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記事 21件
  • 「男色文化は明治をどのように生き延びたか?」小林よしのりライジング Vol.477

    2023-08-15 19:25  
    300pt
     ジャニーズ問題は、単なるひとつの時事問題では済まないものになった。
     これは日本古来の文化・民俗性に関わる重大なものであり、今後もライジングでは連続して取り上げていくことにする。

      キリスト教文化圏は、性に対して極めて厳格である。
      日本では、性に対して限りなく寛容である。
     男性同士の性行為にしても、キリスト教では自然に反する最悪の罪とされているが、日本では古代から「男色」の文化があり、自然なこととして受け入れられてきた。
     ジャニー喜多川がやっていた「美少年愛」という性癖は、 「今ならもう許されることではないし、変質者と言うしかないが」 、江戸時代なら咎められることはなかっただろう。
     レイプでは絶対なく、 同意の上の性的いたずらなら枕営業 ということになる。拒否することも可能、逃げることも可能、警察に訴えることも可能なら、強制性がなくなってしまう。
     唯一、強制性を訴えるなら、「グルーミング」しかないが、子供には「主体性」が全くないのか?子供を預けた親にも「主体性」が全くないのか?ジャニーズ出身のスターは、全員、「グルーミング出身者」で、変質者に騙されて餌食になった男たちか?ということになって、とてつもない偏見を植えつけてしまう。

     そもそもジャニーズ問題は個人の精神性の問題に帰結するものではない。
     キリスト教文化と日本文化の感覚の差は埋めがたいほど大きい。 ジャニーズについて、日本国内ではずっと 「黙認」 されていたにもかかわらず、欧米からの外圧によって問題化されてしまったという構図も、この価値観の相違がもたらした典型的なケースといえる。

     日本では豊臣秀吉の時代から明治時代半ばまでの300年余りの間、キリスト教が禁じられていた。
     その理由としては、西欧がキリスト教の布教によって他国を侵略していたためということがよく挙げられるが、今後はそれだけではなく、そもそもキリスト教と日本の価値観が、根本的に異なっていたという面にも注目していかなければならないだろう。
     日本は明治時代「文明開化」の名のもとに急速に西欧化を目指し、キリスト教的価値観を 「無批判に」 受け入れようと邁進した。
     わしはこれこそが日本の堕落の始まりであったと確信している。
     そのように考える人は、かつては右側にはいたものだが、今では右にも左にも全くいない。 今の右側は、皇統問題で明らかなように、なんと明治以降につくられたものを「伝統」と思い込むほど劣化し尽くしてしまったし、左側は昔も今も、欧米的価値観こそが「進歩的」と信じて疑わないのだ。

     明治政府は西欧の価値観に合わせて「文明国」の仲間入りをするために、男性同士の性交を禁ずる法律をも制定したというところまでは、前回述べた。
     そもそも男色文化は、江戸時代後期には大都市の男女比が正常化したことや、幕府の改革政策によって既に衰退に向かっていた。
     これに明治の文明開化政策が加わったのだから、男色文化はすんなり消滅してもおかしくないところだったのだが、ところが実際には全然そうはならなかった。
     その原因は、第一には倒幕維新の雄、薩摩にあった。

      当時の男色文化の状況には地域差がかなりあったが、薩摩は日本で最も盛んといっていいほどだった。
     その理由は、他のどの藩とも異なる薩摩の社会構造にあった。
      他藩は武士の比率が5~7% で、ほとんどが城下町に居住していたが、薩摩では武士が30%近くを占めており、領内100以上の「郷」に分かれて居住し、半農半士の生活をしていた。
     その武士の子弟は、郷ごとに兵児組(へこぐみ)と呼ばれる数百人単位の組織に編成され、 14、15歳までの元服前の少年を「稚児(ちご)」 、 元服してから妻帯するまでの14~25歳くらいまでの青年を「二才(にせ)」 といった。
     二才は稚児に剣術などを教え、薩摩隼人としての人間形成を担い、二才と稚児は、とても親密な関係にあった。
     しかも 薩摩には極度の女性忌避があり、「道を歩いていて女性に会っただけで、女性は穢れているからと避けて通っていた」というほどで、そんな男尊女卑感覚の中、男だけの集団が作られていた。

     さて、そうなると、どうなるか?
  • 「ジャニーズ問題と日本の性文化」小林よしのりライジング Vol.476

    2023-08-01 18:20  
    300pt
    「ジャニーズ問題と慰安婦問題はよく似ている」
    『ゴー宣』読者は、固定していない。流動的だ。コアな読者はずっとついてきてくれるが、『コロナ論』から入って来た人もいて、わしの慰安婦問題での戦いも『脱正義論』も読んでいない人が増えた。
    『ゴー宣』読者の中にも、 「ジャニーズ問題と慰安婦問題はよく似ている」 の一言ですっかりわかったという人もいれば、猛反発して離れていった人もいる。
     その分かれ目は、キリスト教系の人権真理教に、どのくらい冒されているかによる。
     戦後民主主義の歴史教育しか知らない者と、学校では教わらない歴史を知っている者との間には、教養の落差がある。
      日本文化は歴史的に性に対して寛容である。
     これに対して欧米キリスト教文化は性に対して極めて厳格である。
     日本では売春に対するタブー感が薄く、江戸時代には吉原をはじめとする遊郭文化が花開き、遊女を身請けして結婚するというケースも普通にあった。
     その文化がその後も残り、戦時中には「慰安所」となった。また、現在の日本に多種多様な性風俗が存在するのも、その「性に対して寛容」という歴史が基底に残っているからである。明日花キララや三上悠亜がAV女優であるにも関わらず、女性にまで人気があるのも、「性に対して寛容」な日本文化のおかげだろう。
      ところがキリスト教文化においては、これが全て「性奴隷」ということになってしまう。
     まだヨーロッパでは売春がやや大目に見られているところもあるが、特にアメリカでは原理主義的に忌避されてしまうのだ。
     それと同じ構図で、 日本には古くから「男色」の文化があるのに対して、キリスト教圏では男性同士の性行為は自然に反する最悪の罪とみなされた。
     その歴史的な価値観の根本的な相違が問題なのである。
     日本の男色は歴史的に 「古代ギリシャに匹敵する」 ともいわれ、その最古の記録は「日本書紀」に表れているとする説もある。
      だが、定説としては日本の男色文化は仏教とともに伝来したとされる。
      仏教では女性を不浄とみなし、寺院は女人禁制だったから、男だけの世界で僧侶が男色に走ることはよくあった。 ただしシナ大陸や朝鮮半島では「破戒僧のやること」とされ、あまり好ましくない行為とされていた。
      ところが日本ではこれが寛容で「許容範囲内の逸脱」程度の扱いで黙認され、仏教の広まりと共に、寺院における男色も広まっていったのである。
      僧侶が自分の身の回りの世話をする有髪の少年「稚児」を寵愛する風習は、奈良時代以降広く仏教界に浸透した。
     天台宗などでは僧と稚児の初夜の前に 「稚児灌頂(ちごかんじょう)」 という儀式が行われ、 灌頂を受けた稚児は観音菩薩の化身とされ、僧侶は灌頂を受けた稚児とのみ性交が許されたという。
     そして 平安時代末期には男色の流行が公家の世界にも及び 、盛んとなった。
     日本の男色文化は、 武士の台頭と共にさらなる展開を遂げた。
      女性を連れて行けない戦地や寝所の護衛などに就いた武士が、部下や身辺に仕える「小姓」を相手にするようになったのが始まり で、室町時代中期以降、特に盛んになった。
     そして、もともとは女性のいない場所での性欲処理から始まった男色が、 強力な精神的な結びつきを伴う 「衆道(しゅどう)」 へと独自の発展をする。 肉体関係のみならず、 武士同士の主従関係など独特の「道義」を説く「道」 になったのである。
     それは戦場で生死を共にする間柄として、絶対的な信頼感を確認するための行為であり、主君と家臣の関係では、究極の忠義のかたちとなった。
      男色は主従の絆を確かめる行為であり、家臣は主君と体を交わすことによって信頼を得て、出世が期待されるということもあった。
     戦国武将の男色については、 織田信長と森蘭丸 のように今も有名なものがある。また、現在の大河ドラマ『どうする家康』では同性愛的な描写が出て来て、いまの視聴者に媚びて「BL展開」を入れたのかなどという的外れな批判もされているが、本当はこれこそ時代考証的に合っているともいえるのだ。
     そのような文化が、キリスト教圏の人間に理解できるはずがない。
      聖書には、同性愛を罪 とすると読める記述がいくつもある。
  • 「アンチと過去に居座る退行の欲求」小林よしのりライジング Vol.345

    2020-02-11 19:15  
    150pt
     日々つくづく思うのは、人間の内面というのは、常に正反対の欲求に引き裂かれているものなんじゃないかということだ。
     特に思うのは、 「未来に向かいたい」 という気持ちと、 「過去に居座っていたい」 という気持ちの引っ張り合いだ。 「進化・成長したい」という欲求 と、 「退行・安住したい」という欲求 とも言える。
     人の集団が 「進化・成長派」 と 「退行・安住派」 に分裂することもあるが、ひとりの人間のなかにも、このふたつの欲求は同時に存在していて、右へ左へと綱引きが行われているのではないかと私は思っている。
     人間、大した過去も経験もないうちは、希望ばかり持って未来に向かって生きていけるのだが、つまづいたり、不条理な体験をしたり、怠け癖がついたりしてモチベーションを失うと、その痛みや屈辱、“できなさ”から生じる劣等感などをやわらげるための“言い訳”を探してしまうことがある。
    「あの時、ああいうことがあったせいで……」
    「あの時にすべてが変わってしまったのさ……」
     過去のある時点にあえてスポットライトを当てて、そこに自分の時間を巻き戻し、居座ることで、それより先の未来へと歩いていく大変さを拒絶し、困難から逃避するのである。
     こういうことはよくある。若者ならそういった経験から自分の弱さを見つけて成長していくものだと思うが、なかには、いい大人になっても極端に過去に居座りつづける、退行・安住欲求の度合いが異常に強すぎる人がいる。
    ***
     10年ほど前、新宿歌舞伎町の小さな飲み屋でママをやっていた時のことだ。
     ある晩、常連客のひとりだった男性Kが、「許せないジャーナリストがいるんだ」と言いはじめた。自分の命の恩人でもあるAさんを、ジャーナリストJがツイッター上で誹謗中傷しているのだという。
     スマホでツイッター画面を見ると、どうやらジャーナリストJが雑誌に書いた音楽業界に関する記事について、その業界で著名なバンドマンAが真っ向反論、それに対してJが上から目線で嘲るような返答を繰り返し、Aが「乗り込む」と脅迫めいたことを書いたことがきっかけで、騒ぎになったらしい。
     私にはどっちもどっちにしか見えなかったが、Kは自分自身がバンドマンでもあり、Aを慕っていた。「Aさんは本当に素晴らしい先輩なんだ」と擁護する。男同士の関係性があるのだろう。
     だが、そんなKのツイッターを見て、すごく驚いた。KはJに向かって、暇さえあればほぼ数分おきに、ストーカーのようにコメントを書き込んでいたのだ。
    「Jさん、Kです。いつ質問に答えていただけるんですか? わたくしの命の恩人、A氏に対する誹謗中傷について、今すぐ謝罪して欲しいんですけど?」
    「Jさん、完全にAさんに論破されてますよね。それで無視するなんて、プロのジャーナリストとして恥ずかしくないですかあ? 謝罪していただきたい!」
    「どうも、Kです。臭い物にはフタですか? Jさん、あなたの原発取材記事はすべて読みましたよ。次はあなたが僕の質問を読む番です」
    「論破されたJさん。原発を糾弾したいなら、自分が悪いことをした時は素直に謝りなさい! いつまで僕を無視するつもりだ!」
    「Jさんは実名至上主義なんですね。匿名のツイッターは無視するそうなので、僕は実名にしました。顔も晒しましたよ。さあJさん、早く返事して下さい。もっと論破して追い詰めますよ」
     Jからは何の反応もないという。そりゃそうだろう。Kに論破できる気はしなかったが、とにかくJのこと以外は考えられないらしい。ツイッターのプロフィール欄には、中指を立てた自撮り写真を載せて、 「命の恩人Aさんを誹謗中傷するエセジャーナリストJ氏に発言の撤回と謝罪を要求するために、私は実名と顔を出して戦います」 と宣言していた。
     だが、さらに驚く話があった。それほどまでに恩人Aさんとの関係性が深いのかと思ったら、Kは 「面識はないよ」 と言うのだ。
  • 「山口敬之の慰安婦ねつ造記事」小林よしのりライジング号外

    2020-01-28 19:00  
    100pt
     最新刊『慰安婦』が明後日・30日、幻冬舎から発売される。
     これは、わしが24年前に参戦したいわゆる「従軍慰安婦論争」の集大成であり、特に当時のことを知らない人に読んでほしいという思いを込めて作った本である。
     
     あの当時は自虐史観全盛で、慰安婦といえば問答無用の被害者であり、日本は謝罪するのが当然、それに異を唱えるような奴は極悪人という全体主義的な空気が完全に出来上がっており、わしは出版界から干されることまで覚悟して戦いに挑んだ。
     その戦いは熾烈を極めたが、幸いにして奇跡的な勝利を収めることができ、自虐史観の空気は薄められ、少なくとも国内においては慰安婦の実相というものがかなり知られるようになった。
     その経緯はライジング読者の方ならご存じだろうとは思うが、しかし、それも20年前のことである。時代は一瞬たりとも止まってはいない。下からどんどん当時を知らない世代が育ってくる。それをいいことに左翼は、とっくに論破された詭弁をそっくりそのまま繰り返し始め、若い世代を洗脳しようとしている最中だ。
     そうなるとこちらも対抗する手段を取らなければならない。『慰安婦』はそのための本である。
     そしてさらに問題なのが、保守側の連中である。
     わし自身の使命は、自虐史観全体主義の時代に風穴を開けたところで終わったものだと思っていた。わしには他にも描きたいものが山ほどあって、いつまでも慰安婦問題ばかりやっているわけにもいかないし、保守論壇には他にも人がいっぱいいるのだから、後は誰かが引き継いでやってくれるものだと思っていたのだ。
     ところが実際には、日本の保守論壇にいたのは自称保守・エセ保守ばかりで、本物の保守は全然いなかった。その劣化の度合いはすさまじく、左翼の企みに対して全く対抗できないばかりか、自ら事態を最悪の方向に追いやってしまうオウンゴールを連発して、慰安婦は「性奴隷」だったという認識を海外に定着させてしまった。
      そして安倍首相は日米首脳会談で、ブッシュ米大統領(当時)に対して慰安婦問題について謝罪し、共同記者会見で慰安婦とは「20世紀の女性の人権侵害」だったと認める発言をしてしまった。
     しかし自称保守の連中は、その失点に気づいてもいないという呆れ果てた有様なのである。
     そうなると結局は、わしが戦うしかないということになる。これも、『慰安婦』を出版することになった理由の一つである。
     今回はそんな『慰安婦』の出版を記念して(?)、慰安婦問題における自称保守の劣化の極みと言うべき事例を紹介しておこう。
     週刊文春2015年4月2日号に 「歴史的スクープ 韓国軍にベトナム人慰安婦がいた! 米機密公文書が暴く朴槿恵の“急所”」 と題する記事が載った。
      記事の筆者は、「あの」山口敬之!  伊藤詩織さんをレイプした犯人であると東京地裁に認定された、総理ベッタリ記者の山口敬之である。
     その内容は、 「ベトナム戦争当時、韓国軍が南ベトナム各地で慰安所を経営していた」 というもので、山口が全米各地を取材して「韓国兵専用の慰安所がある」と米軍当局が断定している公文書を発見、さらに証言者のインタビューで裏付けを得た…というものだった。
      だが、この記事は完全に捏造だったことを週刊新潮が暴いたのである。
  • 「やっぱり慰安婦問題は終わらなかった」小林よしのりライジング Vol.322

    2019-07-16 18:40  
    153pt
     韓国に 「和解・癒し財団」 というものがあったのだが、これが登記上、正式に解散されたことがわかった。
     これでまたひとつ、安倍晋三の外交大失敗が確定した。
     財団は、慰安婦問題を 「最終的かつ不可逆的に解決」 するとして、 2015年12月28日の日韓外相会談で交わされた 「日韓合意」 に基づき、韓国政府が設立していた。
      これは日韓合意の中核となる事業であり、日本政府が国民の税金から拠出した10億円を財源に、元慰安婦には1億ウォン(約1000万円)、遺族には2000万ウォン(約200万円)の支給金の支払いなどを行っていた。
      事業の対象になったのは元慰安婦47人と遺族199人で、そのうち元慰安婦36人と遺族71人が受給を希望したという。
     ところが2017年、朴槿恵(パク・クネ)政権が倒れて文在寅(ムン・ジェイン)政権に代わると、韓国政府は 「合意には法的拘束力がない」 と言い出して日韓合意の検証作業を行い、その後、文在寅は 「政府間の約束であれ、大統領として、この合意で慰安婦問題が解決できないことを明確にする」 と表明した。
      政府間の約束でも、大統領の一存で無効にすると平気で公言するのだからデタラメにも程があるが、それが韓国というものである。
      そして昨年11月、韓国政府は一方的に財団の解散と事業終了の方針を発表し、日本政府の同意なしに手続きを進めた。 その手続きが終了して財団は正式に解散したわけだが、その際にも日本政府への通知はなされなかったという。
     これは韓国側による日韓合意の一方的破棄であり、仰々しく謳い上げた 「最終的かつ不可逆的解決」 は、たった4年も持たずに完全破綻したのだ。
     そもそも韓国は財団設立当初から「裏切り行為」を行っていたそうで、その経緯を「文春オンライン」が記事にしている。書いたのは、山尾志桜里と倉持麟太郎を追い回し、わしに対して「我々はとんでもない証拠を持っている」と見え見えのブラフをかけた赤石晋一郎だ。なんだ、マトモな記事も書けるのか。
     記事によれば、 日韓協議では両国政府が10億円ずつ拠出して「未来志向財団」のようなものを作り、慰安婦問題だけではなく、若者の留学支援など、よりよい日韓関係を築くためのバックアップを行うというプランだったそうだ。
     ところが韓国政府は10億円拠出を立ち消えにさせ、慰安婦問題のみを扱う財団を設立。当然日本政府側は「話が違う」となったが、安倍首相の目的は慰安婦問題に決着をつけ、その様子を米国始め国際社会に証人として見てもらうことにあったので、「それくらいは許容しよう」という判断になったという。
     そして財団による支給金の給付が始まると、韓国の反日団体・ 挺対協 (韓国挺身隊問題対策協議会、現在は 「日本軍性奴隷制問題解決の為の正義記憶連帯」 という、ものすごい名前になっているらしい)などによる妨害工作が始まった。
     村山政権下で発足し、元慰安婦に「償い金」を支給した「アジア女性基金」の時と同様、挺対協らは元慰安婦に 「日本の汚いお金を受け取るな」 と圧力をかけた。 「待てば倍のお金が出るから、財団のお金は受け取らないように」 と言われた元慰安婦もいた。もちろん、その後「倍のお金」など出なかった。
      元慰安婦の7割以上が支給金受け取りを希望し、中には日本国民に感謝の言葉を述べた人もいたのに、そういう事実は一切無視された。
     財団の韓国人スタッフは反対派の脅迫や嫌がらせを何回も受けた。理事長は催涙スプレーをかけられ、脅迫が家族にまで及んで辞任、ショックで外出できなくなったという。
     そして、支給金を申請した人のうち元慰安婦2人と遺族13人にはまだ支払いが済んでいなかったにもかかわらず、財団は強引に解散させられ、未払いの人たちが支給を受けられるかどうかは不明だという。
      毎度のことだが、韓国の「慰安婦支援団体」は実際には「反日」だけが目的で、問題の解決など一切望んでいない。 元慰安婦は反日の道具として利用するものとしか思っておらず、元慰安婦本人のことなど、本当はどうでもいいのだ。
  • 「アメリカ教からの脱却のために」小林よしのりライジング Vol.171

    2016-03-22 18:35  
    153pt
     先週号のQ&Aコーナーに、こういう質問をもらった。
     慰安婦問題について質問です。
     ライジングでキリスト教文化圏では売春は職業とは認められず「性奴隷」と見なされてしまうと書かれていましたがヨーロッパの多くの国では売春は合法ですよね。
     彼女たちは「性奴隷」と見なされているのですか?合法なのだから職業と見なされているのではないのですか?
     売春が合法の国々が国際的に非難を受けていると聞いたことありません。逆に国際的に売春は合法化の流れにあると聞きます。
     この問題は価値観の違いというより単に日本が欧米各国と中韓からいじめられているだけのような気がするのですが?
     確かに鋭い質問である。
     どうやら「キリスト教文化圏」で一括りにしたことが間違いだったようだ。
      調べてみたところ、ヨーロッパでは、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、スペイン、ベルギー、ギリシャ、チェコ、オーストリア、スイスなどで売春が合法であることがわかった。
     その形態は、大きく二つに分かれる。
      オランダやドイツなどは完全に合法で、売春は職業として正式に公認されている。
     正規の娼婦は個人自由業で、開業届けを出して登録される。所得税も払うので社会福祉年金も出るし、失業手当も出る。
      一方、イタリアやスペインなどは、正確には「合法」というより「グレーゾーン」であり、違法とはされていないものの、法的な位置づけは曖昧になっている。
     イタリアには「売春防止法」があり、業種としての売春は認められていないが、個人による売春行為自体は適法だという。要するに、人身売買などの犯罪が伴わない限り「黙認」というわけだ。
      日本の場合はというと、実態は「イタリア型」に近い。
     日本では「 売春防止法 」の第3条で「 何人も、売春をし、またはその相手方となってはならない 」と規定されており、 明確に売春も買春も「違法」である。 だが、これで売買春が一切禁止されているのかというと、厳密にはそうなっていない。
      売春防止法第3条は罰則規定がない「訓示規定」であり、違反しても法的効力はないのだ。 これは、売春せざるをえない状況にある人を社会的弱者として捉え、保護するという視点から定められたものだという。
     その代わり、売春防止法では売春の勧誘や、売春の斡旋、売春を行う場所を提供したり、売春をさせる業を営んだりという行為を処罰対象としている。だから売春防止法違反で逮捕されるのは必ず風俗業の経営者で、売春をしている当人やその客が逮捕されることはない。
     つまり日本では、個人による売春は「違法だが処罰しない」という「グレーゾーン」で、事実上の「黙認」になっているのだ。
     ソープランドも建前としては、店はただ風呂付き個室を貸しているだけで、売春はあくまでも女性と客が個人的にやっているということになっている。だから客はフロントでまず「入浴料」を支払い、「サービス料」を別途、個室内で女性に直接手渡すという仕組みになっているのだそうだ。
      フランスでは、個人による売春行為自体は合法だが、「売春斡旋」は法律で禁じられている。
  • 「『女性差別撤廃委員会』の勧告という『外圧』の危険性」小林よしのりライジング号外

    2016-03-14 17:20  
    102pt
    ゴーマニズム宣言 「『女性差別撤廃委員会』の勧告という『外圧』の危険性」  3月7日、国連の「 女性差別撤廃委員会 」が日本政府に対する勧告を発表、その中には元慰安婦への「完全かつ効果的な賠償」を求めるばかりか、指導者や政治家の慰安婦問題についての発言にも制約を加え、教科書に慰安婦を取り上げろという要求まで書かれていた。
     わしはその報道を聞いてものすごく腹が立ち、即座にブログで「国連女子差別撤廃委員会という連中は何の権利があって日本の内政干渉をしてるのだ?」「戦勝国を優遇する国連で、敗戦国を「差別」したがっている実にくだらない「反日委員会」の主張なんかを、日本の新聞は載せるんじゃない!」と書いた。
    https://www.gosen-dojo.com/index.php?key=joa21321w-1998#_1998
     だが、よく調べてみるとこの批判は当たっていないことがわかった。
      日本は昭和60年(1985)、「国連女性差別撤廃条約」というのを批准、締結している。
     この条約は、男女の完全な平等の達成に貢献することを目的として、女性に対するあらゆる差別を撤廃することを基本理念としている。
     問題の「女性差別撤廃委員会」は同条約の第17条において、各国の条約実施の進捗状況をチェックするために設置することが定められている機関だ。
     そして条約締約国は条約実施の進捗状況を国連に報告し、委員会はそれを検討して、今回のような「勧告」などの見解を発表することになっている。
     つまり日本が「国連女性差別撤廃条約」を締結している以上、「国連女性差別撤廃委員会」が日本政府に対してこのような勧告を行うことは、条約に定められた当然の権限であって、これを内政干渉とは言えないのだ。
     現在、安倍政権が国会でTPP関連法案の成立を急いでいるのを見てもわかるとおり、 国際条約を締結する場合、それが国内法と齟齬をきたしていたら、国内法の方を変えなければならない。
      日本における法的な位置づけとしては、国際条約は憲法よりは下位だが、国内法よりは優位とされている。
     そのため憲法に違反しない限り、条約に違反する国内法や条例はあってはならないのだ。実を言うと、昭和60年に「 男女雇用機会均等法 」が制定されたのも、国連女性差別撤廃条約を締結するための国内法整備だったのである。
     TPP批判の際に何度も指摘したことだが、国際条約の締結によって、その国固有の文化や慣習に反する国内法を制定せざるを得なくなり、国柄が損なわれたり、重大な主権侵害を受けたりする事態は、いくらでも起こりうる。だからこそ条約の締結には慎重さが求められるのだ。
     国連女性差別撤廃条約を締約している国は現在189ヶ国に上るが、条約文に署名はしたものの、国内議会の承認が得られないために締約に至っていない「署名国」も、98ヶ国もある。
      実はアメリカ合衆国も、1980年に署名はしているが、国内法が条約に制約されることを議会上院が拒否しているため、未だに締結していない。
  • 「慰安婦問題『解決』への道」小林よしのりライジング Vol.167

    2016-02-23 15:55  
    153pt
     引き続き慰安婦問題について、今週はその「解決」はありうるのかということをもう少し考えてみたい。
     先週号で論点整理したとおり、慰安婦問題の「解決」とは決して韓国の納得を得ることではなく、「 日本の父祖の歴史の名誉を、国際社会の中で日本人が取り戻し、未来の日本の歴史を作っていく新しい世代に、正しい歴史を受け継ぐことができるようにすること 」である。
     そこで、どう国際社会を説得するかが問題になってくる。
      今や国際社会の中では強制連行の有無は問題にされず、前借金に縛られて強制的に性を売らざるを得なかったとなれば、性奴隷「sex slaves」と見なされるようになっている。
     このことに対して藤岡信勝氏は、前借金に縛られるというのはあくまでも雇用契約の一種であり、「身売り」という言葉が使われているとはいえ決して人身売買ではなく、欧米でも徒弟制度の雇用関係などに、普通に例はあると言った。
     それは確かにそうだろう。考えてみれば、ドラマの『おしん』を欧米人が見ても、主人公のおしんが米俵一俵で子守奉公に出されるのを「子守奴隷」だとはいくらなんでも言わないはずだ。
      だが、労働の内容が売春だったら「性奴隷」になってしまう。 そこが本質なのだ。 日本人は、特に公娼制度があった時代においては、売春も職業の一種だという認識があるのに対して、キリスト教文化圏では決して売春を職業とは認めない。だから「奴隷」に結びつけてしまうのである。
     これはもう捕鯨の問題と全く同じで、今現在の価値観から過去を断罪してしまう。 過去は今の価値観とは違うとか、民族によって違うという、「文化相対主義」をキリスト教文化圏の者にも、主張し続ける必要があるだろう。
     とはいえ、 国連人権委の「クマラスワミ報告書」に書かれた 「慰安婦の総数は20万人で、その大部分は殺された」 などといった全くのデマは厳重抗議していくしかないし、クマラスワミ報告書も取り下げさせなければならない。
     報告書を書いたスリランカ人の女性人権活動家、ラディカ・クマラスワミは当初、慰安婦の何が問題なのか全然わからなかったという。やはり、キリスト教文化の影響が薄い人が見れば、これはどこの国にもある戦場の娼婦じゃないかと思うものなのだろう。
     ところが報告書の作成過程で、「強制連行」の吉田清治証言やら、シナの古典の残酷話をそのまま写してきた北朝鮮の元慰安婦証言と称する文書やら、ありとあらゆるデマ話が寄せられた。そして一切検証もせずにそれを全部鵜呑みにしてしまったクマラスワミが、なるほどこれは一大事だと、報告書にまとめ上げてしまったのである。
      だから、もしもクマラスワミ報告書がデマだということが国際社会に認められれば、キリスト教文化圏以外からは「じゃあ、何が問題だったんだ?」という疑問も出るようになり、慰安婦問題全体の見直しにつながることもあるかもしれない。
     わずかな可能性かもしれないが、まずは事実に反することを訂正させるのが第一歩である。
      だが今回安倍政権がやった「日韓合意」は、そのためによかったのだろうか?
      むしろ、デマに反論しようとしたら「問題を蒸し返すな」と発言を封じ込まれ、デマが事実として流通していく事態になってしまうのではないだろうか?
     今回の「合意」では、それが一番懸念される問題である。
     いくら慰安婦問題の解決と日韓関係は別問題とは言っても、わしとて日韓関係は改善した方がいいとは思っている。だが今回の「日韓合意」はどう考えてもその役には立たず、到底評価はできない。
  • 「日韓慰安婦『合意』という売国」小林よしのりライジング Vol.166

    2016-02-18 16:15  
    153pt
     第53回ゴー宣道場 「慰安婦〈合意〉は正しかったのか?」 を2月14日、拓殖大学客員教授・藤岡信勝氏を迎えて開催した。
     今年は、当時の中学歴史教科書7社全てに「従軍慰安婦」が登場し、この異常事態に対抗すべく「新しい歴史教科書をつくる会」を設立する動きが始まってからちょうど20年に当たる。このとき西尾幹二氏とともに「つくる会」を創設し、その活動にわしを招こうと提案したのが藤岡氏である。
     それから20年、「つくる会」の活動やわしの『戦争論』の影響により、中学歴史教科書から「従軍慰安婦」は消え、日本人の「自虐史観」(この言葉を普及させたのも藤岡氏である)も相当に払拭されたかに見える中、昨年末に唐突に慰安婦問題の「日韓合意」が行われた。
     自称保守論壇の中にはこれを評価・歓迎する向きもあるが、果たしてそれでいいのだろうか?
     論点は多岐にわたるが、今回は事前にブログで以下の5つの論点を提示した。
    1)なぜこのタイミングで日韓合意?
       アメリカの圧力で、ではないのか? 他に理由があるのか?
    2)日韓合意のメリット・デメリット
       本当に韓国を追い込んだと言えるのか?
       7対3で日本の勝利などと言う新聞記者もいるが本当か?
       再び教科書に記述されて、日本が再び自虐史観に戻ることはないのか?
    3)安全保障か、歴史の真実か
       安全保障のためなら譲歩やむなしなら、歴史戦はすべて敗北しかないのではないか?
    4)慰安婦の真実が伝わらない理由
       なぜ慰安婦の真実は伝わらないのか?
    5)慰安婦問題の解決はありえるのか
         前々回のゲスト、松竹さんは「保守先鋒の安倍首相が謝罪する」ことで解決すると言っていたが、今回の〈合意〉で日韓共に解決ということか?
     藤岡氏は、今回の「日韓合意」は「 全く評価できない、やるべきではなかった。大失敗だった。日本外交の世紀の失態だ 」という。この認識はわしも同意である。
     ではこの5つの論点に沿って、当日の議論を整理しておこう。
    1)なぜこのタイミングで日韓合意?
     藤岡氏は、まずアメリカの世界戦略の変化を挙げる。
     中東政策が大失敗し、対ロシア外交でもやられっぱなしという状況の中で、アメリカの世界覇権が怪うくなる一方、世界第二の覇権国である中国が台頭。尖閣諸島をめぐって日本と摩擦を起こし、南沙諸島を軍事拠点化しようとしている。
     ここにきてアメリカは中国との対決姿勢をとるようになり、そのために日本に対して協力を求めている。
      アメリカは4年前の野田政権の頃から、日本と韓国の手を結ばせようと水面下で動いていた。
     これが表面化したのは昨年3月、中国が提唱するAIIB(アジアインフラ投資銀行)に、韓国がアメリカの制止を無視する形で参加、さらにヨーロッパ諸国がこぞって参加するという事態に危機感を抱いたアメリカが、同盟国の締め付けを図った。
     昨年11月の日韓首脳会談で、朴槿恵大統領は安倍首相に慰安婦問題の年内の妥結を求め、このとき安倍は期限を区切ることを拒否。12月15日の外務省の交渉も不調で、年越しは確実と思われていた。
      ところが24日に安倍首相は突如、岸田外務大臣を韓国に送る決定を下し、28日に「日韓合意」となる。
     この急転直下の原因は不明だが、アメリカの圧力なしには考えられないという。
  • 「パンドラの箱を開けた先には…!?」小林よしのりライジング Vol.101

    2014-09-16 22:15  
    102pt
    第41回「A型根性炸裂!ウミサチ兄さんの釣り針執着 ~海佐知&山佐知 その2~」 「お願い、一回だけやらせて! ちょっとだけだから!」
     魚釣りをしてみたくて仕方のないイケイケドンドンのヤマサチは、兄のウミサチに熱烈アタックの末、ついに口説き落として釣り針を借りることに成功します。
    「兄さん、代わりにおいらの槍を貸してあげるよ。楽しんで!」
     ウキウキのヤマサチから槍を押しつけられたウミサチでしたが、山での獣狩りなどまったく気が進みません――
    「ヤマサチめ、本当にテキトーな奴なんだから。俺はむやみに責任感が強い長男だし、クソ真面目で几帳面なA型だから、いきなりこういうこと自由に楽しめって言われるとストレス感じるんだよ……」
     勝手に予定を変えられて、まったく気分が乗りきらないネガティブなA型。
    「あいつ、糸の結び方も釣り竿の使い方も知らないだろうに。どうせ、ちょちょいっと結んで海に投げ込めばいいとしか思ってないだろうな。しまったなあ。貸す前に実演して、しっかり絵に描いて使い方を説明すれば良かった」
     貸した釣り針はどんな風に扱われているのやら、気が気でないA型。
     やたら詳細に、やたら具体的に、きっちり細かくうるさく説明し尽くさないと自分自身が納得できないA型。
    「あの釣り針、きのう下ろしたばかりの新品なんだよ。あいつ、脂まみれの汚い手でいじくってるんだろうなあ。はー、嫌だなあ。力加減もわからない奴だし、海底に針を引っ掛けて、馬鹿みたいにぐいぐい引っ張るんじゃなかろうか。もしも竿が折れたら……糸が切れたら……。はー、嫌だなあ」
     自分の持ち物を他人に触らせることが本当にイヤでしょうがないA型。
     悶々と最低最悪な事態ばかり考えて人知れずストレスを溜めてゆくA型。
    「海にもどって監視しようかな……」
     他人をほとんど信用していないA型。
    「俺も、いい人ぶってあんないい針貸さずに、もっと古くて、いらなくなった針にすればよかった。やっぱり、今すぐ釣り針返せって言いに行こう」
     たとえ「こんなに使ってないのがあるんだから、ひとつぐらいいいでしょ」と言われても、自分のなかではちょっとずつ違う種類のものをコンプリートして所有していることに満足しているから、その「ひとつ」すら渡したくはない執着心の塊のA型。
     この自分様の世界を他人が理解できるわけがない、他人には踏み込まれたくないという一心から、ドケチっぷりを発揮するA型。
      ……ぜんぶ、あたしだよっ!
     A型・長女のあたくし、弟が入院したときに、何年も前に読んだきり本棚で埃をかぶっていた『デビルマン』全巻を手土産に、見舞いに行ったことがありました。
    「退屈してるでしょ、これでも読みなよ~。全巻セットだー!」なんて言いながら、どさっと漫画の束をベッドに置く、妙に気前の良さを見せるA型の姉。
     喜んでページをめくりはじめる、点滴につながれた青白い弟。
     しかし、そんな弟を眺めているうちに、A型の姉は悶々と考えはじめるのです。