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記事 4件
  • 「新元号を巡る議論を整理する」小林よしのりライジング Vol.282

    2018-08-28 21:00  
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     来年4月30日の天皇陛下の退位を控え、何でもかんでも「平成最後の」という枕詞がつけられるようになってきた。
     SNSでは「平成最後の夏」というキーワードが話題になっているそうで、特に若い世代は天皇の代替わり・改元を生まれて初めて迎えるということで、元号に対する関心が高くなっているらしい。
     そして今、「平成の次」の元号の発表の仕方について議論が起きている。

     8月15日放送のTOKYO MX「モーニングCROSS」で、「新元号事前公表めぐり政府苦慮」という話題を取り上げていた。
     政府は「平成」の次の元号の公表時期について、国民生活に混乱を生じさせないよう、 皇位継承1か月前の公表を念頭に準備を進めているが、保守派からは新天皇即位の当日である5月1日に公表すべきとの意見があり 、安倍首相は自民党総裁選への影響を避けるため、結論を当面先送りする見込みだという。
     そこでコメンテーターの鳥越俊太郎が、今回は昭和天皇の場合と違って事前に4月30日の退位が決まっているのだから、 「1か月前に事前にちゃんとやって、全ての世の中のシステムを準備するというのは、僕はアリだと思いますよ」 と発言した。
     全て利便性だけで判断して、元号そのものの意味については何も考えていないという、いかにもリベラルサヨクらしい意見だが、これを受けてもう一人のコメンテーターの古谷経衡がこう言った。

    「保守派が反対って書いてましたけど、生前譲位の時の有識者会議の時もカッコ保守派という人が変なことばかり言って、天皇とはこうあるべきだとか、元号とはこうあるべきだとかいうことを、この国のカッコ保守派は押しつけ過ぎなんですよ。
     鳥越さんがおっしゃったように、これはあらかじめわかっている、近代初めての生前ご譲位なわけですから、別に1か月前、2か月前でもいいわけであってね、何か『私の考える天皇』を押しつけがちなんです、変な」

     カッコ保守派、というのはカギカッコ付きの、いわゆる「保守派」、という意味だろう。わしが「自称保守派」と言うのと同じようなものだ。
     古谷は「カッコ保守派」を批判して、むしろ自分の方が本当の保守だと言いたいのかも知れないが、この発言には古谷が決して保守ではないことがはっきり表れている。
      来年の4月30日が終わるまでは、あくまでも「平成」であり、今の天皇陛下の御世なのである。
     それなのに、平成のうちに次の元号を公表するということ自体が、非常に不敬なことなのだ。
     平成はまだ終わっていない。ご譲位まであと8か月余りの間にも、まだ何が起こるかわからない。つい最近も平成最大の豪雨災害があったばかりで、陛下はおそらく現地訪問のご意向をお持ちだろう。
     そしてこの先さらに重大事が起これば、陛下が特別のおことばを発表されることだって、まだあるかもしれない。
      あくまでもこの時代は今上陛下の世であり、譲位されるまでは今上陛下がこの時代に責任を持っておられるのだ。
     今上陛下としては、この平成という時代に阪神大震災、オウム真理教事件、東日本大震災、原発事故等々ろくでもないことばかり起こり、その度に、これは自分に徳がないからではないかとお心を痛めてこられたことだろう。
      そんな中で陛下は、ご自身が始められた被災地訪問や、ご自分のテーマとされている戦地の慰霊を重ね、一生懸命苦難しつつ、今の自分の時代に責任を持とうとしておられるし、それはご譲位が完了する瞬間まで続くのである。
     それなのに今から次の元号のことを言うとは、なんと失礼なことではないか。

     そもそも 元号は、1300年以上前に初めて制定された「大化」以来一貫して「天皇の元号」であり、その時の天皇が決めるものなのだ。
  • 「『海外では女医が多い』の疑問」小林よしのりライジング Vol.281

    2018-08-21 16:50  
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    「日本は諸外国に比べて女性医師が少ない!」
    「フィンランドでは女性医師の割合が5割。なぜ日本はできないのか?」
     日本国内の社会問題を批判するときに、比較対象として 「海外では…」 と他国の例を持ち出して、他国が無条件に優れているかのように賛美し、「それにくらべて日本は未熟で悪辣」と結論づける人々のことを、ちまたでは、その口癖から 『海外出羽の守( かいがいでわのかみ )』 と呼んでいる。
     亜種として「うちらの業界ではさぁ~」と、すぐ“自分のいる業界って特別なんだぜ風”を吹かせて悦に入る 『業界出羽の守』 、先進国での複雑化した貧困問題について語っているのに「アフリカでは飢餓の難民が~」と言い出す 『途上国出羽の守』 も本当にやっかいだ。
     また、LGBTに関する話を聞いていると“現実はそんなうす甘い恋愛話ばっかりじゃねえよ!”と腹が立ってきて、つい「二丁目ではねぇ~」と言ってしまう 『新宿二丁目出羽の守』 (あたしだよっ!)も最近発見されている。
    ■ドラマ見て女性差別と決めつける出羽の守
    「20年以上前のアメリカのドラマ『ER緊急救命室』では女性医師が活躍していた。アメリカでは女性にとってERが普通の職場。日本の医療界の男女差別は酷いな」
     よっぽど演出がかっこよくて「アメリカ人のたくましい女医、憧れるう~♡」と記憶に残ったのかもしれないが、日本だって 『救命病棟24時』 では松嶋菜々子や松雪泰子が救命医として大活躍していたし、 『ドクターX~外科医・大門未知子』 も超大人気ドラマじゃないか!
    『科捜研の女』 に至っては、死体を解剖する監察医のみならず、法医学の世界で働く女性科学者が異常なまでに事件に食い込んで大活躍している。1990年にも 『外科医有森冴子』 が大ヒットしたし、今年10月からはじまるTBS系の連ドラ 『大恋愛~僕を忘れる君と』 は、若年性アルツハイマーに侵された女医の恋愛という、単純に“活躍する”女医像ではない、複雑多岐に渡る設定が発表されていた。
     
      『ER season1』DVDパッケージより
     そもそもアメリカはポリコレがすごいから、表現に関しては、男女だけでなく、白人、黒人、スパニッシュなど人種にも相当配慮して配役していると思う。ドラマや映画では理想像を描きながら、白人至上主義との衝突など、現在進行形で大問題が起きているのがアメリカだ。
     ドラマの配役だけで、即「アメリカは進んでいる、日本は遅れている」とは決められない。
    ■国柄を無視するOECD出羽の守
     これは、OECD加盟国の女性医師の割合について、各国を比較した表だ。平均は39.3%。日本は20.4%と低く、21.9%の韓国に次いで最下位である。
     
     
     最下位と聞くと、反射的に「もうちょっとなんとかならんのか……」と思う。しかし、この表を掲げて日本を「女性蔑視」と叩く前にちょっと冷静になってみたい。
    「1位のエストニアは凄い。女性医師の比率が73.8%にのぼるじゃないか。それに比べて日本は……。女性の人権がないがしろにされている」
     ……とは、言えない。
     エストニアをはじめとするバルト三国は、もともと旧ソ連の影響を受けており、「働かざる者食うべからず」。日本のように「家事という仕事」が認められず、男女ともに「主婦・主夫なんてあり得ない」という感覚の国でもあるが、そこに加えて 社会体制の崩壊が影響して「男性が早死する」という事象 も起きている。エストニアは人口の男女比率が偏っていて、 女性100に対して男性が88 しかいないのだ。
  • 「女医の現実と女性差別」小林よしのりライジング Vol.280

    2018-08-14 20:15  
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     私が通っている眼科は、パルテノン神殿風の豪華な柱を玄関に構えた“白亜の豪邸”のようなクリニックで、主治医は峰不二子みたいな女医だ。
     いつも胸部のラインが非常によくわかるセクシーなワンピースに、白衣を羽織り、シャネルのネックレスとイヤリングを光らせ、ばっちりお化粧をした茶髪のロングヘアの先生が、薄暗~い診察室のなか、ふたりきりで、瞳を覗き込みながら丹念に診察してくれる。
     待合室はおじさんだらけ!
     2時間待ちは当たり前、しかも受付終了の17時きっかりに正面自動ドアのスイッチが切られてしまうので、ほんの数分遅れて来院したおじさんが、ドアの外にへばりついて「お願いしますぅ!」と懇願しては冷たく追い返されるのを何度も目撃した。
     そりゃ、医者は日々忙しいだろうし、技術の向上にもたゆまぬ努力が必要に違いないのだろうけれど、外科や救命外来のような超激務続きに比べれば、眼科というのは、女性の開業医としてはかなり条件の良い診療科目なんだろうというイメージがある。
    ***
    ■東京医大の入試は女性差別か?
     東京医大の入試問題、最初は「女子一律減点」というフレーズだけを見て、「そんなことがあっていいの?」という気持ちになったし、自分が子供の頃に言われていた 「女の子は、勉強はほどほどでいい」という30年前の言葉 を思い出したりもして、そんな古臭い価値観がいまだに存在していたのかとも思った。
     けれども、報道内容や、現場の女医の意見、自分の知る医療の世界のことを合わせて考えていくうち、これを単に「女性差別」と叫んで、大学を糾弾してさえいれば解決するわけがないだろうと思うようになった。
     入試の手法としては確かに大きな問題があるものの、東京医大の元幹部がTBSの取材に語ったコメントは重要だと思う。
    「体力的にきつく、女性は外科医にならないし、僻地医療に行きたがらない。入試を普通にやると女性が多くなってしまう。単なる性差別の問題ではなく、日本の医学の将来に関わる問題だ」(TBS news)
     医療の世界には、セクシーな眼科医もいれば、男女限らず激務の上に待遇がつり合わないとずっと言われている救命救急医もいるし、長時間におよぶ手術の上、患者の急変に備えて夜間休日も即応する外科医もいれば、「Dr.コトー」のように、離島や僻地で何十年も過疎集落の高齢者たちのために尽くす医者もいる。
     それぞれ向き不向きや、体力・体格の問題、使命感に突き動かされてすべてを投げ打って身を捧げる人もいれば、自分の人生を考えたいと思う人だっている。
     このぐらいのことは私にでもわかるし、また、厚生労働省の調査を見てみると、診療科目によって医師の男女比が出てしまうというのは、やはり現実のようだ。
    ■診療科目に男女比は存在する
     これは日本国内の病院および診療所における診療科目別の比率を調査したものだ。
  • 「LGBTを巡るリベラルと保守の違い」小林よしのりライジング Vol.279

    2018-08-07 22:20  
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     自民党衆院議員・杉田水脈の 「LGBTは生産性がない」 発言が炎上し続けている。
     リベラルの者たちは当然、これを猛烈に非難している。
     一方で保守の側は、ただ杉田から距離を置こうとしている。
     そんな中、自民党衆院議員・谷川とむが、同性愛は 「趣味みたいなもの」 と発言し、さらに火に油を注いだ。
     谷川は、男と女が結婚して子供を授かるのが「伝統的な家族のあり方」で、男が男だけを好きになり、女が女だけを好きになっていたら、国が滅びると発言している。
    「伝統的な家族のあり方」は否定しないが、同性愛カップルがそんなに増えるはずもなく、この議員、同性愛は本人の意思でやめられると思っているようだ。
      同性愛は趣味の問題ではなく、先天的な脳の問題であり、本人の意識では、どうにもならない。
     この認識が一般に浸透し、常識となってからもう20年以上は経つというのに、未だにその知識が皆無の国会議員がいるという事実には驚くしかない。それも、ジジイならまだ仕方ないかもしれないが、谷川は42歳だというから二度びっくりである。
      生まれつき女しか愛せない女(L=レズ)、男しか愛せない男(G=ゲイ)、男も女も愛せる人(B=バイセクシャル)は、一定の割合で存在する。
     男の体に女の脳、女の体に男の脳を持つ人(T=トランスジェンダー)も、必ず一定の割合で生まれてくる。
     生物学的にそうなっているのだから、認めるしかない。
     これは保守とかリベラルとかいう観念を超えている。
      生物学的に全くやむを得ない、先天的な脳内の問題であり、それを差別したり、偏見を持ったり、その人たちが普通に抱く感情を、不道徳だと言うことはできない。
     昔はわしもそういうものとは知らなかったから、ヘンな趣味があるものだと思っていたが、もうその認識はすっかり変わっている。
     最初にはるな愛を見た時は、可愛いなあと思ったものだ。だが、その後のコミカルな挙動に失望してしまったのだが。
     最近は見なくなったが、椿姫彩菜などは元男性とは思えない美しさで、この人となら付き合えるかもと思ってしまった。それを『ゴー宣』の中で言ったら、宮崎哲弥が読んで、小林よしのりがあなたを好いてるよと本人に伝えてしまったようだ。
     そのように、すっかり綺麗な女になっている人もいるのだから、普通の男でも、気づかぬまま惚れてしまい、のちに元男性と知っても、結婚してしまうことだってあるかもしれない。
     こんなに美しいなら、出生時の性なんかどうでもいいと思えるようになり、手術して、ちんこもなく、おっぱいがついているのなら、あとは子供が生まれないということさえ覚悟すれば、それは、十分いけるかも…
     …って、LGBTに対する差別意識はもうないと言おうとして、何かヘンなことをつぶやいているようだ。
      とにかく、LGBTに対する差別や偏見はいけないということについては、保守もリベラルもない。
     ただし、そこから先は保守として警戒しておかなければならないこともある。