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記事 2件
  • 「ジェンダーギャップ指数から眺める北欧、ルワンダ、台湾、日本」小林よしのりライジング Vol.504

    2024-05-21 19:15  
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     5月26日のゴー宣DOJO「女性活躍とは何か?」に向けて、世界経済フォーラムが毎年発表している 「ジェンダーギャップ指数」の最新版(2023年) を確認してみた。
     調査対象146か国で、「政治」「経済」「教育」「医療」の4部門における男女格差状況を数値化したものだが、トップに名を連ねるのは、アイスランド、ノルウェー、フィンランド、スウェーデンなどの北欧諸国で、 日本は総合125位、前年の116位から後退。G7では最下位だった。韓国も中国も下回っており、2006年の調査開始以来で過去最低となっている。
     特に「政治」の分野が深刻で、衆院の女性議員比率が1割にとどまり、女性閣僚がほぼいないこと、過去に女性首相がいないことが点数を押し下げ、146か国中138位と世界最低レベルになっていた。
     また、「経済」の分野でも、管理職に従事する女性の少なさが146か国中133位となっている。
     総合125位の日本とほぼ同スコアで並んだのが、126位のヨルダンだ。奇しくも、 「王族の男系男子継承を絶対としている立憲君主国」 という、世界でも極めて少数派の「お仲間」である。
    「ジェンダーギャップ指数」は、客観的に日本の姿を眺めるための材料の1つで、特に女性閣僚の少なさは 「見慣れてニヒリズムに陥っている場合じゃない、本当にまずい」 と自覚するきっかけになると思うが、収集されているデータは、世界各国の国情や実態を踏まえたものではないということには注意が必要だ。
     以前から、上位に名を連ねるアフリカの国ルワンダが 「女性議員が6割、世界一」 として持ち上げられており、今年になってからもメディアで取り上げているが、 ルワンダで女性が社会参画するようになった直接的なきっかけは、1994年の民族大虐殺で男性が大勢死んだことだ。
     ベルギーが統治していた時代に、もともと平和だった民族同士の対立を煽るような政策が敷かれ、ナタで隣人を殺害するような大虐殺につながった。その結果、多くの男性が死んで、人口の男女比が3:7にまで偏り、働き手がいなくなったのだ。
     それまでルワンダの女性は、子供を産み家事をするための存在で、勉強は許されず、財産を持つこと、銀行口座を持つことさえも許されていなかった。だが、女性が動かなければ国が立ち行かない現実にぶち当たり、カオス状態で急激な女性の社会参画がはじまったわけだ。
     それから30年たち、大虐殺の記憶のない世代が中核を担いはじめるようにもなって、若い女性が主体的に政治に参画したり、キャリアアップに励んだりするケースが増えている。
      ただ、ルワンダの場合、主にそれは都市部での現象である。 首都キガリについては、 「アフリカのシンガポール」 という呼び名で、近代的な都市で活躍する女性も多いという持ち上げられ方をするのだが、農村部では、多くの少女がレイプ被害や早期結婚を経験しており、父親の違う子どもを数人抱えて、定職のない貧困のシングルマザーも多いという現実があるのだ。
     女性議員の人数だけに着目すると、そんなギャップを覆い隠した「ジェンダーギャップ指数」に踊らされてしまう。
     男女格差の少なさで、毎年「ジェンダーギャップ指数」のトップクラスに名を連ねているのは、 アイスランド、ノルウェー、フィンランド、スウェーデン などの北欧諸国だ。
  • 「モソ族に何を夢見る?」小林よしのりライジング Vol.503

    2024-05-14 20:05  
    300pt
     ゴー宣DOJOは5月25・26日、大阪にて初の2日連続開催を敢行する。
     その2日目のテーマは 「女性活躍とは何か?」 だ。
     わしが司会を務め、他の登壇者はゴー宣DOJO師範の笹幸恵さん、泉美木蘭さん、DOJOサポーターから関西支部・だふね隊長、中四国支部・しろくま隊長、関東支部・よっしーさん、そして『歌謡曲を通して日本を語る』の相方、チェブリン・モン子の6人、全員女性である。
     今までやったことのないスタイルで、画期的な議論となるのは間違いない。

     中国雲南省の辺境には「女性の国」と呼ばれる「モソ族」という少数民族がいて、度々メディアに登場している。
     5月2日にはTBSテレビが、「SDGs特集 地球を笑顔にするWEEK」とかいう企画の一環としてニュース番組でその生活を放送、ネットでも配信した。
     https://newsdig.tbs.co.jp/articles/-/1150196?display=1
      モソ族の人口は約5万人で、1500年以上前から、祖母を中心として代々直系の女性が「家長」となる 「家母長制社会」 を維持しており、土地も財産も全て女性が相続する。
      モソ族には「結婚」という制度もなく、男は夜になったら女性のところにやってくる「通い婚」である。
     世界中が男性中心社会ばっかりとなっている中で、このような「女性中心」の文化は極めて珍しいため、これまで何度も各国のメディアやジャーナリスト、研究者などがモソ族を取材し、「男女平等社会」をつくるためのヒントがここにあるというような文脈で報じてきた。
     そして今回のTBSの番組も、完全にそのような意図の下に作られていた。

     モソ族については笹幸恵さんも「ゴー宣ネット道場チャンネル」の動画で取り上げ、今の日本が女性にとって息苦しい社会になっているのは「家父長制社会」によるところが大きく、女性が生き易い社会をつくるためには、モソ族に学ぶところが大きいのではないかと語っている。
     だが笹さんには悪いが、そのようなモソ族の理想化は、わしには違和感しかない。
     確かにモソ族は女性に権力があって、財産も子供も全部女系で継承されている。
     しかし、決して見落としてはならないことがある。
      モソ族はほぼ全ての労働を女性が担っていて、男は何も働かないのだ。
     いいのか、それで?

     TBSの番組でも、家長となっている女性が 「モソの女性はとても大変です」「大家族の管理は難しいから、男はやりたがらない」 と語っている。
     そして、その夫に当たる男性は「普段はどうしているのか」との問いに、 「ほとんど遊んでます」 と即答した。
     ところがこれに対して番組のナレーションは、 「男性は子育てに責任を負わず、養育費も払いません」 と指摘しながら、なぜかそれを 「嫁姑問題も発生せず、子どもの親権を争うこともない。極めて合理的な制度に見えます」 と肯定的に評価するのだ。
     そして最後には 「モソの女性は自由だと思います。働きたいなら働くし、休みたければ休めばいい。誰にも生き方を縛られないし、家族みんなが楽しく暮らせばいいのです 」という女性の声を紹介する。
     この女性は先に「モソの女性は大変です」と語った人と同一人物で、家長としての重責に生き方を縛られているはずで、発言には矛盾を感じるのだが、番組はこの発言に続けて 「モソ族に見る、自由な家族のカタチ。私たちの生き方にもヒントを与えてくれそうです」 と称賛して締めくくっていた。
     それだったら「ヒモ夫」がいる家庭がいいということになるはずだが、TBSはなぜそう言わないのか? それが理想だというのなら、わしも全く反対しないのだが?

     ネットにはもっと長尺でモソ族の暮らしが見られる動画も上がっている。わしは「VICE」というアメリカに本部を置くメディアが制作した 『母系社会の少数民族モソ人』 というタイトルの動画を見てみたが、そうするとなおのこと、とてもじゃないがモソ族の女性がいいなんて思えなかった。
     https://www.youtube.com/watch?v=eh7sADTOq9A
      一家の生活は全て女性の稼ぎで成り立っているので、女は一日中、身を粉にして働かなければならない。
      自給自足が基本なので、畑仕事から、家畜の世話から、川で魚などを獲ることまで、全ての食糧を調達するのが女性の仕事 。 現金収入を得るために伝統工芸の織物を作るのも、観光客相手の店を出すのも女性 。そして、 子育ても全部女性がやる 。
      男は何もしない。力仕事の手伝い程度はするが、それ以外は実家に寄生してろくに働きもせずに過ごし、夜になったら女のところに訪ねていくだけ。
     取材を受けたモソ族の男はこのような風習について、 「男にとっては最高のシステム。女性たちが家庭を切り盛りしてくれるから、俺たちはあくせく働く必要がない」 と、あっけらかんと話していた。