    津田:状況は厳しくても、かなり前向きな印象ですね。少なくとも日本の原発立地自治体とはずいぶんそのへんの感覚が違いますね。
    小嶋:やはり、日本でも脱原発に関して原発立地自治体の理解を得るには、町の財政をどうするのか、それによって失われる雇用をどうするのかといった点に向き合わなければなりません。電源三法交付金制度の見直しも含め、時間をかけて議論し、自立の道を模索するしかないのかな、と感じました。
    ◇ドイツの再生可能エネルギー政策
    津田:話を先に進めましょう。経済界や原発立地自治体と脱原発について合意し、方針が国レベルで固まったとしても、その実現に欠かせないのは代替となるエネルギーです。ドイツでも脱原発政策と再生可能エネルギー政策は両輪で進めていますよね。ドイツの再生可能エネルギーが全電力の20%を超えた——冒頭でそんな話がありましたが、なぜたった10年で発電量を飛躍的に伸ばすことができたのでしょうか。
    小嶋:電力の固定買取価格制度によるところが大きいですね。これはドイツの「再生可能エネルギー法」の中核をなす制度で、再生可能エネルギーで発電した電力を一定の価格で全量買い取ることを送電事業者に義務付けるものです。[*27] 再生可能エネルギー事業者にとっては、発電コストを上回る価格で購入してもらえる——将来の収入が保証されるということで、当然ながら新規参入の促進にもつながります。結果、現在ドイツには1000近くのエネルギー供給業者があるということです。[*28]
    津田:ドイツをモデルにした固定買取価格制度は今年の7月から日本でも始まっています。[*29] ドイツの先例に習い、気をつけるべきポイントなどはありますか?
    小嶋:固定買取制度によって生じる市場価格との差額は、最終的に「賦課金(ふかきん)」として電気料金に上乗せされ、消費者に転嫁されます。ドイツではこの数年、賦課金による電気料金の高騰が問題視されているんです。特に2013年からは、たとえば3人の家庭で年間約70ユーロ(7200円)も値上がりする見通しで、ドイツ国民には結構なインパクトだったようです。[*30] 実際に、現地でも不満の声を耳にしました。
    津田:どういう人たちに話を聞いたのですか?
    小嶋:まずは消費者団体です。独連邦消費者保護連合という、約40の消費者関連組織を束ねる団体を訪問し、クラヴィンゲルエネルギー・環境局長と会談しました。消費者——国民としても、脱原発に伴う痛みを受け入れるつもりはあるものの、自分たちの家庭や中小企業が負担を強いられる一方で、エネルギー消費量の多い大企業は国際競争力への影響を考慮して賦課金の減免措置を受けている。[*31] クラヴィンゲル氏は、そのことに対して国民の不満が高まるのではないかと心配していましたね。
    津田:年間7200円というと、月々の電気代が600円上がるわけですよね。それは結構な負担ですよね。怒りをどこかにぶつけたいというドイツ国民の気持ちもわかります。
    小嶋:実は、その怒りのぶつけ先であるドイツの商工会議所にも行って、経済界の意見も聞いたんですよ。独商工会議所のボレイエネルギー気候政策課長に「国民は電気料金の負担が不公平だと感じでいるようですが、このことについてどう思う?」と尋ねたところ、「それは耳の痛い話だ」と。負担は公平であるべきだが、2000社近くもある大口需要家に賦課金をかけてしまうと、そのまま商品の価格にスライドされてしまう、ということでした。そうなれば、大企業の下請けや関係企業にも影響を与えてしまうし、消費者への負担がかかるという意味では同じ。経済界としても心苦しいものの、現状が最善の策なんだと訴えていましたね。
    津田:電気料金を下げるための策は今のところないんですか。
    小嶋:何もしていないわけじゃないんです。ドイツでは、1999年に始めた太陽光発電を普及させるための融資プログラム「10万個の屋根計画」[*32] や、2004年の再生可能エネルギー法改正による太陽光発電の買取価格引き上げにより、太陽光発電のシェアが急速に拡大しました。2005年には日本を抜いて太陽光発電の設置量で世界一になっています。[*33] 普及が進んだことで、太陽光パネルの価格が下落するなど、設備コストが下がってきている。それなら過保護な買い取りはしなくていいじゃないかということで、今年6月にドイツ議会が太陽光発電の買取価格引き下げに合意しました。[*34]「買取価格については十分気をつけたほうがいい」——消費者連合のクラヴィンゲル氏は、日本からの視察団にもそう言っていましたね。
    津田:なるほどね。そのあたりのことは日本でもかなり参考になりそうです。まあ、日本でもすでに42円に決まった太陽光の買取価格が高いと叩かれているわけですが……。[*35] 太陽光をはじめ、再生可能エネルギーの発電所もいくつか視察したんですよね。
    小嶋:太陽光発電施設にも行ったのですが、一番印象的だったのはメルケンドルフという町ですね。この町では電力をバイオガスと太陽光でまかなっていて、エネルギー自給率がなんと247%もあるんです。さらに、余剰エネルギーを周辺の自治体に売って収益をあげています。
    津田:バイオガス……? それは、バイオマスとは違うんですか?
    小嶋:厳密に言うと違いますね。バイオマスは、木材や動物の糞尿などから生産する生物由来の有機性エネルギーのことです。バイオガスはバイオマスの一種で、特に動物の糞尿から出るメタンガスを貯めて発電する——要するにガス発電ですね。[*36] メルケンドルフでは、アグリコンプ社 [*37] という電力会社のバイオガス発電施設を視察しました。
    津田:どういうところが印象的でした?
    小嶋:太陽光、風力といった再生可能エネルギーは、天候の影響を受けるため安定供給に向かないという弱点があるじゃないですか。でも、このバイオガスは、動物の糞尿から出たメタンガスを蓄えておいて、それを好きな時に発電に回せるんです。長期間の保存はできないので年間のエネルギー調整には利用できませんが、1日に必要な電力の需給ギャップが調整できる。しかも、ガスを発生させた後は肥料として使えるという、無駄のないサイクルが完結しているんですね。このサイクルに感心しました。これは日本の地方にも十分取り入れていけるんじゃないかと思っています。
    津田:確かにそれは魅力的ですね。ただ、今、小嶋記者が指摘した風力や太陽光の安定供給については、これから日本でも必ず課題になると思うんです。ドイツでは再生可能エネルギーを安定供給するためにどんな取り組みをしているんですか。
    小嶋:その点でドイツの皆さんが問題視していたのは、送電網の不足です。実は、ドイツの再生可能エネルギーの主力は風力発電なんです。全電力の20%を占める再生可能エネルギーのうち風力が8%を占め、バイオマスが5%、太陽光が3%、水力も同じく3%ほど……と続きます。[*38] 主力の風力発電は風力の強いドイツ北部に発電設備が集中しているんですね。2011年5月には、北部の洋上で「ウィンドファーム」という集合型風力発電所の稼働が始まり注目されています。[*39] ただ、ここで発電したエネルギーを、南部や西部の電力大量消費地に届けるための送電線が十分に整備されておらず、そのことで頭を抱えてきたんです。そこで、2010年に発表された政府の「エネルギー計画」には、南北をつなぐ送電線の整備が盛り込まれました。日本でも再生可能エネルギーを推進するのであれば、送電網の整備を早急に進めたほうがいい——そんなことを言われましたね。
    津田:というか、日本の場合はまず電力の発送電分離をしないといけない。今年7月から日本でも再生可能エネルギーの固定買取制度が始まったことを受け、ようやく電力会社の送電網が開放されつつあるという段階ですからね。[*40] 規制緩和を進めないと、送電線があったところで新規事業者が参入できません。しかし一方で発送電分離については「電力の自由化や発送電の分離をすると、電気を安定供給できなくなって停電するぞ」みたいな脅しとも取れる反対意見も根強くあります。ドイツは発送電分離に成功しているんですよね?
    小嶋:ドイツでは発送電分離と電力自由化がかなり進んでいます。ドイツ——というより、EU全体で推進してきた感じですね。1996年にEUで制定された「第一次欧州電力指令」を受け、ドイツ国内ではまず電力小売りの自由化に着手します。[*41] ただ、送電の利用料金を電力会社と新規参入者の交渉に委ねたため、公平な競争環境が生まれず多くの新規参入者が撤退してしまうんですね。そのせいで、EUの中でもドイツの発送電分離は遅々として進みませんでした。そこでドイツ政府は2005年に「連邦ネットワーク庁」を創設し、電力会社の送電部門を厳しく監督し始めます。[*42] 以来、送電部門と発電部門は会計・運用なども含めて徹底的に分離され、送電部門の独立性が担保されるようになったというわけです。近年では、送電部門を売却する大手電力会社もあるくらいですからね。[*43]
    津田:なるほど。日本でも発送電分離を進めるにあたり、電力会社の抵抗が根強い場合は政治主導の強引な方法を取らざるを得なくなるかもしれないということですね。とにかく、EU全体で電力を自由化して、国をまたいでエネルギーを供給しあえる関係ができた、と。でも、だからこそドイツは脱原発に踏み切れる——結局は隣のフランスにある原発の電力をあてにしているんじゃないか、という意見もあります。その環境がない日本にはドイツと同じことはできないと、脱原発反対派の攻撃材料になることもある。このあたりの問題は質問しましたか?
    小嶋:ドイツの環境省を訪問した際、日本の議員団の方がアルトマイヤー環境大臣に訊いたとのことでした。「ドイツは電気が足りなければフランスの原子力発電で作られた電気を買えるので、ドイツの脱原発の政策はまやかしではないか?」と、かなり直球の質問ですね。環境大臣の答えは「ノー」です。もちろん、他国の電力を輸入しなければならない時期も、年間を通して何カ月かはあると。その一方で、逆にドイツが他国に輸出している期間もある。ドイツがフランスから電力を輸入することもあるのでしょうが、出力変動の効かない原子力発電で余った安い電気を買って、調整してあげているというイメージらしいんですね。それに、フランスの原発の多くは河川沿いにあり、冷却には河川の水を使います。干ばつなどにより河川の水量が減ると原発の出力を下げたり、停止を余儀なくされるので、その場合はフランスが電力を輸入することになります。[*44] もう一つ言えるのは、EU諸国の送電線は相互に結ばれているので、市場に乗った安い電気は自動的に買われてしまうと。つまり、原発による電気かどうかなんて選択できないんです。ただ、全体としてはドイツは電力輸出超過している。福島事故で原発を止めた以降も、年間では輸出電力のほうが多いと話していました。[*45]
    津田:自給自足は基本的に可能なんだけど、いざというときのフェイルセーフとしてみたいなものとして、他国から融通してもらえる、と。電力の輸出入量で見ればドイツが他国の電力に依存していないことは明らかで、「ドイツはフランスの原発で作った電気を買っているから電気が足りてて脱原発できるんだ」という言説は間違いになるわけですが、他方では国内で大きな電力ショートが起きる事態になっても他国から融通してもらえる環境がある。そういう意味では日本とは違うわけですね。つまり、この問題は電力量で捉えるのではなく、フェイルセーフがあるかどうかで捉える必要があると。そうすると確かに日本の脱原発へのハードルはドイツより高い。将来的に日本は、韓国や中国、台湾などの近隣諸国と送電線をつないで電気を融通し合うという手もあるのかもしれませんね。
    小嶋:可能性としてはありますね。
    津田:ドイツのエネルギー政策についてはよくわかりました。参考にすべき点は多いものの、日本が同じレベルに達するにはまだまだ時間がかかりそう気配ですね。
    小嶋:そのとおりですが、日本がドイツに勝る部分もあるんです。地熱に関して日本には高いポテンシャルがあり、実用化のための技術も企業が持っています。太陽光でいえば、日本は日照時間がドイツの約1.4倍なので、実はドイツより太陽光発電に向いているんですね。シュレーター連邦議会環境委員長が「日本もドイツも産業が発達した工業国なので、技術力を再生可能エネルギーに応用し、一緒に脱原発をやり遂げたい」というようなことを言ってくれて、なんだか心強かったです。ドイツのような意気込みが日本にも必要だと思いました。
    ◇脱原発における最大の課題
    津田:では最後に、日本もそれからドイツも——脱原発に向かうすべての国が抱えているであろう最大の課題についてお話を伺います。ドイツでは、使用済み核燃料の再処理や最終処分についてはどのように考えられているのでしょうか?
    小嶋:東西ドイツ時代の1977年に、西ドイツのコール政権が旧東ドイツ国境付近のゴアレーベンを最終処分場候補地に選定しました。ゴアレーベンの地下には硬い岩塩層が広がっており、直接処分には適しているとされたんですね。しかし、その後の調査で岩盤層近くに地下水脈があることがわかり、2000年に調査を中断してしまいます。地域住民や緑の党などから反対の声が上がっていたこともあり、2011年11月には、当時のレトゲン環境相がゴアレーベンでの最終処分場建設計画を撤回しています。[*46]
    津田:最終処分場が決まっていない——日本と同じ状況なんですね。
    小嶋:はい。ただしドイツの場合、2002年の原子力法改正で使用済み核燃料の再処理が禁止されているので、直接処分するしかないんです。[*47] 最終処分場が見つかるまでは中間貯蔵しなければならないのですが、使用済み燃料を長距離移動させるわけにはいきません。つまり、中間貯蔵施設は自動的に原発敷地内や隣接する土地に設置しなければならなくなった。先ほど話に出た原発の町・エッセンバッハでも、5〜6年前に中間貯蔵施設を作り、40年という期限で使用済み核燃料を貯蔵しています。
    津田:将来、最終処分場が決まったらそっちに移しますよ、と。
    小嶋:そういう約束にはなっていますが、果たしてあと35年の間に最終処分場が決まるかどうか——住民の皆さんはかなり不安に思っているようでした。なし崩し的に最終処分場になってしまうんじゃないかと懸念しているんです。
    津田:脱原発先進国のドイツですら、放射性廃棄物の最終処分に関しては答えを持ち合わせていない——。この問題については津田マガでもたびたび取り上げてきましたが、[*48] いくら考えても解決策が見つからず、途方に暮れてしまいます。ほんと、どうすんんでしょうね。日本人というか人類は……。
    小嶋:日本やドイツだけの問題じゃないですからね。答えがないのなら、現状で考えうる最善の策は、これ以上核のゴミを増やさないこと。そのためにも脱原発を進めるしかないんだと思います。ドイツ連邦議会のブーリング・シュレーター環境委員長は、僕たちにこう言ってくれました。「政権が交代したとしても、後戻りができなくなるような法律をまず作ってほしい」と。まさに今、その第一歩を踏み出す段階になっているんじゃないでしょうか。
    津田:そう。少なくとも、日本人はパブリックコメントやデモで意志表示し、結果的に各党が脱原発方針を公約に掲げるようになった。来週に迫った選挙でどの党が勝利しても、脱原発に関しては悪い選択にならないと信じたいですね。あとは、未来の与党がどれだけ行動力をもってやってくれるのか。つねに高い関心を持ち続け、国民的議論を絶やさないようにするのがメディア役割だし、国民が自分たちで当事者意識を持って考え続けることが何よりも大事なんでしょうね。ドイツ取材、お疲れ様でした! この記事は 「津田大介の『メディアの現場』」 からの抜粋です。 ご興味を持たれた方は、ぜひご購読をお願いします。
     
    [*1] http://coalitionagainstnukes.jp/?page_id=1855
    [*2] http://www.sponichi.co.jp/society/news/2012/11/27/kiji/K20121127004652350.html
    [*3] http://www.seikatsu1.jp/germany/index.html
    http://midori1kwh.de/2012/10/28/2561
    [*4] http://www.seikatsu1.jp/policy.html
    [*5] ブロマガの特別企画として、ドイツ取材のリポートを生放送(タイムシフト視聴可)した。
    小沢一郎ドイツ脱原発視察 現地取材リポート 1 http://live.nicovideo.jp/watch/lv111780040
    小沢一郎ドイツ脱原発視察 現地取材リポート 2 http://live.nicovideo.jp/watch/lv111780048
    小沢一郎ドイツ脱原発視察 現地取材リポート 3 http://live.nicovideo.jp/watch/lv111780052
    日本で脱原発はできるか 小沢一郎ドイツ脱原発視察 総まとめ http://live.nicovideo.jp/watch/lv112591373
    [*6] http://www.jcp.or.jp/akahata/aik12/2012-11-26/2012112606_01_1.html
    [*7] http://www.afpbb.com/article/politics/2831350/7847178
    [*8] http://news.livedoor.com/article/detail/5514148/
    [*9] http://midori1kwh.de/2012/09/16/2371
    [*10] P5「ドイツの再生可能エネルギー中・長期目標」 http://www.ecolosia.jp/p/pdf/germany1.pdf
    [*11] http://www.eic.or.jp/library/pickup/pu110603-1.html
    [*12] http://dl.ndl.go.jp/view/download/digidepo_3497220_po_02520007.pdf?contentNo=1
    [*13] http://www.asahi.com/eco/TKY201009060420.html
    [*14] http://www.ndl.go.jp/jp/data/publication/legis/pdf/02460103.pdf
    [*15] http://business.nikkeibp.co.jp/article/world/20110516/219996/
    [*16] http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20110606-OYT1T01017.htm
    [*17] http://jp.reuters.com/article/businessNews/idJPTYE8AF03A20121116
    [*18] http://www.bdew.de/internet.nsf/id/EN_Home
    [*19] http://www.fepc.or.jp/
    [*20] http://sankei.jp.msn.com/world/news/120613/erp12061323080004-n1.htm
    http://eneken.ieej.or.jp/data/4495.pdf
    http://www.fepc.or.jp/library/kaigai/kaigai_topics/1217718_4115.html
    [*21] http://www.fukuishimbun.co.jp/nationalnews/CO/world/456247.html
    [*22] 8.9「ドイツ:グンドレミンゲン原子力発電所A号機」 http://www.jnes.go.jp/content/000014750.pdf#page=104
    [*23] http://www.alterna.co.jp/5416
    [*24] http://www.fukuishimbun.co.jp/localnews/npp_restart/34709.html
    [*25] http://www.fepc.or.jp/nuclear/chiiki/nuclear/seido/index.html
    [*26] http://genuinvest.net/?eid=1533
    [*27] http://www.osaka-ue.ac.jp/gp2006/doc/att_3.pdf
    [*28] http://www.newsdigest.de/newsde/news/featured/3559-873.html
    [*29] http://www.enecho.meti.go.jp/saiene/kaitori/index.html
    http://www.gov-online.go.jp/useful/article/201110/4.html
    [*30] http://www.jiji.com/jc/zc?k=201210/2012102000168&g=pol
    [*31] http://eneken.ieej.or.jp/data/4358.pdf
    [*32] http://www.iam.dpc.u-tokyo.ac.jp/workingpapers/pdf/papers_100131wp.pdf#page=17
    [*33] http://jp.reuters.com/article/forexNews/idJPnTK029545320090821
    http://www.jiji.com/jc/rt?k=2012052800241r
    [*34] http://www.asahi.com/international/update/0628/TKY201206280442.html
    [*35] http://www.nikkei.com/article/DGXNASFS22014_S2A420C1MM8000/
    本メルマガVol.45の「メディア・イベントプレイバック」で、東京工科大学大学院ビジネススクール教授の尾崎弘之さんが再生可能エネルギー全量買取制度の問題点を解説している。 http://tsuda.ru/tsudamag/2012/09/198/
    [*36] http://www.eic.or.jp/ecoterm/?act=view&ecoword=%A5%D0%A5%A4%A5%AA%A5%AC%A5%B9
    [*37] http://www.biogastechnik.de/
    [*38] http://www.jetro.go.jp/jfile/report/07000984/report.pdf#page=10
    [*39] http://www.afpbb.com/article/environment-science-it/environment/2798175/7160364
    [*40] http://www.itmedia.co.jp/smartjapan/articles/1206/21/news095.html
    [*41] http://www.meti.go.jp/committee/sougouenergy/sougou/denryoku_system_kaikaku/pdf/004_04_01.pdf#page=5
    [*42] http://www.soumu.go.jp/g-ict/country/germany/pdf/049.pdf#page=2
    [*43] http://www.tkumagai.de/Eco%20unbundling.html
    [*44] http://blog.livedoor.jp/murakamiatsushi/archives/51384274.html
    http://www.juno.dti.ne.jp/~tkitaba/earth/nuclear/news/11051701.htm
    [*45] http://www3.ocn.ne.jp/~elbe/kiso/atomdata03.html
    [*46] http://s.webry.info/sp/rengetushin.at.webry.info/201111/article_5.html
    [*47] http://tkajimura.blogspot.jp/2011/11/blog-post_23.html
    [*48] Vol.44「2030年、日本の原発はゼロになる?」 http://tsuda.ru/tsudamag/2012/09/196/
    Vol.46「原発ゼロ政策、なぜ骨抜きになったのか」 http://ch.nicovideo.jp/article/ar7931

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  • 【選挙前特集:脱原発とネット選挙規制問題】津田大介の「メディアの現場」vol.52

    2012-12-09 08:45  
    220pt
    11月16日、野田佳彦首相が衆議院を解散したことを受け、12月の総選挙に向けて各党が次々に公約を公開しました。国民最大の関心事の一つだったエネルギー政策に関しては、少なくとも「脱原発依存」を掲げる政党がほとんどです。しかし、政治家が描く青写真どおりに脱原発が進むのかと、半信半疑の人もいるのではないでしょうか。そこで今回は、この10月、日本の議員団に随行してドイツの脱原発事情を取材した弊社の小嶋裕一(@mutevox)に、現地の取り組みについて語ってもらいました。合意形成、法整備、代替エネルギーの普及……。ドイツの軌跡をたどり、実現可能な脱原発のプロセスを探ります。

    ======================================================================

    ◆日本の脱原発は本当に可能なのか?
     ——ドイツ10年の歩みに学ぶエネルギー政策


    津田:次の衆院選はエネルギー政策が争点になる——3.11の福島第一原発事故以来、メディアは折にふれてそう報道してきたし、僕たち国民の間にも暗黙の了解があったような気がします。しかし、いざ総選挙が決まって蓋を開けてみると、各党のエネルギー政策が千差万別になり、毎夜その話題でメディアが持ちきりになるといった状況は生まれていません。表現やいつまでに実現するのかという期間こそ違うものの、自民党と日本維新の会、国民新党以外は「脱原発」——少なくとも「脱原発依存」という点では一致しているという状況です。[*1] つまり、「脱原発」することそのものは争点ですらなく、日本の既定路線になりつつあるとも言えます。これからは原発の是非ではなく、いかに原発をゼロにするかを問うていかなければなりません。小嶋記者は10月にドイツへ行って、現地の脱原発や再生可能エネルギー推進への取り組みを目の当たりにしてきました。そのドイツ視察を振り返りながら、日本が抱えることになる課題を浮き彫りにできればと思うのですが、まずはどういう経緯でドイツへ行ったのか説明してもらえますか?

    小嶋:つい先日「日本未来の党」への合流を発表した [*2] ばかりの小沢一郎前衆議院議員や森ゆう子参議院議員らが、10月に当時の「国民の生活が第一」の議員団を率いてドイツを訪問しました。[*3]「国民の生活は第一」はかねてより脱原発を政策の一丁目一番地としていたので、[*4] 脱原発先進国であるドイツの取り組みを視察しようとしたんですね。僕は記者として視察団に同行し、3日間に渡って現地からレポートをニコ生で中継しました。[*5]

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  • 同じ本を「紙と電子書籍の両方」で買う理由は?「津田ブロマガeXtreme」第4回目書き起こし(前半)

    2012-12-06 14:02  
    220pt
     津田大介さんの新刊『ウェブで政治を動かす!』(朝日新書)が2012年11月12日、発売されました。アマゾンのKindle版でもリリースされたこともあり、話題となっています。ニコニコ生放送で行われた、すでに同書を購入したユーザーを対象にしたアンケートでは、13.5%の人が紙とKindle版の両方を購入したと答えました。(企画・制作:ドワンゴ)
     アンケートは、『ウェブで政治を動かす!』発売を記念して、同日放送されたニコニコ生放送番組『津田ブロマガ eXtreme(エクストリーム)』で実施されました。すでに同書を購入した人に対して、「紙で買いましたか?Kindleで買いましたか?両方?」という三択の質問をしたところ、紙で購入した方が53.2%、Kindleは33.3%、両方は13.5%という結果となりました。
     両方で購入した方が13.5%もいたという結果を受けて、津田さんは「本当にありがとうございます。生きていて良かった。楽しくなってきた」と語り、感謝と喜びを表現しました。その上で、津田さんは、次のように分析しました。
    「そんなに不思議な結果でもなくて、Kindleで買った人で、気に入った本は紙で買い直す人も意外と多かったりします。アメリカだと、Kindle持っている人が紙の本も買うというデータがあるんですよね。Kindleだと、人に渡すことができないじゃないですか。本だったら、ちょっと貸したりもできるけど、Kindleの場合、iPhoneごと貸すわけにもいかないから。そういう違いもあって、両者が意外とバッティング(競合)しないとは言われていますね」
     このほか前半の無料放送部分では、『ウェブで政治を動かす!』の読みどころを津田さん本人が紹介しました。『津田ブロマガ eXtreme』では、今後も定期的に生放送をしていく予定です。
     この番組の全文書き起こし記事は、津田大介チャンネルに会員登録すると閲覧できます。
  • ハックルさんの努力論 「津田ブロマガeXtreme」第3回目書き起こし(後半)

    2012-12-05 15:27  
    220pt
     人間が最大の能力を発揮できるのは、自分のためではなく「身近な人のため」に頑張るとき。「ハックルさん」のニックネームで知られるベストセラー作家の岩崎夏海さんが、ジャーナリストの津田大介さんの生放送に出演した際に、持論を披露しました。(企画・制作:ドワンゴ)
     これは2012年10月17日のニコニコ生放送番組『津田ブロマガeXtreme(エクストリーム)』の一コマです。岩崎さんは、2009年にダイヤモンド社から小説「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」(通称:『もしドラ』)を上梓し、200万部を超える大ヒット作となっています。
     視聴者からのコメントで、「良いスパイラルに入るまでは、ひたすら努力ですか?」という質問があった際に、津田さんは「僕もハックルさんも努力とは思っていないんです。生き残るために『やらなきゃいけない』という危機感ですね」と答えました。それを受けて、岩崎さんは次のように答えました。
    「『やりたい』って言っているうちは弱いんです。人間が一番パフォーマンスを発揮できるのは、結局、自分がやりたい時じゃなくて、人から頼まれて仕方なくやる時なんですよ。『この人のために頑張らなきゃいけない』と」
     その上で、日本のオリンピックの競泳チームのことを例に挙げて、次のように述べました。
    「1984年ごろは、『日本国民のために頑張れ』といったスローガンで長崎宏子さんが泳いだので、プレッシャーに負けて、メダルを取れなかった。その後、日本国民の期待を背負わせるのは重すぎるんで『自分のために頑張ろう』ということで、千葉すずちゃんが自分のために頑張ったら、やっぱり力が出なかった。国民のためでもダメ、自分のためでもダメだったらどうしようかっていう話になって、その後、『親しい自分の家族や応援してくれる人のために頑張ろう』となったら、その途端に強くなったんですよ。距離感が大事なんですね」
     放送ではこのほか、将棋の羽生善治さんが終盤になると指す手が震える理由、津田さんとAKB48が共通点など、次々と興味深い話題が繰り広げられました。『津田ブロマガeXtreme』では、今後も定期的に生放送をしていく予定です。
     この番組の全文書き起こし記事は、津田大介チャンネルに会員登録すると閲覧できます。