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記事 4件
  • 「日本と台湾、情のつながり」小林よしのりライジング Vol.233

    2017-07-25 22:40  
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     蓮舫の「二重国籍」騒動をきっかけに、『台湾論』を描いていた時の記憶が一気によみがえってきて、先週の生放送でも30分以上かけて話した。
     思えば『台湾論』を出版してからもう17年にもなる。『台湾論』を読んでおらず、台湾とはなにかを知らない人もずいぶん多くなっているだろう。
     知性ゼロのネトウヨなど、中国と台湾の区別もつかず、蓮舫を中国人と思ってバッシングしているようだ。
     そこで先週の生放送から、台湾に関する部分を編集してユーチューブにアップすることにした。
     生放送の際に、有料部分だが無料で出していいだろうかと言ったら、「どうぞ無料で公開してください」というコメントが大量に流れてきた。皆さんの太っ腹に感謝する。
      日本人が台湾に関する議論をする際、そこに一切の情が入らないというのは、絶対におかしい。
     蓮舫をバッシングしている連中は情のかけらもなく、「法解釈」だけで容赦なく責め立てているが、わしはそれに非常に大きな違和感を覚える。
      台湾は日本が統治したのだから、本当は最後まで責任を持たなければいけなかった。だが戦争に敗けたために、それが果たせなかったのだ。
     台湾が日本の子供だとしたら、自分の子供を置き去りにして、孤児にして、親だけ逃げてしまったのだ。
     これに後ろめたさを感じなくては、人として絶対におかしいではないか。
     台湾には、戦後もずっと自分を日本人だと思って過ごしてきた人がいる。その中の一人が、蓮舫の父親だったのだ。
      蓮舫は、今でも心の同胞というべき台湾人の娘である。かつて台湾を孤児にしてしまったことに責任を感じているならば、蓮舫を受け入れなければならない。それが日本人というものだろう。
     それなのに、この騒ぎはなんだ!? 国籍、国籍としょうもないものにこだわっているが、 そもそも日本政府は台湾を「国」とは認めていないではないか。 国ではない「地域」の「国籍」って、一体何なんだ?
      蓮舫の 「台湾国籍」 で騒いだ連中は、 「中華人民共和国」 と 「中華民国」 の 「二つの中国」 があると言っていることになるが、本当にそう主張する覚悟があるのだろうか?
     だったら、日本政府にそう言ってみろと言いたい。 あくまでも「一つの中国」しか認めない中華人民共和国に追従して、台湾を国家として認めない弱腰の日本政府を、ぜひとも突き上げてもらいたいものだ。
     普段は親・台湾の風を装っている産経新聞だって、公式には台湾を国とは認めていないはずだ。その証拠に、 産経もわしが台湾のブラックリストに乗せられた際には「入国禁止」ではなく 「入境禁止」 と報じていたのだ。
     台湾当局が「台湾の 国家 と民族の尊厳を傷つけた」として「 出入国 移民法」に基づき「 入境 禁止」にしたなどと書いているが、これは完全に日本語としておかしいだろう。
       産経新聞2001年3月3日付
  • 「明治日本を作った男達」小林よしのりライジング Vol.232

    2017-07-18 20:40  
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    『大東亜論』の第3部 『明治日本を作った男達』 が7月24日に発売される(全国発売は26日頃)。
     薩長藩閥政府の専制を倒さんと蜂起した士族たちの武力闘争は、明治10年(1877)西郷隆盛の西南戦争を最後に全て敗れ去り、生き残った者たちは武器を剣から言論に替え、自由民権運動を興していった。
     その自由民権運動興隆の様子を中心に描いたのが『明治日本を作った男達』の物語であり、SAPIO誌の連載に加え、当時各地の民権家たちが作成した 「私擬憲法」 について描き下ろした漫画を収録している。
     これを描くために明治の自由民権運動について調べていくと、知れば知るほど、ある疑問が大きく膨らんできた。
     それは、 「はたして『近代化』とは、民主主義を発展させうるものなのだろうか?」 という疑問だ。
      つい、前近代は「野蛮」であり、そこから次第に「文明化」していって民主主義を学んだかのように思ってしまいがちなのだが、そのイメージは正しいのだろうか?
     明治初めの時代、政府は一刻も早く国を近代化・西洋化しようとして、鹿鳴館などというおかしなものまで作っていたが、そんな都会のごく一部を除き、日本中にはまだほとんど江戸時代と変わらない「前近代」の光景が広がっていた。
      江戸時代には「国民」という概念もなかったろうから、まず人々に「国民」とか「国家」とはどういうものかを理解させるところから始めなければならなかったであろう。
      その上で、これからは国民が政治を担わなければならないのだという意識を持たせ、民主主義というものを理解させるとなると、それはとてつもなく大変な作業だったはずだ。
     しかもそのような啓蒙・教育をしようにも、現在のようなメディアもなかったのだ。
     こんな状態から始めたのでは、民主主義を理解させるのに一世代や二世代くらいの時代の経過は必要じゃないかと、普通なら考えるだろう。
      ところが実際には、西南戦争が終わった翌年にはもう自由民権運動が始まり、民主主義に基づく議会開設の要求が行われている。
      そして『大東亜論』の主人公・頭山満らが所属した筑前共愛会は早くも明治13年(1880)に憲法草案を起草。
      有名な「五日市憲法」も、その翌年に起草されている。
     明治維新からたった十数年。黒船来航から数えても、30年にも満たない。何という早さだ!
     近代化によって野蛮から次第に文明化して、優秀な日本人になっていったわけではない。その素養は、前近代のうちに培われていたのだ。
     江戸時代の末期には、武士の教養はものすごいレベルに達していた。
      武家の子供は、7歳くらいから『大学』『中庸』などを始めとして「四書五経」の素読を始める。
     意味の理解はさておいて、文字を声を出して読みこなしていくことで、まず漢文を自由に読み下し、漢字の知識を増やしていくことができるのだ。
     素読の次は暗誦である。森友学園の幼稚園の教育勅語暗誦のせいで、暗誦そのものの印象がかなり悪くなってしまったが、暗誦は古今東西を問わず、優れた教育方法として取り入れられてきたものだ。
     例えばイギリスで最も繁栄したエリザベス女王の時代の教育は、ラテン語の文章の音読・暗唱を中心としていたというし、フランスでは今でも古典の詩歌を厳しく暗誦させていて、それが美しいフランス語を大切にする風土を形成している。
      武士の子供は素読や暗誦を繰り返すことで、漢語を中心とした豊富な語彙を得て、正しい文法に基づく話し方が出来るようになったのだ。
      そして14,5歳になると読みだけではなく、朱子学に基づいてその意味を教えられ、高度な論理的思考力を身につけていった。
  • 「内閣ぐるみ!強姦犯・山口敬之の無罪放免を許すな」小林よしのりライジング Vol.231

    2017-07-11 22:35  
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     私は個人的にレイプは死刑か、無期懲役の代わりに完全去勢がいいと思っている。以前、レイプ被害者の女性たちを取材した時のことが忘れられない。
     ある女性は、会社帰りの夜、自宅マンションのエレベーターに目出し帽の男が走り込んで乗ってきて、ナイフをつきつけられた。一人暮らしの自室に案内させられ、ドアを開けるなり押し込まれて目にガムテープを貼られ、頭から巾着袋のようなものを被せられたという。
     その後、「名前はなんだ」と聞かれて答えると、なんと犯人はその名を親しげに呼びながら、まるで恋人であるかのような口ぶりでささやきながら行為に及んだという。あまりのおぞましさに、聞いているこちらの足が震えてきた。女性は事件後、自宅に一歩も近づけなくなり、精神を患って、会社も辞めたという。
     その後、運良く、事情を知って寄り添ってくれる男性と出会ったが、最初の2年ほどは、手を握られることも恐ろしくて振り払ってしまい、辛抱強く見守らせて悪いことをしたと言っていた。
    「彼がいてくれなかったら、自殺していたと思う」
     うつむきがちにそうつぶやいた姿がいまでも忘れられない。犯人は逮捕されていない。
     また、ある女性は、仲の良かった友人からレイプ被害を受けたという。最初は男女数人のグループで、キャンプに行ったり、お互いの部屋に集まって家飲みしたりする関係だった。ところが、ある日、その中の男から「相談があるので二人で飲もう」と誘われて応じると、突然、つきあってほしいと告白されたという。
     しかし、女性にはほかに好きな男性がいたので断ったところ、男が豹変。執拗に食い下がられて自宅までついてこられ、「俺に恥をかかせるのか」と暴力的に威圧されるので、近所迷惑を恐れて玄関のドアを開けてしまい、力づくの暴行を受けたという。
     被害後、女性は一カ月以上、自分の意思で嗚咽を止められなかったという。抑えても抑えても体の内側から声がわきあがってきて泣きわめいてしまう。仕事をしていても、スーパーで買い物をしていても、なんの前触れもなく突然嗚咽してしまうので、奇怪な目で見られ、外出もできなくなったそうだ。
    「魂が殺されて、泣いているんだと思った」
     話を聞いた時点で、被害からすでに6年経っていたのだが、コーヒーカップを持つ手が小刻みに震えており、まだ傷は癒えていないのではないかと感じた。
     この女性は、被害を訴え出ることはなかった。親友に打ち明けると「訴えると、どんなことをされたのか、細かく聞かれることになるよ」と言われて、これ以上傷つくと自分はどうなってしまうのか、怖くなったという。また、男と二人で会って酒を飲んだこともあり、自分にも非があるように思えてしまったそうだ。
     あまりに悲しい。そして、どちらの女性もレイプによってその後の人生に多大な影響を受けていること、「自分が死んだ」と思わされたこと。この罪の大きさは計り知れない。
    ◆レイプ被害を訴えられる女性は滅多にいない
     今国会は、共謀罪でむちゃくちゃな国会運営がなされる裏側で、 性犯罪の厳罰化を盛り込んだ刑法改正案 が駆け足で議論、可決・成立した。法定刑の下限が懲役3年から5年に、女性の性犯罪者もいるため「強姦」でなく「強制性交等罪」という名称に、そして、被害者の告訴がなくとも起訴できることなどが決まった。
     少しでも厳罰化に進んだのは良いことだが、正直、「強制性交等罪」って、ポリティカル・コレクトネスにこだわりすぎて、被害者の恐怖や絶望や嗚咽が伝わってこない気がする。それに、もっと議論そのものが報じられて、世論が喚起されたほうが良かったのではないかとも思う。
     告訴なしに起訴できるなら、被害者が矢面に立つ必要がなくなり、立件できる数は増えそうだが、そもそも、警察に相談する、その第一歩に激しい苦痛を感じる女性のほうが多いだろうから、法律以外のケア対策が必要だろう。
      内閣府の調査(2014年)によると、異性から暴行を受けた女性のうち、「誰にも相談しなかった」人が67.5%、警察に相談した人は4.3%にとどまる。 被害に遭ったことをひた隠しに生きる女性も多いだろうから、この調査の対象になっていない女性の存在を考えると、泣き寝入りの割合はもっと多いはずだ。
    ◆安倍晋三の提灯:強姦魔・山口敬之
     そんな過酷な現実のなかで、勇気をもって実名と顔を出し、被害を訴えた女性がいる。
     安倍晋三の提灯ライターとして、ワイドショーで政権擁護発言をしていたフリージャーナリストの 山口敬之 から暴行を受けた、詩織さん(28)だ。経緯をご存知の人も多いとおもうが、改めて振り返っておく。
  • 「“国民侮蔑”首相と “一部の”安倍妄信者」小林よしのりライジング Vol.230

    2017-07-04 18:40  
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     自民党の歴史的大惨敗、まずは誠におめでとうございます。待望の朗報、まったくもって大慶の至り、祝着至極に存じます。
     東京都議選。実は私の選挙区には民進党の候補者がいなかった。前回落選の民進党候補者が、小池旋風に乗っかって都民ファーストに乗り換えてしまったからだ。
     投票の記載台で思わず顎をつまみながら迷ったが、国会で、生前退位・森友学園・加計学園・共謀罪と必死で戦ってくれた民進党の姿を思うと、“風”に乗ってあっさり鞍替えした人間には、どうも投票する気になれない。
     ほかの候補者は、公明党、共産党、そして自民党の現職2名。選挙期間中、街角で候補者の姿やポスターを見かけても、「自民」と書いてある時点で、その名に目もくれないぐらいの拒絶反応が私にはあった。鉛筆をうろうろとさせた末、共産党候補の名前を書いた。
     天皇陛下に対する共産党の姿勢にはまったく共感しないが、権力の肥大化・私物化・腐敗に関しては的確な言葉で敢然と闘っていると評価しているし、豊洲移転問題で「築地の再整備」を求めているのは共産党だけ。それに、今年前半は『トンデモ見聞録』を書く上で、『赤旗』の報じた情報はずいぶん頼りにさせてもらったから、お礼の意味も込めて一票入れておこうと思った。
     結果、乗り換え都民ファーストがトップ当選、ついで公明党、共産党が当選した。自民党の現職は2名とも圧倒的劣勢で落選だった。
     下村博文・自民党都連会長が、敗戦のコメントとして 「国政の問題などで逆風が吹いたことが、都議選の結果に影響した。候補者に大変申し訳ない」 と語っていたが、その通りだよと思った。
     都議選と言ったって、投票する側の都民は、候補者個人の姿よりも、国政のあまりにひどすぎる顛末のほうを見て、“意思表示”のために投票先を選んだ人がかなり多かったのではないか?
     私の友人は、 「自民党、あんまり調子乗りすぎだから反対票入れて来てやった!」 と憤慨していた。 「豊田真由子なんて氷山の一角だよね。いい加減にしろだよ」 と。告示直前までは、長期間に渡って連日あれだけ「豊洲・築地、どっち?」が報じられていたにも関わらず、実際には判断基準としてかなり優先順位が低かったとも思う。
    「都民=国民の意志」が表出した都議選。投票前日に秋葉原で行われた安倍首相の街頭演説で起きた現象にもよく現れていた。
    ◆「こんな人たち」…安倍首相の国民侮蔑発言
     投票前日の7月1日、安倍首相が秋葉原の「AKBカフェ」前で応援演説に立ち、大勢の聴衆が集まった。
     個人的には、群衆にまぎれて出現した森友学園・籠池のおっちゃんが、安倍首相に向かって
    「ウソついたらアカーン! ウソつくなあー! 本当のことを言えー!」
    「もらったものはもらったと言えー! 100万円渡したら渡したと言えー!」
    とヤジを飛ばす姿にウケてしまったが。
     ただ、籠池のおっちゃん、ほかに抵抗する手段がないのはわかるが、いろんな意味で注目を浴びすぎて危ないから、ああいう場所には不用意に姿を現さないほうがいいんじゃないかと赤の他人ながらハラハラする。報道陣に囲まれた結果、警察官に抱えられて現場から立ち去ったようで、これを「排除された」という言い方をするネットメディアがあったが、人物が人物だけに、事件が起きる前に「保護された」意味合いのほうがはるかに大きいだろう。
     さて、現場には、日の丸の旗を持ったネット系の安倍支援者たちが詰めかけたが、同時に、巨大な 「安倍やめろ」の横断幕 を広げた市民グループが陣取り、 「安倍ヤメロ!」「安倍カエレ!」 の大コールが起きた。
     路上から一般人らが撮影した一連の映像を見ると、自民党陣営のほうから 「自民党青年局」 とプリントされたのぼり旗を持ったスーツ姿の男たちがぞろぞろと歩いてやってきて、街宣車の安倍から「安倍やめろ」の横断幕が見えないよう、旗を広げて覆い隠すように並んだ。横断幕が移動すると、のぼり旗軍団も同じようにぞろぞろと移動してまた視界をふさぐ。
    「安倍やめろ」の文字が安倍の視界に入らないようにしたところで、 「安倍ヤメロ!」 はあたりに響き渡っている。そもそも、のぼり旗で隠そうとする姿そのものが、四方八方からスマホで撮影されてネット上にアップされているのだから、むしろ隠そうとする姿そのものが不信感を増長させる原因になっているとしか思えなかった。
     案の定、応援演説をはじめた安倍は、「安倍ヤメロ!」コールにブチ切れ。街宣車の上から、大合唱の起きているほうを指差して、こう言い放った。
    「憎悪からはなんにも生まれない。相手を誹謗中傷したって、なにも生まれないんです。
      こんな人たちに 、みなさん、私たちは負けるわけにはいかない! 都政を任せるわけにいかないじゃありませんか!」
     一国の首相が、街頭で声をあげる一般市民に向かって、指をさして「こんな人たち」。