• このエントリーをはてなブックマークに追加

記事 2件
  • 「男女平等イデオロギー国家・スウェーデン」小林よしのりライジング Vol.285

    2018-09-18 20:45  
    153pt
     日本の医療の仕組みや国民性を異常に自虐し、海外の仕組みを無条件に賛美する 「海外出羽の守」 がよく持ち上げる国に 高福祉国家として有名なスウェーデン がある。
     スウェーデンは立憲君主制の王国で、日本の約1.2倍の国土に、人口は東京都とほぼ同じ約1000万人。首都ストックホルムは札幌と似た気候で、11月から3月まではマイナス気温。冬の日照時間は1日6時間ほどしかないという厳しさだ。
     日本には、この10年ほどで家具の『IKEA』や、ファスト・ファッションの『H&M』などが進出してきた。日本ともアメリカとも違う独特のセンスに、なんとなく憧れを感じる人も多いかもしれない。
     
    ■高福祉・高負担の福祉国家
     スウェーデンは、「『海外では女医が多い』の疑問」で紹介した通り、医者になかなかたどり着けないが高福祉の国家だ。
     18歳以下は医療費無料、18歳以上でも1年間に支払う医療費は上限が約1万2000円まで。大学・大学院まで教育費無料、児童手当、育児休暇時の給与補償、無料託児所、地方自治体による高齢者の在宅ケアなど充実している。
     ただし、税金はべらぼうに高い。所得税は、収入に関係なく 地方税が約30% 。さらに年収390万円以上になると 国税も20%~25% 。プラス 社会保険料として給与の7%を個人負担 、28%を企業が負担。日々の生活では、 消費税が25%(軽減税率が導入されているが、食料品でも12%) という具合だ。
     憧れの高福祉を享受するには、それ相応の負担をしなければならない。
    ■専業主婦を否定する男女平等イデオロギー国家
      スウェーデンは国家理念として 「男女平等・人権尊重・個人尊重」 を掲げている。 この3本柱は スウェーデン・バリュー と呼ばれ、国民に共有されており、社会制度に色濃く反映されている。スウェーデン国民はすべて平等で、等しく福祉と社会保障が提供され、絶対に差別されてはならない。
     しかし、スウェーデンも王国発祥の時点からこのような国家理念を掲げていたわけではない。 もともとは「父親が外で働き、母親が家を守る」という夫婦分業の成立した《伝統的な家族》が一般的だったが、 1930年代から政権をとってきた社会民主党が、戦後、その理念である「男女平等」「女性の家庭からの解放」を急激に促進させた のだ。
  • 「出羽の守退治・海外医療事情を深堀り!」小林よしのりライジング Vol.283

    2018-09-04 22:20  
    153pt
     ネットメディアBuzzFeedNewsに 「女性医師の割合、日本は先進国で最低 学生比率も印パに及ばず」という“出羽の守記事” があった。
     インド・パキスタンという2国を持ち上げている時点で、すぐに怪しいと感じる人のほうが多いのではないかと思うが、女医問題を考える際のテキストとして、この記事の裏側を解説してみたい。
    ●女医が多いエストニアは、女性の徴兵制もある
     記事ではまず、「『海外では女医が多い』の疑問」で紹介したOECD加盟国の女性医師の割合を引き合いに出し 「女性の比率が高いのは、エストニア、フィンランド、スロバキアなど北欧、中東欧諸国だ」 と紹介している。
      女医率73.8%でOECD第1位のエストニア は、すでに論じた通り、社会主義体制の崩壊によって経済格差が生じて失業率が伸び、男性の自殺率や犯罪死亡率が増加している国だ。男性の人口が女性の88%しかない。
      さらに深堀りしておくと、エストニアという国は、隣接するロシアから侵略された経緯もあり、現在もその脅威に常に備えなければならないという緊張状態に置かれている。そのため、 女性も軍隊予備部隊に参加して軍事訓練を受ける義務がある。
     
     おまけに、頼みの綱のアメリカは、よりにもよってロシアと仲良くしていて、バルト三国を突き放した。
    ▼バルト3国をロシアから守ると保障しなかったトランプ
     https://www.newsweekjapan.jp/stories/world/2018/04/3-97.php
    (Newsweek 2018年4月5日)
     記事によると、エストニア・ラトビア・リトアニアのバルト三国首脳は、アメリカのトランプ大統領に対して、「ロシアが侵攻してきた際、領土を守って欲しい」と要請したが、トランプは、バルト三国がアメリカ製の武器を購入し、NATOに金を出したことについては褒め称え、肝心のロシアについては「脅威」とは認めなかった。
     しかもトランプは、「バルト三国はロシアと仲良くしたほうがいい」とまで言ってしまっている。「アメリカはバルト三国を守る気がまったくない」ということを公言してしまったのだ。NATOの盟主であるにも関わらず、「NATO? なにそれ?」としか思っていないのである。
    (ほら、日本もよく考えたほうがいい…)
     
     こうなったら女性も動員して国難状態に立ち向かうしかない。というわけで、エストニアの女性は、国防軍だけでなく民兵組織に参加しているケースもある。仕事をして、子育てしながら、常時ライフルに油を差して戦闘の準備をし、週末になると子供を家に残してゲリラ戦の演習に参加するのだ。
     女性は死んでいく男性に嘆きながら、働きつつ、子供を産み育て、武器を持って命懸けで戦う緊張と恐怖にも耐えねばならない。
     男女平等を絶対正義と考える人々は、エストニアの女性の生き方を大絶賛して推奨するだろうか? それとも、「そんな極端な国難、うちの国にあるわけないから」と安心したところで、「働き、戦う女性の精神」だけをつまみ食いするのだろうか?
    ●フィンランドに憧れるなら町医者に行くな
      女医率57.2%でOECD第3位のフィンランド。 東京医大の問題が発覚した際には、駐日フィンランド大使館が、ツイッターにこんな投稿をして話題になった。