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鈴木秀樹が16,000字で語る「プロレスラーの強さとは何か」
鈴木秀樹が16,000字で語る「プロレスラーの強さとは何か」(聞き手/ジャン斉藤)
*Dropkick配信されたものを再構成したものです
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・TAJIRIかく語りき「奇跡のプロレスから離れて」
――今日の配信のゲストはプロレスラーの鈴木秀樹選手です。鈴木さん、よろしくお願いします!鈴木 よろしくお願いします。こうしてZOOMで取材されるのは、なんかすごく久しぶりな感じがする。これはZOOMじゃないですけどね。
――ボクが鈴木さんを取材するのは猪木さんが亡くなったあとくらいですかね。
鈴木 亡くなられてからちょっとあとくらいですね。
――今日は何かテーマは決まってるわけじゃないんですけど……。
鈴木 まあ雑談ですよね(笑)。
――先ほど鈴木さんのツイートを見ていたら、猪木さんと肌を合わせている写真のポストにコメントされてましたね
鈴木 あれは2017年頃に「ISM」という大会があったんですけど、猪木さんがお客さんに技をかけるという企画があったんですね。それの取材兼練習にボクが呼ばれて、アキレス腱固めとフェイスロックの写真を撮ったんですよ。
――鈴木さんは猪木さんに技をかけられたんですね。鈴木 猪木さんからいきなり「俺は現役とはやらねえんだよ」と言い出して。「なんだろう??」と思いながら、アキレス腱固めをかけられたんですよ。これって動画じゃなくて写真だけの撮影ですよ。変な話、形だけでいいじゃないですか。でもまあしっかり極めてくるんですよね(笑)。
――形だけでは許さない!(笑)。
鈴木 あの頃の猪木さん、何歳だったんだろう。さすがに身体も少し弱くなっていたと思うんですよね。アキレス腱固めって、1回でガッチリと取らないとなかなか極まるものでもない。ポイントには入ったんですけど、猪木さんの力も少し弱まってたからすぐには極まらなかったんですよね。だんだんと力が入ってきたから、ちょっと早めにタップしたんです。その日の夜に試合もあったから痛めたくないじゃないですか(笑)。
――撮影でガマンしてケガしたくないですよね(笑)。力が落ちていることを自分でわかっているから「俺は現役とはやらねえんだよ」と言ったんですかね……。鈴木 猪木さんはボクの対応もわかったでしょうね。フェイスロックのときはおもいきり顔を締め上げたら「パキッ!」って音が鳴って(笑)。
――ハハハハハハハハハ!
鈴木 「おい、音が鳴ったけど大丈夫か?」って心配するんですけど、その顔がすごい満足してるんですよね(笑)。ナメられて手心を加えられたと感じたから、今度はがっちりやったんじゃないかなと思います(笑)。
――鈴木さんは猪木さんとけっこう肌を合わせてるんじゃないですか?
鈴木 ボクは数回なんですよね。猪木さんがガッチリ触ったのはギリギリUFOのときの選手じゃないですか。
――引退直後の猪木さんが小川直也さんや佐山聡さんと一緒にやっていた頃。
鈴木 藤田(和之)さんやカシンとか。ボクはもう本当に数えるくらいですよ。だから闘魂を理解できるレベルにはいないです。わかっていたらアントニオ猪木的な人物になれてると思うんですよね。なれてないからたぶんわかってない。
――猪木さんとスパーした人間は数知れないですけど、疑ってかかった選手は少ないと思うんですよ。フェイスロックを全力でやってきたのは“前科”があったからじゃないかなと(笑)。鈴木 ああ、ありましたね。猪木さんがIGF道場に来られたときに、横四方の抑え込みを見せてくれたんですよ。ボクが脇で見ていたら、猪木さんは「オマエは信用してねえだろ?」と。要は抑え込まれてるほうが遠慮してると思ってんだろってことですね。だから「はい。やってもらっていいですか?」と。
――そこでそう言っちゃう鈴木さんも面白いですよ(笑)。
鈴木 ハハハハハ。猪木さん、おもいきり抑えこんできたんですけど、力がやっぱり強い。ボクは下から猪木さんの顔や髪を掴んで引き剥がそうとしたんです。目に指を入れるまでじゃないですけど……。
――ハハハハハハハ! とんでもないですよ!
鈴木 そうしたら、アゴでその手を押さえこんできて。あのアゴも凶器なんですよ(笑)。で、ボクの顔面にヒジを押し付けてくるのがめっちゃ痛くて。終わったあと猪木さんの髪の毛はぐちゃぐちゃのまま「どうだ、ウソじゃねえだろ?」と言われたので「負けました。すいませんでした」と謝りました。
――髪の毛がぐちゃぐちゃなのがリアリティがあって最高です(笑)。猪木さんも跳ね返ってくる若手のほうがやりがいはあるというか。
鈴木 やっぱり猪木さんは本当に強かったわけじゃないですか。もちろん年齢的に一番のピークではないんですけど、ちょっとでもその強さを知れたらいいなと思って。猪木さん以外のレジェンド系も受けてましたね。
――他に誰とぶつかったんですか?
鈴木 たとえば藤原(喜明)組長ですね。なんの試合だったかは覚えてないですけど、6人タッグで先発がボクと藤原さん。組んでレスリングになって、ボクが下になったのかな。何をしてくるのかと思ったら、いきなり顔にパコーンってパンチを入れてきて。
――ハハハハハハハ!
鈴木 「この野郎!」ってボクも殴り返したんですよ。6人タッグなんですけど、そこからお互いに殴り合いですよ(笑)。さすがに顔は反則だからボディを打ちましたけど。
――そこは一線を守るんですね。
鈴木 組長は顔にも打ってきましたよ、ギリギリだったけど。こっちの対応がマズかったら、アゴ行かれるなと思いました(笑)。組長もあのときいくつだったのかなあ。60代後半だったんですけど、「同じの年齢だったら、どれくらい強かったんだろう?」って想像するのが好きですね。
――組長が新日本の前座でやった頃、キラー・カーンさんと仲が悪かったのかな。どこかの地方でシングルマッチが組まれたときに試合前に体育館の緞帳をサンドバック代わりにしてボクシングの練習をしていたと。関節技の鬼だけど、仕留めるときはボクシングなんだなって(笑)。
鈴木 殴り合いになったら殴ったほうが早いってことじゃないですか(笑)。プロレスは殴っちゃいけないってルールはないですから。昔ビル・ロビンソンも言ってましたよ。PRIDEの試合を見ながら「このルールだったら上に乗って関節を取るよりは殴ったほうが早い」と。MMAルールならそうですよね。下にならずに殴ったほうが早い。だから下にならないようにする。ロビンソンが現役のときはMMAはやってなかったですけど、プロレスというジャンルでそれなりにやってきた人だから、その戦いができるかできないかは別として、想像力を働かせればそういう言葉が出てくるんだと思います。ロビンソンの時代のプロレスはテレビもなかったし、けっこう悲惨な試合はあったと思うんですよね(苦笑)。
――悲惨な試合!(笑)。
鈴木 そこはロビンソンに限らずですけど、そういう中で生き残ってきた人たちは何か戦いのコツを知っているはずだし。一線のところでも引かないで勝負できるから残ってきたんでしょうね。
――プロレスは一線を越えてはいけないところはあるけども、その線が消えたときに対応できる力も問われる。
鈴木 とくにロビンソンは、アヤフヤな時代だったからこそなんでしょうね。猪木さんだって“いろんな試合”があったわけですから。それはプロレスが単なる競技じゃなかったからこその強さですよね。プロレスの競技的なところはMMAというものと合わさったんですけど。こういうことをいうと「夢がない」と思われるかもしれないけど、どんな競技もそのルールでずっとやってきた人が強いんじゃないですかね。亡くなられましたけど、横綱の曙さんに仕切りをやってもらったことがあるんですよ。
――相撲の立会いですね。
鈴木 いやあ、あれは怖かったですねぇ。相撲って絶対に前進するじゃないですか。下がったら終わりが前提の競技で、そこまで大きくない土俵の中に200キロ近い相手が目の前にいるんですからね。これは勝てないですよ。でも、これがグラップリングで1センチ後ろに下がってもいいとなると全然違ってくるんです。だから競技の強さはルールの違いに関わってきますよね。――猪木さんの凄さはよく語られますけど、競技的な強さだけではなく修羅場で立ち回れる勝負度胸はすごいなと。“敵地”だろうが関係なくギリギリの戦いができるじゃないですか。・命懸けだったアントニオ猪木・中嶋勝彦の闘魂スタイル騒動・闘魂をわかったふりをしていたIGF・世界一の日本のプロレス道場システム・WWE/NXTのコーチ時代
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【次期王座挑戦者決定戦】元谷友貴「RIZIN“激推し”の秋元選手に勝てばオイシイ」
秋元強真との次期王座挑戦者決定戦が目前に迫った元谷友貴インタビューです!(聞き手/松下ミワ)
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・佐藤将光センターラインな12000字インタビュー
――大晦日の秋元強真戦目前ですが、じつは元谷選手って今回で10回目の年末興行出場なんですよね!元谷 えっ、そんな出てますか? いや、そんなに出てますかね?
――2014年末のDEEP DREAM IMPACT 2014を含めると、今回でちょうど10回目です。不出場だったのは2017年のRIZIN大晦日だけです。
元谷 「RIZINで出てない年があるよなー」とは思っていたんですけど、1回だけだったんですね。もっと出てないかと思ってました。
――元谷選手は大晦日だけじゃなくてRIZINやDEEPでフル回転してますし、本当に凄いキャリアです(笑)。
元谷 自分でも意外ですね。まさかこんなに長く続けるとは思ってなかったというか。
――そうなんですか?
元谷 RIZINに出始めたのが25~26歳の頃で、そのときは「やっても30歳ぐらいまでかな」と。まさか10年後の35歳までやっとるかな? って感じだったんですけど、時間が経ってみると意外とあっという間ですね。
――正直、元谷選手が格闘技をやめるのは想像しづらいですもんね。元谷 自分でもまだ大丈夫な気がしています。身体的にはぜんぜん大丈夫なんですけど、あとは気持ちですよね。気持ちがどこまでついていけるのか。やっぱり負けたときに「もういいか」となるのかどうか、そこだけですね。
――年の瀬が差し迫っている中で、やっぱり大晦日独特のザワザワ感みたいなのはあるんですか?
元谷 いや、今回はとくにないんですけど、大晦日はいつも「早く試合が終わってほしいな」と思ってます(笑)。
――ハハハハハ! 聞くところによると、試合が決まる前に早々にアメリカにわたってアメリカン・トップチームで練習していたそうで。
元谷 秋元選手に決まる前は、相手がずっとわからなくて。試合が決まるとも言われてないけど、決まるかもしれない思ってたので。一応、なんかありそうやなーという感じやったんで、一応練習しておかないとという感じでした。
――対戦カードについては、最初はやはり井上直樹選手が候補だったんですかね?
元谷 井上選手も打診されて、もしかしたら……となってたんですけど、結局二転三転して秋元選手になった感じです。
――じゃあ、秋元選手に行き着くまでに意外と紆余曲折あったんですね。
元谷 そうですね。「この選手かも」「いや、この選手かも」という中で決まりました。
――最終的に秋元選手の名前が挙がってきたときはどう思いました?
元谷 やっぱり注目度があって凄くいい選手だと思うんですけど、なんて言うんですかね、まだ誰も知らないというか、得体の知れないちょっと不気味な感じはありますよね。どんなもんなのかな、という。
――いきなり元谷選手との対戦が決定して、俄然注目カードになってます。
元谷 たぶん、それはRIZINが秋元選手を“激推し”なんだと思います。
――ハハハハハ! “激推し”選手を当てられる気持ちってどんな感じなんですか?
元谷 いや、でもそこで勝てさえすれば逆に自分がオイシイんで。これは、凄くいいカードだなと思ってますね。
――元谷選手のコメント聞いていると、秋元選手のことめちゃくちゃ評価されてますよね。
元谷 一応プロデビューした16歳ぐらいの試合から見たんですけど、凄いうまいですよね。めちゃくちゃうまい。「ああ、こんなうまいんや」と思って見てました。
――それは、とくにどのへんがでしょう?
元谷 やっぱり全部がバランスがいいし、打撃も強くて、テイクダウンもしっかり細かい技術があるし、「ああ、こんな取り方するんや」みたいな。寝技もグランドもけっこう丁寧なんですよね。やっぱりパラエストラ千葉ネットワークでしっかり鍛えた成果というか、凄くしっかりした技術があるなと思いました。
――それに対して、元谷選手は公開練習とかでもまったく手の内を明かさないという(笑)。
元谷 フフフフ……。
――ファンに自分の選手カードを配るという謎の公開練習でした!
元谷 本当にあのときは何も考えてなくて。ミットの相手もいないですし、「何しようかなー」と思ってたときに、控え室で自分の選手カードをもらったんで、じゃあこのカードを配ろうと。
――秋元選手も少しでも元谷選手の動きからヒントを得たかったと思うんですけど、あんな感じだったので苦虫を噛み潰したような微妙な顔をされていた感じで。
元谷 まあ、もう成り行きでしたね。1分30秒間シャドーをしても「なんやろうな」という感じになるんで、なんとかカードを配って30秒ぐらい潰れたらいいなと思いながら。
――じゃあ、手の内を明かさないためではなく、切羽詰まってあの公開練習になってしまったということなんですね。
元谷 そのとおりです(真顔で)。
――でも、秋元選手って15歳から人生すべてMMAに振り切ってるわけですが、18歳でここまで来れるというのはやっぱり凄いですか?
元谷 いや、相当凄いと思います、しかも、やっぱり頭がよくないとあんな感じで吸収できないと思うんで。
――なるほど、考えながらやっていると。
元谷 と思います。凄く頭を使ってしっかり練習してますよね。そう感じるぐらいテクニックが細かいんで。
――そういう意味では、平良達郎選手や鶴屋怜選手、神龍誠選手など、いまの若い選手ってMMAファイターとして完成するまでみんな凄く早いなという印象があるんですけど。
元谷 やっぱり若い頃からパッと始めたものは吸収がいいんですかね? いままでだと大人がMMAを始めるとか、柔術を始めた流れでMMAをやるとか、そういう感じの人が多かったと思うんですけど、やっぱり10代からそれに興味を持ってやるって……それに10代って時間あるじゃないですか。
――たしかに(笑)。
元谷 その時間を使えるのも大きいのかなと思いますね。
――ただ、そこは元谷選手もMMA始めてDEEPのタイトルを獲るまで相当早かったですよね。元谷 自分の場合はプロデビューして1年でベルトを獲ったんで、MMAを始めて2年ぐらいですかね。
――それは、なんでそんなに早く獲れたんですか?元谷 自分は運がよかっただけです。本当に。あと最初に通ってたジムの練習が凄くよかったんだと思います。ジムのシステムだったり、やっぱクラスでの追い込みもそうですし、全体的にMMAとしていい面を学べたような気はしてます。
――当時、石川にいるときにYouTubeを見ながら研究していたということも話されてましたが、若い選手ってそのへんの情報がめちゃくちゃあふれてるというところも早く強くなれる一因だったりするのかなと。元谷 ああ、やっぱりYouTubeはいまでも見ますし、そこで研究するのは凄くいいことだと思います。自分も最初は柔術のジムだったんで、柔術の技術はしっかり教えてもらったんですけど、競技としてのMMAを学べたかというとそうではなかったんで、やっぱり細かいところはYouTubeで見てましたね。――いまの若い選手は、最初からそういう情報があふれている中で研究できるというのは、なんか羨ましく感じるところもあります?
元谷 でもまあ、そんなもんじゃないですか? それに、自分はわからなかったからこそよかった面もありますし。簡単に情報が手に入らないぶん、自分の探究心というか「どうやったらできるのか」というのを、ずっと探して、探して、見つからなくて、いまアメリカに行って「こうやるんだ」という発見があったり、そこがつながってきてたりして、そういう意味での楽しさもありますしね。
――自分で考えて探求することも大切なんですかね。
元谷 それがつながったときが本当に面白かったりします。
――そういう意味では、いまATTでの練習はめちゃくちゃ楽しいんじゃないですか?
元谷 めっっちゃくちゃ楽しいです!
――いや、それが凄く伝わってきます!
元谷 もう、めちゃくちゃ楽しい。やっぱり、なかなか日本じゃわからなかった技術とか、こんだけ長くやってても掴めなかった技術が、意外と「あ、こんな感じなんや」とか答えがわかりやすいですね。そこは世界王者が取り入れている技術やし、それを習得して試せる相手も世界トップレベルなんで。もう、何にしてもわかりやすいです。・食べて、寝て、洗濯のATT生活・1年経ってATTの練習が身になりつつある・元谷が見たパントージャの“対朝倉海”キャンプ・みんなATTvsJTTの構図を言いたがるが…11,000字インタビューは会員ページへ
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みんなの物語「朝倉海の挑戦を語ろう」■川尻達也☓笹原圭一
みんなの物語「朝倉海の挑戦を21,000字で語ろう」■川尻達也☓笹原圭一(聞き手/ジャン斉藤)
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UFC対RIZIN!! 語ろうパントージャvs朝倉海■川尻達也☓笹原圭一
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・ブラックローズ大晦日の裏側■証言:セコンド大塚隆史
――どうもジャン斉藤です。今日のDropkickスタジオトークのゲストはこの方です!笹原 皆さん、こんにちは。平和を愛し、平和から愛された男・笹原です。
――どういう挨拶なんですか!(笑)。そしてもうひとりはこの方です。
川尻 MMA3戦3勝、「超マス十段」の溝口司です。よろしくお願いします!
――SNSを追ってない人には意味がわからないですよ。
川尻 みんな知ってるでしょ?
――なんかケンカを売られてますね(笑)。
川尻 この直前までSNSでケンカを売られていたんです。3戦3勝の奴に。
――川尻さんにケンカを売っている溝口さんとは、ブレイキングダウンCOOの溝口勇児さんとは別人ですか?
川尻 別人っすよね。ブレイキングダウンの溝口さんは凄かったですよ。
笹原 昨日のブレイキングダウンでの試合では、残り1秒でKO勝ちしたんですよね。川尻 あの決着は映画みたいで凄かったですよ。ボクが言っているのは弱いほうの溝口司です。
――ボクもSNSで溝口選手のことはフォローしてたんですけど……。
川尻 あ、有名なんですか?
――有名というか有望な若手ですね。
川尻 ボクがYouTubeで有望な若手7人を挙げたときに「溝口司もいますよ」っていうコメントがあったんでググったことはありますね。だから名前を知ってたんですけど、どういう選手なのかはわからないです。「超マス」がすごく好きみたいです。
――超マスとはマススパーリングのすごいやつらしくて、川尻さんも執拗に「超マス」を要求されてますけど。溝口選手は21年のアマ修・全国3位の強豪ですよ。川尻さんは何位でしたっけ?(笑)。
川尻 自分は東日本オープントーナメント1位ですけど、そのあと修斗の第1回新人王のMVPですよ。そのあと恥ずかしながら修斗世界王者にもならせていただきました(笑)。
――そんなレジェンドが、アマ修・全国3位から雑にケンカを売られていると(笑)。
川尻 彼はまだ22歳って若いですよね。ボクとは24歳差だし、お父さんはボクと同世代じゃないですかね。こんな無礼なケンカの売り方をして、お金持ちのお父さんに甘えて暮らしてるか知らないけど、まずは土下座しろ。話はそれからだ(怒)。
――めちゃくちゃ怒ってますね(笑)。川尻さんって格闘家の中でも温厚なほうですけど、こうなるとめちゃくちゃ怖いな……。
川尻 だって陰険ですからね。ボク、青木、北岡は「陰険世代」ですよ。
――いや、北岡さんとアオシン(DEEPの佐伯社長夫人が付けたあだ名だけど、そう呼んでいるのは佐伯社長夫人とDropkickユーザー)はもっと上のレベルの陰険だから、彼らに失礼ですよ(笑)。
笹原 川尻くんのパブリックイメージはすごく穏やかな人だから、そのイメージを壊さないほうがいいですよ(笑)。
川尻 ネチネチずっと呪いますよ。「#超マス十段溝口司」ってタグ付けして1ヵ月はやり続けますからねぇ。調子乗るなよ、オマエ。
――このままだとShow大谷さんの配信並にカオスになるので、本題に入りましょう(笑)。
川尻 Show大谷さんのやつ、聴きましたけど、すごかったですよね。話があっちに行ったりこっちに行ったり、「結局なんの話をしてるんですか?」って(笑)。
――いま視聴されてる方はShow大谷さんに関心はないと思うので説明は省きます!UFC310のフライ級タイトルマッチ、パントージャvs朝倉海の盛り上がりはすごかったですね。
川尻 UFC310はいろいろすごかったですよね。「これは現実なのか」って信じられないことが次々に起きて。あれ、どのへんまでファンに伝わってるんですか? そのへんことを笹原さんに聞きたくて今日は来たんですよ。
笹原 今日は何もしゃべらないですよ!(笑)。
――たとえば「オクタゴンサイドで一緒に観戦した榊原さんとダナ・ホワイトは何を話したのか」……いろいろと興味は尽きないんですが、まずは試合の感想から。川尻さんはどう見ましたか?
川尻 ボクもアメリカ初体験がいきなりタイトルマッチだったんですよ。
――ストライクフォースのギルバート・メレンデス戦ですね。
川尻 アウェイだから分が悪いのはわかってたんですけど、海選手は資金力があってチームを組んで、3週間前にアメリカへ渡って。ラスベガスの雰囲気や時差にも慣れていったし、英語も話せてコミュニケーションも取れている。会見もものすごく頑張っていたじゃないですか。すごく感触はいいなと思ってて。
――海外に挑戦する日本人格闘家をたくさん見てきましたけど、初参戦からあそこまで溶け込んでいる人はいなかったと思いますよ。
笹原 めちゃくちゃ堂々とましたしね。
川尻 UFCの仲間になろうという姿勢がすごく感じられて。もちろんRIZINも背負ってるんですけど、しっかりUFCの内に入って、しっかりコミュニケーションを取ってる感じが伝わってきましたよね。ただ、試合当日ケージに入ったときにさすがに顔が強張っていたんで、前日のフェイスオフとだいぶ違うなと。ボクはU-NEXTの応援チャンネルに出ていたんで、そのことは言わなかったんですよ。解説だったら言ってたんですけど……応援チャンネルだとネガティブなことを言わないほうがいいかなと。
――大人!(笑)。川尻さんもUFC時代は海外で試合していたじゃないですか。数週間前から先乗りして備えることはあったですか?
川尻 ないですね。そこはUFCが負担してくれないから自費になっちゃいますし。ストライクフォースのときは、加藤(浩之 )さんが「川尻が安心するのであれば、何人でも連れてきていいよ」って言ってくれて。
――PRIDE武士道のプロデューサーでDREAMの責任者だった加藤さんがお金を出すと。
川尻 そうです。だから完全なチームを組んで、海外だと感じずに戦えたんですけど、それでもやっぱ思いどおりいかなかったし、苦しかったです。
――海選手が資金的な問題をクリアできたのは、日本市場で人気を獲得していたからですが、それはすなわちRIZINでの実績ですよね。
笹原 そこは海選手の実力ですよね。そのほうが安心できるし、試合に集中できるけれども、そこまでやっても結果を出すのは難しい世界ってことですよね。たとえば松坂大輔がメジャーに挑戦したときも通訳から何からチームを編成して乗り込んだんですよ。単身乗り込んでいった野茂英雄やイチローの大変さを理解していたからなんですが、途中から思うような成績を残せなかったですからね。必ずしも吉と出るわけではないんですよ。
――結果に直結するわけではないと。試合内容のほうはどうでした?
川尻 パントージャは意外と前に出て来なかった。それは1回目の飛びヒザがめっちゃタイミングがよかったからじゃないですかね。あれで海選手の狙いがわかって、もう頭を下げて組みに来なくなりましたから。そのあともヒザを連発したけど、読まれていたから当たらない。そのあとパントージャの左フックを食らってのフラッシュダウンは、たしかに体勢は崩れたけど大丈夫かなと。それよりテンカオのほうが効いたんじゃないかって見てたんですけど。
――テイクダウンされてマットに背中を付けられたあとに立ち上がってから、海選手が主導権を握りかけてる感じが見えたんですけど。
川尻 あの立ち方もすごかったんですよ。パントージャがパウンドを打とうとしたのか、頭を上げたときにぶら下がるように起き上がって。「これで流れが変わるんじゃない?」って思えたし、1ラウンドは互角だったと思う。
――3名のジャッジではパントージャでしたけど、競った内容ではあったと。
川尻 ただ、パントージャは打たれ強いというか、ひるまないですよね。日本人格闘家はビビってはないけど、海選手の打撃に気をつけていたというか。でも、パントージャはまったく臆せず前に出るからこそ、パンチはたぶん効いてない。
――「見えていれば効かない」の大沢ケンジ理論ですか!
川尻 そうそう。ボクは大沢さんとまったく同じです。PRIDE大晦日でギルバート・メレンデスとやったときも全然効かなかったから「アゴを引いて見えていれば効かないでしょ」と。でも、DREAMでエディ・アルバレスに倒されて「ああ、見えていても効くパンチがあるんだな」って(苦笑)。
――いつかパントージャもKOされることがあるかもしれないですが、打たれ強いうえに精神的にもタフなんでしょうね。
笹原 パントージャに距離を潰されたことが海選手には痛かったですよね。
川尻 ですよね。あの戦い方を海選手にできる選手って日本のバンタム級にいないと思うんで、だから面食らったところもあったんじゃないですかね。
笹原 もっと落ち着きたかったですけど、パントージャはその時間を与えなかったですし。
――テンポを早くするのも「大沢ケンジ理論」ですよね。川尻さんも以前から言ってましたけど。
川尻 テンポを1・5倍にしてアタック数を増やす。ボクは大沢さんと一緒に練習してたときに「こうだよね、ああだよね」って話をしてたんですよね。
――2ラウンドに入ってすぐ組み付かれてフィニッシュに……。
川尻 海選手もわかってるんですけど、切れないんですよねぇ。パントージャの右足のロックを外そうとしたし、チョークもわかってるのに極まっちゃう。技術的な部分でかなり上なんでしょうね。
――海選手も練習はしてるけども……
川尻 絶対にチョーク対策はしてるじゃないですか。ボクもめちゃくちゃ練習してても、スパーで青木真也にバックを取られたら極められますからね。何度も練習してわかっているし、正しい対処法をやっても極められちゃうんですよ。
――もうひとつポイントは海選手はひさしぶりのフライ級。川尻さんも階級転向はいろいろ経験しましたけど。
川尻 ライト級からフェザー級、バンタム級まで落として。試合前日に扇久保(博正)に聞いたんですけど、彼はもともとフライ級でやっててRIZINでバンタム級に上げて、またフライに戻してるじゃないですか。扇久保も……扇久保と知り合いだから、つい「扇久保」って言っちゃうんすけど、ファンに「年上だから偉そうだ」って怒られちゃうんですよね(笑)。
笹原 昔からの知り合いですよね?(笑)。
川尻 もう彼が岩手が出てきたときから知ってますから。オギちゃんも2022年大晦日の堀口恭司戦が6年ぶりのフライ級だったけど、「あのときどうだったの?」って聞いたら「全然問題なかったです」と。
笹原 階級を落としても全然パフォーマンスが変わらなかったですよね。
――オギちゃんはもっと評価されてもいいですよ!
川尻 フライ級世界1位が堀口恭司なら、オギちゃんは世界2位ですよ、パントージャに勝ったことあるし。笹原 階級にフィットする技術ってあるんですか?・朝倉海UFC参戦の経済効果・RIZINとUFCの異常な関係・夢破れたDREAMを振り返る・鶴屋怜の挑発は正しい・ヤング川尻の宇野薫事件・DJに200万ドルでオファーしたのは?・下町ロケットRIZINが作る狂ったネジ……21,000字インタビューは会員ページへ
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