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記事 4件
  • 「共同体の喪失と『君の名は。』」小林よしのりライジング Vol.194

    2016-09-28 10:50  
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     9月25日に放送されたNHKスペシャル『縮小ニッポンの衝撃』は衝撃だった。
      今年、5年に1度行われる国勢調査の結果が発表され、大正9年(1920)から行われてきた調査で、初めて日本の総人口が減少に転じた。
     前回の調査に比べて94万7千人のマイナス。全国の自治体の8割以上で人口が減少した。都道府県別で最も人口が減少したのは北海道で、12万3千人のマイナス。そして島根県は全国で唯一、人口が大正時代を下回ったという。
     この傾向が今後ますます加速していくのは確実で、日本はこれから、歴史上経験したことのない人口減少の時代を迎えるのだ。
     これまで人口が一極集中していた東京でさえも、東京オリンピックが行われる2020年を機に減少に転じると東京都が試算している。
     地方からの転入者によって人口増加を維持してきた東京だが、今では20代の転入者の年収の平均が200万円程度で、結婚して子供を作ることが望めない状態になっている。
     一方で近年、30代以上の転入者が増えているのだが、これは東京オリンピックを控えた建設需要で人手不足となっている交通誘導など警備の仕事に就く、地方からの転入者が多いからだという。
     この仕事も安定したものではなく、200万円程度の年収にしかならず、結婚も望みがたいのだが、地元に帰っても仕事がないため、まずこれを足掛かりにして、次の仕事を探そうとして、そのまま長期滞在になる場合が多いらしい。
     だが、次のもっといい仕事なんてないし、今の仕事ですら、2020年までのものだ。全く未来がないのだ。
      こういう人たちが単身のまま高齢化すると、納税額が少ないから税収は減少し、それでいて社会保障費は大幅に増加することになる。
     そうなれば自治体の財政は逼迫し、全てのインフラが維持できなくなってくる。水道管の修理、道路の補修、学校、病院、公園など、あらゆるものを削減しなければならなくなるのだ。
     現に、もうそうなっている自治体もある。その代表が、10年前に財政破綻した北海道夕張市だ。最盛期に11万人いた人口は現在9千人以下にまで減り、人口に合わせて行政サービスを縮小する「撤退戦」の最中なのだ。
     市長は35歳の若さで、給与は手取りで15万8千円、交通費など公務の支出も自腹で、「撤退戦」の苦渋の決断ばかりを続けなければならず、見ていて本当に気の毒に思った。
     公園や図書館は廃止、医療機関は縮小。幼少の頃からそんな様子しか見ていない中学生は将来に希望が持てず、早く地元を離れたいと思うようになる。かつては8割が地元の高校に進学を希望していたのに、今では3割ほどだという。実際、地元にいても就職先はないだろう。
     一方、島根県雲南市では、財政難から住民に行政サービスを代行させている。地域ごとに住民組織を作って予算を与え、住民に水道の検針や単身高齢者の見回りなどを担わせる。このような動きは全国各地で進められているという。
     しかし、住民がそれぞれ仕事を持ちながら行政サービスの代行までするにはかなりの負担がかかる上に、その住民自身も高齢化して、活動がままならなくなるという事態も起こりつつある。
     このような、いま地方で起きている現象が、将来は東京でも起こると予想されているのである。
  • 「『医療の発達』に男系男子の出生を期待する愚」小林よしのりライジング Vol.193

    2016-09-20 22:45  
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    「我皇統ノ天壌ト極リナク、綿々継承スル所ノモノハ、妾ノアルヲ以テナラズヤ」
     これは、明治13年の元老院会議録に記載されている義官の発言である。旧皇室典範制定に関する議論のひとつに「天皇の侍妃制」があった。冒頭の言葉のとおり、 「天皇の親族に妾(側室)を加えるべき」 という考え方に収まっていった。
     実際に、側室がなければ成り立たなかった。明治天皇は皇后との間に子がなく、5人の側室との間に10女5男をもうけたが、内10人が乳幼児のうちに脳膜炎で亡くなり、生き残った男子は大正天皇ただひとりだった。
     皇室に限らず、 明治から大正にかけては《出生率》も《乳幼児死亡率》も高い「多産多死」の時代。 旧皇室典範制定に関する皇位継承論争も、あくまで「側室ありき」で、 一般社会にも「お妾」は公然と存在 していた。
      世は昭和から平成と移り、《乳幼児死亡率》は劇的に低くなった。しかし、だからと言ってぽんぽん産んでどんどん育てまくっているというわけではない。同時に《出生率》も下がって「少産少死」の時代 となったのだ。国民のほとんどは、「夫婦と子」の核家族。
     そのうえ、 落語家から歌舞伎役者まで、女遊びを非難されるような国民感情が席巻 している。
     中村橋之助と芸妓の仲まで「不倫」とされたのには、かなり仰天した(三田寛子のよどみない完全無欠のしゃべりっぷりにも仰天したけど)。歌舞伎役者の女遊びがそんなに問題だと思うなら、小林麻央の闘病ブログを「感動ポルノ」として骨の髄までしゃぶりつくすゲスさに乗じて、あらためて市川海老蔵に婚外子がいることを掘り起こして問題視したらどうかと言いたい!
     あきれるところもあるが、これが現代の国民感情なのだから、国民同様に核家族でいらっしゃる現代の皇室においても、もし側室が置かれるなどということになれば、奇異の目で眺める国民が大多数となるだろう。
      皇室に対して「まったく別世界の変わった世界の人々」「大奥みたいなところ」という現実生活と乖離した感覚が持たれるようになり、今上陛下が人生をかけて築き上げられた「象徴天皇像」そのものも崩壊する恐れがある。
    ◆一人の女性から人権をはく奪して「産めるだけ産め、男子を」と言えるのか?
     なによりも大事なのは、 いずれの皇族方も、それぞれ「たまたま女子」「たまたま男子」としてお生まれになった 、ということだ。天皇陛下も、皇太子殿下も、秋篠宮殿下も、悠仁親王殿下も、みなさま「たまたま男子」なのである。
     現状の男系男子限定のまま、 安定的な皇位継承 を実現しようとするなら、いずれ悠仁さまとそのお妃さまに 「皇位継承者はもちろん、新宮も増やしたいので、産めるだけ産んでほしい。男子を」 などと無理な要求を突き付けることになる。やはり、 常識的には、男系男子限定は側室とセットでしか成立させられない、という結論が現実 なのでは?
     しかし、男系男子限定派は 『側室』 という単語が飛び出すなり、即座にこう主張する。
    日本大学法学部教授・百地章氏
    「側室の問題ですが、昔は生まれてすぐに亡くなったと言いますが、医学が進歩すれば立派に生まれる時代なんですから、その問題はありません」
    明治天皇の女系の玄孫で父親の代から生まれも育ちも皇族だったことは一度もない、せいぜい「旧宮家系」ぐらいとしか言えない完全なる一般国民・竹田恒泰氏
    「かつて医学が未発達の時代、出産は危険なものでした。無事に出産を終えたとしても、幼児の死亡率は極めて高く、生まれた子供が成人することは難しいものでした。 そのため、天皇は多くの女性との間にたくさんの子供を儲けることが求められたのです。 その点、現在では医療が発達し、出産の危険性と幼児の死亡率は極端に低くなりましたので、庶系に皇位継承権を与えなくても、皇位継承は可能であると考えられます」
     男系男子限定派なら、誰でも『側室』ボタンを押せばこういうセリフが自動再生される仕組みになっていると思う。
     不気味なのが、両氏とも、 明治の多産多死時代を振り返って、《乳幼児死亡率》は下がったということしか言っておらず、「安定的に男子が生まれる」という根拠はなんら提示していない。
  • 「天皇は『Y染色体を入れる器』か?」小林よしのりライジング Vol.192

    2016-09-13 22:40  
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     9月11日、「天皇陛下のお気持ちをなぜ叶えないのか?」と題して第58回「ゴー宣道場」を開催した。
     当初の予定にはなかった緊急開催で、先月の関西道場に引き続き天皇陛下の生前退位がテーマである。
     安定的な皇位継承が実現するよう支援することを最重要のテーマとして掲げてきたゴー宣道場としては、事態が切迫しているいまこの問題を出来る限り議論していく以外にない。
     それにしても日本の歴史上、一般国民がこれほどまでに天皇陛下に堂々と盾突くことのできる時代などあっただろうか!?
     天皇陛下の「玉音放送」である8月8日のビデオメッセージで、陛下はお言葉の最後に 「象徴天皇の務めが常に途切れることなく、安定的に続いていくことをひとえに念じ、ここに私の気持ちをお話ししました」 とおっしゃり、 「国民の理解を得られることを、切に願っています」 と締めくくっておられる。
     あのお言葉は、自らの高齢化による譲位が入り口であり、その出口は皇位の安定的継承を願い、それを国民に託すというものになっている。
     本当なら、これを聞いてすぐにご真意を拝察し、皇室典範を改正して譲位の制度化に向かう以外にないのである。
     ところがこのお言葉を受けても、政府は制度化ではなく「一代限り」の生前退位を、しかも特措法で実現してしまおうとしており、皇室典範には手を付けずに済まそうと目論んでいる。
     そして「保守」を騙る者たちがこれを支持しており、それどころか中には生前退位そのものにも反対し、天皇陛下が間違っていると公然と主張する者までいるのである。
     わしはこういう者たちを「逆賊」と呼ぶ。そもそも彼らはこんなことを天皇陛下に面と向かって言えるのだろうか? そこまでの諫言をするのなら、作法として切腹しなければいけないくらいの大ごとであるのに、彼らは何の覚悟もなく、平気で言ってのけるのだ。
     自称保守派は、天皇は祭祀と国事行為さえしておけばいいと主張し、今上陛下が最も重視してこられた被災地ご訪問などの公務は、もともと必要ないとまで言っている。
      公務は天皇と国民が直接対話していくことであり、昔の天皇でいえば「国見」にあたる。
     古代国家の建設期、天皇は積極的に地方へ行幸(天皇の外出を「行幸」、複数個所を回ることを「巡幸」という)して「国見」をした。
     天皇は国見をしてよい言霊を放つことでよい国になるように祈り、その際に詠んだ国褒めの歌がいくつも残されている。そして、天皇は国見によって支配下の国の様子を知り、在地の主張と服属儀礼を結んだのである。
     近代国家の形成期にも、明治天皇が全国を巡幸し、人々に新たな時代の到来を実感させると共に、地方の民衆を統合して近代国家建設のために効果を上げた。
     そして明治天皇が崩御し、明治神宮が建設される際には、生前の天皇のご厚情に報いようと全国から10万本もの献木が寄付され、15万人ものボランティアが手銭手弁当で上京し、広大な鎮守の森を人手によって造り上げたのである。
     戦後の混乱期にも、昭和天皇が自らのご意思で、国民を慰め、励まし、復興に立ち上がるための勇気を与えるために全国をくまなく巡幸している。この時の天皇と国民の触れ合いは『昭和天皇論』に描いた。
      今上陛下は歴代の天皇の国見に学び、象徴天皇として国民と共にあるという姿を作るためには公務が絶対に必要だとお考えになり、地方巡幸などの公務を増やしてこられたのだ。
     だが自称保守派は天皇が公務として全国に出かけ、国民と触れ合うこと自体に反対している。なぜなら自称保守派の連中は、いつでも自分たちに都合よく天皇を政治利用できるようにしておきたいというのが本音であり、そのために、天皇と国民の間を分断させておきたいのだ。
     だから自称保守派は、天皇が勝手に公務を増やしてしまったのであり、高齢なら減らせばいい、天皇は祭祀と国事行為だけやっておけばいいのだと言うのだ。 
      だがこれは、今上陛下が長年にわたって全身全霊をかけて築いてこられた象徴天皇像を根本から叩き壊そうとしているに等しい。今上陛下の人生を全否定しているに等しいのである!
  • 「障害者は感動的な人ではないから恐れるな」小林よしのりライジング Vol.191

    2016-09-06 22:35  
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    「Vogue」という女性誌がパラリンピックのPRのために、健常者の腕と脚をPhotoshopで消した写真を掲載した。これが批判されているようだ。

      (当該のインスタグラム画像)
     なぜ障害者のモデルを使わなかったのか、ということだろうが、多分、健常者のモデルの方がカッコ良かったからだろう。
      モデルはひたすら美形が求められる。 人格なんて関係ないし、日本の雑誌でも外人ばっかり使っていたときがあっただろう。日本人よりも外人の方が美形だったからである。
     最近は日本にもハーフが多くなってきて、美形が多くなってきたから、雑誌もモデルを見つけやすかろう。そもそも栄養状態が良くなってきて、椅子の生活になったから、足が長くてスタイルのいい若者も多い。
    「Vogue」の意図がどこにあるか知らないが、そんなことはどうでもいい。美醜にこだわる媒体は、障害者の選手の中にたまたま美形がいなかったら、健常者をCG加工で障害者に偽装させたりもするのだ。これは悪い行為なのだろうか?
     日本人のモデルの代わりに外人を使うのはよくて、障害者のモデルの代わりに健常者を使うのは悪いことなのだろうか?どうにも解せない。