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「日本と台湾、情のつながり」小林よしのりライジング Vol.233

 蓮舫の「二重国籍」騒動をきっかけに、『台湾論』を描いていた時の記憶が一気によみがえってきて、先週の生放送でも30分以上かけて話した。  思えば『台湾論』を出版してからもう17年にもなる。『台湾論』を読んでおらず、台湾とはなにかを知らない人もずいぶん多くなっているだろう。  知性ゼロのネトウヨなど、中国と台湾の区別もつかず、蓮舫を中国人と思ってバッシングしているようだ。  そこで先週の生放送から、台湾に関する部分を編集してユーチューブにアップすることにした。  生放送の際に、有料部分だが無料で出していいだろうかと言ったら、「どうぞ無料で公開してください」というコメントが大量に流れてきた。皆さんの太っ腹に感謝する。   日本人が台湾に関する議論をする際、そこに一切の情が入らないというのは、絶対におかしい。  蓮舫をバッシングしている連中は情のかけらもなく、「法解釈」だけで容赦なく責め立てているが、わしはそれに非常に大きな違和感を覚える。   台湾は日本が統治したのだから、本当は最後まで責任を持たなければいけなかった。だが戦争に敗けたために、それが果たせなかったのだ。  台湾が日本の子供だとしたら、自分の子供を置き去りにして、孤児にして、親だけ逃げてしまったのだ。  これに後ろめたさを感じなくては、人として絶対におかしいではないか。  台湾には、戦後もずっと自分を日本人だと思って過ごしてきた人がいる。その中の一人が、蓮舫の父親だったのだ。   蓮舫は、今でも心の同胞というべき台湾人の娘である。かつて台湾を孤児にしてしまったことに責任を感じているならば、蓮舫を受け入れなければならない。それが日本人というものだろう。  それなのに、この騒ぎはなんだ!? 国籍、国籍としょうもないものにこだわっているが、 そもそも日本政府は台湾を「国」とは認めていないではないか。 国ではない「地域」の「国籍」って、一体何なんだ?   蓮舫の 「台湾国籍」 で騒いだ連中は、 「中華人民共和国」 と 「中華民国」 の 「二つの中国」 があると言っていることになるが、本当にそう主張する覚悟があるのだろうか?  だったら、日本政府にそう言ってみろと言いたい。 あくまでも「一つの中国」しか認めない中華人民共和国に追従して、台湾を国家として認めない弱腰の日本政府を、ぜひとも突き上げてもらいたいものだ。  普段は親・台湾の風を装っている産経新聞だって、公式には台湾を国とは認めていないはずだ。その証拠に、 産経もわしが台湾のブラックリストに乗せられた際には「入国禁止」ではなく 「入境禁止」 と報じていたのだ。  台湾当局が「台湾の 国家 と民族の尊厳を傷つけた」として「 出入国 移民法」に基づき「 入境 禁止」にしたなどと書いているが、これは完全に日本語としておかしいだろう。    産経新聞2001年3月3日付

「日本と台湾、情のつながり」小林よしのりライジング Vol.233

「『武士の情け』という日本人の倫理観」小林よしのりライジング Vol.198

 蓮舫の二重国籍問題が、まだくすぶっている。  二重国籍は、法的には何の問題もないということはライジングVol.193で詳述したとおりだ。(http://ch.nicovideo.jp/yoshirin/blomaga/ar1107347)  ただし法的には問題ないといっても政治家が、しかも閣僚を経験し、現在は野党第一党の代表で、首相を目指すという人物が二重国籍では問題だというのは、一応正論と言えば正論ではある。  しかし、すでに蓮舫が国籍を日本一国に決定して、手続きを済ませたのなら、この問題にいつまでもこだわって延々と責め続けているネット内の言論は、異常としか言いようがない。  特にこの問題の火付け役となったウェブサイト「アゴラ」の池田信夫と八幡和郎はほとんどストーカー状態で、しつこく女一人に粘着しまくっている。  この異様な執念はどこから来るのかといえば、基本的に民進党が大嫌いで、党首を潰してやりたいという負の欲望からでしかないだろう。実はわしはもっと意地悪く見ていて、彼らの顔が悪すぎて、モテなかったためにストーカーになったのだろうと思ってたりする。  彼らは、ひたすら自民党の味方、権力の味方なのだ。もともと「強きを助け、弱きをくじく」という性質の連中であり、特に今は安倍政権が強いから、なおのこと強力な権力にすり寄って媚びていたいのだろう。 「違う、ただ正論を述べているだけ」と言い張ったところで、結果として安倍政権という権力に得になる効果だけを発揮しているのは間違いない。   わしは、権力が肥大しすぎることには警戒感を持つ。  民主制の危うさを回避するために、権力が独裁に向かうことを回避するために、バランスを保たないといけないという警戒心は、持っていようとわしは思っている。   実際、庶民もそう思っており、だからこそ世論調査では蓮舫代表に「期待する」と答える人が50%を超えているのだろう。  自民党の独裁に任せておいても怖い、民進党に対抗勢力になってもらった方がいい、それなら民進党の中に他にもう人材がいないから、蓮舫の新鮮さに期待しておこうと考え、二重国籍問題を大ごととは捉えていない。  この一般的感覚がある限り、二重国籍問題でこれ以上蓮舫がダメージを受けることはないだろう。  これは 「武士の情け」 というものだ。  本来、日本には日本独自の倫理観、道徳律のようなものがあったはずで、その中には「武士の情け」というものがあった。  圧倒的に弱い側に不利なことが出てきた時には、「武士の情け」で見逃そうという感覚が働くのだ。これは極めて状況に依るものであって、権力の側、強者の側の不正には適応されない。  あくまでも「情け」だから、弱い方に適用しなければならないルール感覚である。だから歴史感覚を有する庶民は、蓮舫に「武士の情け」というルールを適用して、片目を瞑っているのだろうと考えられる。   世の中には「近代的な法」のルールだけで、正しいか、正しくないかを判断できない例がある。  その一例としてわしが蓮舫の件から連想したのが、わし自身の小学生の時のエピソードだ。  知らない人もいるだろうから、ここに掲載しておこう。

「『武士の情け』という日本人の倫理観」小林よしのりライジング Vol.198

「『医療の発達』に男系男子の出生を期待する愚」小林よしのりライジング Vol.193

「我皇統ノ天壌ト極リナク、綿々継承スル所ノモノハ、妾ノアルヲ以テナラズヤ」  これは、明治13年の元老院会議録に記載されている義官の発言である。旧皇室典範制定に関する議論のひとつに「天皇の侍妃制」があった。冒頭の言葉のとおり、 「天皇の親族に妾(側室)を加えるべき」 という考え方に収まっていった。  実際に、側室がなければ成り立たなかった。明治天皇は皇后との間に子がなく、5人の側室との間に10女5男をもうけたが、内10人が乳幼児のうちに脳膜炎で亡くなり、生き残った男子は大正天皇ただひとりだった。  皇室に限らず、 明治から大正にかけては《出生率》も《乳幼児死亡率》も高い「多産多死」の時代。 旧皇室典範制定に関する皇位継承論争も、あくまで「側室ありき」で、 一般社会にも「お妾」は公然と存在 していた。   世は昭和から平成と移り、《乳幼児死亡率》は劇的に低くなった。しかし、だからと言ってぽんぽん産んでどんどん育てまくっているというわけではない。同時に《出生率》も下がって「少産少死」の時代 となったのだ。国民のほとんどは、「夫婦と子」の核家族。  そのうえ、 落語家から歌舞伎役者まで、女遊びを非難されるような国民感情が席巻 している。  中村橋之助と芸妓の仲まで「不倫」とされたのには、かなり仰天した(三田寛子のよどみない完全無欠のしゃべりっぷりにも仰天したけど)。歌舞伎役者の女遊びがそんなに問題だと思うなら、小林麻央の闘病ブログを「感動ポルノ」として骨の髄までしゃぶりつくすゲスさに乗じて、あらためて市川海老蔵に婚外子がいることを掘り起こして問題視したらどうかと言いたい!  あきれるところもあるが、これが現代の国民感情なのだから、国民同様に核家族でいらっしゃる現代の皇室においても、もし側室が置かれるなどということになれば、奇異の目で眺める国民が大多数となるだろう。   皇室に対して「まったく別世界の変わった世界の人々」「大奥みたいなところ」という現実生活と乖離した感覚が持たれるようになり、今上陛下が人生をかけて築き上げられた「象徴天皇像」そのものも崩壊する恐れがある。 ◆一人の女性から人権をはく奪して「産めるだけ産め、男子を」と言えるのか?  なによりも大事なのは、 いずれの皇族方も、それぞれ「たまたま女子」「たまたま男子」としてお生まれになった 、ということだ。天皇陛下も、皇太子殿下も、秋篠宮殿下も、悠仁親王殿下も、みなさま「たまたま男子」なのである。  現状の男系男子限定のまま、 安定的な皇位継承 を実現しようとするなら、いずれ悠仁さまとそのお妃さまに 「皇位継承者はもちろん、新宮も増やしたいので、産めるだけ産んでほしい。男子を」 などと無理な要求を突き付けることになる。やはり、 常識的には、男系男子限定は側室とセットでしか成立させられない、という結論が現実 なのでは?  しかし、男系男子限定派は 『側室』 という単語が飛び出すなり、即座にこう主張する。 日本大学法学部教授・百地章氏 「側室の問題ですが、昔は生まれてすぐに亡くなったと言いますが、医学が進歩すれば立派に生まれる時代なんですから、その問題はありません」 明治天皇の女系の玄孫で父親の代から生まれも育ちも皇族だったことは一度もない、せいぜい「旧宮家系」ぐらいとしか言えない完全なる一般国民・竹田恒泰氏 「かつて医学が未発達の時代、出産は危険なものでした。無事に出産を終えたとしても、幼児の死亡率は極めて高く、生まれた子供が成人することは難しいものでした。 そのため、天皇は多くの女性との間にたくさんの子供を儲けることが求められたのです。 その点、現在では医療が発達し、出産の危険性と幼児の死亡率は極端に低くなりましたので、庶系に皇位継承権を与えなくても、皇位継承は可能であると考えられます」  男系男子限定派なら、誰でも『側室』ボタンを押せばこういうセリフが自動再生される仕組みになっていると思う。  不気味なのが、両氏とも、 明治の多産多死時代を振り返って、《乳幼児死亡率》は下がったということしか言っておらず、「安定的に男子が生まれる」という根拠はなんら提示していない。

「『医療の発達』に男系男子の出生を期待する愚」小林よしのりライジング Vol.193
小林よしのりライジング

常識を見失い、堕落し劣化した日本の言論状況に闘いを挑む!『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりのブログマガジン。小林よしのりが注目する時事問題を通じて、誰も考えつかない視点から物事の本質に斬り込む「ゴーマニズム宣言」と作家・泉美木蘭さんが圧倒的な分析力と調査能力を駆使する「泉美木蘭のトンデモ見聞録」で、マスメディアが決して報じない真実が見えてくる! さらには『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成させる大喜利企画「しゃべらせてクリ!」、硬軟問わず疑問・質問に答える「Q&Aコーナー」と読者参加企画も充実。毎週読み応え十分でお届けします!

著者イメージ

小林よしのり(漫画家)

昭和28年福岡生まれ。昭和51年ギャグ漫画家としてデビュー。代表作に『東大一直線』『おぼっちゃまくん』など多数。『ゴーマニズム宣言』では『戦争論』『天皇論』『コロナ論』等で話題を巻き起こし、日本人の常識を問い続ける。言論イベント「ゴー宣道場」主宰。現在は「週刊SPA!」で『ゴーマニズム宣言』連載、「FLASH」で『よしりん辻説法』を月1連載。他に「週刊エコノミスト」で巻頭言【闘論席】を月1担当。

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