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記事 4件
  • 「TPPについて、簡潔に考え方を教えよう」小林よしのりライジング Vol.15

    2012-11-27 14:30  
    157pt
     総選挙の争点としてTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)がにわかに浮上してきた。  維新の会、みんなの党は、TPP参加が背骨のような政党である。  自民党も元々自由貿易論者である安倍晋三は参加したいのだろうが、党内に反対勢力があるので、国益を損なうなら反対、国益になるなら賛成という国民を馬鹿にした「あいまい路線」で誤魔化している。  民主党執行部はTPPを「踏み絵」にして、賛成しなければ公認しないという話だったが、党内の反対派が多くて、公約では「あいまい路線」になる模様だ。  前原誠司は相変わらずTPPによって日本を「開国」するなどと言っており、マスコミでも未だに平気で「開国か、鎖国か?」という言い回しが使われている。  「開国か、鎖国か?」と問われれば、誰だって「開国」と答えてしまうのが、歴史を知らぬ日本人の思い込みだ。   明治維新の開国も、敗戦による開国も、アメリカに武力でこじ開けられた 「屈辱の開国」 であったという認識が日本人にないのが問題なのだ。   そもそも現在の日本は「鎖国」をしているのか?   決してそんなことはない!   コメやコンニャクイモなど、100%以上の高い関税がかかっている品目は 全体の4.5%にすぎない 一方、 関税ゼロの商品は既に35.1% に上っている。   単純平均関税率は4.9% で、EUの5.3%よりも低く、G20加盟国では12番目。   農産品に限っても21.0% で、韓国(48.6%)、トルコ(42.9%)、インド(31.8%)よりも低いのである。  これを「鎖国」と言うのなら、世界中の国が鎖国をしていることになる。  TPPで日本を「開国」しようなどと言う者がいたら、それだけで信用できない人物だと即断していい。  それは、徹底的に不勉強なのか、確信犯の詐欺師かのどちらかである。  JA全中(全国農業協同組合中央会)を始めとする農業団体はTPP断固反対を貫いているが、テレビなどでTPPを取り上げる際には、農業団体の反対を映す一方で、TPPを商機と捉えて賛成している農家も必ず映す。  だが、 農業団体の反対と、一部のTPP賛成農家を同列に並べること自体が おかしい。 マスコミは相も変らず責任逃れのために両論併記してごまかすだけだが、これは根本的に、枠組みの見方が狂っている。   農作物には 「贅沢品」 と 「必需品」 がある。  確かに、海 外の富裕層向けに「贅沢品」を生産している農家は、TPPに よって販路を拡大して売り上げを伸ばせるだろう。  しかし、それはあくまでも少数に留まる。  価格競争を強いられるような分野で、国土の狭い日本の農業がアメリカやオーストラリアに太刀打ちできるわけがない。自由競争となれば、必ず負けていく。  関税ゼロになって海外から安いコメがどんどん入って来るようになったら、「贅沢品」の高級ブランド米で生き残るごく一部を除き、日本のコメ農家は全滅してしまうだろう。  それは、「必需品」の食糧の調達を全て輸入に頼るという、恐ろしく危険な状況を生みだすことになる。  いついかなる時でも、海外から確実に必要なだけの食糧品が輸入できるなんて保障は、どこにもない。  どんな食糧輸出国でも、大凶作に見舞われることはある。そんな時、自国民を飢えさせてでも日本に食糧を輸出するような国など、あるわけがない。そして日本は輸入が途絶えれば、たちまち飢饉に陥ってしまうのだ。   国境というものが簡単に解消できると思ったら、とんでもないことになる。 いざ危機が訪れれば、どの国でも当然がっちり国境を閉ざして、自国の領土 と国民だけを守ろうとする。そこには、徹底した国単位のエゴイズムしか ないのだ。  だからこそ、どんなにコスト的に見合わないとか、輸入の方が安いとか言っても、 食糧自給率は100%を確保しておかなければならない。これは 目先の経済効率ではなく、安全保障の問題なのである。  しかも問題は、食糧だけには留まらない。   TPPは農業だけではなく、24分野の商品・サービスに渡っており、 あらゆる分野で人・モノ・カネ・サービスを、経済の国境を越えてグローバル に競争させようというものである。  そうなってしまったら、全ての分野で一国が勝ち抜くなどということは不可能である。 勝ち抜ける分野もあるだろうが、その一方で、完全に負けて、 国内では消滅してしまう分野が必ず出てくる。  それぞれの国が勝てる分野だけに特化して、有利な商品だけを生産し、流通しあえばいいではないかという考えを 「国際分業体制」 というが、これは非常に危険な発想である。   ある分野の商品を100%他国からの輸入に頼っていて、もし戦争などの不測の事態が起き、国境が閉ざされて、その商品が一切入ってこなくなったらどうするのか?  あるいは、輸出国がその商品を「人質」にとって、値段を吊りあげたり、 日本に対して外交上著しく不利な条件を押し付けたりするようなことが、 絶対起こらないと誰が言えるのか?  「国際分業体制」なんて発想は、全ての国が日本に対して好意的であり、日本に対する輸出を停めたり、それを「外交カード」に利用したりなんてことは決してあり得ないと思っていなければ成立しないのである。  なぜそこまで、他国を無条件に信頼できるのだろうか?   これはまさに、日本国憲法の前文に書かれている「平和を愛する諸国民の 公正と信義に信頼して、われらの安全と生存を保持しようと決意した」 という精神そのものではないか! (続きは「小林よしのりライジング Vol.15」に掲載)
  • 「残酷な競争 HKT48兒玉遥と田島芽瑠」小林よしのりライジング Vol.14

    2012-11-20 15:20  
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      「還暦間近にもなって、アイドルなんかに夢中になって、みっともない」 なんて言葉は、もう聞き飽きた。  そんな非難をしている連中の趣味や人格が高尚なはずがない。ただ単にこのわし、小林よしのりがやることの全部に難癖つけてこき下ろしたいだけなのである。  わしという存在の重力圏から逃れられない連中なのだから、ときどき構ってはやろうと思ってるが。  来年になれば、わしがAKB48を見ながら何を考えているかがわかる本を出すつもりだ。漫画の描き下ろしをする時間をどうやって作るかが問題なんだが。   そもそも「アイドル」の語源はラテン語の「idola」(イドラ)であり、 実在の正しい把握を妨げ、無知と偏見の原因となる要因のことだ。  ようするにアイドルに嵌るということは、偏見でその正体が見えなくなるということなのだ。目が曇って生身の姿が見えない。ただひたすらカワイイものに見えてしまう。それがアイドルというものなのである。  どんなにAKB48の誰かを好きになったとしても、もし実際に付き合えば、たちまち正体はわかってしまうはずだ。  とんでもなくわがままだったり、自己顕示欲が強かったり、だらしない性格だったりして、すぐに嫌いになるかもしれない。  自分の恋人や妻だって、遠くで見ていたときはアイドルのように純粋化していたはずで、付き合ったり、結婚してみれば、こんなもんかと失望し、最悪の場合は離婚に至ることも珍しくない。  アイドルになるためには、ファンに自分の本当の姿を見せないようにするべきであって、やはり「恋愛禁止ルール」だけは守らなければならない。  青少年期というのは、世の中には清純な女性がいる、セックスなんか知らない女性がいると思い込み、アイドルを疑似恋愛の対象にするものだ。  なにしろわしのような年齢になっても、まだ女性に幻想を抱きがちで、アイドルにはもう偏見のみで100%美化したいと思い込む者もいる。  それをわざわざ、現実は所詮こんなものだなどと言って、幻想を壊すようなことをされたって、どうせ信じはしない。  わしはアイドルに嵌る心理構造は十分自己分析しているのであり、ただし、インテリぶって、知的なゲームでもやっているかのように見られてしまうのが嫌なので、むしろ積極的に馬鹿を晒すようにしてきた。  そうすると、 「小林よしのりはAKB48を本気で好きになってバカを 晒している」 という評判が主にリベラル方面から好意的に出てきたので、わしは有り難い評価だと受け止めている。  「アイドル」というものは、真実の姿を見なくていい、偏見で推していい存在なのだ。  AKB48の河西智美が番組を途中でリタイアしたって、本気でファンであるわしにとっては、どうでもいいことだ。河西智美は、あのセクシーな表情と、たまらない甘ったるい声で、歌ってくれればいいのであって、道徳的に正しいふるまいをしているか否かなど知ったこっちゃない。  偏見で目が眩んでいるから、きっとセクハラされてリタイアしたのだろうと思ってしまうし、あんな激しいダンスを踊るAKBメンバーにはカロリーが必要なのだから、一ヶ月一万円なんて不健康な企画はさっさとリタイアしてほしいと願ってしまうのだ。  小林よしのりは自分の推しメンには甘いなどと言ってる馬鹿がいるが、当たり前じゃないか!  それがアイドルに嵌る作法であると言ってもいい。   だが、このような偏愛とも言うべき人物の見方が、政治家に対して されていたら、それは大問題だろう。  もちろん独裁者には、アイドルと同様の偏愛が、国民に強制されるものであるが、心から独裁者を好きな国民はあまりいないかもしれない。  ところがここに、政治家に対してまるでアイドルを見るような偏愛を示す知識人がいる。  「WiLL」12月号で安倍晋三と対談している 金美齢氏 である。 「十月十一日に安倍さんと野田首相のはじめての面会が実現しましたね。 あの時の様子をたまたまテレビで観ていたんですが、握手を交わされている 二人の姿を見て、やっぱり安倍さんのほうが断然、見栄えがしました!」 「それと全農(全国農業協同組合連合会)の大会で、民主党の輿石幹事長と 安倍さんが並んで座っている映像も流れていましたね」 (安倍の発言を挟み )「当然ですけど、あの時も断然、安倍さんのほうが 見栄えしました!」 「私は一口三千五百円で後援会を組織して、安倍さんにカツカレーを ご馳走しようと提案したんです。『三千五百円のカツカレー』をキャッチ フレーズにして、若い人でも安倍総裁にご馳走できるっていいじゃないですか。 それこそ三百六十五日、カツカレーをご馳走する(笑)」  このはしゃぎっぷり!  まさにアイドルに入れあげている状態ではないか! (続きは「小林よしのりライジング Vol.14」に掲載)
  • 「AKB48河西智美はキャンディーが好き」小林よしのりライジング Vol.13

    2012-11-13 14:30  
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      『脱原発論』 (幻冬舎)を出してもなお、「原発ゼロは是か非か」などという論争が行われている。  だが実は、こんな論争は既にとっくに終わっているのである。  もう「是か非か」なんて論争をやっているような段ではない。  原発ゼロか、あるいは何%存続させるかなんてことは、論争によって選択できるような問題ではないのだ。  我々には、選択肢は一つしか用意されていない。  「原発ゼロ」しか選びようがない。  それが現実なのである!  『週刊ダイヤモンド』11月10日号で、前内閣参与・田坂広志氏がこう語っている。  「まず第一に理解すべきは、『原発ゼロ社会』とは『政策的な選択』の問題ではなく『不可避の現実』だということだ。たとえ絶対安全な原発が開発されても、高レベル放射性廃棄物と使用済み燃料の最終処分の方法が見つからない限り、原発は止めざるを得ない。経済界は、この致命的な問題から目をそらしているが、この現実は否応なく迫ってくる。」  仮に原発推進論者の主張が正しくて、原発のコストが最も安かったとしても、絶対安全な原発が開発されたとしても、原発を運転すれば、必ず 高レベル放射性廃棄物 と 使用済み燃料 は増え続ける。そして、これを処分する方法はないのだ。  これまで国は、使用済み燃料を「再処理」してプルトニウムとウランを取り出し、残った高レベル放射性廃棄物を「地層処分」、つまり安定した地下深くに埋めることによって最終的に処分するとしてきた。  再処理をしない場合は、使用済み燃料を直接地下に埋め、これを最終処分とすることになる。  いずれにしても、 10万年放射性レベルが安全値まで下がらない廃棄物を「地下に埋める」というのが最終処分であり、これができることを前提にして、原発は動いていたのである。  ところが9月11日、わが国最高の学問的権威である日本学術会議は、原子力委員会に提出した公式報告書で、こう結論づけた。 「現在の科学では10万年後の地下の安定性を証明することは不可能であり、日本で地層処分を実施することは適切ではない。」   日本では、地層処分はできないのである!!  国が、原発を稼働する前提とし続けた「地層処分ができる」という条件は、ウソだったことがもう明白になっているのだ!  日本だけではない。世界中のどの国も、核のゴミを埋める場所は確保していない。具体的に検討が進んでいるのは、フィンランドのオンカロただ1カ所しかないのである。  捨て場がない以上、取りあえずは何らかの貯蔵施設で数10年から数100年、暫定保管しておくしかない。  だが原発事故を経験した上に、「最終処分」の方法がないことが明白にされた今、新たな「貯蔵施設」の建設に同意するような地域が現れるとは思えない。  そうなれば、 各原発に設置されている使用済み燃料プールが満杯になった時点でオシマイ。仮にどんなに安かろうが、どんなに安全だろうが、原発はもう動かせないのである。   現在、日本の全原発の燃料プールの貯蔵率は平均70%弱まで来ており、あと6年程度で満杯になるとの試算もある。  青森県六ケ所村の、未だ動く見込みのない再処理工場のプールには、全国の原発から運び込まれた使用済み燃料が保管されている。  民主党政権は「2030年代に原発ゼロを目指す」と言いながら、それならば不要になるはずの再処理工場については稼働させる方針という矛盾したことを言っている。  それは、再処理工場を稼働させないなら、プールにある使用済み燃料を各原発に返却すると青森県が言っていることも原因であろう。   もし六ヶ所村から使用済み燃料を突っ返されたら、全国の原発の燃料プールの余裕はさらに半減し、あと3年程度で満杯になるのだ。  どんなに原発の必要性を訴えようが、実際に原発を再稼働したら、たった6年後、もしくは3年後には否応なく「原発ゼロ」にせざるを得ない現実にぶち当たるのだ。  「原発ゼロ」は「政策的な選択」の問題ではない。  「不可避の現実」である。  経済界や、その飼い犬のマスコミ・知識人は「脱原発は非現実的」と言い続けているが、正反対である。   原発維持こそが、非現実的なのである!  「空想的原発推進論」なのである!!
  • 「AKB48みおりんが見えているか?」小林よしのりライジング Vol.12

    2012-11-06 16:00  
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     石原慎太郎が突如東京都知事を放り出し、立ち上がれなかった「たちあがれ日本」の老人たちを引き連れて新党を結成し、国政に復帰するという。  80歳にしてそのバイタリティーには驚くが、田中真紀子が言った通り、暴走老人で終わる可能性も高い。健康面は問題ないというが、さすがに身体を左右に揺らしながら歩いている様子を見れば老人だなと思うし、頭脳の硬直化は隠しようがない。  例えば石原は未だに 「徴兵制」 を主張している。今の日本で徴兵制なんか復活させたら、自衛隊が迷惑する。ハイテク兵器が主力となる現代戦に求められるのは、電子機械工学や情報工学などのエキスパートである。  いまどきのニートやネトウヨのような連中を徴兵して大量に抱え込んだって、邪魔にしかならないのだ。むろんニートやネトウヨが徴兵忌避するのは目に見えているが。   今の若者の精神を鍛え直すためにも、徴兵制の復活が必要だとか老人は言いたがるのだが、自衛隊は国防のために存在するのであって、役立たずの若者の矯正施設ではない。  そもそも、いま石原が小政党を作ったところで、それだけでは国政には何の影響力も発揮できない。  次期総選挙で自民党が勝利しても、単独過半数を取れない場合は、「ねじれ」国会を避け、「決められる政治」にするために連立政権を組む必要がある。  石原としてはその時に自民党政権の補完勢力となり、キャスティング・ボートを握ることこそが必須であり、そのためには、どうしても 「日本維新の会」 や 「みんなの党」 と 「第三極連合」 を組んでおかなければならない。  もしこれが成功して自民・第三極連合の右派連立によって安倍晋三政権ができれば、その次の首相は、「石原新党」からも「維新の会」からも出すことができる。石原や橋下自身が首相になることだって可能になってくる。  石原新党が弱小政党に終わらない方法は、それしかないのである。   しかし「第三極連合」を組むとなると、真っ先に問題になるのは各党の政策の隔たりである。  そこで石原はなりふり構わず、 「薩長土肥も、関心、考え方は違ったけど、幕府を倒して新しい国家をつくるということで大連合があった。一緒にやったらいいんだ」 だの、 「政策が違うとかじゃないんだ。大眼目は官僚支配を壊していくことだ。原発をどうするとか、消費税をどうするとかはある意味、ささいな問題なんでね」 だのと言い出した。