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記事 6件
  • 「女系公認派は秋篠宮家を軽んじているのか?」小林よしのりライジング Vol.102

    2014-09-23 19:55  
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     朝日新聞が過去の記事の誤りを訂正したら、誠実さを評価されるどころかフルボッコの袋叩き状態。世の中、自ら非を認めればよいとは限らないようです。
     自ら非を認めるといえば、先日ウィキペディアで「ウィキペディア」を検索してみたところ、その中に 「問題点」 という章があり、 「記事の信頼性」 という項目にこんなことが書いてありました。
    ウィキペディアの記事の精度は高いとした複数の研究結果がある一方で、記事に対する査読制度がないため、問題ある記述はコミュニティーの自己管理により解決されることに委ねられている。このようにウィキペディアは信用に足る百科事典とは言い難く、ウィキペディアからの引用を学術関連のレポートに載せることは、そのレポートの信憑性そのものに疑問を持たせることでもある。(中略)米国では、学術研究の出典としてウィキペディアの記事を引用した学生が、その内容が史実と異なっていたため落第点をとったとして、ウィキペディアの創設者ジミー・ウェールズに苦情を寄せたという事例がある。これを機に、ジミー・ウェールズはウィキペディアを学術研究の出典として利用するのを止めるよう訴えた。大学機関のいくつかは学生たちにレポート課題においてウィキペディアを引用することを禁止している。また、ディベートなどの正確性の求められる競技などではウィキペディアの情報は用いられていない。
     一応、率直に自らの問題点を書いているわけですが、なぜか誠実さを感じないというか、「自ら非を認めた」というよりは、単なる 「開き直り」 と思えてしまうのは、私だけでしょうか…?
     さて『天皇論追撃篇(新天皇論)』のウィキ直し、今回は「秋篠宮家について」という項目です。
    秋篠宮家について
    『SAPIO』2010年6月9日号で、秋篠宮文仁親王は天皇になるための教育を受けていないと主張。また、秋篠宮文仁親王は高齢での即位が予想され、「例えば80歳の天皇誕生ということになった時、国民の天皇への関心や求心力は保たれるだろうか」と主張。また、秋篠宮文仁親王の在位期間は短いことが予想され、元号が短期間で変わってしまうと主張。また、皇太子徳仁親王が即位した時点で皇太子が空位になることを指摘し、現行の皇室典範に定める、皇太子徳仁親王から秋篠宮文仁親王への皇位継承を批判している。
     ここまでは、SAPIOに掲載し、『新天皇論』第16章「リアルな皇統の危機とは何か?」として収録した作品の内容紹介です。
     これに対する反論が次のように続きます。
     …つか、「百科事典」の記述なら内容紹介だけで十分なのであって、それにいちいち「反論」がくっついていること自体が異常なんですけど!!
    昭和天皇即位(1926年12月25日)から今上天皇の立太子の礼(1952年11月10日)までの期間、皇太子が空位であったことや、大正が14年数か月であったことは全く述べていない。
     この「反論」の内容が、例によって全くケースの違う話を強引に持ってきている、どうしようもなく低レベルな代物なのだから話になりません!
     昭和天皇は御即位の時25歳、香淳皇后は23歳であり、これから皇太子となる男子が誕生することが期待できたから皇太子が空位でもよかったわけで、実際に昭和8年(1933)に継宮明仁親王(今上陛下)が誕生されています。
     それに対して、 現在の皇太子殿下が即位される場合は、これから男子が誕生する可能性は無いと言わざるを得ず、女性皇太子を認めない限り、皇太子不在の状態がずっと続くことになる のです!
  • 「『吉田調書』朝日バッシングの影に隠れた重大問題」小林よしのりライジング号外

    2014-09-23 12:30  
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     よく飽きもせず、という感じで朝日新聞バッシングは継続中だが、その論点はもっぱら慰安婦問題の方に集中している。
     9月11日に行なわれた朝日新聞の木村社長の記者会見は、福島第一原発事故の「 吉田調書 」に関する誤報記事の取り消しと謝罪が中心で、慰安婦問題の謝罪はついでという感じだったのだが、逆に「吉田調書」の方にはあまり関心が向かないような状況になっている。
     だが吉田調書報道については、あまり語られていない重大な問題がある。
     朝日が吉田調書を読み間違え、事故発生当時に約9割の所員らが吉田昌郎所長の命令に違反して撤退したとする誤報を出してしまった理由は、やはりVol.98で検証したとおりだった。
     木村社長は記者会見で「 思い込みや記事のチェック不足などが重なったことが原因 」と語ったが、なぜその「思い込み」が起きたかといえば、それは朝日が「脱原発」をイデオロギー化していたからなのだ。
    「脱原発」にせよ「原発推進」にせよ、イデオロギー化すると、情報を自分の都合のいいように捻じ曲げて解釈したり、都合の悪い情報は隠蔽したりする。「原発推進」のメディアが、原発なしでこの夏は乗りきれないと毎年のように宣伝したのも、イデオロギー化によるプロパガンダだった。
      そもそも吉田調書には、もっと注目すべき重大な箇所があったのに 、朝日新聞の大チョンボによって、誤報問題ばかりが注目され、慰安婦問題の陰に隠れてしまっている。由々しきことである。
     公開された「吉田調書」では、吉田元所長は事故当時の菅直人首相についてボロクソに言っている。
    「逃げたと言ったとか言わないとか菅首相が言っているんですけども、何だ馬鹿野郎というのが基本的な私のポジションで、逃げろなんてちっとも言っていないではないか。注水とか最低限の人間は置いておく。私も残るつもりでした」
    「『撤退』みたいな言葉は、菅氏が言ったのか誰がいったか知りませんけども、そんな言葉、使うわけがないですよ。テレビで撤退だとか言って、馬鹿、誰が撤退なんていう話をしているんだと、逆にこちらが言いたいです」
    「アホみたいな国のアホみたいな政治家、つくづく見限ってやろうと思って」
     さらに、菅氏が首相辞任後、東電が逃げるのを自分が止めたかのような発言をしたことに対しては、
    「辞めた途端に。あのおっさん(菅氏)がそんなの発言する権利があるんですか。あのおっさんだって事故調の調査対象でしょう。そんなおっさんが辞めて、自分だけの考えをテレビで言うのはアンフェアも限りない。事故調としてクレームつけないといけないんではないか」
    と批判している。
     さらに、菅政権が設置を決定した政府の事故調(事故調査・検証委員会)の初会合で菅氏が「私自身を含め被告といったら強い口調だが」と発言したことについては、
    「私も被告ですなんて偉そうなことを言ってい たけども、被告がべらべらしゃべるんじゃない、馬鹿野郎と言いたいですけども」
    と怒りを顕わにしている。
     そして、「 あのおっさん 」「 馬鹿野郎 」「 アホみたいな国のアホみたいな政治家 」…と、あまりにもストレートに心情を吐露したこれらの発言を根拠に、菅元首相への批判や責任追及の声が再燃する事態となっている。
      だが、吉田調書だけを根拠に、これを絶対視して誰かを批判したり、責任追及をしたりするようなことは、決してやってはいけないことなのである。
      そもそも、吉田調書を作成した政府の 事故調 というものは裁判や審判とは違い、当事者の責任を追及するための機関ではない。
     航空事故や海難事故などの調査・検証委員会と同様、事故原因を究明して、将来の事故を防ぐための知恵と教訓を得るために設置されるものなのだ。
     菅氏は事故調の初会合で「私自身を含め被告」と言っているが、つまり菅氏も「事故調」とはどういうものなのかをよく理解していなかったことになる。
      事故調が検証の過程で得た調書などは「絶対非公開」が大原則である!
     発言に責任が問われず、非公開であるからこそ関係者は誰をはばかることもなく、何でも差し障りなく発言することが可能となる。
     そうして集めた証言や資料を照合、分析、検証して事故原因を特定し、未来への教訓にしようというのが「事故調」というものなのだ。
     よって、 最終的に得られた事故調の検証結果は開示されなければならないが、 検証過程の聴取記録は「免責かつ非開示」 というのが世界標準の普遍的な原則である。
     吉田氏が暴言気味の言葉まで用いて菅氏を批判しているのも、「絶対非公開」が前提だからだ。
     また、吉田氏が、菅氏がテレビで自分の考えを話したことに憤っていたのも、事故調の調査対象者は非公開で証言し、事故調によって他の証言と照合する等の検証を受けなければならないからである。
     吉田氏を始め他の対象者は皆そのルールを守っていたのに、菅氏だけがテレビで自分の考えを話したことが「アンフェアも限りない」からであり、こんな行為には事故調がクレームをつけなければならないはずだったからである。
      しかも吉田氏は生前、もともと非公開が原則なのに、さらに念を押して公開を望まないという上申書を提出している!
     吉田氏が公開を望まない理由は二つあった。
     一つは、
  • 「パンドラの箱を開けた先には…!?」小林よしのりライジング Vol.101

    2014-09-16 22:15  
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    第41回「A型根性炸裂!ウミサチ兄さんの釣り針執着 ~海佐知&山佐知 その2~」 「お願い、一回だけやらせて! ちょっとだけだから!」
     魚釣りをしてみたくて仕方のないイケイケドンドンのヤマサチは、兄のウミサチに熱烈アタックの末、ついに口説き落として釣り針を借りることに成功します。
    「兄さん、代わりにおいらの槍を貸してあげるよ。楽しんで!」
     ウキウキのヤマサチから槍を押しつけられたウミサチでしたが、山での獣狩りなどまったく気が進みません――
    「ヤマサチめ、本当にテキトーな奴なんだから。俺はむやみに責任感が強い長男だし、クソ真面目で几帳面なA型だから、いきなりこういうこと自由に楽しめって言われるとストレス感じるんだよ……」
     勝手に予定を変えられて、まったく気分が乗りきらないネガティブなA型。
    「あいつ、糸の結び方も釣り竿の使い方も知らないだろうに。どうせ、ちょちょいっと結んで海に投げ込めばいいとしか思ってないだろうな。しまったなあ。貸す前に実演して、しっかり絵に描いて使い方を説明すれば良かった」
     貸した釣り針はどんな風に扱われているのやら、気が気でないA型。
     やたら詳細に、やたら具体的に、きっちり細かくうるさく説明し尽くさないと自分自身が納得できないA型。
    「あの釣り針、きのう下ろしたばかりの新品なんだよ。あいつ、脂まみれの汚い手でいじくってるんだろうなあ。はー、嫌だなあ。力加減もわからない奴だし、海底に針を引っ掛けて、馬鹿みたいにぐいぐい引っ張るんじゃなかろうか。もしも竿が折れたら……糸が切れたら……。はー、嫌だなあ」
     自分の持ち物を他人に触らせることが本当にイヤでしょうがないA型。
     悶々と最低最悪な事態ばかり考えて人知れずストレスを溜めてゆくA型。
    「海にもどって監視しようかな……」
     他人をほとんど信用していないA型。
    「俺も、いい人ぶってあんないい針貸さずに、もっと古くて、いらなくなった針にすればよかった。やっぱり、今すぐ釣り針返せって言いに行こう」
     たとえ「こんなに使ってないのがあるんだから、ひとつぐらいいいでしょ」と言われても、自分のなかではちょっとずつ違う種類のものをコンプリートして所有していることに満足しているから、その「ひとつ」すら渡したくはない執着心の塊のA型。
     この自分様の世界を他人が理解できるわけがない、他人には踏み込まれたくないという一心から、ドケチっぷりを発揮するA型。
      ……ぜんぶ、あたしだよっ!
     A型・長女のあたくし、弟が入院したときに、何年も前に読んだきり本棚で埃をかぶっていた『デビルマン』全巻を手土産に、見舞いに行ったことがありました。
    「退屈してるでしょ、これでも読みなよ~。全巻セットだー!」なんて言いながら、どさっと漫画の束をベッドに置く、妙に気前の良さを見せるA型の姉。
     喜んでページをめくりはじめる、点滴につながれた青白い弟。
     しかし、そんな弟を眺めているうちに、A型の姉は悶々と考えはじめるのです。
  • 「安倍晋三は『河野談話』を保守する!」小林よしのりライジング号外

    2014-09-16 12:20  
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     安倍晋三首相が14日のNHKの番組で、「(朝日新聞は) 世界に向かってしっかりと取り消すことが求められている。朝日新聞自体が、もっと努力していただく必要がある 」と述べ、海外も含め周知に努めるよう求めたという。
     頭の悪い人だ。朝日新聞が「慰安婦は人さらいのような方法で集めたのではありません」と英語で発信すれば、「性奴隷」という世界の認識が変えられるとまだ思っている!
     朝日新聞が英語や諸外国の言葉で「 詐話師・吉田清治の証言記事の撤回と、挺身隊と慰安婦の混同の誤り 」を説明することに、わしは反対しないが、残念ながらそれを実行しても、海外ではもう無意味なのだ。
    「強制連行」の話など、国際社会ではどうでもいいことであり、 軍が管理売春に手を貸したこと自体が 「性奴隷」 と認識されているのが実態である。
      慰安婦という女性の人権侵害が、軍隊と結びついているだけで、世界の女性は嫌悪感を持つのだから、「他の国もやっていた」などと抗弁したってさらなる反発を招くだけ。
     日本社会が男尊女卑だと世界にPRするようなものだ。
     外務省はそのことがわかっているはずであり、内閣に進言しているはずだから、 安倍首相自身が「河野談話」を見直したり、破棄したりすることはないのである。
     安倍首相が未だにわかってなくて、コアな支持層に押されて、「新たな談話」を発表したりすれば、わしは面白いと思う。国際社会を敵に回したことが明白になるからだ。
     特にアメリカの反応が見てみたい。靖国参拝の直後のように、「失望した」では済まないだろう。
     産経新聞の「産経抄」が河野談話の「 見直しは、喫緊の課題なのに、河野氏の国会招致さえ自民党が消極的なのは、解せない 」と書いている。
    「 二階俊博総務会長は『議長経験者を国会に軽々と呼び出せば、新たな問題が発生する』とわけのわからぬことを言う 」などとイラついている。
     産経の記者は、未だにわけがわかっていないのだろう。相当に頭が悪い。親米ポチのくせにアメリカの人権感覚がわからないのだから笑止だ。
     一方で安倍政権は、
  • 「国民は本当に『騙されていた』のか?」小林よしのりライジング Vol.100

    2014-09-09 17:40  
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     突然ですが、 『飛べ!ダコタ』 という映画をご存じでしょうか。2013年に公開された映画なのですが、私は全然知りませんでした。HPを見ると、都内でもわずか数ヵ所で公開されたのみ。先日、ある航空会社の方と食事をしていたとき、この映画のことが話題になりました。
     昭和21年、日本の敗戦からわずか5ヵ月後のこと。
     佐渡島の高千(たかち)という村の海岸に、イギリス空軍の要人機『ダコタ』が悪天候で不時着しました。日本人もイギリス人も、互いに恐る恐るの対面。それはそうです。ついこの間まで、敵同士だったのですから。しかし村長をはじめとする村人たちは「困っている人がいるなら助けなければ」と、イギリス人たちの世話をするようになりました。そして『ダコタ』が再び飛べるよう、村をあげて石を運び、それを海岸に敷き詰めて滑走路をつくったのです。
     村の中には、ビルマ戦線で息子を失った母がいました。また『ダコタ』には、同じくビルマ戦線で兄弟が戦死し、日本人に憎しみを抱いているイギリスの若者が乗っていました。しかし『ダコタ』を通じ、日英の交流が生まれてきます。そして4ヵ月後、ついに手づくりの滑走路から『ダコタ』は飛び立っていく――。
     これは実話をもとにした映画です(でも監督によると、佐渡の人でも知っている人は少ないとか)。
     ちょっと感動的な話ではありませんか!
     さっそくDVDを買って観てみました。
     ちなみに海軍兵学校在学中に事故で足を失って帰郷した一本気な青年役を、窪田正孝(「花子とアン」にも出てますね)が演じています。思わず「あさいち!」と叫んでしまいました。
     いい話でした。
     いい映画でした。
     でもこの映画のすごいところは、その感動秘話じゃないんです!!!
      柄本明 です。
     いえ、正確には 柄本明演じる、高千村の村長さんです!
     村人たちが滑走路づくりに励んでいるときのこと。村のおばちゃん二人が、村長さんと話をはじめます。イギリス人はいい人たちなのに、なんで戦争なんかしてたのかなあと、おばちゃんたち。
    「イギリス人が鬼だなんて、誰が言うとんら」
    「軍部に騙されとっただっちゃ」
    「軍の人間が勝手に戦争はじめたっち、陛下もおらたちも悪い軍人に騙されとっただっちゃ」
     私はそのセリフを聞いて思いました。
     オイオイ、感動の日英交流秘話の結論がそれかよ……と。
     しかし、それを黙って聞いていた村長さん(柄本明)は、「うんにゃ」と言って、こう続けるのです。
  • 「慰安婦問題と同じ道をたどる『アイヌ民族』問題」小林よしのりライジング Vol.99

    2014-09-02 12:05  
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     札幌市議会議員の金子快之(やすゆき)氏がツイッターに「 アイヌ民族なんて、いまはもういない 」「 利権を行使しまくっているこの不合理 」などと書き込み、これが「ヘイトスピーチだ」と非難を浴びている。
    「アイヌ民族は出て行け」とか、「汚いアイヌめ」とか、差別的な罵詈雑言を浴びせればヘイトスピーチだろうが、アイヌがいるかいないかは議論の問題である。ヘイトスピーチとは何の関係もない。
     金子氏が所属する自民党・市民会議は、当初は発言を問題視しない方針だったが、非難が収まらないのを見て日和り、金子氏に会派離脱を勧告、受け入れない場合は除名処分にするとしている。さらに、菅官房長官も政府として遺憾の意を表明している。
      かつて慰安婦問題も、こんな風にタブーだったのだ。左翼運動家や韓国から猛抗議が来たら、議論は封殺されるのが常識だった。懐かしいタブーな空気ではないか。
     金子議員のホームページを見てみると、「札幌市は韓国・大田市との姉妹都市提携を破棄し、一切の交流を止めるべき」とか、集団的自衛権行使に賛成した上で「(反対派は)よほど日本を中国に売り渡したいのでしょうか」とか、オスプレイ歓迎とか、海外への原発輸出賛成とか、安倍首相の靖国参拝を支持し、「失望した」と言ったアメリカに失望したとか、とにかく見事なほどに自称保守の紋切り主張がワンセット揃っている。
     金子議員個人には全然共感を感じないので、あえて火中の栗は拾わぬが、しかしこの件によって「アイヌ」の議論が封殺されることは問題がある。
    「アイヌ民族なんて、いまはもういない」というのは学術上も証明されている事実であり 、わしが本格的に論じ始めたら、まともな反論はできるはずがない。
     わしは6年前、平成20年(2008)秋号の「わしズム」で『 日本国民としてのアイヌ 』という大特集を組んだ。
     当時、国会で「 アイヌ民族を先住民族とすることを求める国会決議 」が全会一致で可決され、その後、中山成彬国交省(当時)が「日本は非常に内向きな単一民族」などと発言したことで辞任に追い込まれる事件もあり、アイヌ問題についての関心が湧いたのである。
     なにしろそれまでわしはアイヌといえば、ヒゲをたくわえた男や民族衣装をつけた女が『イヨマンテの夜』の歌に合わせて「熊送り」の儀式をしているイメージしか浮かばないという有り様だった。
     実は『イヨマンテの夜』は古関裕而作曲によるラジオドラマの劇中音楽に後から歌詞を加えたもので、アイヌの民族音楽とは何の関係もなく、その曲想は同じ作曲者の『モスラの歌』と共通しているなんてことは、当時は全く知らなかった。
     ともかく北海道には今でもアイヌの暮らしをしている人がいるのかどうかもわからない。おそらくほとんどの日本国民が、アイヌの実態について知らないに違いない。それを知らせる役割を果たしたいとわしは思った。
    「アイヌはいる。会いたい。知りたい」とわしは純朴に思っていただけだ。
     当初は特集のタイトルを『 偉大なれ、アイヌ 』と予定し、最大のアイヌ団体である 北海道アイヌ協会(当時・北海道ウタリ協会) に取材を申し込んだ。
     協会からは取材のOKが出て、わしは取材の前に読むよう指定された本も律儀に読み、さらに独自に多くの文献を集めて猛勉強を始めた。
      ところがアイヌ協会は、突然取材拒否を通達してきた。 「小林よしのり及び『わしズム』への不信感」 がその理由だった。
      アイヌ協会は以前には北海道庁の内部に置かれており、関連の財団法人を通じて国と道から年間合計6億円の補助金が投入される、半分公的な団体である。 それが取材拒否とは到底納得のいかないことだった。
     わしはアイヌ差別には断固反対するが、だからといってアイヌ協会の説明を鵜呑みにするつもりはない。取材には白紙の状態で臨み、途中で湧いた疑問は率直に質し、自分自身で理解したアイヌの実態を描くつもりだった。
     ところがアイヌ協会にとっては、そういう取材者が一番都合悪かったのだ。 アイヌ協会の主張をそのままプロパガンダしてくれる取材者しか受け入れたくなかったのだ。
     なぜなら、彼らにとっては本当のアイヌの実態を知られることこそが、一番まずいことだったのだから。
      アイヌ出身の言語学者で、アイヌ文化研究の第一人者だった 知里真志保 は、今から59年も前、昭和30年(1955)の時点でこう断言している。
    「 民族としてのアイヌはすでに滅びたといってよく、厳密にいうならば、彼らはもはやアイヌではなく、せいぜいアイヌ系日本人とでも称すべきものである 」
     滅びたといっても、決して民族浄化されたわけではない。
     もともと北海道島では縄文時代の太古より 和人 と 千島系 、 樺太系 、 大陸系 など様々な人々が混住、混血を繰り返し、文化的にも混交して盛衰を繰り返していた。
    「アイヌ」はその中から鎌倉時代という比較的新しい時代に成立したものであり、歴史的に別民族ではなく、日本民族の一分派であった。
      しかもアイヌは3大系統7分派に分立しており、アイヌが自ら一社会集団を形成したことは一度もなく、時代の流れとともに日本国民の中に吸収、同化されていったのである。
     古代から混血を繰り返してきたため、ただでさえアイヌに「純粋な血統」は存在しない。