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記事 4件
  • 「カジノでなにが起きるのか?」小林よしのりライジング Vol.330

    2019-09-24 21:45  
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     今月20日、神奈川県横浜市議会は「カジノを含む統合型リゾート施設(IR)」の誘致準備費用2億6000万円を盛り込んだ補正予算案を成立させた。カジノに反対する横浜市民は多く、パブリックコメントに寄せられたのも9割が反対意見だったというが、一切無視して2020年代開業へと突き進むようだ。
     挙手しているカジノ企業は、主に外資系だ。トランプ大統領のスポンサーでもある米カジノ最大手ラスベガス・サンズは、今年6月の段階では大阪湾・夢洲への進出計画を言及し、「東京と横浜はチャンスなし」などと言っていたが、8月になると一転。大阪への入札を見送って「東京と横浜に注力」と真逆の発表を行った。
     
     参入を狙うライバル企業は多く、牽制球を投げたり、契約を有利に運ぶためのブラフにかけたりしているのかもしれないが、「東京と横浜は、住民理解と行政対応が整わない」と言ってみたり、「大阪はインフラ面が整わない」と言ってみたり、要求も甚だしい。
     おかげで各自治体は、すっかり舶来のカジノ屋にあやつられ、 「なんとかカジノ様にお越しいただきてぇ!」 とばかりに目の色変えて立ち回っているというありさまである。
    ■カジノ企業は最高権力者のスポンサー
     米サンズはトランプ大統領のスポンサーと書いたが、2018年10月11日の朝日新聞デジタルによれば、安倍首相は、2017年2月に訪米してトランプ大統領の別荘でキスアスしていた時に、どうやらサンズへの日本での事業許可を検討しろと要求されていたらしい。
     参入を狙って根回ししているのは外資系だけではない。
     日本でも、セガサミー、ユニバーサルエンターテインメントなど、海外でカジノを展開したり、カジノ向け決済サービスを牛耳っている企業が何社もある。特にパチンコ・パチスロ機メーカーでもあるセガサミーは熱心だ。
     日本でのカジノ解禁をにらんで、2017年に韓国の現地法人と組み、仁川国際空港の近くにカジノを開業。韓国は、日本の4分の1ほどの国土に17か所ものカジノが存在するという“カジノ先進国”でもある。ここに日本人スタッフを送り込み、ノウハウを蓄積しようというらしい。
     日本でのカジノ推進議論は1999年頃からはじまり、2012年の政権交代を経て2013年に突如沸騰、2013年12月に「IR推進法」が提出されてブイブイ風が吹きはじめ、2016年12月の臨時国会で成立。このさなか、絶妙のタイミングで、こんな出来事があった。
     2013年9月、ホテルオークラ東京で開催されたある披露宴である。
      新郎は経産省若手キャリア官僚の鈴木隼人氏、新婦はセガサミー・里見治会長の令嬢。この宴の席には、現職総理である安倍晋三を筆頭に、小泉純一郎、森喜朗など元首相が並び、菅義偉官房長官ほか閣僚が勢ぞろいしたという。
     セガサミー・里見氏は資産1113億円とされる大富豪で、安倍とは第一次政権時代から親しく、下野した際も「物心両面で面倒を見た」と言われる“超極太スポンサー”だ。安倍政権が、披露宴直後の通常国会会期末ギリギリにカジノ実施法案を成立させたのは、トランプ大統領へのキスのほか、日本のギャンブル王へのご祝儀でもあったのではないか? 
     ちなみに、新郎の鈴木隼人氏は、披露宴翌年の衆院選で自民党・東京ブロック比例代表で出馬して当選。名簿順位は25位だったが、その上の24人は小選挙区で立った候補者で、事実上の名簿1位、当確候補だった。
    ■カジノ施設は地場産業から消費を吸い上げる
  • 「人にはいろんな生きざまがある」小林よしのりライジング Vol.329

    2019-09-17 19:25  
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     リンカーンコンチネンタル・リムジンのお迎えで、筒袖に段袋といういでたちの男たちが「押忍押忍押忍」と整列する屋敷に案内された私の母・京子、18歳。壁に日本刀がずらりと掛けられた「100人殴り込んで来ても、ダイジョーブ!」といった様子の玄関をくぐり抜け、鉄火場を横目に、極道家族の住まいへと手を引かれてゆく。
     ベッドつきの洋間をあてがわれた京子は、銀の食器がずらりと並ぶダイニングで豪勢な食事を楽しんだあと、その晩、子供たちを引き連れて、海辺で開催される花火大会へと案内された。
     花火大会は、このヤクザが毎年催しているもので、地域住民たちの大きな夏のお楽しみだった。
     特に花火がよく見える港の周辺にはテキヤがずらりと並んで、集まった住民たちをにぎやかし高揚させている。たこ焼きや焼きそばを焼いたり、小さな子供にりんご飴を手渡して頭をなでてやったりしているのは、組が世話をしている若い衆だったり、昔から友好関係を築いてその花火大会を縄張りとしているテキヤの集団だったり、縄張りの外から商売をしにやってくる馴染みの露天商だったりするらしい。

     京子がたこ焼きの香りに惹かれていると、極妻は、従えていたカンカン帽の荷物持ちに 「たこ焼き、買うてきてくれる? 〇〇はんの焼いてるやつね。それと子供らに、わたあめ」 と命じた。
    「京子ちゃん、たこ焼きはね、上手に焼く職人さんと、そうでない人がおるんよ。いま、一番おいしく焼いてくれる人から買うてくるからね」
     お祭りの露天でたこ焼きを買っても、どうも焼き過ぎてボールのようになっていたり、とろみがあるのかと思ったら生焼けだったり、あまり「おいしい!」と思えた記憶がなかったが、当たり前だが、技術に差があるのだ。
     極妻によれば、特にわたあめは、相当長年の経験を経て「職人芸」と呼べるレベルの技を持った人でなければ、美味しく、見栄えよく、ふわふわ、かつ満足のゆく密度に仕上げることができないものらしい。入りたての若者が2年や3年練習した程度では、とてもじゃないがモノにはならず、テキヤ集団の親分級の人が、露店の花形として良い場所を陣取るという。
     そうこうするうちにカンカン帽がお遣いから戻る。
     子供たちは大喜びで職人芸のわたあめにかぶりつき、そして京子が口にしたたこ焼きは、ふわふわとろとろの美味だった。それ以降、母は、露店で食べ物を買うときは、テキヤの熟練具合をよくよく観察してから選ぶようになったらしい。
     花火大会は大盛況、露店も大繁盛だった。

     ヤクザや、後ろ暗い過去を背負っている人たちは、日頃は一般社会の人々からは「付き合いたくない」と思われがちで、なんとなく避けられている存在だ。しかし、「ハレ」の場面においては、その感覚も一時的に解かれて、「お祭り会場を一緒に盛り上げるために必要な一員」としてふわっと受け入れられているところがあったと思う。
     見るからにヤクザと思われる人物が商売しているわけではなくとも、この会場のテキヤを仕切っているのはヤクザで、売り上げの一部は上納されており、自分が露店で買い物をすることが、ヤクザに金を流すことにつながっていると多くの大人がわかっていた。けれども、 「まあ、今日はお祭りなんだし、それがヤクザさんの食い扶持なんだから」 と、ひとまず置いておく感覚があったわけだ。
     一般社会には馴染まない、どこか異質な空気感をまとった人々が演出する非日常の舞台こそが、人々に「ハレ」を体感させ、わくわくさせているところもあると思う。
     一方、現在は、ヤクザのイメージがあまりに悪すぎるのもあって、 「反社会勢力、許さない!」「反社会勢力とつきあいのある人間も、許さない!」 という徹底排除の感覚のほうが圧倒的に強くなっている。夏祭りの露店からは、ヤクザや、ヤクザとつながりの濃いテキヤは締め出され、「クリーンな商売人」だけが露店を出すべきで、ヤクザには1円たりとも金を流してはならないという圧力が高まっている。
     
     ちなみに、 最近の露店は、やたらと国際化している。
  • 「セカンドレイプ魔・小川榮太郎」小林よしのりライジング号外

    2019-09-10 16:10  
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     日本人は、未だに近代人にはなっていない。
     野蛮人としか言いようのない、知性も品性もない人間が「知識人」の扱いで「言論誌」に論理のかけらもない文章を載せている。
     しかもその内容が、レイプ被害者を侮蔑・嘲笑する「セカンドレイプ」以外の何物でもない代物なのだ。
     こんなものが平気で流通しているということだけは、決して海外には知られたくない。
    「月刊Hanada(10月号)」に、自称文芸評論家・小川榮太郎の 『性被害者を侮辱した「伊藤詩織」の正体』 と題する文章が載っている。
     詩織さんは性犯罪被害者のまさに当人なのに、その人をつかまえて「性被害者を侮辱した」とは、一体どういうつもりだろうか?
     まあ小川の目的が、詩織さんをレイプした容疑で逮捕状が出ていながら、逮捕を免れたジャーナリスト(元ジャーナリストか?)Yの擁護にあることは、読まなくてもわかる。小川もYも、共に安倍政権の提灯持ちである。同じ提灯を持つ者同士、お仲間意識も連帯感も相当に強かろう。
     文章は冒頭、熱海のホテルにおけるYの様子の描写から始まる。
     詩織さんがYを訴えた民事訴訟の裁判が行われた日、小川がYを熱海に誘ったそうで、小川は 「人生を賭けた裁判の疲労は並々ならなかっただろう」 とYをいたわっている。
     そして小川は、Yの父親が事件のショックから体調を崩し、昨年亡くなったことに触れ、 「私も先年、父を亡くした。レイプ犯の汚名を着た息子が孤立するなかで、病重くなり続けた氏の父上のことを思う都度、私は何度いたたまれぬ思いにかられたことだろう」 と、深い同情の気持ちを表明している。
     案の定、完全にYの味方をするつもりで書いている文章である。
     ところが信じられないことに、小川はこれだけYに肩入れしたすぐ後に、ヌケヌケと 「が、この件に情実は、絶対あってはならない」 と言ってのける。
     そしてさらに、 「私は山口氏を『信じる』という選択は、この件では全くするつもりはなかったし、してはならないと思っている」「私は、山口氏を信じるのではなく、証拠資料、証言を通じて、より真実に近い当日の出来事を知りたいと思った」 と強調して、中立・客観的な立場でこの件を論評するかのような態度を装うのだ!
     一体、どのツラ下げて?
     あれだけ、Yと個人的に親しいことを自ら明かし、Yの無実を願って死んだであろう父親に同情し、Yが父を死に追いやるような親不孝をしたのではないかとは露ほども疑っていない心情を吐露している人物が、今さらこの件を中立の視点で検証するなどと言ったところで、どこの誰が信用するか?
     この客観性皆無の頭の悪さには本当に驚く。フリチンで街中を闊歩しながら、「私は露出狂ではない!」と叫んでいるようなものである。
     Yはホテルの自室に詩織さんを連れ込み、性交したことは認めている。
     そこで争点は、その性交がレイプだったのかどうかに絞られる。
      レイプか否かを決定づける最大の要件は、「合意の有無」である。
     合意なく行われた性交はレイプ。それに尽きる。
     ライジングVol.307(https://ch.nicovideo.jp/yoshirin/blomaga/ar1743157)や『ゴーマニズム宣言』第50章「レイプ裁判の判決がおかしい!」(「SPA!7月2日号」)で詳述したように、現在の日本の裁判では「抗拒不能」(抵抗・拒否できない)という要件が過剰に考慮され、理不尽な判決が連続しているが、あくまでも第一に考えなければならないのは、というより、唯一考慮すべきなのは、「合意の有無」であると言っていい。この認識は、今日の世界的な潮流として定着しつつある。
     ところが小川は信じられないことに、最重要の要件である「合意の有無」を 「密室のことで、判定のしようはない」 とあっさり放り出し、完全に論点から切り捨ててしまうのだ!
     これでは話にならない。 小川は法的・社会的にレイプがどう定義づけられているのか、特に最近はどう考えられているかを一切調べようともせず、完全な無知のまま、 「合意の有無など言っても意味がない」 と決めつけているのだ。
     小川は「新潮45」の廃刊号となった昨年10月号に載せた、杉田水脈の「LGBTは生産性がない」発言を擁護する文章でも 「LGBTという概念について私は詳細を知らないし、馬鹿らしくて詳細など知るつもりもない」 と開き直り、LGBTを「全くの性的嗜好」と完全に間違ったことを平然と書き、LGBTよりも 「痴漢症候群の男の困苦こそ極めて根深かろう」 とまで暴言を吐き散らした。
     議論の前提として必要最低限の知識すら知ろうともせず、完全無知のまま、自分の思い込みだけで平気で誤りを書きまくることを常とする小川榮太郎には、根本的に物書きの資格などないのだ。
     小川は、Yが詩織さんをレイプしたとされる2015年4月3日の詩織さんの行動について、いちいち批判を加えていく。
     その日、詩織さんは靖国神社の奉納相撲の取材をした後、砂埃を浴びた服を着替えるため自宅に寄り、待ち合わせ場所の居酒屋に時間に遅れて着いているが、それに小川はこんな難癖をつけるのだ。
  • 「関東大震災犠牲者慰霊法要レポート」小林よしのりライジング Vol.328

    2019-09-03 17:50  
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     9月1日、関東大震災の犠牲者を追悼する大法要が東京都墨田区の都立横網町公園にある東京都慰霊堂で営まれた。取材に赴いたのだが、日曜日でもあり、かなりの人が集まっており、公園に入ってからなかなか中心部にたどり着けないほどだった。新聞発表では約700人が集まったという。
     東京都慰霊堂での大法要は、都慰霊協会が主催するものだ。昨年まで出席されていた秋篠宮ご夫妻に代わり、次女の佳子さまが初めて参列された。また、この大法要とは別に、公園内にある朝鮮人犠牲者追悼碑の前では、日朝協会東京都連合会による朝鮮人犠牲者追悼式も開催された。
     
     この追悼碑の隣には、 「一九二三年九月発生した関東大震災の混乱のなかで、あやまった策動と流言蜚語のため六千余名にのぼる朝鮮人が尊い生命を奪われました」 という文章からはじまる石板が立てられている。
     大震災直後に 「朝鮮人が井戸に毒を入れた」「朝鮮人が火をつけて歩いている」 などのデマが発生し、あちこちで結成された自警団によって、“朝鮮人狩り”が行われたという出来事だ。
     平成20年3月現在、政府が公表している専門調査会報告書によれば、 「武器を持った多数者が非武装の少数者に暴行を加えたあげくに殺害するという虐殺という表現が妥当する例が多かった」「加害者の形態は官憲によるものから官憲が保護している被害者を官憲の抵抗を排除して民間人が殺害したものまで多様である」「殺傷事件による犠牲者の正確な数は掴めないが、震災による死者数の1~数パーセント(1,000人から5~6,000人)」 (1923 関東大震災【第2編】第4章 第2節「殺傷事件の発生」より)とされている。
     したがって、この政府報告書に従うならば、石板に書かれた「六千余名」は、正確な人数かどうかはわからないが、推定される最大の犠牲者数ということになる。
     朝鮮人犠牲者の追悼式典には、2016年まで、東京都知事が毎年追悼文を寄せていたが、2017年に小池百合子都知事が取り止めて、そのまま今年まで3年連続で見送られた。この件がもとで左派が反発を強めており、また、式典当日に同じ場所で「朝鮮人虐殺はなかった」と訴える右派の集会も行われるという情報があったため、気になって現場へ向かったのだ。
    ●「朝鮮人虐殺はなかった」の団体演説
     現場では、追悼碑を囲んで慰霊式典を行っているその周辺に、式典を支援する左派の団体がおり、フェンスと大量に配備された警察官を挟んで、右派の団体がテントを張って集会を行っていた。
     右派側は 「真実の関東大震災石原町犠牲者慰霊祭」「六千人虐殺の濡れ衣を晴らそう」 という看板を掲げており、何人かがマイクの前に立ち、式典にぶつけるような形で 「朝鮮人虐殺はなかった」「慰安婦の強制連行もなかった。徴用工問題も見てみろ」「関東大震災の時は、朝鮮左翼による横暴、計画されていたテロがあり、それに対処するための自警行為はあった。しかし、虐殺はなかった」「6000人も虐殺したという証拠を出せ」 という演説を繰り返していた。また、左派の団体を名指しして 「なんの縁もゆかりもない過去の朝鮮人に肩入れしている」 と揶揄する演説者もいた。
     名指しされた側としては、式典を妨害されたことにもなり、相当な怒りに満ちており、フェンス越しに警官の制止を受けながら怒鳴り声を挙げたり、スマホやビデオカメラで撮影するなどかなりピリピリした様子だった。
     怒りの矛先は警官にも向いており、 「なんで東京都は差別主義者を守るんだ」 という話し声が聞こえた。警察官の配備が、追悼文を取りやめた小池都知事と結びつくようだ。あとで知ったが、小競り合いがあり、左派側に逮捕者も出たという。
    ●「軍国主義が行った残虐行為」を訴えるパネル展示