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「男の人ってやっぱり恐い…と思った日のこと」小林よしのりライジング Vol.238
2017-09-05 21:30153pt今回は、前回の牛乳石鹸CM炎上事件の考察から、「男尊女卑とはなにか?」を思い巡らせたとき、頭の中に浮かんだ光景を、ちょっと素直に自分の目線から綴ってみたいとおもう。
こういうことを“創作”でなく“体験エッセイ”として書くと、「やっぱり水商売の女だな」と思われそうで嫌だし、特に女性からは白い眼で見られたりするかもしれないけれど、しょうがない。まずは私の立ち位置から見える男女の姿を、そのまま書いてみたい。
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私は水商売の経験がとても長い。若い時に借金を作ったからだ。ライターの仕事だけでは何十年かかるかわからないと不安だったので、とにかく夜でも時間給のつく場所にいたかった。
水商売と言っても、いろいろ。新宿歌舞伎町、銀座、東中野、門前中町……高級会員制バーで、色気もないのに無理してドレスを着て厚化粧して、 「女なのに女装」 のようなトンマな状態になっていたこともあるし、四畳半ぐらいの店をひとりで切盛りして、生活保護のおやじに飲み逃げされたこともあるし、大きなキャバクラのキッチンで、着飾ったキャバ嬢たちに命令されてお酒を作ったり、吸い殻の入った灰皿を投げつけられたりして、 「クソ女どもぶっ殺す」 と本気で思っていたこともある。
今は執筆や編集の仕事がメインなので、新宿二丁目にある家族経営の音楽バーで週末にちょっと手伝うぐらい。時給はコンビニの深夜給と変わらないし、別に高額のお酒を売っている店でもない。酔った客の乱闘にたびたび巻き込まれるので、服装はいつもTシャツ、ジーンズ、スニーカー。
LGBTの町なのもあって、一般的に想像される「女が男に媚びてキャイキャイ」とか「男性を気持ちよくさせて、カネを吸い上げる」ような、『黒革の手帖』的世界とはかなり違って、どちらかと言うと、女尊男卑な空気があると思う。
ちなみに私は、男性よりも女性に誘われることのほうが多い。そういうちょっと特殊な環境にいる。
●背中に矢の刺さった男性たち
もともと飲み歩く習慣のない人間だったので、最初のうちはどうしてこんなに人が外で酒を飲むのかわからないほどだった。けれど、いろんな場所から、いろんな男女を見てきた中で、ずっと気になっていることがある。
それは、どんな店でも、 飲み屋の扉を開いて入ってくる男性のなかには、背中に折れた矢が刺さっているように見える人がいる ということだ。
すごく変な言い方をしていると思うし、私が勝手になにかを投影しているだけで、気分よく働くための偏見なのかもしれない。でも、たしかに刺さっている。
もちろん、なにも刺さっておらず、身軽そうで楽しそうな空気の人もたくさんいる。
そのなかで、“まるで戦から帰ってきたかのような”疲労困憊した雰囲気や、押し詰められた感情、敗北感、やせ我慢のようなものが入り混じった空気を無意識のうちにまとっている人が男性には少なからずいて、そして、 そういう人は、飲み屋には決して楽しむためにワクワクした様子でやってくるわけではない ということだ。
パーソナリティもさまざま。楽しい話だけをする人もいれば、ちょっとだけ愚痴をこぼす人もいるし、威張って得意気になる人もいれば、話しかけると「ごめん、ちょっと放っておいてくれる?」と突き放したきり寡黙な人もいる。酔うとやたら横柄になってきて、やっぱり優しくできないなと思えてくる人も、もちろんいる。
で、この矢は酒を飲んだところで抜けない。まとった空気は多少軽くなったり、気分が良くなったりはするようだけど、帰っていくときも矢は刺さっていて、ちょっと足元をふらつかせながら、夜の街を歩いて去ってゆくその背中は、本当に哀しく見えるのだ。
あの哀しみは、いったいなんだろう?
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私にはきっと好みの男性を色眼鏡で見る部分があるから、そういう人を都合よく武士のように見立てて、もてなそうとしているだけかもしれないと考えてみた。
でも、好みでもなく、人となりをよく知らなくても、やっぱり第一印象でそのような空気を帯びている人はいる。何年も何年も飲み屋で人を迎えてきて、なんだか見えてしまうんだからしょうがない。
それに、不思議なことに、女性にはそのような矢の刺さった人はいない。 -
「牛乳石鹸CM炎上事件~情緒の欠落した日本人」小林よしのりライジング Vol.237
2017-08-23 11:35153pt
牛乳石鹸 のWEB用CMが炎上しているそうだ。
牛のマークの牛乳石鹸、子供のころ、おいしそうに感じでかじってしまったことがあるなあ。私の世代のCMと言えば、 「♪ぎゅ~にゅ~せっけん、よいせっけん」と いうフレーズが印象に残っている。最近は、流行にのってストーリー仕立てのムービーを制作しているようだ。3分弱の動画、URLを記載しておくから、興味のある人はまず見てみてほしい。
牛乳石鹸 WEBムービー「与えるもの」篇 フルVer.
https://www.youtube.com/watch?v=CkYHlvzW3IM
30代後半ぐらいと思われるサラリーマンの男。妻と小学生ぐらいの息子がいて、そこそこきれいなマンション暮らし。朝は両手にゴミ袋を持って、出掛けのゴミ出しをしたあと、バス通勤。ぼんやりとして、冴えない顔つきは、ハキハキした感じの妻とは対照的だ。だが、結婚して子供がいて、それなりのマンションに住んでいるようだから、かつてなら中間層、いまなら富裕層とすら言えるのかもしれない。妻は、朝のシーンで襟付きのジャケットを着ているから、共働きだろう。
この日は息子の誕生日。出掛けに妻から「帰りにケーキお願い!」と頼まれる。会社でも妻からLINEが来て、野球グローブの画像と「プレゼントもお願い!」のメッセージ。妻も妻で忙しい仕事なのだろう。一方、社内では、後輩の社員がミスをしたようで、上司にひどく叱られていた。
仕事帰り、小走りで息子のための買い物に向かう男は、野球グローブを選び、誕生日ケーキを買う。朝は両手にゴミ袋、夕方は両手に息子の誕生日プレゼント、見るからに“家族思いのやさしい夫”という姿だ。しかし、その脳裏には自分の子供時代が思い出されていた。
自分の親父は、こんな風に家族サービスをする男じゃなかった。記憶に残るのは、作業着を着て振り返りもせず仕事に出ていく後ろ姿。そして小学生だった自分は、グローブを手に、いつもひとりぼっちで壁に向かってボールを投げていたな……と。
そこにナレーションが入る。
「あの頃の親父とは、かけ離れた自分がいる。
家族思いの優しいパパ。時代なのかもしれない。でも、それって正しいのか」
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