• このエントリーをはてなブックマークに追加

記事 8件
  • 「アベノミクス『大本営発表』と日本の敗戦」小林よしのりライジング Vol.162

    2016-01-19 18:00  
    153pt
     年明け早々、安倍首相の 「パート月収25万円」 発言が波紋を呼んだ。
     こういう発言が首相の口から出ると、わしとしては「やっぱり自民党というのは、国民の実情をまったく知らないで、経済政策をやっているのだな」と確信する。
    「ただ株価だけしか見ない首相によって、富裕層向けの経済政策しかする気がないんだな」と思わざるを得ない。
     だが、それでも自民党の支持率は50%を超えている。他の政党よりマシだからというニヒリズムな理由によって。
     わしは今回もあえてアベノミクスにこだわろう。
    「パート月収25万円」 発言は1月8日の衆院予算委員会で、民主党の山井和則議員の指摘に反論する中で出てきたものである。
     山井議員は 、民主党政権の時よりも、第2次安倍政権の時の方が実質賃金は減少している と指摘、それに対して安倍はこう反論したのだ。
    「景気が回復し、そして雇用が増加する過程において、パートで働く人が増えれば、一人当たりの平均賃金が低く出ることになるわけであります。
     私と妻、妻は働いていなかったけど、景気が上向いてきたから働こうかということで働き始めたら、(月収で)私が50万円、妻が25万円であったとしたら、75万円に増えるわけでございますが、2人で働いているわけですから、2で割って平均は下がるわけです」
     景気が回復し、雇用が増加する過程においてはそういうデータが出ることもあると言ったわけだが、そこで例として言ったことが、妻がパートで働いて月収25万円…一体、どこにそんな職場があるというのか!?
     今どき、正社員だって月収25万円に満たない人はザラにいる。 最近のパート労働者の平均月収は、厚労省の毎月勤労統計調査によると8万4000円。「世帯主の配偶者」の収入で見ると、6万円程度だ。
     そもそも 「景気が上向いてきたから働こうか」 って、そんな人いるか!? ほとんどの家庭の主婦は、かつかつの家計を少しでも助けようとパートに出ているんじゃないか!
     さすがにこの発言はネット内で「炎上」する事態となったが、中には「例として計算しやすい数字を出しただけ」と安倍を擁護する者もいて、安倍も後日同様の釈明をした。
     バカなことを言ってはいけない。 普通の生活感覚があれば、「主婦がパートで月収25万円」なんて、例としてでも口には出ないものだ。
     安倍は庶民のことなど一切考えてもいない。それどころか、自分に庶民感覚が完全に欠落していることを自覚すらしていない。絶望的なほど世間知らずのバカ坊ちゃんのまま総理をやっているということが、一番の大問題なのである。
     首相の月給は205万円、これにボーナスなどの手当てを加えれば、年収で5000万円ほどになる。安倍にしてみたら「月収で私が50万円であったとしたら」という数字も、計算しやすい例として「安い」数字を挙げたつもりだったのだろう。
     かつて麻生太郎は首相だった頃、国会でカップ麺1個の値段を質問され、 「今、400円ぐらい?そんなにはしない?」 と答えに窮し、あまりにも庶民感覚が欠落しているとマスコミから袋叩きにあった。
      安倍の「パート月収25万円」発言は、それよりもはるかに大きな問題であることは間違いないのに、これがほとんど報道されていない。 マスコミが政権に抑えられている証しである。
     振り返れば第1次安倍政権の時は、
  • 「『ストレスエスケープ』の時代」小林よしのりライジング Vol.159

    2015-12-15 20:50  
    153pt

     最近、週刊誌が安倍政権の批判を書くと、部数が落ちるらしい。
     一時期、女性誌で安倍晋三批判が受けていて、安倍が女性に嫌われているからと、週刊文春も安倍政権批判に挑んだが、それも長続きしなかった。
     安保法制を巡っても、説明不足だ、強引だ、立憲主義の危機だと騒いだはずなのに、成立してしまえば大して政権のダメージになることもなく、支持率もすぐに回復してしまった。
     対抗する野党がいないからという理由ならば、「支持政党なし」が増大して政権支持率は上がらないはずだが、50%近い支持率があるのだ。「消去法」ということでもなく、ある程度積極的に安倍政権が支持されていると見るしかない。
     しかし、なんで?
     パンツ泥棒が大臣になって、さらに政治資金の問題がゾロゾロ出てきながら居直っていても、誰も怒らない。
     もう3年も経ってアベノミクスの失敗は明らかになっているのに、それでも「新3本の矢」とか言い出しても、誰も怒らない。
      もっと驚いたのは、年金の運用でハイリスクの株式の比率を高めたところ、たった3カ月で約8兆円もすったというとんでもない事態が起きてしまったのに、全然怒りの声が上がらないことだ。
     みんな、年金を全くあてにしなくてもいいほど裕福なのだろうか? それとも、株価が回復すればすった分は取り返せるとでも思っているのだろうか? これはバクチなのだ。次に勝てばいいと言ってるうちにスッテンテンというのが大抵のパターンなのに、なぜ誰も危機感を感じないのだろうか? 
     あるいは、もうどうせ年金なんてもらえないんだからと諦めきっているのだろうか?
     週刊誌の編集者に聞いたのだが、今は「批判」を載せたら売れないらしい。
     テレビでも「批判」は嫌われるようで、TBSの「NEWS23」でアンカーの岸井成格が政権批判をするのがけしからんと、新聞に意見広告を出す連中までいる始末だ。
      ジャーナリズムは権力を監視するのが仕事であり、ジャーナリストが政権批判をするのは当然のことなのに、それをするなというのだから、頭がおかしいとしか言いようがない。
     そして、いま売れるのは「解説」だという。
      池上彰のように、世の中こうなっていますよと説明するだけでいい。それ以上に、世の中こうなっているが、おかしいではないかとか、世の中こうであるべきではないかとか、そういう意見は聞きたくないのだ。
     解説だけを聞いて、「世の中こうなっているのか、へーえ、おしまい」・・これで、何が面白いのだろうか!?
      どうせ自分が世の中に対して怒ったって何も変わらないし、しんどいだけ。無駄に感情を波立たせることなんかしたくない。なるべく平穏に心地よく、ただ何が起きているのかを情報として仕入れたらそれでいい……そのような完全に無気力で怠惰な気分が蔓延しているらしい。
  • 「ネットの中の道徳の大崩壊:実名曝しは是か非か?」小林よしのりライジング Vol.157

    2015-12-01 22:10  
    153pt
     次回、12月13日のゴー宣道場は 「道徳Revenge」 と題して行われる。
     事前に「これはどう判断するのが道徳的に正しいのか?」と迷うような例題を募集中で、ゴー宣道場ブログでも各師範や門弟たちが様々な例題を挙げている。
     そこで今回は、最近起きた道徳的判断を問われる問題を紹介しておきたい。
     発端は、はすみとしこなるネトウヨ漫画家が、シリア難民を誹謗中傷するイラストを公表した事件だ。
    http://nlab.itmedia.co.jp/nl/articles/1510/05/news107.html
     これは議論の余地なく不道徳であり、このことが海外にまで報道されたのは、日本の恥さらしとしか言いようがない。
     ところがこれを支持する者がいて、かえってこの騒ぎを期に、はすみとしこのイラスト集が出版されることになったという。版元は「青林堂」だ。
     青林堂は伝説の漫画雑誌「ガロ」を出版していた会社だが、創業者社長が亡くなった後は迷走を重ね、今では「オークラ出版」と一、二を争う最低のネトウヨ出版社になり果てている。
     もう、かつての青林堂とは全くの別物であることは重々承知しているのだが、それでも「青林堂」の名がこうも果てしなく汚されていることには、心が痛むばかりである。
     この難民差別イラストに関して「反安倍 闇のあざらし隊」を名乗る者がツイッターで、次のように宣言した。
    「はすみとしこ」のFBページで下衆な絵をはやし立てている下衆な連中のプロフィールから、居住地、出身校、勤務先をリスト化するドイヒー「はすみしばき」プロジェクト、密かに進行中。320人以上のものが名前と共にまもなく公開されます。  そして実際に、はすみとしこのフェイスブックで問題のイラストに「いいね!」を押した者、400人以上の実名や居住地などをリストにして、ネットに公開したのだ(「ドイヒー」とは「ひどい」の意)。このいわゆる「はすみリスト」は、ネット内で大問題となった。
     すると今度は「はすみリスト」を曝した「反安倍 闇のあざらし隊」が実名を特定され、ネットに曝された。 この人物は「レイシストしばき隊」のメンバーで、しかも ネットセキュリティ会社の社員だった。
     これは情報を保護する立場である会社の社員としてあるまじき行為として問題化し、会社も社内調査に乗り出すとともに関係者に謝罪を表明。
     調査の結果、セキュリティ会社は自社のシステムやデータが使われた事実はなかったとしたが、このしばき隊の男は自主退職した。
     そして「はすみリスト」の騒動は、思わぬところに飛び火してきた。しばき隊シンパと思われる者が、時浦のツイッターにこう質問してきたのだ。
    小林よしのり氏は、「ネットで差別書き込みをする者は、住所と氏名を公開して社会的に抹殺すべき」と、はすみリスト以上の処置を提案していますが、それはいいんですかね。  そんなこと書いたっけ? と思ったが、どうやら2年前のこのブログのことらしい。
    https://www.gosen-dojo.com/index.php?key=jojxeo458-736
     わしは 「こういう差別野郎どもの住所・氏名を公表して、社会的制裁を加える法律を、自民党は作れ!」 と書いたのであって、あくまでも法的な規制を求めたのである。 決して現在行われているような、野放図な私刑を支持したわけではない。
     しかも、制裁を加えるべきとしたのは差別の言動をしている本人であって、単にフェイスブックで「いいね!」を押した程度の者までは想定していない。
     それでもわしが言ったことは 「はすみリスト以上」 ということになるのだろうか?
     一方、新潟水俣病第3次訴訟の弁護団長を務めている高島章弁護士は、ツイッターで以下のように私見を発表した。
  • 「『ゴー宣』『戦争論』が変えたもの」小林よしのりライジング Vol.155

    2015-11-17 20:10  
    153pt
     11月4日、東浩紀氏、宮台真司氏と『戦争できる国の道徳』(幻冬舎新書)の出版記念として、5時間にも及ぶトークイベントを行った。
     その中で宮台氏が、ネトウヨも安倍政権も、シールズも 「全部よしりんの影響下にあるんですよ」 という発言をした。
     ネトウヨや安倍政権をわしがつくったとかいうのはシールズの連中の決まり文句だが、そういうシールズだって、わしがつくったというのだ。
     たしかにシールズのデモのやり方は、薬害エイズ運動の時にわしが打ち出した方法論そのままである。
     薬害エイズの頃、もうとっくに労組などの団体の旗がひらめくデモには威力がなくなっていた。むしろ団体の動員を受けたデモだと思われたら、一般大衆には見向きもしてもらえなくなる状態だった。
     そのため薬害エイズ問題に対する世論を盛り上げるためには、デモから組織やイデオロギーの色を一切排除する必要があった。そこでわしは、 「個人」がこのワンイシューのためだけに、緊急措置として集まって活動している「個の連帯」である というコンセプトを立てた。
     そして集まった学生たちは、 ダサいのはイヤだ、ファッショナブルなデモをやりたいと言い、ラップでパレードというスタイル を作り出した。
     このデモは大きな効果を上げた。だが、 実際には学生たちに「個」など確立しているわけがなく、学生たちは弁護士ら大人の顔をうかがい、組織に埋没していった。そして、「正義」の運動をしているという快感に酔い、運動が目的化して、薬害エイズ運動が終結しても次の運動をやりたがるようになってしまった。 そのために、わしは「日常に帰れ!」と警告し、『脱正義論』を描かなければならなくなったのである。
     一方のシールズも、 自分たちは「個」の集まりであると標榜し 、その団体名「SEALDs」(Students Emergency Action for Liberal Democracy-s=自由と民主主義のための学生緊急行動)からして 「緊急行動」を謳っており、ワンイシューで活動し 、来年の参院選をもって解散すると表明している。
     また、とにかく ファッショナブルにすることにこだわり、ラップを取り入れ、プラカードは英語が目立つ 。わしから見れば、英語がファッショナブルでカッコイイという感覚自体がどうしようもなくダサいのだが、とにかく『脱正義論』を読んで研究したのではないかと思うほどそっくりである。
     もちろん、 実際のシールズのメンバーに「個」などない というところもそっくり同じだ。
      シールズは事実上、「左の在特会」と言うべき「しばき隊」の下部組織である。
     シールズ中心メンバーの奥田や牛田らは、しばき隊のbcxxxなる人物の親炙を受け、わしと対談する際にもいちいち彼の顔色をうかがっていた。そしてbcxxxが小林よしのりとの対談などするなと言ったために、牛田は当日ドタキャンし、奥田が一人でやって来たのだ。
     しかも奥田は、わしと対談したことについてbcxxxに対してツイッターで次のように弁解し、反省・謝罪を表明した。
  • 「憲法に理想や道徳は要らない」小林よしのりライジング Vol.153

    2015-10-27 16:25  
    153pt
     それにしても、「憲法9条」がノーベル平和賞をとらなくて本当によかった。
     チュニジアの民主化団体が受賞したのは、「アラブの春」がもたらしたシリアなどの惨状も顧みず、相変わらず中東の歴史・文化を無視して、民主化こそが至高の価値だと信じ切っている西洋の傲慢を感じさせられるので不愉快ではあるが、それでも憲法9条がとるよりはまだましである。
     しかし、これからも毎年毎年、村上春樹のファンと憲法9条信者がから騒ぎするのを、この時期の風物詩としてながめなければならないのだろうか? そう思うと、なんだかうんざりする。
    「憲法9条にノーベル平和賞を」というのは、神奈川県の38歳の主婦が2年前に思いつきで始めた運動だ。
     彼女は20代でオーストラリアの大学に留学したとき、スーダンの難民から、小学生の時に両親を殺され、正確な年齢も知らずに育ったと聞き、平和や9条の大切さを実感したという。
     おいおい、スーダンは憲法9条がないから内戦をやってるのか?
     その後、二人の子供の母親となって「子どもはかわいい。戦争になったら世界中の子どもが泣く」と思ったが、子育てで家を空けられず、集会やデモには参加できないので、自宅でできることはないかと思って始めたのが、この運動なのだそうだ。
     まずはインターネットで見つけたノーベル委員会に、英文で「日本国憲法、特に第9条に平和賞を授与して下さい」とメールを計7回送ったが、なしのつぶて。
     そこで署名サイトを立ち上げ、集めた約1500人の署名を添えてノーベル委員会に送信すると、ノミネートの条件を記した返事が来たという。
     それを読んで初めて、ノーベル平和賞の受賞者は人物か団体に限られ、「憲法」は受賞できないことや、「立候補」は受け付けておらず、国会議員や大学教授、平和研究所所長、過去の受賞者など、ノーベル委員会が依頼する推薦人によって候補者がノミネートされる仕組みであることを知ったそうだ。
     それで、候補者を「憲法9条を保持している日本国民」にして、どっかの推薦人の協力をとりつけて、ノミネートにこぎつけたらしい。
     なんだかツッコミどころ満載の話で、この異常な「ノーベル賞信仰」にもひとこと言いたくなるが、ここで問題にしたいのは、この主婦が憲法9条にノーベル平和賞を受賞させたいと思った理由だ。
     彼女は2012年の平和賞を欧州連合(EU)が受賞したのを見て、
    「EUには問題もあるが、ノーベル平和賞は、理想に向かって頑張っている人たちを応援する意味もあるんだ。日本も9条の理想を実現できているとは言えないが、9条は受賞する価値がある」
    と考えたのだそうだ。
     憲法9条信者は全員、このように 「9条には、人類の理想が書かれている」 と思っているのだろう。
      そもそも、これが根本的な間違いなのである。
      憲法は、「理想」を記すものではない!!
      憲法は、国民が権力を縛る「道具」にすぎない。 道具に「理想」を込めてどうなるんだ?
  • 「『アラブの春』に学ぶ若者デモの陥穽」小林よしのりライジング Vol.150

    2015-10-06 18:05  
    153pt
     安保法制成立前、シールズなどによる国会前デモを、多くのマスコミ・言論人が過剰に、無責任に称賛した。
     中にはこれを「アラブの春」になぞらえた者までいた。例えば、ジャーナリストの田中龍作は、ツイッターで連日こんな煽動をしている。
    昨日並みに10万人規模で20日間も国会前の占拠を続ければ、安倍政権は潰れる。タハリール広場を占拠し、ムバラク独裁政権を倒した市民革命(2011年)がそれを教える。(8月31日)
    普通の人が20日間も休めるか? とのご指摘を頂いた。心配ご無用。入れ替わり立ち替わりで、国会前の占拠を続ければよいのだ。 エジプトの民はそれをやってのけた。「あれっ、今日ムハンマドさんは?」「ムハンマドだったら今日は仕事だよ」。こんな調子だった。夕方仕事が終わって来る人もいた(9月1日)
     こんなことを言う連中は、そもそも「アラブの春」とはどういうもので、その結果、現在どうなっているのか知っているのだろうか?
    「アラブの春」の発端は2010年12月17日、北アフリカ・チュニジアで失業中の26歳の青年が、路上で青果販売をして当局の取り締まりを受け、抗議の焼身自殺を遂げた事件だった。
     …もう、この時点で日本のデモとは比較にもならない。日本で、政府への抗議のために焼身自殺するほど切羽詰まった青年が、一人でもいただろうか?
     しかも、アラブにおける 「焼身自殺」 は、とてつもなく重い意味がある。
     イスラム教では自殺が禁じられている。例外は聖戦(ジハード)と認識される自爆テロくらいである。
     さらに、イスラムでは最後の審判の日に死者は甦ることが想定されており、甦るための身体を残すため、決して火葬をしない。まして自ら焼身するなど、考えられない。
     焼身自殺はイスラムのタブーを二重に犯す、決してあってはならないことであり、その衝撃は大変なものだったのだ。
     当時のチュニジアの経済は、成長率3.8%と決して悪くはなかったが、失業率は14%前後、特に若年層の失業率は25~30%程度と非常に高かった。
     23年の長期にわたるベン・アリー独裁政権の腐敗に対する不満は高まり、しかも政権の後ろ盾と思われていたアメリカが、実はもう政権を見離していることをウィキリークスが暴露。国民が爆発する下地が出来上がっていたところに、焼身自殺事件は起きたのだった。
     まず青年の親族が自殺現場跡の写真をフェイスブックに投稿、これを衛星放送アル・ジャジーラが取り上げ、情報は瞬く間に伝わり、政府への抗議デモが急速に全国へ広まった。
     一方、政権では軍部や内部の寝返りなども重なり、青年の焼身からわずか1カ月足らずでベン・アリー大統領は国外逃亡し、政権は崩壊。これはチュニジアの国花にちなんで「ジャスミン革命」と呼ばれた。
     盤石と思われていた長期独裁政権があえなく崩壊した「ジャスミン革命」の衝撃は、たちまちアラブ各国に広がり「アラブの春」といわれる未曾有の政治変動が巻き起こった。
     エジプトでは「ジャスミン革命」のわずか1カ月後、大規模な反政府デモに圧される形で30年に及んだムバラク大統領の独裁政権が崩壊した。
     リビアでは政権が反政府デモを弾圧、これに対してNATOが介入し、42年に及んだカダフィ独裁政権は崩壊、カダフィは殺害された。
     イエメンでは政権と反体制勢力の対立が激化・長期化し、アラブ連盟の介入によりサレハ大統領が退任、33年に及んだ独裁政権に幕を下ろした。
     シリアでは、政府軍と反政府派の武力衝突になる。だが、2代44年に及ぶアサド独裁政権は崩壊していない。
      他にも「アラブの春」の影響は中東のほぼ全域に及んだが、上記の国以外は今のところ既存の政治体制そのものにまで大変革を及ぼすことはなく、沈静化している。
     では、「アラブの春」で特に大きな変革を経験したチュニジア、エジプト、リビア、イエメン、シリアの5か国が現在どうなっているのかを見てみよう。
  • 「運動に嵌る若者のリスク」小林よしのりライジング Vol.148

    2015-09-15 19:55  
    153pt
     シールズの奥田愛基はわしに会ったとき、誰かに『脱正義論』についてレクチャーを受けてたらしく、「こんなデモなんか早く止めたい」と日常復帰を望む発言をしていた。
     本当は対談なんて代物じゃなく、対談らしい文章にしてしまったのは同席したライターなのだ。
     わしとの対談終了後、「しばき隊」の者から 「お前自身は今あんなクソウヨと対談させることをどう思ってんだよ」「お前にエラそうなこと抜かす資格はねーんだよ。運動周辺に近づくな!」 と罵倒され、ライターは 「セッティングは編集者とシールズが話し合って行われている。彼らにもやりたいことがあったんだろ。それをサポートしようと思った」「おれがセッティングしたわけじゃないのに?おれが司会やってなかったらもっと酷いことになってたのに?」「オレが断ったらもっと酷いことになるから受けたって書いてんだろ」「言っとくけど、オレが司会を頼まれたときはもうセッティングされてたし、オレが受けなかったらもっと酷いことになってたから」 と繰り返し言っている。
     笑えるがライターの言う通りで、対談中もライターは奥田をフォローしてたし、結局、対談の体を為さない無駄なおしゃべりを、何とかまとめたのはライターである。
     その日、奥田は30分くらい遅刻して来たのだが、謝罪の一言もなく、牛田とかいう仲間と小林よしのりと対談すべきか否かで朝まで議論していたらしい。
     牛田はツイッターで 「明日、奥田と小林よしのりに会うが、対話するつもりはない。こちらからの、一方的なステートメントの提出と、それを飲むことの要求をする。ステートメントの内容とは、この社会をクソにすることに加担したことへの謝罪だ。無論、それで彼が許されるわけではなく、許すつもりもない。」 と言ってたのだが、『新戦争論』を読んで勝てる自信がなくなったらしく、当日になって 「朝まで、小林よしのり氏の本を読んで色々悩んだんですが、明日の小林氏の会合は対談という形でやることになっており、正直僕には対談できる自信がないので、逃げるみたいな形になりますが、明日はキャンセルしようと思います」 と、とツイッターで呟き、その日はとうとう現れなかった。
     だがそもそも「しばき隊」は、ライターへの罵倒の中で 「お前自身は今あんなクソウヨとSEALDs対談させることをどう思ってんだよ」「俺ら前の晩説得して止めてたんだぞ?」 と言っている。牛田がドタキャンしたのは、本当は「しばき隊」の「説得」に屈したからなのだ。
     これにライターが 「それで牛田くんは止めて、それでも奥田くんはやろと思ったんだろ?」 と返すと、「しばき隊」は 「止められなかった俺らの力不足だわな」 と答えている。
     現れた奥田は、欠席した牛田のメールをわしに読ませて感想を求めるばかりで、対談なんてものではない。
     そのメールには、 「ネトウヨを作ったのは小林よしのりだ、安倍政権を作ったのも小林だ。そんな社会と我々は戦っているのだ」 という主旨が主張され、その援護をライターがするという進行になっていた。
  • 「若者に媚びる大人」小林よしのりライジング Vol.146

    2015-09-01 17:05  
    153pt
     最近は安保法制に反対するSEALDsが若者の代表のように報道されているが、本当なのだろうか?
    「ゴー宣道場」にも十代や二十代の若者が参加しているが、彼らは社会問題を考えたい若者であって、結論を出してデモに参加する若者とは違うような気がする。
     昔、援助交際が流行っていたが、その時もわしは援助交際をやってない少女の方が圧倒的多数だと主張していた。いつの時代もマスコミに取り上げられるのは、少数派の若者の一時的な流行である。
     わしは大人としてズルい部分があるから、安保法制反対の世論を作るために利用できるなら応援しておいてもいいやと思うのだが、薬害エイズ運動の時のように、マスコミに持ち上げられて勘違いする者もこれから出てくるかもしれない。
     あのような集団の中には、共産党系の民青が入り込むし、すでに「アンチ・小林よしのり」のしばき隊が影響を与えているのも事実だ。
     今の若者はもうわしの『脱正義論』という名著も知るまい。「純粋まっすぐ君」を利用する大人たちは相変わらずいるのだが、わしの警告が効く余地はもう残されていない。彼らは深く考えることなく、祭りを楽しんでいる。
     ブログは見てる人が多すぎるから、本心は言えないが、ライジングでなら、わしの本心を吐露できると思い、一度書いておく。
     安全保障関連法案に反対する若者たちがデモをやると、その都度朝日新聞やら東京新聞やらが写真を載せて持ち上げるのだが、掲げているプラカードが英語だらけなのには違和感を覚えるばかりだ。
    「WAR IS OVER IF YOU WANT IT」 と書いてあるのは、ジョン・レノン&オノ・ヨーコの「Happy Xmas(War is over)」からとっているのだが、「望めば叶うよ、戦争は終わり、ハッピー・クリスマスをただ楽しめる」という歌だ。
     昔は 「PEACE」 や 「NO WAR」 が多かった気がするが、今は 「WAR IS OVER」 が主流らしい。
    「CHANGE THE PRIME MINISTER」 という文字があるが、これは意味が分からない。 首相は日本国民が選んでいるのに、「首相を変えろ」と英語でアピールして何になる? アメリカ人に、日本の首相を変えてくれと頼んでいるのか?
      英語さえ使えばカッコいいと思っているのだから情けない。アメリカに追従するから戦争に巻き込まれるのに、アメリカの言語の方がカッコいいと思っているのだから世話ない。
     8月19日の参院特別委員会で、山本太郎議員が非常に重要な質問をした。
      リチャード・アーミテージ元米国務副長官とジョセフ・ナイ・ハーバード大学教授が2012年8月に作成した「第3次アーミテージ・ナイレポート」に書かれていた日本への提言と、安倍政権が進める安保法制などの政策が全く一緒だというのである。
     以下に、その項目を列挙しておこう。