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「セクハラとジャーナリストの覚悟」小林よしのりライジング Vol.267
2018-04-24 21:00153pt『脱正義論』で薬害エイズ運動に嵌った学生たちに向かって、わしは将来、会社・組織に入っても、組織自体が悪を遂行している場合は、個人として戦い、腐敗した組織を変えよと演説した。
それができぬのなら官僚バッシングをするなと言った。
ところがわしの読者のみならず、マスコミや一般人の多くが、「普通の人間は組織に依存せざるを得ず、個人では戦えない」「だから社員を会社が守るべきだ」と主張し、セクハラを理由に官僚バッシングに精を出している。
官僚のトップは叩きやすいが、テレビ局や新聞社は叩きにくいらしい。
セクハラをなくすには、セクハラが起こるシステム自体を変えるしかない。
それはむしろマスコミの側に責任があって、なぜ美人で才媛の女性記者が、官僚に深夜、電話一本で呼び出されて、酒を飲まねばならなかったのか、1年半に何度も二人きりで会食せねばならなかったのか、そこに人々の関心が向かないように、マスコミは財務事務次官にすべての「悪」を背負わせようとしている。
悪いのはセクハラ発言をする「男」であり、「男一般」が女に性欲を感じなければよい、感じても封印する完全な紳士であればいい、品行方正な聖人になればいいと、教育しようとしている。
「記者を男にすればいい」と言えば、女性差別だと言い、女性だって深夜でも権力者の元に駆けつけて情報をとりたいのだと主張する。
権力者がなぜ電話で女性記者を呼び出すのかと言えば、まちがいなく「下心」があるからであり、たまたま情報を漏らしたくなったからではない。情報を漏らしたいだけなら男性記者と会えばいい。
女性記者は権力者の「下心」を百も承知でパジャマを着替えて駆けつけるのである。
女性記者が「ジャーナリスト」ならば当然のことだし、あえて危険を顧みず、「虎穴に入らずんば虎子を得ず」の覚悟で飛び込んでいくのである。
テレビ朝日やマスコミは、女性記者の役割りはそういうものだと割り切っている。くノ一のように女性記者は権力者の懐に飛び込んで、特ダネを取るのである。プロのジャーナリストはそういうもので、セクハラに遭わないように会社が守ってくれるものではない。
それは大人の世界の常識のはずだが、マスコミもコメンテーターも、女性記者には「覚悟」は要らない。会社が守り、権力者がセクハラをしなければいいだけだとウルトラ欺瞞を主張している。
戦場ジャーナリストには「覚悟」は要らない、スポンサーが守ってくれて、兵士やゲリラが銃撃しなければいいだけだと、そんな途方もない馬鹿を主張できるのか?
わしの『新堕落論』を読んだ者なら、「弱者のルサンチマン」について少しは理解したはずだろうが、やっぱり読解できていないのがほとんどなのだろう。
強者の傲慢さを見たら、自分と同じ弱者の位置まで引きずりおろすことしか考えていない。それを繰り返せば、社会には品行方正な小市民しかいなくなってしまうのだが。
Me too運動を「国の将来のために」賛成したわしにも、バランス感覚が働く。それが「保守」の真髄だからだ。
わしは、例え小児性愛者で、養女を性的虐待していたウディ・アレンでも、映画作りを止めろとは言わない。
天才や秀才エリートの中には、品行方正ではない者が多いだろうが、わしは作品や仕事の能力を評価するのである。 -
「民主制より大きな問題を語るべきか?」小林よしのりライジング Vol.266
2018-04-17 17:15153pt森友疑惑なんて小さなことばかり、いつまで国会で問題にしているんだ。もっと論じるべき、大きな問題があるだろう。
…主に右派の(しかも安倍信者の)知識人たちが、こんなお決まりの物言いを偉そうにやっている。
櫻井よしこは「週刊ダイヤモンド」3月31日号で 「森友文書だけが日本の問題ではない 国の安全への責務を政治家は自覚すべきだ」 と題するコラムを書いている。
ここで櫻井は、 「急展開する国際情勢を見れば、国会が同問題だけにかまけていてよいはずはない。国会は日本の命運を左右する大きな国際情勢問題に急ぎ取り組むべきだ 」 とした上で、北朝鮮問題に関して 「日本国の安全を確固たるものにする責務を政治家は自覚すべきだろう」 と主張する。
櫻井よしこがそういうのはわかる。安倍政権を守るためだったら詭弁はおろかフェイクだって言うのだから。
しかしこれとそっくりなことを、西部邁の弟子筋である佐伯啓思(京大名誉教授)が、よりによって朝日新聞(4月6日付)に書いたのには驚き、呆れ果てた。
佐伯は、国会やメディアにおける森友問題への追及を 「事実も想像力も、また様々な政治的思惑も推測もごちゃまぜになったマス・センティメント(大衆的情緒)」 でしかないと決めつけたうえで、 「その時その時の不安定なイメージや情緒によって政治が右に左に揺れ動くのが大衆民主政治というものだ」 と冷笑して切り捨て、こう嘆くのだ。
私がもっとも残念に思うのは、今日、国会で論じるべき重要テーマはいくらでもあるのに、そのことからわれわれの目がそらされてしまうことなのである。トランプ氏の保護主義への対応、アベノミクスの成果(黒田東彦日銀総裁による超金融緩和の継続、財政拡張路線など)、朝鮮半島をめぐる問題、米朝首脳会談と日本の立場、TPP等々。 もっと論じるべき大きな問題があるのに、森友疑惑のような小さな問題をいつまでもやっている場合ではないなどという言い草は、正しいのか?
櫻井や佐伯は、天下国家の「大文字」の問題さえ議論しておけば、その足元で民主制が崩壊していてもかまわないと言っているようなものだ。
なぜなら、森友問題は権力者が「妻」や「お友達」のために国有財産をタダ同然で渡そうとして、それをごまかすために公文書の改ざんまで起こしてしまったという、民主制の根幹に関わる問題だからだ。
さらに言えば、 天下国家の「大文字」の問題があるから国内の「小文字」の問題にこだわるなというのは、「日本は、中国になれ」と言うのに等しい。
中国では、国内問題は「小文字」の問題として放置されている。民主制もなく、権力さえ握れば利益誘導も縁故主義もやり放題。憲法には美しい理念が書かれているが、何一つ守られていない。
しかし国外に対する「大文字」の問題では、中国はアメリカやロシアとも対等に渡り合える「世界の超大国」として振る舞っており、そのための戦略は徹底的に考え、実行している。
足元の国内問題がガタガタになっているのにもかまわず、「天下国家」のことだけ考え、強国の体裁だけを保っているのが中国だ。 国家は国民のことを顧みず、国民も国家を一切信用していない。櫻井や佐伯は、そんな国がいいのか? 日本をそんな国にしたいのか!?
そしてさらに、問わなければならないことがある。
そもそも日本には「大文字」の政治課題を語れる資格などあるのか?
例えば北朝鮮の問題について、日本の国会で何をどう論じられるというのか。
もし米朝会談が実現したとしても、アメリカは自国のことしか考えていないのだから、テーマに乗せるのは北朝鮮に、アメリカ本土まで到達できる核搭載ICBM(大陸間弾道ミサイル)を放棄させることだけだ。
もちろん、日本の拉致問題だの、日本を標的にした短距離核ミサイルだのの問題なんか、アメリカの眼中には一切あるわけがない。
そんな状況で「森友問題なんかより北朝鮮」と主張する櫻井よしこは、具体的には何をするべきだと言っているのか? -
「一般常識を敵にする安倍信者」小林よしのりライジング Vol.265
2018-04-11 11:30153pt世の中には、一般の常識・良識とは真っ逆さまの理屈を「常識」「良識」だと、大真面目に主張する人たちがいる。
一般人から見ると「頭がおかしい」としか思えないが、その人たちは自分に都合の悪いことは一切見ようとせず、一般社会の方がおかしいと思っている。
世の大多数から批判されると、迫害されたと被害妄想を抱き、同じ理屈を共有する者だけで結束を固めて閉ざしていく。時には存在しない「敵」を想定し、それを攻撃することで自己を正当化する。
そうして主張はどんどん先鋭化し、より一層、一般常識から乖離していく。
読売新聞社の全国世論調査では、佐川前国税庁長官の国会における証言に75%が「納得できない」と回答している。
安倍昭恵を国会に呼んで説明を求めるべきだとの意見は60%で、「そうは思わない」の36%を大きく上回っている。
国有地の8億円値引き、そして公文書の改ざんという前代未聞の不祥事を官僚が勝手にやるわけがなく、もし官僚が忖度して勝手にやったとしても、安倍昭恵の存在なしにこんなことが起きたはずがないというのは、ごく真っ当な一般庶民の常識的感覚だ。
ところが、無条件に安倍昭恵が「潔白」だと信じ、その証人喚問を求めることは 「人権侵害」 だと主張する、「頭がおかしい」としか思えない人がいる。
産経新聞の「エース記者」、 阿比留瑠比 だ。
しかも産経にはこれに賛成する読者がいるようで、阿比留は4月5日の産経新聞コラム「極言御免」で、そんな読者の声を紹介している。
「昭恵さんの証人喚問が実現すれば日本の社会に大混乱をもたらすだろう。知らぬ間に隣人や知人に犯罪容疑者にされる恐怖が社会全体に疑心暗鬼を生むからです」
昭恵は「知らぬ間に」疑われたわけじゃないでしょう! 怪しすぎる状況証拠が山積みでしょうよ!!
安倍昭恵を証人喚問したら、社会全体が恐怖に覆われ、日本社会が大混乱に陥る!? どこのノストラダムスだ!?
「知らぬ間に犯罪容疑者になる恐怖」だったら「共謀罪」の方が百万倍大きいと思うが、この人は共謀罪に反対したのだろうか?
阿比留はさらにこんな読者の意見も紹介する。
「臆測で『裁判』にかけられるようになったら自由に意見も言えなくなる。何とかまっとうな世の中になってほしい」
あまりの無知に、唖然とする。
国会の証人喚問は「裁判」ではない!
時には「公開裁判」のように見られることもあるが、これはあくまでも議院証言法に定められた、国政調査のための証言を求める制度である。証人は「被告」として扱われているわけじゃないし、そこで裁きを受けることもない。
安倍は「真相究明に全力を挙げる」と言っているのだから、それならば真相究明のために安倍昭恵の証言は必要不可欠だと思うのは、全くの常識である。
ところがこの読者は、昭恵の証人喚問を求めたら「自由に意見も言えなくなる」、「まっとう」ではない世の中になるという。
そして阿比留はこれに全面的に賛同し、こう書くのだ。
日本社会の現状に深い閉塞感を覚え、今後の日本のあり方についても憂慮しているのが伝わってくる。現代の魔女狩りに、おぞけをふるう人は少なくない。
証人喚問は裁きの場でもリンチの場でもなく、国政調査のための証言の場でしかない。本当に潔白なら、堂々と出てきて潔白だと言えばいいだけのことだ。それに「深い閉塞感を覚え」、「現代の魔女狩り」呼ばわりして「おぞけをふるう」とまで非難する意味が全くわからない。
ひょっとしたら、阿比留も産経読者も実は内心、昭恵が「真っ黒」だと思っていて、証人喚問に出したらオシマイだと予感しているから、こうもヒステリックになっているのではないか?
続けて阿比留は、野党やメディアが昭恵の証人喚問を求めることをこう非難する。 -
「籠池は冤罪であり、不当な勾留であり、人権侵害であり、憲法違反である」小林よしのりライジング Vol.264
2018-04-03 20:30153pt日本の社会はもはや、中国や北朝鮮まであと一歩というところまで来ている。
それを象徴する出来事が、森友学園問題における籠池前理事長夫妻の逮捕と長期勾留である。
そもそも、籠池夫妻を「詐欺」容疑で逮捕すること自体が不当であり、これは「冤罪」以外の何物でもないのだ。
森友学園が校舎の建築に際して、国土交通省の 「サスティナブル建築物先導事業に対する補助金」 というのを不正に受給したというのが逮捕容疑なのだが、これに「詐欺罪」を適用すること自体がありえない。
素人考えでは、お金を騙し取ったのなら詐欺罪じゃないかと思ってしまいそうだが、 国の補助金を騙し取った場合には 「補助金適正化法違反」 が適用されるのだ。
お金を騙し取れば、 一般に詐欺罪 が適用される。
ただし、騙し取ったお金が国の補助金であれば、 特別に補助金適正化法違反 が適用される。
一般的に適用される法律があるのに、それとは別に、適用範囲が狭い特別の法律が存在するのである。
このような場合、 適用範囲の広い方(詐欺罪)を「一般法」、狭い方(補助金適正化法違反)を「特別法」 という。
お金を騙し取るという行為は同じでも、 そもそも国の補助金というものは当局の十分な審査を経て支給されるべきものであり、不正な受給があれば、交付した国の側にも責任があると言わねばならない。
そこ で国の補助金を騙し取った場合には、特別に「詐欺罪」よりは罪の軽い 「補助金適正化法違反」という犯罪とすることにしたわけだ。
詐欺罪は「10年以下の懲役」で「未遂罪」も設けられているが、補助金適正化法違反は「5年以下の懲役・罰金」で、「未遂罪」はない。
このような法の趣旨から、「一般法」と「特別法」の両方が存在する場合は、必ず「特別法」が適用される。
籠池夫妻の場合、あくまでも国の補助金なのだから「補助金適正化法違反」が適用されなければならず、大阪地検は法律上の「基本のキ」も外したデタラメな逮捕をしたのである。
しかも、籠池は虚偽の請負契約書などを提出して不正に補助金を引き出そうとしたものの、 当局はそれに騙されずに審査し、適正な額の補助金を交付したということなので、これは「未遂」だった ことになり、 未遂罪のない補助金適正化法違反は適用されない。
そのうえ籠池は既に補助金を全額返済している。 過去には、よほど多額の補助金不正受給でない限り、全額返済しながら起訴された例はないという。
つまり、籠池夫妻は本来適用されるべき補助金適正化法違反で起訴される可能性はほぼなく、事件化などされるはずがなかったのだ。
それをあろうことか、大阪地検は詐欺罪で逮捕・起訴してしまったのだから、これは過去に数々あった検察不祥事にも匹敵する、もしくはそれ以上の暴挙としか言いようがない。
そもそも、籠池夫妻を逮捕・勾留する必要がどこにあるのか?
逮捕が認められるのは「逃亡のおそれ」「証拠隠滅のおそれ」がある場合だが、籠池は「逃げも隠れもしない」と公言し、「百万円返す」と安倍を追いかけたりして人ごみの中にも平気で現れ、「危険だから少し隠れてくれ」と言いたいほどだったから、逃亡のおそれなど全くない。
証拠隠滅にしても、すでに検察は補助金受給をめぐる事実関係に関する主要な物証をほとんど押収し、関係者の取調べも実質的に終えており、実際に逮捕の翌月には夫妻を起訴している。収集した証拠で十分と判断したからこそ起訴したはずで、もはや証拠隠滅のおそれなど全く関係ない。
それなのに籠池夫妻の勾留はもうすぐ9カ月となる。家族との接見も禁止、手紙のやり取りも弁護人を通じてしかできないという異常な状態が未だに続いている。
しかも司法当局は、なぜ籠池夫妻がこのような厳重かつ長期にわたる勾留をされているのかについて、法的根拠の説明を一切していない。
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