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「自主防衛のコストは大したことない」小林よしのりライジング Vol.178

 11月のアメリカ大統領選挙は、米国メディアも「大統領選史上、最も不人気な候補同士」という、共和党ドナルド・トランプと民主党ヒラリー・クリントンの対決となることがほぼ確実だが、最近の世論調査では、初めてトランプの支持率がヒラリーを上回ったという。  そして「トランプ大統領」が誕生するという事態を、本気で恐れおののいているのが自称保守派の連中だ。   トランプが、 「日本は在日米軍の駐留経費を全額負担せよ、さもなければ米軍を日本から撤退させる」 といった発言をしているのが、自称保守派は恐ろしくてたまらないらしい。  かつて自称保守派は、共和党政権であれば日米関係は盤石で、「親中派」のヒラリーが大統領になることは「最悪の事態」のように認識していたはずだが、今はヒラリーの方がいいと思っているのだろう。   日本が独立国であれば、他国の大統領が誰になろうが、あくまでもその国の問題だと構えていられるはずで、アメリカ大統領が誰になるかで右往左往する態度こそ、属国根性そのものである。  ともかく自称保守にとっては「在日米軍撤退」とは想像もしたくない悪夢のようで、 産経新聞は5月24日、25日の2日間にわたり、「日米同盟が消える日」という特集を組んで怯え、こう狼狽しまくっていた。   米軍が撤退すれば、すぐに中国は尖閣に上陸する。「専守防衛」しかできない自衛隊では、最後には尖閣は中国に取られてしまう。  在日米軍の撤退は在韓米軍の引き揚げに直結し、朝鮮半島の軍事的均衡も崩れる。 中国による台湾侵攻が現実味を帯び、南シナ海は完全に「中国の海」と化す。国際情勢は一気に予測不能に陥る―― http://www.sankei.com/politics/news/160524/plt1605240006-n1.html http://www.sankei.com/politics/news/160525/plt1605250003-n1.html  もう、アメリカ様がいなければ夜も日も明けぬといった有様である。  自称保守はさんざん「中国恐るるに足らず」みたいなことを言っていたはずだが、結局はそれもアメリカ様が頼りだったようである。  自衛隊では何もできず、米軍がいなくなったら必ず中国にやられちゃうと怯えながら、空威張りしていたのだ。  もちろんそんな自称保守の性質はとっくに見抜いていたが、こうも無残な本性をさらしながら、それがみっともないということに気づいてもいない狼狽ぶりには、苦笑するしかない。  そもそも、在日米軍がいなくなったら、日本は国を守れないのか?  在日米軍を撤退させ、代わりに自衛隊を置いて自主防衛することはできないのか?   実を言えば、在日米軍がいようがいまいが、日本の防衛はまず自衛隊がすることになっているのだ。  昨年4月の日米安全保障協議委員会(「2+2」)会合で勧告された「新ガイドライン(日米防衛協力のための指針)」には、こう明記されている。

「自主防衛のコストは大したことない」小林よしのりライジング Vol.178
小林よしのりライジング

常識を見失い、堕落し劣化した日本の言論状況に闘いを挑む!『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりのブログマガジン。小林よしのりが注目する時事問題を通じて、誰も考えつかない視点から物事の本質に斬り込む「ゴーマニズム宣言」と作家・泉美木蘭さんが圧倒的な分析力と調査能力を駆使する「泉美木蘭のトンデモ見聞録」で、マスメディアが決して報じない真実が見えてくる! さらには『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成させる大喜利企画「しゃべらせてクリ!」、硬軟問わず疑問・質問に答える「Q&Aコーナー」と読者参加企画も充実。毎週読み応え十分でお届けします!

著者イメージ

小林よしのり(漫画家)

昭和28年福岡生まれ。昭和51年ギャグ漫画家としてデビュー。代表作に『東大一直線』『おぼっちゃまくん』など多数。『ゴーマニズム宣言』では『戦争論』『天皇論』『コロナ論』等で話題を巻き起こし、日本人の常識を問い続ける。言論イベント「ゴー宣道場」主宰。現在は「週刊SPA!」で『ゴーマニズム宣言』連載、「FLASH」で『よしりん辻説法』を月1連載。他に「週刊エコノミスト」で巻頭言【闘論席】を月1担当。

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