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2015年2月の記事 4件

「憎悪に駆られ暴走した先の未来とは?」小林よしのりライジング Vol.122

 イスラム国は残虐非道だ! テロに屈するな! イスラム国を殲滅せよ!  ……といった単細胞・反知性主義の言葉が、首相から国会からマスコミから一般大衆まで、ありとあらゆるところに蔓延している。   かつて9.11以降、アメリカがアルカイダやタリバンに、あるいはフセイン政権に戦争を仕掛けるときにも、恐米ポチと化した日本人たちが、似たような善悪二元論を振りかざしたものだ。   これに異を唱えると、たちまち「テロ組織に味方するのか?」となじられる。 白か黒か、善か悪かという極端な二元論は、本来、日本人の思考パターンではないはずだ。むしろキリスト教的な「神か悪魔か」の思考パターンに、日本人が影響されているのである。  日本人には天照大御神も素戔嗚尊も、善と悪が入り混じったカミ観念があるから、人間や世界をそう単純には分類しないはずである。  普段は日本人の誇りや伝統などと主張しながら、欧米が怒ったときには、忽ち一神教の世界観に洗脳されて、残虐非道なテロ組織は殲滅せよと叫び始める・・・まったく情けない非日本人どもである。  そもそも「殲滅せよ!」と、日本人が言う資格などない。カネを出すことしか出来ない身分で、「殲滅せよ!」と吠えてる姿のぶざまなことといったらない。殲滅するには軍事力の行使が必要であり、カネだけで「殲滅せよ!」とまで叫ぶのは恥ずかしいのである。  当事者意識のまったく欠落したこういう輩こそが、『新戦争論1』を読まねばならないのだが。    かつてはアルカイダもタリバンもフセインも残虐非道とされたのだが、今はイスラム国を残虐非道と誰もが言う。  人質の首を斬って殺害したのが残酷だ、敵対勢力の捕虜を焼き殺したのが残忍だというのなら、有志連合が空爆で建物を破壊して人々を圧殺したり、火災で焼き殺したりしているのは残酷ではないのか? 残忍ではないのか?   前近代的な手法で殺したら残酷、近代兵器で殺したら残酷でない、そういう認識でしかないのか?   デオドラント化された殺戮なら、残虐ではないというのなら、都市空襲も原爆投下も残虐非道ではなかったことになる。 最近の自称保守派や政治家の考えの浅さは幼児以下である。  空爆は連日行われ、その都度膨大な犠牲者が出ているはずだ。その中には、無差別に巻き込まれた女子供も多数含まれているだろう。  それに比べればイスラム国は殺す人間を選んでいるし、人質の首を斬るのも、一人斬って、しばらくしてまた一人というペースだし、捕虜の殺害も一度にたかだか数十人単位ではないか。あの首切りには麻薬を使って苦痛を緩和しているという話もある。ならば日本の絞首刑よりマシかもしれない。 動画で情報公開する死刑と、隠ぺいされた死刑のどちらが残酷かも、判断は難しい。   イラク戦争におけるイラク人の犠牲者は「控えめな推定」で50万人、うち7割以上が民間人だと言われている。  イスラム国はこの米軍による残虐行為によってイラクの秩序が破壊されたために誕生したものであり、イラク戦争によって肉親を殺された遺族が続々とイスラム国の戦闘員になっているのだ。  ところが、この程度の相対化する思考も許されないような、全体主義の空気が、今の日本には作られてしまっている。想像力も知性も劣化しているのだ。  イスラム国の残虐行為ばかりが強調され、有志連合の残虐行為が一切取り上げられない理由の一つは、

「憎悪に駆られ暴走した先の未来とは?」小林よしのりライジング Vol.122

「残虐非道日本人にも非難決議を」小林よしのりライジング Vol.121

「テロ非難決議」とやらが、衆院・参院の本会議で相次いで可決された。  決議文では「イスラム国」を「ISIL」と表記、その後NHKもこれに追随して「過激派組織IS」と言い換えるようになり、同様の動きがマスコミに広がっている。   だがそもそも「IS」とは「Islamic State」つまり「イスラム国」の略なのだ。 『新戦争論1』で描き、先日の「ゴー宣道場」でも詳述したが、イスラム過激派組織が「国」を名乗ったことにこそ大きな意味があるのだ。「IS」への言い換えは、その本質を隠そうという行為でしかない。  決議文には「 非道、卑劣極まりないテロ行為を強く非難する。決して許さない 」だのといった文言が並んでいる。  だが、決して許さないなら、それでどうするというのだろうか?  どうせ軍事的な復讐はできないし、やる気もないに決まっている。こんなもんは、遊ばれた末に捨てられた女が「決して許さない!」と泣きわめいているのと、何も変わらないではないか。 「 決して許さない。復讐として、私をふった男の周辺の被害女性に、人道支援金をもっと増額する! 」などという女がいるのだろうか?日本政府が言ってるのは、そのような言葉の前後の脈絡が通らない戯言である。  …と思ったが、今どきは捨てられた女がやることの方が、もっとずっとすごいようだ。  今月2日、28歳の女が殺人容疑で逮捕された。  交際相手だった20歳年上の男の浮気が発覚し、別れを切り出されたことに激昂して、男の腹部を数回刺し、顔面めがけて金属バットをフルスイングしたという。  なんという残虐非道!完全にイスラム国の戦士より残虐ではないか!  逮捕された女は、福岡・中洲の高級クラブでホステスとして勤務した後、約5年前に上京し、銀座の高級クラブで働いていた。  179センチの長身でかなりの美人なのだが、取り調べに対して「別れるくらいなら殺すしかないと思ったんです」と話したそうだ。  わしはこれをニュースで見て、なんでこんな美人が?と疑問に思ったのだが、実はこの女は、過去は男だったということを知って驚いてしまった。   性同一性障害で、ホルモン注射を射ちまくり、戸籍も女に変え、チンコを切った人だったのだ!  以前から男の浮気を疑っていたらしく、事件前に量販店で「一番硬いのをください」と言って金属バットを購入していたそうだが、もともとの体力が男だったら、そりゃ金属バットで顔面にフルスイングなんかされたら、ひとたまりもないだろう。   しかしそれにしても、自分のバットがなくなってしまったから、金属バットを使ったのかと妙に納得してしまった。  そういえば、イスラム国に拘束されて殺された湯川遥菜という武器オタクもチンコを切った人だったって知ってた?   自殺を図ってチンコを切断したものの死にきれず、今後は女性として生きようとして本名の「正行」を女性的な「遥菜」に改名したものの、女性としては社会適応ができず、男に戻ろうとしたという、ほとんどわけのわからない人だったのだ!   やはりこれも、チンコがないくせに男に戻ろうとしたから、銃器が好きになっちゃったのだろうか?  チンコを切っちゃった者は、どうしても最後にはチンコの象徴を手にしたくなるものなのだというのが真理であろう。  それはともかく、最近は異様な事件ばっかり起こっているのに、イスラム国の話題の陰に隠れてしまっていないか。  和歌山県紀の川市で小学5年の男児を惨殺した22歳の男がパトカーで連行される際、頬をブク―――っと風船みたいに膨らませていたが、あの表情の異様さには、思わず目を見張ってしまった。あれはいったい何だったんだ?

「残虐非道日本人にも非難決議を」小林よしのりライジング Vol.121

「中東への介入、戦争へ突き進む日本」小林よしのりライジング Vol.120

 第46回ゴー宣道場 「『新戦争論1』と戦後70年」 が2月8日に開催された。  参加者の応募締め切りが『新戦争論1』の発売日当日で、地域によってはまだ発売前だったにもかかわらず、いつも以上の応募があり、会場は満員となった。みんな、参加応募をしてから当日までに『新戦争論1』を読んで、道場に臨んでくれたようだ。  タイトルには「戦後70年」とつけたが、今回は特に現在の戦争、すなわちイスラム国を相手に行われている「対テロ戦争」にほぼテーマを絞った。  わしとしては、人々に、 戦後70年を経て、現在の空気は「戦前」に戻っているということを自覚してほしかった。  今回の邦人人質殺害を受け、自民党総裁特別補佐の萩生田光一は、 いま安倍政権を批判することは「 政府と国民を離隔させたい相手の思うつぼ 」であり、「 ここは国民が一丸となって政府の取り組みを支援すべき 」だ と発言した。  つまり「 政府批判はテロ集団の思うつぼ 」と言っている。 「 この非常時に政権の批判をする者は非国民だ 」と言っていることになる。  国民は「 思考停止 」せよと政府が言っているのだ。  本来なら、権力の側がこんなことを言い出したら、真っ先に警戒するのがジャーナリズムの使命であるはずだ。  ところが、読売新聞特別編集委員の橋本五郎は、「 目の前の敵がいる時に、政権批判はすべきではない 」といった発言をした。  現政権の判断が、中長期的にどんな影響をもたらすのかということなど考えてはいけない、目の前の敵だけを見て、「 近視眼的 」になれと言っているのである。 「思考停止せよ」と「近視眼的になれ」が政府の国民への要望である。  驚くべきことに、大マスコミ・ジャーナリストは、このお達しに従って、政府批判を自粛し、権力に迎合してしまっているのだ。  しかも、たとえジャーナリストが権力のチェックという本来の機能を果たそうとしたとしても、 新聞も雑誌も、いまは政権批判をしたら売れないという事態に陥っている。  まるで「戦前」である。支那事変の頃も、ジャーナリズムが権力に迎合し、国民も戦争に反対する新聞など読まないという状態だった。商売上、新聞・ジャーナリズムは、政府・軍部の広報紙にならざるを得ない状態だったのだ。     今わしが伝えたいメッセージは政府の意図とは反対、「思考停止するな」「近視眼的になるな」である。  実は、今回のケースで人質の救助の問題には、わしは関心を持っていない。国家はどんな理由であれ、邦人を守る義務があるが、さりとて「自己責任」が前提のプロフェッショナルがテロリストに人質に取られた場合に「身代金」を払うのは正しくない。    それよりもわしが憂慮するのは、中東に踏み込むのはリスクが高すぎるということを、未だに日本人が十分認識していない危うさである。    テロ組織が「イスラム国」という「国」を名乗るというのは、かつてない画期的な出来事だった。  イスラム国は、イラク戦争の結果誕生した。  崩壊させられたフセイン政権にいたバース党幹部が、イスラム過激派と手を組んだのがイスラム国であり、実際にかつて国家を動かしていた者たちが官僚機構を整えたから、「国家」の体裁をとれるのである。   イラク戦争がなければ、イスラム国が登場することは決してなかったのだ!  そもそも

「中東への介入、戦争へ突き進む日本」小林よしのりライジング Vol.120

「『新戦争論1』は右翼か?左翼か?」小林よしのりライジング Vo.119

『新戦争論1』の発売から1週間経てば、ネットの中では必ずわしへのアンチが蠢き出す。   アンチには2種類いて、極右のアンチと、極左のアンチである。  在特会や、ネトウヨや、安倍首相信者の極右が罵詈雑言を投げかけてくるが、反戦リベラル左翼も、罵詈雑言をぶつけてくる。  本の内容も読まず、理解する脳力もなく、ここ何年もずっとこの調子である。本が売れること自体を妨害したいのが、極右と極左のアンチどもだ。中には極左の工作員が、極右に成りすまして、攻撃してくるケースもある。  極右も極左も「ポジション・トーク」に堕しているから、自分の頭で考えない。 意見は自分の属する世間(ポジション)に同調しているから、右も左も紋切り型で、それぞれの陣営の統一見解に固着している。  なにしろ戦後70年、戦争に関する日本の言論界そのものが硬直しきっている。 「保守」「右翼」は好戦的! 「革新」「左翼」は反戦的!  ただこれだけなのだ!  いったん自分の立つポジションを「保守(自称)」に定めてしまったら、好戦的な意見しか言えなくなってしまう。  侵略戦争だろうが、対テロ戦争だろうが、あるいは避けようとすれば避けられる戦争だろうが、どんな戦争でも断固やるべしと言わなければならなくなってしまう。  もしも、「それは侵略戦争だから反対だ」などと言おうものなら、たちまち「左翼」と思われてしまうのだ。   わしには自称保守やネトウヨの「好戦的」な言動が理解できない。  左翼は左翼で、このポジションに立ってしまったが最後、この世のありとあらゆる戦争に反対という意見しか言えなくなってしまう。  過去の戦争も、現在の戦争も、未来の戦争も、すべてがダメだと言わなければならないのだ。  全くおかしな話である。   全ての戦争には、それぞれ異なった事情がある。   やらざるを得ない戦争もあれば、やってはならない戦争もある。  それは右とか左とか、保守とか左翼とかいう立場には関係がない。  ……たったこれだけの当たり前のことが、ポジションを決めてしまった人々には一切通用しないのだ!!  右か左かのポジションによって、かたや100%賛成、こなた100%反対、その両方の極論以外は、決して許されないということになっているのである。  極論になってしまったら、どっちの側についても必ず道を誤る。

「『新戦争論1』は右翼か?左翼か?」小林よしのりライジング Vo.119
小林よしのりライジング

常識を見失い、堕落し劣化した日本の言論状況に闘いを挑む!『ゴーマニズム宣言』『おぼっちゃまくん』『東大一直線』の漫画家・小林よしのりのブログマガジン。小林よしのりが注目する時事問題を通じて、誰も考えつかない視点から物事の本質に斬り込む「ゴーマニズム宣言」と作家・泉美木蘭さんが圧倒的な分析力と調査能力を駆使する「泉美木蘭のトンデモ見聞録」で、マスメディアが決して報じない真実が見えてくる! さらには『おぼっちゃまくん』の一場面にセリフを入れて一コマ漫画を完成させる大喜利企画「しゃべらせてクリ!」、硬軟問わず疑問・質問に答える「Q&Aコーナー」と読者参加企画も充実。毎週読み応え十分でお届けします!

著者イメージ

小林よしのり(漫画家)

昭和28年福岡生まれ。昭和51年ギャグ漫画家としてデビュー。代表作に『東大一直線』『おぼっちゃまくん』など多数。『ゴーマニズム宣言』では『戦争論』『天皇論』『コロナ論』等で話題を巻き起こし、日本人の常識を問い続ける。言論イベント「ゴー宣道場」主宰。現在は「週刊SPA!」で『ゴーマニズム宣言』連載、「FLASH」で『よしりん辻説法』を月1連載。他に「週刊エコノミスト」で巻頭言【闘論席】を月1担当。

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