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記事 129件
  • 「〈性自認〉の曖昧さを保守としてどう捉えるか?」小林よしのりライジング Vol.475

    2023-07-18 16:55  
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     ひたすら弱者・少数者に同調し、あまつさえ弱者・少数者は「聖なる者」と思い込んだら、それは左翼、乃至リベラル・サヨクの空疎な立場に回収されてしまう。この世に楽園はないのだから、リアリズムに立脚した理想に向かう道を選ばざるを得ない。空想平和主義や、空想平等主義に堕ちるわけにはいかない。
     先週は「LGBT理解増進法」について書いたが、偶然その配信日にトランスジェンダー女性の女子トイレ使用制限をめぐる訴訟の最高裁判決があった。
     これは非常に意義のある判決で、次はそれを書こうと準備していたのだが、その翌日にはryuchell(りゅうちぇる)の自殺という衝撃的なニュースが入ってきた。
     りゅうちぇるのことは最新刊『よしりん辻説法⑥ 恋愛論・完』でも描いているので、これは先に論じなければならないだろう。
     りゅうちぇるについてはわしも見誤っていて、極めて普通の道徳的な感覚で捉えていた部分があった。
     だから、りゅうちぇるとぺこが離婚した際は、まずぺこが可哀想だと感じ、りゅうちぇるは無責任じゃないかと思ってしまった。
     それで、こんなことなら結婚しなければよかったし、子供を作らなければよかっただろうという道徳的な気持ちから、『恋愛論・完』の中で 「自分探しは子供をつくる前に終わらせておかねばな」 と書いてしまったのである。
     だがこれではまだ「性自認」の認識が甘かったと言わざるを得ない。
    「性自認」はどこかの時点で固定するもので、自身の意識の上でも踏ん切りがつけられるものだという思い込みが残っていたのだが、それは間違っていた。
      人によっては、「性自認」が一生定まらずに揺れ動き続ける場合もあるし、それは本人の意識ではどうにもならないものだった。
      りゅうちぇるの性自認は、幼少時にはLGBTのどれにも当てはまらなかったらしい。 前回書いたが、心の性にはLGBT以外に、 無性 (女性でも男性でもない)、 両性 (女性でも男性でもある)、 中性 (男性と女性の中間)という「Xジェンダー」と呼ばれるものもある。
     りゅうちぇるは、身体性は男性で、女の子が好き、かわいいものが大好きで、仕草のいちいちが女っぽく、何をしてもからかわれることが多かったそうで、 「これで男の子が好きな方がまだわかりやすいし、楽って思っちゃってた。それか普通の男の子になりたいと思ってた。こんなにかわいいものが好きなのに、なんで女の子が好きなんだろう」 という葛藤を抱えていたと自ら語っていた。
     りゅうちぇるは高校卒業後に沖縄から上京、バイト先の古着店でぺこと出会い、交際に発展。二人でタレントとして成功した後、結婚。男児が誕生する。
     りゅうちぇるはこの時のことを、「 女性を好きになることは、僕の人生の中で、初めての事でした」「一生一緒に居たいと思えたからこそ結婚して 夫婦になる道を選択し そしてその愛が形になり、最愛の息子も生まれました」 と振り返っていた。
     しかしその後、りゅうちぇるは 「父親」であることは心の底から誇りに思えるのに、「夫」であるということはものすごく苦しくなってしまい、生きていくことさえ辛いと思う瞬間もあったという。
    「父親」の自認は誇りなのに、「夫」の自認は苦痛なんて、標準的な男であるわしからすれば、意味が分からないと思ってしまう。
     そして、全ての気持ちをぺこに打ち明け、話し合った結果 「これからは“夫”と“妻”ではなく、人生のパートナー、そしてかけがえのない息子の親として、家族で人生を過ごしていこうね」 ということになり、離婚。そしてその後も家族として同居を続けていた。
      血のつながった「親子」であれば、自分がこの子の父親だという関係は自然に受け入れられたが、元は他人である「夫婦」の場合は、その前提に「男」と「女」という性自認がなければ、関係が成り立たなかったということらしい。
     りゅうちぇるにはおそらく「男」という明確な性自認がなく、それでもぺこと恋をして子供も出来て 「父」にはなったが、「夫」であり続けることには耐えられなかったのだろう。
     そのために離婚して、ぺこと「夫婦」ではなくなるが、「人生のパートナー」ではあり続け、家族として一緒に生活するという判断をしたのだ。
     では、離婚から1年足らずで自殺という悲劇に至った理由は何なのだろうか?
  • 「コロナ禍の後始末」小林よしのりライジング Vol.472

    2023-06-20 16:30  
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     ついに『愛子天皇論』が発売された。さあ大逆転の始まりだ。
     この戦いは、勝つまで続ける。長期戦になるか、短期決戦となるかはまだわからないが、その戦いの途中経過についても今後、ここで書いていくことになるだろう。
     だがその前に今回は、コロナ禍から派生した諸問題の後始末をしておきたい。
     2日、東京都の福祉保健局は、新型コロナの無料PCR検査を行っていた588の事業者のうち11事業者が、検査数を水増しするなどの手口で、都の補助金を不正に申請していたと発表した。
      不正申請の額は合計183億円に上り、そのうち16億7000万円余りが交付されていた。
     一部の事業者は不正を認めて返還に応じている一方、不正を認めていない事業者もあり、既に破産手続きをしている者もいるという。
     ただし、国や地方公共団体からの補助金を不正受給した場合は、破産したからといって免責はされない。
      破産法253条の規定により、個人が不正に受給した各種給付金・補助金などは、法的に自己破産しても、税金と同じで返還の支払義務が残り続ける。
     個人の持続化給付金ならば、不正受給額プラス20%のペナルティに年3%の利率を加えて返還しなければならず、この義務は利息も含めて全額払い終わるまで、一生ついてくるのだ。
     医療法人等が受給した場合は、破産手続をすれば法人が消滅するので、不正受給した補助金の返還義務も消滅する。
     だが、法人の代表者や実質的経営者の責任が消滅するわけではない。破産によって返還できないという場合には、「計画倒産」の可能性や「隠し財産」の有無などが厳しく精査され、その結果によっては、 詐欺破産罪 等の罪に問われることになる。
     都は警視庁に情報提供を行うとともに、今後も調査を進める方針で、都の担当者は「税金によってまかなわれる事業で不正があったことはゆゆしきことだ。徹底的に調査し、厳正に対処していく」と表明している。
      大阪府では370の事業者に無料PCR検査を委託していたが、そのうち15事業者を抽出調査したところ、少なくとも7事業者に不正申請が発覚、 不正申請額は約42億円に上るという。 大阪府は残りの事業者も調査し、悪質事案は警察への告訴も検討するとしている。
     さらに 新型コロナワクチン接種では、近畿日本ツーリストが全国の自治体から請け負った事業で、過去3年間に最大で約16億円もの過大請求をしていた可能性があると発表。 詐欺容疑で大阪市の支店長ら3人が逮捕されたが、これが個人の犯罪であるとは思えず、企業ぐるみの巨額詐欺事件に発展する可能性もある。
      他にも新型コロナ絡みの補助金・給付金等の不正受給に関する報道は枚挙にいとまがなく、日本全国詐欺だらけという様相だが、これでも氷山の一角のはずだ。
     そして、 いくら法律的には「逃げ得」が許されないようになっているとはいえ、それでも現実的には、全額を回収するのはおそらく不可能だろう。
     そうなったら、我々の税金が無駄に消えていくことになるのだが、それでいいのだろうか?
      その損失は、本来、コロナを煽った奴らが埋めるべきであろう。マスコミの煽り魔どもが大衆の恐怖を煽り、PCR検査やワクチン接種を勧めまくり、とにかく非常時だから迅速に事業を進めなければならないということになって、性善説で杜撰な手続きによって補助金を出しまくったからこそ、こんなことになってしまったのだ。
     その責任は全て、煽った者にある。全額、煽った奴らが払え!!
     さて、11日に開催した『オドレら正気か?LIVE コロナと陰謀論』のゲスト、在宅緩和ケア専門医・萬田緑平氏は大好評で迎えられ、 「全ての病気は『老化』に名前をつけたもの」で、誰も老化は避けられない といった萬田氏の「死生観」などについての話は、大いに参加者の賛同を得た。
     ただ、 萬田氏がコロナワクチンの被害に遭った人のことを 「仕方がない」 という言い方をした時には、若干引いた人もいたようだ。
     わしも、萬田氏の言葉に同感するところなきにしもあらずだが、全面的に「自己責任」にすることには躊躇を覚える。
  • 「〈ビル・ゲイツの人口削減計画〉の正体」小林よしのりライジング Vol.471

    2023-06-06 16:30  
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     6月11日午後2時から、在宅緩和ケア専門医・萬田緑平氏を迎え、オドレら正気か?LIVE『コロナと陰謀論』を開催、生放送でも配信する。
     
     ゲストにはもうひとり、大阪市立大学名誉教授・井上正康氏を予定していたが、キャンセルした。これまでの公論イベントで、一度依頼したゲストをこちらからキャンセルした前例はないはずだが、もう仕方がない。
     井上正康氏には、わしは『コロナ論』シリーズを描く際、新型コロナウイルスやワクチンに関して非常に多くを学び、『コロナ論3』で対談して以降、漫画の中にも何度も登場させている。
     それだけに、最近の井上氏がすっかり「陰謀論」に嵌ってしまったことは、『コロナ論』シリーズの信用にかかわる大問題である。
     全5巻の『コロナ論』のうち4巻までは既に文庫化されたが、最終5巻の文庫は、とっくに巻末の「解説」も入稿してもらったのに、未だ出版されていない。この「陰謀論」の問題を総括しないまま、出すわけにはいかなくなったからである。
     5巻の解説は、新聞の「意見広告」で子供へのワクチン接種の再考を訴える運動を展開した「たけし社長」に頼んだが、その意見広告も井上氏の学識を基に作成していたわけだから、なおのこと陰謀論には文庫版『コロナ論5』でカタをつけなければならないのだ。
     たけし社長と共に意見広告運動に尽力した「世界のゴー宣ファンサイト」のカレーせんべい氏も怒り心頭の様子で、井上氏がメルマガやネット生放送などで主張する陰謀論をその都度収集して、同サイトで晒している。
     いちいち井上氏のネット上の発言までチェックする余裕のないわしには非常に有難いのだが、それにしても井上氏は、驚き呆れることばかり言っている。
     曰く、 「『人口削減計画』が予定通りの手順で進められており、日本がその最初のターゲットとなる可能性がある」 (メルマガ・5月20日)
     曰く、 「ディープステートの人たちが、日本人をモルモットにしていろんなことをやっている」 (ネット動画・5月27日。発言自体は対談相手の原口一博衆院議員のものだが、井上氏も完全に同意している)
     曰く、 「ビル・ゲイツがリンゴなどの表面にワックスを塗って、それを食べた幼児が死んだ疑いがある」 (ネット生放送・5月26日)
     まだまだあるが、以下は略しておく。
     前回の「陰謀論というSNS劣化現象」でも書いたが、
     https://ch.nicovideo.jp/yoshirin/blomaga/ar2151345
     こんなものは「常識的な思考」ができている人ならば、いちいち事の真偽を確かめるまでもなく、聞いた瞬間に「ありえない!」と一蹴するはずだ。
      もしこれが本当だというのなら、 「ビル・ゲイツを殺人罪で逮捕しろ」 と主張したらどうだ? 間違いなく頭がおかしいと思われるから。
    「ディープステート」 って何だ? そんな、仮面ライダーの敵「ショッカー」みたいな闇の組織なんかあるのか? どこにいる、誰のことだ?
    「人口削減計画」 だって!? そんなもんなくても、日本の人口はどんどん減少していて、少子化対策をしているほどじゃないか。知らないのか?
     もしも日本の少子化までが陰謀の結果だというのなら、なぜインドではその人口削減計画とやらが行われていないのか!?
     最近の陰謀論では、人口削減計画でも何でもかんでもビル・ゲイツが企んだことになっていて、井上氏も完全にそのパターンどおりの発言を繰り返しているが、なぜビル・ゲイツがそんなことを言わなければならない? 人口が増えた方が、マイクロソフトの製品が売れていいはずじゃないか?
     前回は「人口削減計画」を「最近の陰謀論のトレンド」と書いたが、もう少し調べてみたら、 これはトレンドというよりも古典的な大定番で、ずっと前から陰謀論者が繰り返し言い続けてきたものだということがわかった。
     そして、その起源は『宇宙戦争』『透明人間』『タイム・マシン』などの作品で「SFの父」といわれる イギリスの作家、H.G.ウェルズ (1866-1946)にさかのぼるらしい。
     ウェルズは1900年以降、上記のような科学ロマン的な空想小説に代わって文明批評的な小説を書くようになり、社会主義に傾倒。社会改良運動家としても精力的に活動した。
     ウェルズは1905年の小説『モダン・ユートピア』で、「世界国家」が完成して戦争が根絶され、何よりも個人の自由が重視されている社会を描いた。
     またウェルズは、議論を好まないダーウィンの代わりに進化論論争の最前線で戦って「ダーウィンの番犬」と呼ばれた生物学者、T.H.ハクスリーを尊敬して生物学・進化論を学び、優生主義者になっていた。
      もともとユートピア思想と優生思想は非常に親和性が高い。 例えばユートピアを、健康で美しい人々が理性的に暮らしている「理想的」な社会とイメージすれば、それは逆に言えば、ある基準に満たない人々が暗黙のうちに排除されている社会であることを意味するわけで、そこには優生思想が一体となって入り込んでいるのである。
  • 「陰謀論というSNS劣化現象」小林よしのりライジング Vol.470

    2023-05-23 14:30  
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     影の組織が世界政治を裏から支配しているとか、日々の主要な出来事は全て誰かが操って起こしているとかいう、 「陰謀論」 を信じてしまう人がいる。
     それは古くから世界中に存在する現象ではあるが、現在の自称保守派の多くが信じ込んでいるという事態には、やはり異常さを感じざるを得ない。
     先週、月刊WiLL別冊の 『この1冊で世界のウラが丸わかり! もう陰謀論とは言わせない』 と題する本が発行された。
     このタイトルだけでも、相当にイタイ。何しろ 「世界のウラが丸わかり」 という言い回し自体が陰謀論者の常套句なのに、それを堂々と掲げているのだから始末に負えない。もちろん、 「もう陰謀論とは言わせない」 とか言っても、中身は陰謀論のオンパレードである。
     最初に定義をしておくが、わしは 「陰謀論」 を、 「ある事件や出来事を、何者かの陰謀・策略によって起こされたとする、事実や常識的な思考では検証も理解もできない説」 と認識している。
     ポイントは 「事実や常識的な思考では検証も理解もできない」 というところだ。
    「陰謀」自体は、現実に存在する。例えばベトナム戦争の引き金になったトンキン湾事件は米国の陰謀であり、それは確たる証拠によって証明されている。
     だが「陰謀論」はそれとは全く異なる、荒唐無稽で一切論証できない妄説なのだ。
     問題の本の巻頭記事は 『コロナ・ワクチン・昆虫食・LGBT問題…「陰謀」が明るみに出る時代になった』 と題する、 元駐ウクライナ大使・馬渕睦夫 と、日本近現代史研究家・渡辺惣樹の対談である。
      馬渕睦夫 は 『ディープステート 世界を操るのは誰か』 という著書で、 近現代の世界史における大きな出来事の全ては「ディープステート」という「世界を陰から支配する勢力」 が起こしたと主張している。 ウクライナ戦争もディープステートがプーチンに仕掛けた陰謀 だとしており、全面的にプーチンを援護する論陣を張っている、当代随一の陰謀論者だ。
     その馬渕を巻頭に出しているというだけでも、これがどういう本かは明白というものだが、そもそも馬渕の著書『ディープステート』の版元も、「WiLL」と同じワック出版なのである。
     対談の冒頭、馬渕は 「今まで隠されていた事実が、どんどん明るみに出ています」 と切り出し、渡辺は 「ええ、特にコロナ関連が顕著です」 と応える。
     こうしてまずコロナ関連、特にワクチンの危険性についての話題となり、河野太郎・初代ワクチン接種推進担当大臣が「私は運び屋に過ぎない」と逃げを打ったことを批判するのだが、渡辺はここでこう言うのだ。
    「ワクチン接種を推奨したのが、ビル・ゲイツです。ゲイツは周知の通り『人口削減論者』です」
     ビル・ゲイツが人口削減の陰謀のためにワクチンを推奨した!?
     この対談ではこんな陰謀論と、ワクチンの危険性やマスクの無意味さといった、わしの『コロナ論』シリーズの主張とも共通する論点が、ごっちゃに混在している。これではわしにとっては、迷惑でたまらない。
      ビル・ゲイツが「人口削減」の陰謀を企てているというのは最近の陰謀論者のド定番だが、これは完全なデマである。
     デマの出所は、ビル・ゲイツが2010年に行った講演だ。
     ここでゲイツは世界の人口爆発とそれに伴うCO2排出量増加への対策について話しているのだが、その趣旨は、
    「ワクチンによって発展途上国の公衆衛生を改善すれば死亡率が下がり、子供が死ぬことへの不安が解消され、出生率も下がる。それと正しい避妊の普及も併せて、人口増加を抑制することができ、CO2排出量を減らすことができる」
    ということであり、特におかしな主張ではない。
      それを陰謀論者は、ビル・ゲイツが「殺人ワクチン」を普及させて世界人口の削減を図っているなどという、異次元の曲解をして大騒ぎしているのだ。
     そもそも「常識的な思考」さえできれば、こうやってわざわざ事の真偽を確かめなくても、「ビル・ゲイツが人口削減計画を実行している」と聞いた瞬間に「ありえない!」と一蹴するはずだ。
     こんな話は、フィクションの世界にしかない。というか、今どきこんなのフィクションでも陳腐すぎてボツになりそうな話だ。それが現実に起きていると疑いもなく思えるだけで、もう完全に常識がぶっ壊れているのだ。
     どうやら、最近の陰謀論のトレンドは 「人口削減計画」 らしい。
     馬渕は 「昆虫食」 についても 「何か邪悪な意図が隠されているはず」 と根拠もなく言い出し、 「そもそも昆虫食を食べなければいけないほど、食糧難なのでしょうか」 と疑問を呈し、しまいには 「気候変動とあわせて、食糧難を煽り、人口を少しでも抑制したいと考えているのでしょう」 とまで飛躍する。
     そしてさらに呆れたのは、この発言だ。
    「LGBT理解増進」政策にしても、人口削減計画の一環ではありませんか。男女の性交への関心を低下させれば、子孫を減らすことができます。
     馬渕は、LGBTへの理解が増せば同性愛者が増えて、男女間の性交への関心が低下して、人口が減ると本気で思っている! ど うやら、自分が気に食わないことや、腑に落ちないことがあれば、何でもかんでも「人口削減計画」の「陰謀」にしてしまうようだ。
     そしてさらに馬渕・渡辺は、米大統領ジョン・F・ケネディと弟のロバート・ケネディの暗殺も陰謀、9.11世界同時多発テロも米政府による陰謀、ウクライナ戦争も陰謀で、被害映像はヤラセということにしていく。
     しかしもっと驚いたのは、馬渕が 「安倍晋三元首相の暗殺の背景に、今回のウクライナ戦争が大いにかかわっているとみています」 と言っていることだ。
  • 「『サザエさん』を〈伝統的家族〉と思い込むカルトな自称保守」小林よしのりライジング Vol.468

    2023-05-10 14:40  
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     こんなことをわざわざ言わなきゃならないのかと思うと情けなくてしょうがないのだが、フィクションと史実・現実は別物である。
     もちろん、虚実が入り乱れることもあれば、現実よりも真実が深く描かれることもあり、それがフィクションの魅力でもあるのだが、フィクションと史実・現実は同一ではないということは、当然の前提のはずである。
     ところがそんなことすらわからないほど、自称保守派の劣化は深刻なものになっている。
     平成26年(2014)に設立された 「美しい日本の憲法をつくる国民の会」 という団体がある。
     会の名称を聞いただけで苦笑いしたくなるが、そのメンバーを見ればもう苦笑いが止まらない。共同代表が櫻井よしこ、田久保忠衛、日本会議名誉会長の三好達。以下、代表発起人に青山繁晴、小川榮太郎、中西輝政、百田尚樹等々、毎度おなじみの自称保守の名前がズラリ。神社本庁総長・田中恆清の名もある。
     同会は 平成24年(2012)に自民党が発表した憲法改正草案を強力に後押ししているが、今やその改憲案が統一協会の影響下で作成されたことも、同会のメンバーに統一協会系団体で講演を行っていた者が多いことも明らかにされている。
     ところが同会はそんなことは一切スルーして、今年の憲法記念日にも集会をやっている。今も統一協会とつながりが深いままなのではないかと疑っておいた方がいいだろう。
     そんな「国民の会」が6年前に『「世界は変わった 日本の憲法は?」~憲法改正の国民的議論を~』と題するDVDを出している。
     そしてその中の1パートでは、同会の幹事長である日本大学名誉教授・百地章が登場し、東京・桜新町にあるサザエさん一家の銅像の写真をバックに、
    「『サザエさん』が、今も高い国民的人気を誇っているのはなぜでしょうか」
    と問いかけ、
    「サザエさん一家は3世代7人の大家族です。昔は日本のどこでも見られた風景です。サザエさん一家のユーモラスで暖かな日常を見ると、誰もがホッとするからではないでしょうか」
    と唱える。そして、 GHQが作った憲法によってこの 伝統的家族 が壊されたのであり、憲法に 家族条 項を加えることでこれを復活させなければならない と、話はどんどん飛躍していくのだ。
     このように「サザエさん一家」が「伝統的家族」の象徴のように扱われることが度々あり、わしには違和感があったのだが、わしは『サザエさん』を見ていないので詳しく分析できなかった。
     そこへトッキーが 「サザエさん一家は伝統的家族でも何でもない」 と言ってきたので、今回はその受け売りを交えて論じていこう。
     サザエさん一家は 「磯野家」 (夫・波平、妻・フネ、長男・カツオ、次女・ワカメ)と、 「フグ田家」 (夫・マスオ、妻・サザエ、長男・タラオ)の二世帯同居家族。主人公のサザエは磯野波平・フネの長女で、結婚してフグ田姓になっているが、夫と息子と共に実家に住み続けている。
     普通「伝統的家族」といえば、「長男の嫁」が嫁いできて全員同じ苗字というイメージのはずだが、これは変則的な三世代家族なのだ。
     実は、原作ではサザエさんは結婚して一度は実家を出て、新婚夫婦だけの所帯を構えている。
     ところが、夫のマスオが大家と喧嘩して借家を追い出されてしまい、サザエさんはやむなく夫を連れて実家に転がり込んだのだ。
     マスオが婿入りしたわけでもないのに妻の両親・弟妹と同居し、何となく妻に頭が上がらなくなっているのは、このためだ。
     80年代には、妻の実家に依存する、立場の弱い夫を意味する「マスオさん現象」なんて言葉も生まれているが、これだけでも サザエさん一家が「伝統的家族」とは違うことは明白といえる。
     そして、そもそもサザエさん自身が自称保守派のいう「伝統的家族」にふさわしいキャラではない。
      サザエさんは専業主婦だが、その性格は「伝統的家族」らしい「良妻賢母」とは全く無縁である (もっとも「良妻賢母」も明治時代の外来思想だが)。
     サザエさんの母・フネは良妻賢母型だが、これに対してサザエさんは夫よりも強い立場で、特に夫を立てることもせず、自ら活発に行動し、しかもそそっかしくてドジを踏み、それでも気にしない。
      今ではよくあるキャラにしか見えないが、これはごく戦後的な主人公で、こういう女性キャラは戦前には存在しなかった。
     漫画『サザエさん』の連載開始は昭和21年(1946)。終戦後すぐであり、その後、数度の中断や掲載紙の移籍を経て昭和26年(1951)から朝日新聞朝刊で連載された。
      サザエさんは昭和20年代に登場した、当時としては革新的なキャラであり、自称保守派が大嫌いな「GHQが作った戦後憲法」の価値観を背負い、男女平等の空気をまとって登場した第1号のキャラクターだったのである。
     さらにいえば、百地章が言うように三世代同居が「日本のどこでも見られた風景」かというと、これも違う。
  • 「全てのテロは許されないか?」小林よしのりライジング Vol.467

    2023-05-03 14:05  
    150pt
     もう何度も何度も言っていることだが、テロにも「公に資するテロ」と、「愚にもつかないテロ」がある。
     ところが、メディアに出てくるのは「あらゆるテロを許すな」というお決まりの文句ばっかりだ。
     そんな意見は人間ではなく、AIに聞いて応えさせればいい。
     先月の岸田首相を狙ったテロと、昨年の安倍元首相を殺害したテロとは本質的に異なるということくらいは、少し考えればわかりそうなものだ。
     最初に断っておくが、厳密にいえばこの両者とも「テロ」と呼ぶには疑問がある。
    「テロ」の定義はVol.447「【テロに屈するな】という標語は無意味」で詳述した。
     https://ch.nicovideo.jp/yoshirin/blomaga/ar2120347
      テロリズムとはある政治的目的を達成するために、敵対する当事者や、さらには無関係な一般市民や建造物などを攻撃し、これによって生ずる心理的威圧や恐怖心を通して、譲歩や抑圧などを強いる行為をいう。 だからこそ、テロリストは犯行直後に声明を出し、自らの目的や要求を明らかにするものなのだ。
     ところが、岸田首相襲撃犯は現時点で未だに犯行動機を明らかにしておらず、世間に主張すべき政治的目的など持っていないことは、ほぼ間違いない。
     安倍首相殺害犯の山上徹也に至っては、逮捕直後から「政治的意図はない」と明言し、統一協会をめぐる個人的怨恨が動機であることを明かしている。
     だからこれらは、どちらも本来の「テロ」の定義には当たらないのだ。
     しかしこれもVol.447で書いたが、一般的な「テロ」のイメージはもっと曖昧で、要人が公然と襲われた場合には、実行者の動機や目的と関係なく「テロ」とみなす傾向が世界的にある。
     実際、岸田首相襲撃も安倍元首相暗殺も、どちらも即座に「テロ」の括りに入れられて、その前提で議論が行われてしまっているため、「狭義のテロ」の定義にこだわっていては議論がかみ合わなくなってしまう。
     そこでやむなく、今回はこれらも「広義のテロ」だという認識で話を進めることにする。
      わしは山上徹也のテロには同情を禁じ得ない。統一協会のために家族を破壊され、自らの将来が閉ざされてしまい、絶望と恨みを抱いて生きていたら、なんと自分が支持していた安倍晋三が統一協会シンパだということがわかってしまったのだから。
    「殺人」という犯した罪に対する法的な罰は厳格に下すべきだが、山上が安倍を標的にしたことには理があるというしかない。
     しかも、 このテロは統一協会と権力の中枢がベッタリ癒着している事実を明るみに出した。
      統一協会は「反日・反天皇」の外国勢力のカルトである。日本の権力が最も警戒しなければならない存在である。それを最高権力者が国家の中枢に招き入れていた責任は極めて大きい。 安倍元首相は殺されたこと自体は気の毒だが、死んだからといって、絶対にその責任を水に流すわけにはいかない。
      山上が行ったことはカルトを政権から叩き出すテロであり、公に資する部分があるテロであり、同情する余地のあるテロである。
     一方、岸田首相を狙ったテロは単なる馬鹿でしかない。
     犯人の木村隆二は定職にもつかずに実家で母親と暮らしていた24歳の男だ。引きこもらせてくれる家族がいて、仕事もせずに生きていたのだから、山上に比べれば恵まれ過ぎだといえる。
     そんな木村は昨年夏の参院選に立候補しようとしたが、公職選挙法で定められた参議院議員の被選挙権年齢「30歳以上」に達していなかったので立候補できず、これを不当だとして国に損害賠償を求めて提訴していたという。
     公選法の規定も知らずに立候補しようとして、それができないと不当に扱われたと思い込んで裁判に訴えたというから、相当の馬鹿である。
     今回のテロの動機については、この件によって社会から虐げられているという被害者意識を持ち、その原因が政治家にあると思い込んだのではないかという推測が出ているが、おそらくそんなところだろうとわしも思う。とにかくどこをどう見ても、一点の同情の余地もない。
     こんな自己承認欲求だけの暴徒の犯行などほとんど扱う価値はないのに、マスコミはこの事件の報道を連日連夜繰り返していたから、うるさくて仕方がなかった。
     そんな報道に時間を取るくらいなら、裁判開始に向けて準備が進んでいる山上の方が、もっともっと報じるべきことがある。事件の背後にある統一協会問題がまだ何ひとつ解決していないのに、これに関する報道がすっかりしぼんでしまっているのはどう考えてもおかしいではないか。
      テロにも価値の順列がある。クソとミソの区別くらいつけろ!
     産経新聞に至っては、あらゆるテロを許さないと言い出した。
  • 「〈門地〉が皇室より大好物な男系大衆」小林よしのりライジング Vol.463

    2023-03-21 17:30  
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     前回は、男系固執派が「週刊女性」「女性セブン」の2誌で、 「愛子さまが旧宮家の子息と交際している」 という、根も葉もないデマ話を流布していることを取り上げた。
     明らかに男系派の「断末魔の叫び」だが、それから2週間、往生際の悪い絶叫はまだ続いている。
     女性誌2誌に続き、今度は「週刊新潮」3月16日号のトップに、一連の流れを汲む記事が載った。
     
     とはいえ、内容はほとんど前出2誌の焼き直しで、目新しいものはほとんどない。週刊誌3誌に同じ人物が同じ話を吹き込んで回ったとしか思えないような印象だ。
     ただ、 女性セブンでは相手を賀陽家の「次男」 と特定しているのに対して、 週刊新潮ではなぜか「賀陽家の兄弟」 と交流しているという、より荒唐無稽な話になっている。兄弟二人とつきあっているのか!?
     記事ではこの 兄弟の父親・賀陽正憲氏 について、「さる宮内庁関係者」が 「正憲氏ご自身も『自分の家が皇室に復帰する可能性があることを肝に銘じて過ごしてきた』などと、周囲に漏らしているのです」 と証言している。
     前回詳述したとおり、正憲氏は13年前の週刊新潮の取材に対して、息子と愛子さまの縁談について 「立場が違いすぎ、恐れ多い」 と全否定している。それがいつから、自分の家が皇室に入ることを 「肝に銘じて過ごしてきた」 のか?
     こんな重要なことはあやふやな伝聞ではなく、本人に直接確かめなければおかしい。正憲氏はこれまでメディアの取材には好意的に応えてきた人だし、たとえ取材を断られても、それはそれで「回答は得られなかった」と書けば何となく脈がありそうに匂わせることができるから、週刊誌はたとえダメモトでも、取材の申し込みだけは必ずするものなのだ。
     それなのに、なぜ今回は取材の申し込みすらしていないのか? 
     答えはひとつ。ガセネタだからだ。
     あと、 「一昨年の眞子さんの結婚とは異なり、正真正銘の名家とご縁ができれば、いわゆる“悪い虫”など近づきようがない」 という記述があるが、これは見逃せない。
      週刊新潮は、旧宮家系を「正真正銘の名家」と信じ切っているのである! 
      これが全くの一般国民の家であるとは、露ほどにも思っていないのである!  そして、 小室圭氏を「悪い虫」と言い切っているのである!
     これこそ、眞子さまをPTSDにまで追い込んだ小室さんバッシングの正体だ。どんなに眞子さまを一途に愛していようが、苦学してニューヨーク州弁護士になるほどの実力があろうが一切関係なく、 マスコミ・大衆はただ 「家柄」 だけで小室圭氏を「悪い虫」扱いして、叩きまくったのだ!
     前出2誌と同様、週刊新潮でも情報提供者は全て匿名だが、ここで唯一、そんな怪しい話を支持する実名の人物が登場する。
     男系固執派の中心人物、麗澤大学教授の 八木秀次 だ。
     八木は、賀陽家の子息を子供のいない常陸宮家に養子入りさせ、その上で愛子さまと結婚させて、 愛子さまが「常陸宮妃」として皇室に残れるようにするべきだ と主張する。
     そして、 「男児が生まれれば天皇家直系の男系男子となる。『皇位継承』『皇族数確保』という二つの観点からも、この上なく理想的なのです」 と妄想を膨らませる。
     八木は「憲法学者」を名乗っているはずだが、旧宮家系男子を特別扱いして皇族の養子にするのは 「門地による差別」 で「憲法違反」になる ことを知らないか、または徹底的に隠蔽しているのだ。
     現行の皇室典範は皇室が養子を迎えることを禁じているが、八木は 「特例法で一時的に養子をとれるようにすべきです」 と言う。
     養子については皇室典範だけの問題だから、ご譲位を可能にしたように 「特例法」 でできるかもしれない。
      しかし、憲法の特例法なんかできない。
      この件に限って特別に「門地による差別」を容認し、特定の家柄の特定の国民だけ、国民に保障された基本的人権を全部剥奪して皇室に入れる憲法特例法なんてものを、都合よく作ることなどできるわけがない。
     憲法は国家の基本的なルールを規定している。
      国民は全て平等で、身分・階級はないというのが日本国のルールであり、その前提のもと第14条が存在する。
     それを理解していない八木秀次は、憲法を何も知らない憲法学者である。
     しかも、 そもそも 愛子さまを宮家の当主にしない(!?) なんてことを、国民感情が許すはずがない。
      男でさえあれば、600年も血筋が離れた大傍系で、突然宮家の養子になった国民でも当主になれるけれども、女だったらたとえ天皇直系のお子様でも、インスタントな皇族の妃にならない限り皇室に残れないなんて、そんな究極の男尊女卑に国民の賛成が得られるわけがない。
      憲法第1章で天皇の地位は 「国民の総意に基づく」 とある。皇族もこれに準ずるのは当然で、国民の総意に基づかない皇族など明らかに問題である。
     何をどうあがいたところで、旧宮家系国民男子案は、憲法の壁を超えられないのだ!
     こんなデタラメな記事が、いったいどこから湧いて出たのか?
     興味深いのは、八木秀次が以前、こんな発言をしていたことだ。
  • 「ウクライナ戦争1年で証明されたこと」小林よしのりライジング Vol.461

    2023-02-28 16:50  
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     ロシアがウクライナに侵攻してから、24日で1年が経った。
     戦争開始直後からわしが描き続けてきたことは『ウクライナ戦争論』にまとめたが、いま読み返しても全く間違ったところがない。
     そして3月12日には『ウクライナ戦争論2』が発売される。日本人にとってのウクライナ戦争とは何なのかを知るためには、これ以上の本はないとわしは自信を持っている。
     2月21日、ロシア連邦議会でプーチンは「年次教書演説」を行った。
     これは内政・外交の基本方針を示す、年に1度の演説で、ウクライナ侵攻後では今回が初であった。
     ここでプーチンは、ウクライナへの侵略を 「我々の歴史的な土地に住む人々を守るため、我が国の安全を保障するため、そして2014年のクーデター後にウクライナで生まれたネオナチ体制による脅威を取り除くため」 の 「特別軍事作戦」 であると強調するなど、1年前の開戦時のプロパガンダと何ひとつ変わらない主張を繰り返した。
     未だにこれが「戦争」であることすら認めていないのだが、それにしても、 ウクライナの 「ネオナチ体制」 によってロシアが脅威にさらされているなんて与太話、ロシア以外で誰が信じるのだろうか?
     もちろんこの演説はひたすら国内向けの戦意高揚が目的で、国際社会向けには何の説得力もないことは、最初から明白ではある。
     だが、そのニュース映像を見て驚いた。 演説を聞いている連邦議会議員たちのリアクションが、とにかく薄いのである。
     戦争真っ最中の国で、最高指導者が戦意高揚演説をしているのだ。普通だったら、その指導者を戴いて戦争遂行に邁進すべき立場である国会議員ならば、もっと熱烈な反応をするものだろう。ましてや戦争が長期化し、国家総動員体制を作らなければならないという状況なのだから、なおのことである。
     ところが聞いている議員たちの表情には、全く高揚感も覇気も感じられない。プーチンの言葉に説得力を感じ、感情移入している表情を見せる者もいない。何か頭の中に疑念が渦巻いているような雰囲気で、困惑したような表情の者、腑に落ちないという様子の者、みんなどこか中途半端な顔をしていた。
     なぜみんな揃いも揃って、そんな曖昧な表情をしているのだろうと不思議だったのだが、どうやらあれは「必死で睡魔と戦っている顔」だったようだ。
     プーチンの演説は1時間40分にも及び、相当に冗長で退屈だったらしく、演説の後半には寝落ちしてしまう議員が続出。プーチンの下僕として知られ、第1期プーチン政権と第2期プーチン政権の間の「中継ぎ」で1期4年間、傀儡の大統領を務めたメドベージェフまでが最前列で居眠りしてしまい、その様子がSNSで全世界に晒された。
     
     プーチン一人だけが悦に入って長々と演説をやっているが、こんなものを聞かされている方は迷惑そのもの。力関係のために出席を断れずに仕方なく座っているだけで、感動して聞いている者なんかいるわけもなく、いつの間にかみんなスヤスヤ居眠り。
     まるで、落語の『寝床』そのものだ。
     演説ひとつとっても、ゼレンスキーとプーチンでは雲泥以上の差である。
     ゼレンスキーの演説を聞いて居眠りするなんてことはまずないだろうし、もしそんなことがあったら、寝る方がおかしい。
      昨年の米国議会での演説は特に凄かったが、ゼレンスキーの演説は感動的である。国家の存亡を賭けて、命がけで侵略者と戦っているという本気の覚悟が伝わってくるのだから当然だ。
     それに対してプーチンは、自らが「ピョートル大帝」になりたいというナルシシズムの妄想から何の大義もない侵略戦争を起こし、演説もひたすら自分のナルシシズムを満足させるためだけにやっているのだから、それは『寝床』の旦那になるわけである。
     とはいえ、これが中国や北朝鮮だったら、どんなに演説が退屈だろうと、あんなに何人もの議員が居眠りしている様子が海外メディアに流されることはなく、無理やりにでも満場一致で演説に賛同し、熱狂したかのように見せかけたはずだ。
     もうロシアではそんな報道統制もできないのか、国家の最高機関の議員たちが演説の最中に浮かない顔だったり寝ていたりで、誰もプーチンの言うことなど信じていないようにしか見えないザマを、世界中にさらけ出した。
  • 「マスク固執病」小林よしのりライジング Vol.460

    2023-02-21 17:45  
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     2月10日、厚生労働省は「新型コロナウイルス感染症対策本部決定」として新たな「マスクの着用の考え方」を発表し、 「令和5年3月13日以降、個人の主体的な選択を尊重し、着用は個人の判断に委ねる」 とした。
     いや、ちょっと待て。 今だってマスク着用には法的拘束力も何もなく、「任意」じゃないのか?  3月13日から、いったい何が変わるというのだ?
     そもそも厚労省が発表している 「マスク着用の考え方」は、その名の通り厚労省の「考え方」にすぎず、法に基づくものではない。
     そして厚労省は新たな「考え方」において、3月13日以降のマスク着用は「個人の判断に委ねる」とした上で、 「医療機関を受診する時」や「混雑した電車やバスに乗車する時」には着用を「推奨」する としている。
     それならば3月12日までのマスクの着用は、個人の判断に委ねられていなかったのだろうか?
     
     上の画像では、 あたかも3月12日までのマスク着用は個人の判断が許されていなかったかのような書き方だが、これはほとんどデマに等しい。
      マスク着用に関して個人の判断を制限する法的根拠など何もないし、法に基づかずに個人の判断を制限していたのなら、完全な憲法違反だ。
     実際の厚労省の3月12日までの「考え方」では、 「屋外ではマスクは原則不要」「屋内では距離が確保でき、会話をほとんど行わない場合をのぞき、マスクの着用をお願いします」 となっている。
     既に屋外ではマスクは不要となっており、屋内でも、あくまでも強制力のない 「お願い」 でしかないのだ。
     3月13日からはこの 「お願い」 がなくなって 「推奨」 になるわけだが、お願いだろうが推奨だろうが、 それを聞くかどうかは「個人の判断」であることに、全く変わりはない。
     つまり、厚労省は 「これまでマスクの着用に関しては個人の判断に委ねてきましたが、令和5年3月13日以降は、個人の判断に委ねることになりました」 と発表しているのだ。
     だが、それではあまりにもおかしいので、3月12日までは個人の判断に委ねられていないかのようなデマまで飛ばしたのである。
     いわゆる「マスク警察」の連中には、このような厚労省のデマを真に受けて、本気でマスク着用は個人の判断が許されていないものと信じ込み、マスクをしない者は社会秩序を乱す不埒な輩であると「正義感」に燃えて、取り締まりに精を出していた者も相当数いたのではないか?
     だがそもそもマスクをつけるか外すかくらい、個人の判断であることなど言うまでもなく、そんなことで大の大人に誰かが号令をかけるというのは、あまりにも常識に反している。
     それでも、お上が決めてくれなんてことを言う幼児みたいな大人があまりに多かったものだから、厚労省もこんなヘンな発表をせざるを得なくなったのかもしれない。
      それにしても、 「3月13日から」 という日付には、何の根拠があるというのだろうか?
     じゃあ前日の12日には外しちゃいけないのか? 3週間前である現在の時点ではどうなのか? 3月13日午前0時を境に、ウイルスがいなくなるのか?
  • 「小林よしのりは何故、人に騙されるのか?」小林よしのりライジング Vol.459

    2023-02-08 13:35  
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     前回のラストで「一度、『小林よしのりは何故、人に騙されるのか?』というテーマで書いても面白いかもしれない」と書いたところ、コメント欄や「世界のゴー宣ファンサイト」にいろんな意見が寄せられて、それがどれも面白かった。
     そもそも、いくら自分はこうだから人に騙されるなんてことを自分で書いても、どうしたって自己弁護にしかならない。
     やはりここは、人の意見を参考にした方がいいと思うので、今回は寄せられた意見から抜粋して紹介し、ひとこと感想をつけておこう。
     まずは「世界のゴー宣ファンサイト」管理人・カレーせんべい氏の意見から。
    〇よしりんが人に騙されやすい理由は「その人が持っている美点を最大限に拡大して評価するから」だと思います。
     つまりよしりんは人を最大限評価して信じるタイプだから、騙される確率も上がるのだと思います。
     それからもう1つ理由があります。
     もし仮に、カレーせんべいがゴー宣のアンチになったとして、その場合は、小林よしのり先生は「騙された」ってことになるのでしょうか?
     それって「単にカレーせんべいが堕落しただけ」ではないでしょうか??
     そして小林よしのり先生には「人の堕落を見逃さない」というシビアな態度があると思います。
     自分に嘘つけない人ですからね(;^ω^)
     以上の2点によって、「小林よしのりは人に騙されやすい」ように見える。というのが私の意見です。
    「その人が持っている美点を最大限に拡大して評価するから」と「人の堕落を見逃さないから」。なるほど、そうかもしれない。
     よく見てるよなぁ。
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    〇小林よしのりは何故、人に騙されるのか?」というのは、個人的にはよしりん先生は「人に規範を示し、ビジョンや理念や方向性を示すことができる“父性”」と「面倒見が良く、人を優しく包み込み、時に癒やす(主に女性)“母性”」の両方を併せ持っているけれど、よしりん先生を騙す人間は“母性”に訴えかけてくるからだと思います。
    (ハルユウさん)
     これだとカレーせんべいの言う「美点を最大限に見る」が母性、「人の堕落を見逃さない」が父性に当たることになる。
     けれど、わしって 「面倒見が良く、人を優しく包み込み、時に癒やす」 なんてことをしているだろうか?してないと思うんだよね。
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    〇「王様は裸だ!」
     この台詞と騙されるというテーマは繋がっているのではないでしょうか。
     よしりん先生は人を観る際、最初のうちは相手の良いところに目が行くけど、どうしてもその眼力故に相手の影、若しくは闇の部分に気付かれるのだと思います。
    (枯れ尾花さん)
     問題は、「あいつは裸だ」と言わなきゃいいのに、言っちゃうことだな。
     期待しなけりゃ良かったんだよな。
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    〇「小林よしのりは何故、人に騙されるのか?」…これはしょうがないですよね、期待して、その人を見てるんだから、「最初からわかってたさ、フッ」なんてシニカル野郎にはなれませんもんね♪
    (ゲストさん)
     そうだよな。もうシニカルにはなれないことは十分わかった。
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    〇よしりん先生は人情があって優しいんです。優しい人間は、根本的な性格として常に人を信じたいんだと思います。でも、信じること・信じ続けることは、疑うことよりも遥かに難しい。そんな気がします
    (まーらいおんさん)
     凄いこと言うね、きみ。深い!深いよ!何かの作品でそのセリフ、使いたいね。
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    〇情に厚いからではないでしょうか。
     薬害エイズの時だったか作品中で「情の貯金」という言葉を使われていたのが印象的なので、専門家真っ青の勉強量で理論も大事だが、情のウェイトの方が重い人なのかなと。
    (マックンさん)
     う~~~~~~~~~ん、こそばゆい!
     みんなこれだけわしを高評価していて、そのうち愛人との情事で腹上死したなんてスキャンダルが出たら、みんなどう言うのかね?
     騙された~~~~~~~~~と思うのか?
     ポテチンとなって白けてしまうのか?
     そんな顔も見てみたい気がするな。
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    〇簡単に言ってしまえば「人がいいから」ということなんだろうが、やはり子供相手のギャグ漫画から出発しているというのがあるだろう。「こうすれば読者が喜ぶだろう」と考えるのが習慣化してしまっているから、悪意を持って相手を考えにくい。ギャグマンガ家の性(さが)ですね。
    (千本通りさん)
     おお~~~!これも鋭いかも。
     自分を客観視させてくれる意見はありがたいね。
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    〇小林先生は「コネ」を作るようなタイプの人ではないと思いますが、「ゴー宣道場」や「オドレら正気か」でのトークゲスト、あるいは雑誌企画での対談なので相手の論客と話す時に、いきなり喧嘩腰でぶちかましてやろう!という感じでは行きませんから、ゲストに常識的に気を遣って、良いところがあったら評価しようとされますよね。
     なので、相手側が話術に長けていたり人たらしだったりした時には「騙されやすい」ということになるのかな?と思います。
     政治家などは言葉巧みだから要注意ですよね。
     女性も男性に比べたら相手に「嘘」を悟らせない技は巧みな気がします。
    (さらうどんさん) 
     確かに、ゲストに呼んでおいてケンカ腰になるわけにはいかない。
     しかし、イベントの最中に、明らかにおかしなことを言い出す人もいるから困る。
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