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記事 5件
  • 「失笑!安倍首相の靖国参拝は『不戦の誓い』だった!」小林よしのりライジング号外

    2013-12-28 13:25  
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      ゴーマニズム宣言 「失笑!安倍首相の靖国参拝は『不戦の誓い』だった!」   首相の靖国参拝はもう新たな局面に入ったのではないだろうかと思っている。 どうせ来月発売の自称保守&ネトウヨ系の言論誌は、安倍首相よくやったと絶賛一色だろうが、国際的な感覚が全くない、内弁慶な議論でしかない。
     以前のように朝日新聞や左翼が中韓にご注進に及んでこの問題をこじらせてきたとか、中曽根総理が「公式参拝」を言い出すまでは普通に靖国参拝していたとか、その頃は中韓も文句を言わなかったとか、そういう歴史的事実を述べても、アメリカを始め世界に対して説得力を持つレベルではなくなった。
     安倍首相の靖国参拝を受け、在日米大使館は「失望した」と声明を出したが、それを安倍政権が軽く受け止めていたため、米国務省がさらに同じ内容の声明を出して、米政府の姿勢を明確にした。
     日米防衛相の電話会談も延期になって、ようやく日本政府も事の重大さに気づき始めたようだ。
     アメリカだけの話ではない。欧州でも安倍政権は失笑されている。
     一国の首相にしては世界からの視線に鈍感過ぎるのではないか?
     安倍首相は世界中から異様なタカ派だと見られている。
     フランスの極右政党党首ルペンや、ロシアの極右政党党首ジリノフスキーのように、短絡的で偏り過ぎた極右の首相と思われているだろう。
     わしの目からは、もはや完全な ネトウヨ首相 だ。ネトウヨと同レベルの国際感覚なのである。
     慰安婦問題もそうだが、首相の靖国参拝は、もう国際的には新たな局面に入ってしまって、自称保守論壇の内向きな強硬意見は、日本を孤立させるだけの自慰行為になってしまった。
     そもそもわしは小泉純一郎の首相在任中の靖国参拝の時も警告を発していたのだが、新自由主義・グローバリズムで、日本の国柄を破壊する政策を遂行するために、ナショナリズムは利用されるようになってしまった。
      靖国参拝はもはや新自由主義の隠れ蓑になってしまったのだ。
     この矛盾がどうしても自称保守&ネトウヨには理解できない。靖国参拝さえしておけば愛国者と認定する単細胞が、今の自称保守&ネトウヨなのである。
     しかもこの連中は皇位継承問題では「男系Y染色体固執」で団結しており、天皇陛下の御意思も踏みにじって恬として恥じない。皇統断絶の危機を将来している一群なのである。
      つまり「天皇なきナショナリズム」だ。
     天皇のため、郷土(クニ)のために戦った英霊たちは、悲嘆に暮れていることだろう。
     しかも自称保守にしても、かつて小泉が8月15日を避けて参拝した時には批判していたはずである。
     だが今回の12月26日という無意味な日の首相参拝には、なぜかこぞって称賛の声を挙げている。
     いつの間にやら靖国参拝のハードルはすっかり下がり、いつでもいいから、とにかく行きさえすりゃいいということになってしまったようだ。
     さらに肝心なことは、首相が靖国神社をどういう場所と捉え、何のために参拝するのかという意識である。
     安倍は今回どういう意識で靖国神社を参拝したのかを、談話で発表している。その談話のタイトルは 「恒久平和への誓い」 というのだ!
    http://www.kantei.go.jp/jp/96_abe/discource/20131226danwa.html
     これだけで、安倍は靖国神社がどういうところか一切理解していないということが明らかである。
  • 「尊皇派の仮面を被った朝敵たち・この一年の暴言集」小林よしのりライジング Vol.67

    2013-12-24 17:25  
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     平成25年も残りわずか、「小林よしのりライジング」も今年最後の配信となる。
     そんなわけで今回は一年を振り返ってみるが、もちろんありきたりの回顧をしたってしょうがない。おそらく誰も振り返らないであろう事柄について、今年一年の動向をまとめておこう。
     朝敵たちが、皇室に対して行なった卑劣な言動についてである。
     保守を自称する朝敵どもの平成25年は、こともあろうに 皇太子殿下を皇位継承者の地位から追放してしまおうという謀略 を画策し、ものの見事に失敗したという一年だった。
     自称保守の朝敵は皇位継承の男系絶対を唱え、女性の皇位継承はおろか、女性宮家の創設すらも潰してしまった。
     その結果、このままでいけば、将来いまの皇太子殿下が天皇に即位した時には、「 皇太子不在 」という事態となる。
     その時、国民は一気に事の重大性に気付き、「 愛子さまというお子さまがいらっしゃるのに、なぜ皇太子になれないのか? 」という声が沸き起こる可能性がある。連中はそれを恐れているのだ。
      もはや男系主義者たちにとっては、皇太子殿下は「邪魔者」なのである。
      皇太子殿下ではなく秋篠宮殿下が天皇になれば、その息子である悠仁さまが皇太子になれる。
     また、秋篠宮殿下もすっ飛ばして悠仁さまを早々と天皇にしてもいい。
     未婚のうちに天皇になれば、皇太子が不在でも当然ということになる。連中の本音は、そんなとこだ。
      そして皇太子殿下を排除するための理由として、病気療養生活が10年目に入られた雅子妃殿下の存在を挙げ、皇太子殿下と妃殿下を共にバッシングする。
     今年は両殿下のご成婚20年という節目の祝福すべき年だったにもかかわらず! 
     そしてもちろんこれは、 皇族はどんなに事実無根のバッシングを受けても 反論する権利がない ことがわかった上でやっていることである。
      これを 朝敵 、 逆賊 、 謀反人 、 反逆者 と言わずして、他に何という呼び方があるだろうか?
     今年の皇太子・同妃バッシングの皮切りとなったのは、週刊文春1月31日号「 天皇『秋篠はわかっている』の衝撃 」と題する記事だった。
     記事には、皇后陛下に面と向かって「このままでは国民が皇太子殿下に対して統合の象徴として尊敬の念を持つことが難しいのではないでしょうか」と放言した匿名の人物が登場する。
    「すると、皇后さまは一瞬、ギクッとした表情をされました」というが、そんな無礼なことを言われりゃ驚いて当然だ! 
     ところが週刊文春は、それがまるで「図星を指された」反応であるかのように示唆し、さらに全く曖昧な根拠で、 天皇陛下も皇太子殿下にではなく、秋篠宮殿下に対する期待が膨らんでいるようだと書いたのだった。
     そして、今年の皇太子バッシングの火付け役として決定的な役割を果たしたのは、新潮45・3月号に掲載された宗教学者・山折哲雄の『 皇太子殿下、ご退位なさいませ 』だった。
     いまの天皇皇后は日本の伝統を受け継いだ「象徴家族」であるが、皇太子・同妃は「近代家族」の方にぶれはじめているのではないか。だから皇太子は退位して、一家で「象徴家族」の重荷から解放され、新たな「近代家族」への道を歩む「第二の人生」を選んだほうがいいという、わけのわからん意見なのだが、宗教学者として一応権威のある人物の発言であり、大きな反響を呼ぶことになった。
     歴史学の泰斗・ 田中卓 氏は、これを放置すれば今後どのような不敬な発言が続発するかもしれないという危機意識から、齢90にしてウェブサイト「 戀闕の友へ 」を立ち上げ、山折の無知や誤りを詳細に論じている。
    http://www.seiseikikaku.jp/special/renketunotomohe/index.html#hajime
     一方、週刊文春3月7日号には、「 皇太子『退位論』にご友人が怒りの猛反論 」という、山折論文批判が載っている。
     山折と五十歩百歩の皇太子バッシングを載せているくせにどのツラ下げてという感もあるが、週刊文春は内部で皇太子派と反皇太子派に分裂しているのか、それとも二股かけてどう転んでもいいようにしているのか、皇太子・雅子妃両殿下を擁護する記事も載せる。その代表が、 友納尚子 氏の連載『 ザ・プリンセス 雅子妃物語 』である。

      4月30日の国王即位式に出席するためのオランダご訪問に際しては、週刊文春は毎週毎週バッシング記事を載せ続けた。
     ご訪問前は、直前までご訪問が決まらないことを批判し続け、ご訪問が決まれば随行する主治医の大野裕医師を、ご訪問後は、現地で雅子妃殿下が会われた父・小和田恆氏をバッシングしている。
     叩ければ何でもいいとでもいうような様相だが、記事の最後には必ず取ってつけたように、「何より雅子さまのご快復にとって最良の選択がなされることを祈るばかりだ」だの「実り多き海外行啓となることを祈るばかりである」だの、心にもない一言で結んでいるのが、本当に気色悪い。
     直前までご訪問が決まらなかったのは、ひとえに雅子妃殿下の体調に波があり、判断がつかなかったからであり、それを週刊文春が批判したところで事態が改善するわけがなく、逆に余計なプレッシャーをかけてご病状を悪化させかねなかった。
      本当に雅子妃殿下のご快復を祈っているのなら、そもそもこんな記事書くわけがないのである。
     さらに週刊文春は6月13日号では「 雅子さまと紀子さまのどちらが皇后にふさわしいか 」という無礼千万なアンケートで「雅子さま38%、紀子さま62%」という結果が出たと載せた!
     皇后はあくまでも天皇のお后だから皇后である。
      紀子妃の方が皇后にふさわしいというのは、皇太子殿下より秋篠宮殿下の方が天皇にふさわしいと言うのとほぼ同じである。
      これは、国民の人気投票で天皇まで決められると思っているかのような、「 国民主権病 」の極致だった。
     なお、週刊文春はこの後「安藤美姫の出産を支持しますか?」というアンケートをやって大ヒンシュクを買い、謝罪している。しかし「皇后にふさわしいのは」のアンケートについては、今なお何とも思っていないようだ。
     そして週刊新潮6月20日号に、本年最大の問題記事が載る。
  • 「差別が商売になる時代ー言葉の暴力を誰に使うか?ー」小林よしのりライジング Vol.66

    2013-12-17 11:00  
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     2012年のいじめの認知件数は20万件となり、過去最多になったという。
     ネット社会になって、いじめは罪悪感も感じず、匿名で手軽にできる遊びになった。
     他人を罵り、多くの人々と一緒に悪口を言い合うのは楽しいのだろう。
     わしも相当に口が悪いので、本気を出したら、相手の傷口をえぐって立ち直れなくすることくらいは朝めし前だが、「匿名」でそれをやるほど落ちぶれたくはない。
     やられたら、やり返されるという「実名」の条件下でなければ、他人を批判してはいけないのだ。
      この言葉の暴力を、気に入らない個人を排除するために使ったり(学校のいじめ)、社会的弱者や少数民族を侮蔑・排除するために使う奴ら(在特会&ネトウヨ)を、わしは心底軽蔑する。
    「いじめ」の増加と、「在日差別」の過激化は、それを行う者たちの心理的動機が似ている。
    「匿名」で、ネットで罵詈雑言を書きまくり、「集団」で在日の人々に対する「ヘイトスピーチ」を叫びまくったりするような輩は、どんな大義を掲げていても、政治的主張があるように装っても、それはカモフラージュに過ぎない。
      真の動機は単に自分自身の弱さ、自信のなさにあり、自分の存在に価値を実感できない空虚さにある。
    「 オレ様より下がいる。それがあの異民族だ。本来、社会的弱者のはずなのに不当にオレ様より甘い汁吸ってやしないか?オレ様は立派な存在だ。だって日本人だし、奴らをいじめる強い存在だから。こうして奴らを罵っていれば、愛国心がある証明になるし、ヒマも潰せるし、仲間と集えるし、寂しくない。この運動を止めたら、オレ様は何のとりえもない、特に何かに夢中で打ちこむ情熱もない、しょうもない人間に逆戻りだ。差別は自己満足を得られる手軽な娯楽なんだ。他人を罵って愛国者と思えるなんて、なんて楽しいのだろう。この国から出ていけ、チョーセンジン! 」
      昔からいたのだ。差別が好きな奴が!
     自分のコンプレックスを誤魔化すための憎悪、卑小な自己像を客観的に見る勇気のない弱さからの他者憎悪、そういうものは昔からあった。
     ただし、昔は差別は大っぴらにやるものではなく、公衆便所に「誰々はブラク」とか「チョン」とかこっそり書いていたもので、その犯人が見つかったら大問題になり、場合によっては部落解放同盟の糾弾に晒されるようになっていた。
     それが恐くて差別はもっと淫靡な形でしか残っていなかったのだ。
      ところがネットが普及し、差別語は公然と氾濫し始めた。その上、中流階級が崩壊して、リアルな他者との親交が崩壊した現代では、ついに差別が商売になるレベルにまで膨張してしまった。
     差別することが商売になる!?
     こんなことは一昔前まで考えられなかった。淫靡に残っていたとはいえ、差別が悪であることは常識だったし、ましてや差別で商売なんかしても買う者がいなかったし、解放同盟の抗議も恐かったからあり得ないことだった。
  • 「『特定秘密保護法』を安倍晋三は読めるのか?」小林よしのりライジング Vol.65

    2013-12-10 12:40  
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    「特定秘密保護法」 は12月6日の参院本会議で可決、成立してしまった。
     安倍政権が何が何でも今国会で成立させようと急いだのは、よく指摘されたとおり、法案の内容がこれ以上国民に知られることを怖れたからだ。反対の世論の拡大を怖れて、一気に片づけてしまった。
     そこには国民はバカであるという「愚民思想」が隠されている。
     そもそも1年前の衆院選でも、今年7月の参院選でも、自民党は 「特定秘密保護法」 など選挙公約として一切挙げてもいなかった。
     それを最優先に、反対を振り切って成立させてしまうこと自体、「白紙委任状」を渡されたとでも思い込んでいるかのような横暴である。
     法律成立まで、産経新聞は報道・言論機関の使命をかなぐり捨てて、秘密保護法賛成の提灯記事を載せまくった。
     一例を挙げると、12月5日付記事では、阿比留瑠比記者が 「特定秘密保護法案」 に反対するメディアを扇情的と決めつけ、菅直人政権時から国民の「知る権利」と民主主義の危機は訪れていたじゃないかと居直っていた。
     確かに平成22年(2010)、尖閣諸島の中国漁船衝突事件のビデオを隠蔽しようとしたのは民主党の菅直人政権であり、このとき国民の「知る権利」と民主主義は危機にあったといえる。
      しかし、だからといって、安倍政権時ならば民主主義を一層崩壊させていいという話にはならない。
    「知る権利」もさらに萎縮させていいという話にはならない。
     自分の非を誤魔化すために、他人の非をあげつらうのは、子供の論法である。
     記事ではさらに、「尖閣ビデオ」の映像を流した元海上保安官・一色正春が法案に賛成する意向を示した上で「 (秘密の指定と解除の)ルールを決めることが大切だ 」と発言、安倍晋三がこの意見を党首討論で紹介したことに触れている。そのルールが「特定秘密保護法」に明確に書かれてないから、今こんなに問題になってるのに、一色は何をボケたことを言ってるんだ?
     今やポジショントークしか出来ない、自称保守ムラの住民に成り果てた人物の発言を首相が国会で使うのだから、悪い冗談だろうと言うしかない。

    「特定秘密保護法」成立翌日、12月7日の産経新聞には「 安倍晋三首相 特定秘密保護を語る 」と題する単独インタビュー記事が載った。もちろん、産経新聞の提灯記事への「ごほうび」だ。
     ここでも安倍は「尖閣ビデオ」の問題を引き合いに出して、こう言っている。
    問題は、誰がどのようなルールで秘密を決めるかであり、衝突映像はそもそも秘密にすべきものではなかった。日本の国益のためにはむしろ、国際社会に示さなければならなかった。(菅政権は)全く誤った、致命的な判断ミスをした。
     安倍は秘密保護法の成立で、しっかりした「秘密のルール」が定められたと自画自賛するが、一体この法のどこに、秘密を決定するルールが記されているというのか!?
    「特定秘密保護法」 の第3条には、「 公になっていないもののうち、その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがあるため、特に秘匿することが必要であるもの 」を秘密に指定できるとされている。
      そしてその中身は、指定する者の判断に任されているのだ。
     秘密保護法が成立したって、「その漏えいが我が国の安全保障に著しい支障を与えるおそれがある」と、 その時点での政府 が判断さえすれば、「尖閣ビデオ」も秘密指定できるようになっているではないか!
     民主党政権は確かに「尖閣ビデオ」を秘密にしようとした。それは中国に配慮した悪政だが、その一方で、昭和47年(1972)の沖縄返還を巡る、日米両政府間のいわゆる「 沖縄密約 」の方は、明らかにしようとしていた。
     アメリカではとっくに「密約」の存在を示す文書が機密解除されていたのだが、自民党政権がそれでも長年「存在しない」と言い張ってきた奇妙な秘密である。
     要するに、民主党政権は、
    「 中国・韓国との秘密は守れ、米国との秘密は暴け! 」と言い、
    安倍自民党政権は、
    「 米国との秘密は守れ、中国・韓国との秘密は暴け! 」
     と言っているだけの話なのだ。
     しかも、自民党政権時代でもハト派政権の時はまた違った。
      宮沢喜一内閣が「河野談話」で慰安婦に謝罪した際、実は元慰安婦本人に対する聞き取り調査では、日本政府が謝罪すべき根拠は何一つ出ていなかった。
      それにもかかわらず、「とにかく一度謝罪してくれれば収まる」という韓国政府の甘言による「密約」で謝罪したのであり、謝罪の根拠がないことを証明する元慰安婦の聞き取り調査報告書の内容は長らく「秘密」にされていた。
     つまりこの時の自民党は、「 米国との秘密は守れ、中国・韓国との秘密も守れ! 」だったのだ。
    「特定秘密保護法」 には、秘密指定のルールなど何も明確にされていない。官僚や時の政権によって恣意的に秘密を指定できて、しかもその秘密が、最長60年間も解除されないのである!
     安倍晋三は自分の恣意的なルール運用こそが正しく、それがずっと続いていくと信じているらしい。
     安倍信者の自称保守&ネトウヨは、今後決して政権交代が起こらず、未来永劫安倍政権が続くとでも思っているだろうか? 
     安倍は、「尖閣ビデオ」を一色が流出させた当時のマスコミの論調について、こう言う。
  • 「櫻井よしこ『チェルノブイリ原発事故』に見る変節」小林よしのりライジング Vol.64

    2013-12-03 13:25  
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    「櫻井よしこの異様な変節」  櫻井よしこは1980年から1996年まで16年近くにわたって日本テレビで、現在の『NEW ZERO』の前身番組である『NNNきょうの出来事』のキャスターを務め、世に知られるようになった。
     70年代までは報道の現場に女性の姿はほとんどなく、テレビでは「ニュースは男性が読まなければ信用されない」とまで言われ、女性アナウンサーの役割は「天気予報」くらいという徹底的な男尊女卑が定着していた。そんな中、櫻井は女性ニュースキャスターの草分け的存在となったのである。
     当初は小林完吾など男性アナウンサーとのコンビだったが、終盤の6年間は櫻井が単独でメインを張った。
      そんな時期の1993年5月、同番組は4回にわたる「チェルノブイリ特集」を組み、フォトジャーナリスト・広河隆一をゲストに迎えてその取材レポートを放映した。
     これはいまYou Tubeで見ることができる。おそらく無許可だろうが、20年前のテレビニュース番組の検証など昔は不可能だったので、正直に言えばありがたい。
     広河隆一はその後も一貫してチェルノブイリの取材と支援を続けている。そして櫻井は…この櫻井と、今の櫻井は本当に同一人物なのか!?
     櫻井は冒頭、こう断言する。
    「 史上最悪のチェルノブイリ原発事故から7年経ちました。公の機関は、住民への被害はなかったなどと発表していますが、事実は全く違います 」
     広河は恐るべき実態を報告する。 事故当初、ソ連は「住民の被害はなかった」と発表した。
     だが実は、初期の被曝を記録した唯一の物証であるカルテが何者かによって持ち去られ、所在がわからないという。
     そしてかろうじて発見されたカルテには、住民が極めて高いレベルの被曝をしていたことが記されていた。
      明らかにこれは当局による「被曝隠し」だった。
     
     さらに事故4年後の1990年、IAEA(国際原子力機関)の調査団が現地入りした。調査委員長は重松逸造という広島の医者で、現地の人々は日本人、しかも広島の医師なら公正な調査をしてもらえるものと期待した。
      だが調査団は汚染の激しい地区には立ち入りもせず、食料は持参してきて現地の食べ物は一切口にせず、早々に引き揚げた。
      そして翌年「住民に被曝被害はなかった」という報告書を発表したのだった。
     重松逸造は、米国が広島・長崎の被爆者の「標本集め」のために設立したABCC(原爆障害委員会)のスタッフを経て、ABCC等を再編した「放射線影響研究所」の理事長となり、同研究所を牛耳ってきた人物である。
     しかもそればかりか、イタイイタイ病の公害認定の際に、原因はカドミウムではないとWHOに見直しを提起したとか、スモン病の際に厚生省の調査班長を務め、キノホルムが原因だとは認めなかったとか、とにかく「ザ・御用学者」とでも言うしかない人物だったのである!
      IAEAが「安全宣言」を出したために、一時は盛り上がりを見せていた国際社会の支援は急速に収束していき、チェルノブイリは忘れられた存在となってしまった。
     そしてその陰で、住民の健康被害はどんどん拡大していった。IAEAの御用学者が、被害を拡大させたのである!
     櫻井は深刻そうな表情を浮かべて
    「 広河さん、こうして見ますとね、国際原子力機関が住民の健康に問題ないと発表したのは一体なんだったんでしょうかね? 」
    「 もう、この国際原子力機関の信用性そのものが深刻に問われているわけですね 」
    「 IAEAの責任は極めて重いと言えるわけですね 」
    ・・・と、繰り返しコメントしている。
     次にチェルノブイリの北側、 ベラルーシ・ミンスクの病院 の取材レポートが放送された。どのベッドにも瀕死の子供たちが横たわる悲愴な映像が続き、広河が語る。
    「 私は去年もこの病院を取材し、子供たちを撮影しました。しかしその子たちに一人も会うことはできませんでした。大半は亡くなっていたのです 」
     甲状腺がんに罹った10代前半の少女の身体にメスが入れられる衝撃的な映像等が流れ、解説のナレーションが入る。
    「 医学の常識では、甲状腺がんは大人の病気です。子供が罹る率は50万人に1人と言われています。しかしチェルノブイリ周辺では、事故後4年を過ぎてから子供の甲状腺がんは爆発的に増え始めました 」
    「 原発の北のホイニキ地区では352人中27人の子供が要注意と診断されました。このうち甲状腺がんは2割に上ると見られ、平均発病率の7800倍です 」
     特集の最後は、事故から7年が経ち、被曝した女性たちが次々子供を生むようになっているが、食品の安全管理はきわめて杜撰な上に、遺伝の影響もわからず、生まれた子供たちの将来が案じられるという内容だった。
     これを見て、櫻井は沈痛そうな表情を浮かべてこう言った。
    「 広河さん、あの子供たちがこれから先どうなってしまうのか考えると、本当に心配ですねえ 」
     そしてさらに、こうも言っている。
    「 小児の甲状腺がんは、これまでは汚染がひどい地域の子供たちに目立っていたわけなんですが、この1年間でなんと、原発からかなり離れたポーランドからさえも発症しているという報告が出てきているんですね 」
      この櫻井と、今の櫻井は、同じ櫻井よしこなのか!?
     もちろん、絶対に意見を変えてはいけないというわけではない。小泉純一郎が言ったように、「過ちてはすなわち改むるにはばかることなかれ」である。
      しかし、考えを改めたのなら、なぜ改めたのか、過去の発言の何が間違っていたのかをはっきりさせなければいけないのではないか? それなのに櫻井は変節の理由を明らかにしない。というより、変節したことすら黙っている。
     この番組を、単に20年前のチェルノブイリとして見てはいけない。これから数年先の福島かもしれないと思わなければならない。
     そしてさらに20年経ったチェルノブイリ事故被災地住民の健康被害はどうなっているのかをレポートしたのが、先週紹介したNHKのETV特集と、同番組のスタッフが書いた『 低線量汚染地域からの報告 チェルノブイリ26年後の健康被害 』(NHK出版)である。
     先週は紹介しきれなかったが、ここにはまだまだ深刻な事態が報告されている。