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「〈証言〉を鵜呑みにして冤罪を作る奴ら」小林よしのりライジング Vol.486
2023-11-22 09:55300pt「証言」というものは、本当に扱いが難しい。
扱いを誤ればとんでもない事態を招く、非常に恐ろしいものだ。
だが、その自覚を一切持っていない者が多すぎる。
それが最も恐ろしいことである。
草津温泉で有名な群馬県草津町、この人口7000の穏やかな町に令和元年(2019)11月以降、大騒動が巻き起こった。
草津町議会議員の新井祥子という女性が、町役場の町長室で町長の黒岩信忠氏から性交渉を迫られ、肉体関係を持ったという「証言」を突如として始めたのだ。
その証言はまず、飯塚玲児というライターが自費出版した電子書籍『草津温泉 漆黒の闇5』で公表された。
これに続いて新井は記者会見を開き、 町長にいきなりキスされ、床に押し倒された などとして、 「町に住む弱い女性の立場をもっと尊いものにするため、町長を告発することにした。最終的には町長の辞任を目指す」 と主張。
黒岩町長は事実無根だと反論し、新井と飯塚を名誉毀損で刑事告訴、総額4400万円の慰謝料や謝罪広告の掲載などを求める民事訴訟を起こした。
性加害が行われたとする日時は 「2015年1月8日の午前中」 と明記されていたが、その時間に、町長室で黒岩町長が新井町議と会う旨の アポイントの記録はなかった。
しかも1月8日の午前中は、年始の客がアポなしで来るため対応に追われるし、 仕事始めで職員との打ち合わせも次々入ってくるし、とても男女が二人きりで時間を過ごせるような状態ではない という。
そして何よりも、 町長室の扉は常に開けっ放しだった。 草津町付近には二つの活火山があり、いつ緊急事態が起きても町長室を対策拠点にできるようにするためで、打ち合わせ中でも職員が入って来れるようになっていたという。
さらに町長室の隣には応接室、副町長室、総務課があり、何かあったら誰でも気づくし、 しかも部屋はガラス張りで、草津町交番や商工会館から中の様子が丸見えで、性交渉などできるわけがなかったのだ。
明らかに荒唐無稽な証言で、しかもその内容はコロコロと変遷した。
実は、最初の告発をした電子書籍で新井は 「黒岩町長を本当に好きになってしまった。町長室で二人きりになった時、私の気持ちが通じた時には本当に嬉しかった」 と書いており、身体を求められて嬉しい反面、不安や複雑な気持ちを感じ、拒んだら町長の気持ちが離れてしまうので受け止めるしかなかったとしていたのだ。
ところが、出版後まもなく行われた記者会見やメディアの取材では、証言が 「強制的な性被害を受けた」 に変わった。
さらに新井は、町議会の本会議場で突然 「私以外にも数名の性的被害を受けた女性がいる」 と発言。だが町長が「どこの誰か? いつのことか?」と質しても、 「プライバシーの侵害になるので言えない」 と何ひとつ明らかにしなかった。
また、町長室で関係を持つのは物理的に不可能であることを追求されると、 「町長が部屋の模様替えをして証拠隠滅した」 と発言。だが模様替えが行われていないことは、過去の写真を見れば明らかだった。
さらに、新井のこの主張は特に問題となった。
「このまちでは女性はまるで"モノ扱い"です。有力者や宿の主人の愛人になるというのも昔からよくあることですし、愛人になれば、湯畑周りのいい場所にお店を持たせてもらえるとか……。女性の方にも問題はあるのかもしれませんが、そうせざるを得ない雰囲気がこの町にはあります」
おそらく、こんなに女性の地位が弱いから町長の求めを拒めなかったと言おうとしたのだろう。
だがこれは黒岩町長のみならず、 草津町で働く女性に対する大変な侮辱だった。 草津でいい場所に店を出している女性は「有力者の愛人」だと言っているのも同然なのだから。
これで草津町民は、新井に対して圧倒的な不信感を抱いたようだ。
新井は町議会に黒岩町長の不信任決議案を提出したが、賛成したのは中澤康治という町議ひとりだけで、反対多数で否決。 逆にその際の発言が「議会の品位を傷つけた」として懲罰動議が発議され、新井は失職した。
しかし新井は群馬県に異議申し立てを行い、県がこれを認めて復職させたため、改めて新井に対する解職請求(リコール)運動が開始された。
すると署名収集期限を半月以上残して、リコール発議の必要数を1500人近くも上回る3292人分の署名が集まり、これを受けて令和2年(2020)12月、リコールの是非を問う住民投票が行われた。
その過程では、 新井が住所を偽っており、草津町に居住実態がないという事実も明らかにされた。
そして投票の結果はリコール賛成が有効投票の9割以上を占める2542票。反対は208票で、新井は即日失職した。
かくして、地元においてはこの問題は終息したはずだった。
ところが、本当の騒動はここから始まったのである。 -
「忽那賢志という卑屈な医者」小林よしのりライジング Vol.423
2022-01-18 18:40150pt3月にも開始されようとしている子供への新型コロナワクチン接種を阻止すべく、戦うゴー宣読者・たけし社長が始めた、新聞に全面意見広告を載せる作戦は着実に成果を上げてきたようだ。
それにしても、新聞の力はわしが思っていたよりもまだまだ大きいということを、今回改めて認識させられた。
「世界のゴー宣ファンサイト」に寄せられた声などを見ても、身内にワクチン接種を思いとどまるよう説得する際に、その根拠を示すのに「ネットに載っている」と言うのと、「新聞に載っている」と広告を見せるのとでは、効果が格段に違うようだ。
新聞なんかとっくに過去のメディアだとずいぶん前から言われていて、実際に部数も下がり続けているわけだが、それでもやっぱり紙媒体の新聞に対する信頼感や影響力は、今なお相当なものなのだ。
それならば、新聞報道には重大な責任があるということは特に強調しておく必要がある。
新型コロナやワクチンについて、新聞は責任ある報道をしてきただろうか? 到底そうは言えない。新コロについてはひたすら恐怖を煽り、三密回避だの人流抑制だのを推奨し、ワクチンを唯一の解決策のように扱い、ワクチンの危険性についてはほとんど無視してきたのが今までの新聞報道ではなかったか。
昨年12月28日の朝日新聞には、大阪大学教授・忽那賢志のインタビュー記事が載った。
全く同じ文面の記事でも、Web版と紙媒体では印象が全く異なる。Web版はどんな記事でも全てフラットに並ぶのに対して、紙面の場合は何面のどの部分に載るか、スペースは何段組みか、見出しの大きさはどれくらいかといった違いで、はっきりと格付けがなされるのだ。
忽那のインタビュー記事が載ったのは「第1社会面トップ」で、これは1面トップに次ぐ特等席だ。 スペースは7段組み、見出しも5段抜きの大きさで、忽那のカラー写真入り。1面の主な記事紹介にもカラー写真入りで載せられている。新聞記事としては超VIP待遇である。
つまり朝日新聞はこの記事によって忽那の意見を最大に尊重し、信頼できるものとして権威づけたことになる。
では、この記事で忽那は何を語ったのか?
記事本文は、こんな記述で始まる。
忽那氏はまず、ワクチン接種について「まだ受けていない方がいれば、ぜひ検討してほしい。オミクロン株に感染しても重症化することを防ぐことができる」と話す。3回目接種(ブースター接種)についても「感染そのものを防ぐ効果を高めることができる」という。
一切の躊躇もない、ワクチン激推し。しかもこの短い発言の中に、嘘がてんこ盛りだ。 -
「商売を利するから反論しない?」小林よしのりライジング Vol.418
2021-12-07 19:20150ptオミクロン株の登場で、マスメディアは一気に大フィーバーだ。
特に常に煽りのトップランナーだったテレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」の玉川徹は、今回も煽り芸で視聴率を稼ぐ気満々である。
そんな中、玉川は批判を一切受けつけないことを表明したが、そんな無責任はわしが絶対に許さない。
玉川は明らかにわしの批判を意識している。
そもそも玉川はコロナ禍以前には2回もわしの仕事場を訪れ、わしの意見を聞きに来て、それを自分のコーナーで放送している。
そこで「週刊SPA!」編集部は玉川に「小林よしのりとの対談」を依頼したが、玉川は「多忙」を理由に断った。
そして5月11日、玉川は番組中で 「一部の漫画家とか、元政治家が何言ったってほっときゃいい。社会的影響はほとんどないから」 と言い放った。
玉川を批判している漫画家なんて他にはいないから、「小林よしのり」と名指ししたのと同じだ。ついでに出された「元政治家」は、時々玉川について批判めいたことも言う橋下徹だろう。
しかしそれなら玉川はなぜ 「社会的影響はほとんどない」 はずのわしにわざわざ2回も取材して、それを結構な尺を取って放送したのか?
玉川がこの日にこんな暴言を吐いた理由は察しがつく。ひとつは、その2日前にわしがブログで、玉川がわしとの対談依頼を断って逃げたとバラシたからだ。
そしてもうひとつ決定的だったのは、この日発売のSPA!に『ゴーマニズム宣言』第124章『コロナ君、煽りは犯罪』が載ったからだろう。
この作品では 「煽り魔・玉川徹が最凶戦犯だろう!」「玉川の『煽り』の犠牲者の方が、もはやコロナの犠牲者より多い! 不幸を撒き散らす『煽り』はテロと同じだ!」「煽りはテレビからばらまかれるサリンと同じ」 と、玉川を徹底的に批判した。これは最新刊『コロナ論4』では巻頭に収録したが、いま読み返してもその辛辣さは我ながら相当なものだ。
玉川は本番前にこれを読んで逆上し、しかしそれに全く反論ができないから、 「一部の漫画家」ごときがと口走ったのではないか。
そう考えると、 「社会的影響はほとんどない 」というセリフも、玉川の「評価」というより、むしろ「願望」なのだと思える。
小林よしのりに社会的影響力があって、自分がコロナ禍を引き起こしたインフォデミックの張本人だという認識が世の中に浸透してしまったら、もう破滅だ。だから何が何でも、小林の社会的影響なんか、ほとんど皆無であってくれと願っているわけだ。
だがそれにしてもスゴイと思うのは、玉川は自分に社会的影響力があると確信しているらしいことだ。
社会的影響力があるのは「テレビ」であって、「玉川徹」ではない!
玉川なんかテレビ朝日を退社して一個人になったら、それこそ何の影響力もない。
個人で戦う覚悟も能力もなく、巨大組織の一員として高給で守られ、あくまでもテレビ局社員という組織人だから「視聴率1%100万人」といわれるテレビで発言させてもらえるのに、その分をわきまえることもなく、これが自分の特権であるかのように錯覚し、テレビ放送という「公器」を「私物」として使いまくっているのが玉川徹である。
しかも、そもそも「社会的影響力がないから無視していい」という理屈は完全におかしい。 -
「東京五輪を子供たちのために」小林よしのりライジング Vol.399
2021-05-25 21:30150pt以前は、わしはオリンピックに経済効果などないことを論証し、オリンピック開催に懸念を示していたが、今は、コロナ禍だからこそオリンピックは絶対やるべきだと主張している。
どういうわけだか、わしの考えはいつも圧倒的少数派の意見になってしまうのだが、別に逆張りでやっているのではない。
新コロは「インフルエンザ以下」というわしの主張を貫徹すれば、オリンピックを止める意味などないし、コロナ禍の最大の犠牲者である子供たちのためにこそ、開催すべきなのだ。
朝日新聞社の最新の全国世論調査では、東京オリンピック・パラリンピックの開催をどうするのがよいかという質問に対し、「中止」が43%と最も多く、「再び延期」が40%で、「今夏に開催」は14%にとどまった。4月調査と比べ、「中止」が大きく増え、「今夏」は半減したという。
再延期といったって、来年は冬季五輪もサッカー・ワールドカップもあるわけだし、再延期に伴うコスト等の問題も山ほどあるから、現実的には無理だろう。再延期は実質的には無期延期であり、中止を求めているのに等しい。
つまりは「開催反対」が83%で、賛成は14%ということだ。
2013年8月、東京五輪招致決定直前に行われた朝日新聞社の全国世論調査では、開催賛成が74%、反対が17%だったから、真っ逆さまだ。
滝川クリステルが「お・も・て・な・し」と言って五輪招致が決まった時は、たちまち日本中が祝賀一色となって沸き上がり、「祝賀ムードに水を差す奴は非国民」という空気が出来上がった。
当時は、東日本大震災の被災者がメディアの取材に対して「オリンピックどころではない」と答えたら、ネットで「いつまで同情して欲しいのか? 国民が一丸となって招致したオリンピックをけなすとは、被災者は一体何様のつもりか!」と叩かれるという事態まで起きている。そもそもこのオリンピックは「復興五輪」を標榜して招致したはずだったのに。
ところが、8年前にそんな「五輪歓迎全体主義」があったことなど、もう誰も覚えていない。それどころか、真逆の「五輪中止全体主義」の空気が完全に出来上がって、五輪開催を主張したら「非国民」扱いされかねないのだから、全く呆れ果てるしかない。
こんなもんだ、大衆の世論なんてものは。全く無節操に極端から極端に動き、それでどうなろうと一切責任は取らない。そんな世論など気にしたって何の意味もないのであって、堂々とオリンピック・パラリンピックは開催すればいいのだ。そうしていざ日本選手が大活躍し始めたら、世論なんて簡単にひっくり返るに決まっている。
先々週のライジング・コメント欄で読者からの指摘があって、なるほどそうだったかと思ったが、 1998年2月の長野冬季オリンピックの時には、インフルエンザが大流行していたのだ。
インフルエンザの流行は、年末から年明けのあたりにピークを迎えるのが通常のパターンだが、この年は暖冬だったため流行時期が例年よりも遅れてピークが2月にずれこみ、まさに 長野五輪の開会式が開かれた2月7日を含む第5週が、患者報告数13万超とそのシーズンの最多を記録している。そしてこの数字は、それまでの10年間で最多であった。
さらに、このシーズンに流行したインフルエンザでは特記すべきことがある。この時、初めて 「インフルエンザ脳症」 が注目されたのである。
1997/1998シーズンには、学童等を対象としたインフルエンザ様疾患発生報告では全国で127万人という、これも過去10年で最多の患者数となった。 そしてその中に、重度の中枢神経症状を呈する急性脳症を発症した死亡例が報告されたのだ。
このシーズンのインフルエンザ脳症による死亡者は推計100人に上り、そこで厚生省(当時)は研究班を立ち上げ、全国調査を開始したのだった。
この年に小児のインフルエンザ脳症が注目されるようになった背景も、読者のコメントで知った。
1970年代以降、インフルエンザのワクチン接種は学童への集団接種が基本で、学校の体育館等で一斉に接種していた。
ところが副作用報告やワクチン無効論に押され、1994年に集団接種が廃止され、医療機関での個別接種に移行した。
以後の接種率は当然のように激減し、ワクチン製造から撤退する製薬会社が続出し、そうして1998年はインフルエンザの罹患者が激増し、小児の急性脳炎が相次いで報告されるに至ったというわけだ。
そしてこれを契機に、重症化予防の観点から、再びインフルエンザワクチンの接種が見直されることになったのだそうだ。 -
「第1権力と化したテレビマンの狂気」 小林よしのりライジング Vol.398
2021-05-19 12:40150pt5月11日、テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」で、同局社員の玉川徹は、こう発言した。
「例えば、その、一部の漫画家とかね、元政治家とかが、何言ったってほっときゃいいと思ってんですよ、私は、ああ。
なぜなら社会的な影響なんてほとんどないから」
「一部の漫画家」とは、明らかにわしのことである。
「元政治家」とは、無制限の検査拡大はすべきでないと玉川を批判している橋下徹のことだろう。わしには橋下も玉川と大差のないコロナ脳にしか見えないのだが。
SPA!編集部も、FLASH編集部も、玉川徹にわしとの対談を申し込んでいたのだが、玉川は「多忙」を理由に断って来た。
緊急事態宣言発令以後、ずっと家に閉じこもってほとんど外にも出ていないのに「多忙」とは笑わせる。わしとの直接対決をそれほど恐れていたとは可笑しいくらいだ。
わしは8日のニコニコ生放送『オドレら正気か?』で、玉川が対談依頼から逃げたことをバラした。そして11日発売のSPA!に載った『ゴー宣』も玉川の徹底批判だったものだから、それでもう耐えきれなくなってこんなことを口走ったのだろう。
だが玉川はかつて、その「社会的影響力なんてほとんどない」漫画家・小林よしのりに2度もインタビューしに来て、番組でも放送していたのだ。
それなのにコロナに関してだけはインタビューに来ず、対談からも逃げるのだから呆れる。臆病者は卑怯者に転ずるのだ!
とはいえこの発言、単に卑怯者の悔し紛れの捨て台詞として看過するわけにはいかない、重大な問題を含んでいる。
玉川は、自分には一漫画家の小林よしのりよりも、はるかに大きな影響力があると思っているのだ!
みっともない人間だ。
玉川徹に影響力があるのではない。テレビに影響力があるのだ!
テレビはこういう自己主張の強い、アクの強いキャラを生み出すが、あくまでもモノを考えない大衆向けの脊髄反射でしゃべるカラクリ人形のようなものだ。
論理性がないから文章にすると途端に幼稚になる。
テレビだからこそウケるのは橋下徹によく似ている。
テレビは「雰囲気」しか伝えない。「ズバリ、モノ言う人」という雰囲気さえまとっていればそれだけでよくて、実際に何を言っているかまで聞いている人なんて、ほとんどいない。
玉川はテレビに出ていなければ何の影響力もない。東京新聞でコラムを書いているが、おそらく誰も読んでいないだろう。
しかしテレビに出ている限りは、その力は絶大なのだ。何しろ視聴率1%が100万人だ。このゴールデンウイーク中には「コロナ恐怖」を煽って12.6%という高視聴率を叩き出し、同時間帯トップを独走し続けている。
恐怖を煽る手法は矢追純一と似たようなもので、「恐怖」に対抗して「安心」を与えても視聴率は得られない。
コロナは「不安」や「恐怖」を煽れば視聴率がとれる絶好の素材と気づいた玉川徹は、お化け屋敷の呼び込みのように、嬉々としてたかがインフルエンザ以下のウイルスを、恐怖の大王のように錯覚させてしまっている。
いくら「本の力」といっても、『コロナ論』が1、2を合わせて10万部では、まだ全然太刀打ちできない。
だが、これはあくまでも「テレビ」と「本」というメディアの差である。
玉川はおめでたいことに、それを玉川徹と小林よしのりの差だと思っているのだ。
そもそも、テレビと本は同列に並べられるメディアではない。
出版は誰でも参入できるが、 放送は総務省の許認可を受けた免許が必要であり、新規参入には制限が設けられている。
そうして、 限りのある「公共の電波」を使わせてもらって運営しているというのが大前提であって、テレビは「公器」なのである。
公器である以上は、偏向してはいけない。対立意見がある場合は「両論併記」にしなければいけないのだ。
このことは、放送法第4条に明記されている。 -
「なぜマスコミは煽り続けるのか?」小林よしのりライジング Vol.381
2020-12-07 17:50150pt「新型コロナは、インフルエンザ以下のウイルスである」
なぜテレビは、たったこれだけのとんでもなく単純な事実を隠蔽するのか?
それは、これを言ってしまったら、今まで自分たちのやってきたこと全てが崩壊するからである。だから隠蔽せざるをえないのだ。
11月28日放送の読売テレビ「ウェークアップ!ぷらす」で、 「なぜインフルエンザだと医療崩壊しないのに、新型コロナだと医療崩壊するのか?」 と司会の辛坊治郎がチラッと聞いたら、エセ専門家が 「インフルエンザではサイトカインストーム(免疫暴走)がほとんど起こらないから」 などと、信じられないことを言った。
もちろんこれは大嘘で、サイトカインストームはインフルエンザでも起こる。それどころかインフルエンザは 「サイトカイン病」 とも言われるほどなのだ。
なぜこんなデタラメなことを言うのかといえば、新コロはインフルエンザ以下だと指摘された時の答えが準備できていないからだ。
何かといえばエビデンス、エビデンスと言ってるくせに、新コロをインフル以上に恐れなければならないとするエビデンスが全く出せないものだから、口から出まかせで嘘を言うしかないのである。
わしは(泉美さんも)データによってエビデンスを出している。新コロはどんなに頑張ったって、インフルエンザ以下の感染者しか出せない。
インフルは例年、1日あたり3万人、4万人の患者が出ている。
それに対して新コロは10か月もかけて、ようやく15万人の 陽性者 だ。
あくまでもインフルは症状が出て受診した 「患者」 の数であるのに対して、新コロは無理矢理検査を拡大し、無症状の感染者や、他国の基準だったら「陰性」と判定される者までをカウントした 「陽性者」 の数なのだから、全く次元が違うのである。
インフルエンザの患者数の方が、新型コロナよりも桁外れに多い。だがそれでも、インフルで医療崩壊は起こらない。
当たり前の話で、 インフルエンザ(季節性)は「5類感染症」に分類されていて、町医者でも治療ができるのに対して、新コロは「2類相当、一部1類相当」の指定感染症になっていて、限られた医療機関でしか診療ができないようになっているからだ。
新コロはインフル以下だから、指定感染症から外すか、せめてインフルと同じ5類感染症にすればいいだけの話なのだが、テレビはこの事実を絶対に隠蔽しなければならない。
なぜかというと、それは視聴率競争のためだ!
視聴率のためと説明しても、なぜそのためにそこまでやらなければいけないのかとか、経済が打撃を受けて企業CMが入らなくなるから、かえって損じゃないかとか、今ひとつ合点が行かないという反応が返ってくることが多いのだが、はっきり言って、それは認識が甘い。
テレビ業界は、本当に熾烈な競争社会なのだ。
テレビ朝日「羽鳥慎一モーニングショー」の裏番組で、落語家・立川志らくがMCをやっているTBSの「グッとラック!」は、来年3月での打ち切りが決まったと報じられている。 視聴率競争に負けたら打ち切りなのだ。 そして、志らくには「視聴率が取れない」とか「MC失格」とかいった烙印が押され、リベンジのチャンスが与えられるかどうかもわからない。
これは、相当に厳しいことなのだ。
今は同時間帯トップの視聴率を稼いでいるモーニングショーだって、視聴率が下がれば容赦なく打ち切られるし、そうなったら司会の羽鳥慎一も、コメンテーター達も、スタッフもみんなクビになってしまう。これは生き残りを賭けた過酷な戦いなのだ。
羽鳥にとってはこれが最大の看板番組であり、ここから相当な収入を得ている。 しかしフリーだから、いつ切られて無収入になってもおかしくないし、実際に橋下徹との共演で、鳴り物入りで始まった番組が低視聴率であっさり打ち切られるという憂き目に遭ったこともあるから、切実だろう。
そうなると玉川徹などは、他番組にはないキャラで視聴率が稼げるから、ものすごく大切ということになる。それで以前は週一出演だったものが、毎日のレギュラーになったわけである。
そして、ここで何が一番重要かといえば、 視聴者が老人だということだ。 -
「アフガニスタン・ペーパーズ」小林よしのりライジング Vol.342
2020-01-15 12:15150ptこれは決定的に重要だ! と思うようなニュースが、それほど大した扱いもされずに一度サラっと報道されただけで忘れ去られていくというようなことが、最近特に多いような気がする。
いわゆる 「アフガニスタン・ペーパーズ」 のニュースなど、その最たるものである。
昨年12月9日、アメリカの有力紙「ワシントン・ポスト」は、2001年から18年間にもわたって続いているアフガニスタンでの軍事作戦や復興支援が、完全に失敗していることをアメリカ政府高官らが認識していながら、国民に隠蔽していたとする内部文書を入手・公表した。
この文書はアメリカ政府の「アフガン復興担当特別監察官室(SIGAR)」が、政府や軍高官、外交官、援助関係者ら600人以上から聞き取り調査をしてまとめた2000ページに及ぶ証言記録で、正式名称は「Lessons Learned(得られた教訓)」という。
当初は機密文書に指定されてはいなかったが、2016年8月にポストが公開を求めるとSIGARがこれを拒み、国防総省や国務省が介入して文書の一部を機密扱いにして、当たり障りのない部分しか公開されなくなった。
そこでポストは情報公開法に基づいてSIGARを連邦裁判所に提訴し、3年もの情報公開請求と2度の法廷闘争という執念の活動の末にようやく入手したのだった。
ただし公開されたのは600人以上の調査のうち428人分で、政権関係者や軍高官らの名前の大半は「黒塗り」にされ、実名を明かしたのは62人分だけだったため、ポストは全員の公表を求め今も裁判中だという。
ポストはこの文書を 「アフガニスタン・ペーパーズ その戦争の隠された歴史」 と題した大々的な記事にして公表した。
アフガニスタン・ペーパーズという名称は、1971年にニューヨーク・タイムズが入手・公表し、ベトナム戦争の行方に決定的な影響を与えたアメリカ国防省の機密文書 「ペンタゴン・ペーパーズ」 に由来している。
ペンタゴン・ペーパーズには、ベトナム戦争の全面化につながった1964年の「トンキン湾事件」(北ベトナムがアメリカの軍艦に砲撃を加えたとされる事件)が、実はアメリカ側が仕組んだものであり、その3か月前には開戦のシナリオを完成させていたことが書かれていた。
そしてさらにペンタゴン・ペーパーズで暴かれた重大な事実は、 ベトナム戦争には勝てる見込みがないことを知りながら、歴代政権が議会や国民に対して正確な情報を隠蔽し続けていたということだった。
ケネディ、ジョンソン、ニクソンの歴代大統領は、自分の就任中にベトナム撤退という決定的敗北を認める決断を下せば、国内の反共主義者から猛攻撃を受けてしまうということを恐れ、「この戦争は近いうちに終わる」と嘘をつき、問題の先送りをしていた。
そして政府の世論操作に有識者や有力メディアも騙され、国民は戦争が早期に終わると思い込み、アメリカの青年たちが戦争に送られて数万人が命を失い、 ベトナムの民衆は数十万人の単位で殺戮されていたのだった。
ペンタゴン・ペーパーズをリークしたのは政府系シンクタンク「ランド研究所」の職員だった、ダニエル・エルズバーグという人物である。
ランド研究所は国防総省の外部委託研究を行う機関で、ペンタゴン・ペーパーズの作成を委託され、エルズバーグもそのスタッフの一人だった。
エルズバーグは政権に忠実・誠実な仕事をしてきた官僚タイプの人物だった。しかし、7000ページに及ぶペンタゴン・ペーパーズの全文を読み通し、ベトナム戦争の真実を知ったエルズバーグは、ベトナム戦争を終結するには米軍が完全無条件に撤退する以外にないが、このままでは永遠にそれが実現する見込みがないということを知る。
そして戦争を終結させるためには、政府の機密文書という動かぬ証拠を暴露するしかないということを悟った。
かくしてエルズバーグは7000ページの報告書をコピーして持ち出すという、命がけの内部告発に踏み切ったのだった。
エルズバーグは合衆国法典793条E項違反で逮捕された。 スパイ法違反で法定刑は10年以下の懲役か罰金刑の併科、または選択刑である。だがエルズバーグは会見でこう言った。
「もし私のしたことが戦争を終わらせるのに少しでも役立つなら、10年間刑務所入りしても安いものではないか」
エルズバーグは大統領に忠誠を誓い、仕えてきた人間だった。それがこのような行動を起こしたことについて、後に彼は「大統領に対する忠誠心よりも、もっと深く広い忠誠心、長い間みられなかった忠誠心」を奮い立たせたためであるとして、こう語っている。
「それはアメリカの建国理念、アメリカの憲法体系、アメリカ国民、自分自身の人間性、そしてアメリカの “同盟国” とアメリカが爆撃している民衆への忠誠心である。」
エルズバーグは起訴されたが、ホワイトハウスの情報工作機関がエルズバーグの信用を失墜させるために、彼が診察を受けていた精神科医の事務所に侵入してカルテを盗もうとしたことが判明し、「政府の不正」があったとして裁判は却下された。 -
「『言論の自由』を守る義務は権力にあるのだ」小林よしのりライジング Vol.169
2016-03-08 20:10153pt2月29日、田原総一朗、鳥越俊太郎、青木理、岸井成格らジャーナリストが、高市早苗総務相の「電波停止示唆脅迫」に抗議する記者会見を行った。
【中継録画】http://thepage.jp/detail/20160229-00000005-wordleaf
わしはこの会見の趣旨に賛成する。
高市総務相は放送法第4条に 「政治的に公平であること」 という項目があることを根拠に、放送局がこれに従わなかった場合、総務大臣の判断により電波停止の処分を下すことがありうると言ったが、この法解釈は完全に間違っている。
そもそも放送法は、「 放送をいかなる政党政府、いかなる団体・個人からも支配されない自由独立なものとしなければならない 」という理由から定められたものである。
これは憲法21条の「 一切の表現の自由は、これを保障する 」の規定に基づいている。
高市早苗は放送法以前の問題として、憲法の「表現の自由」の意味が分かっていないのではないか?
「表現の自由」を守らねばならないのは権力の側である。
「電波停止命令」で民間の表現を規制するかもしれないぞと脅すというのは、 「我々権力者は、憲法違反をするかもしれんぞ」 と言っているに等しいのだ。
高市は憲法の意義を知らない政治家失格のバカか、そうでなければ、わざと曲解した法解釈を言い、憲法を踏みにじって言論統制をしようとしているか、あるいはテレビ報道の「 委縮 」効果を狙っているかのいずれかだが、 「 委縮 」効果が一番の目的だろう。
自称保守派の論客の中には、「偏向報道が許されると言うのか」と言ってる馬鹿もいる。
わしも自虐史観全盛の時には散々「偏向報道批判」をした立場だが、民間人が民間人にそれを言うのは自由である。 問題は権力が「偏向」だと判定するのがマズいのだ。憲法違反になる。
そもそも偏向か否かの判断は相対的なものだ。右から見れば左が「偏向」しているように見え、左から見れば右が「偏向」しているように見える。
例えば関口宏の「サンデーモーニング」は護憲派に「偏向」していると思うが、いまここまで徹底した政権批判をする番組は珍しいし、正しいことも言うのでわしは貴重だと思っている。
むしろ「新報道2001」の方が政権寄りに「偏向」しているので、メディアの意味がないと思って見なくなった。
誰が「偏向」しているか、どこが「偏向」しているかは、自由な批判の応酬で、論争の末に明らかにしていく他ない。そのためにも、自由に意見を表明する権利は守られなければならないのだ。
むしろアメリカならば、番組やキャスターが「民主党支持」や「共和党支持」を明らかにして、「偏向」するのが当たり前の報道をしているようだ。視聴者もそれが分かって見ているのだ。
読売新聞や産経新聞が明らかに自民党寄りで、朝日新聞・東京新聞が左翼寄りなのは誰でも知っているが、テレビ報道もそのように立場鮮明の「偏向」を特色とする番組があってもおかしくないのだ。
偏向か否か、公平か否かは、権力が判断することではない。総務大臣が「偏向」と判断したら電波を止められるなんていうのは言語道断である。
「公平・公正」 といえば、例えばAとBの意見が対立していたら、Aの意見を5分流せば同様にBの意見も5分流さなければならないのだろうと思っている人も多いようだが、これは間違いである。 -
「媚びへつらいのための集団的自衛権」小林よしのりライジング Vol.89
2014-06-17 18:25153ptわしが「SAPIO」の『ゴーマニズム宣言』で、時事ネタを描かなくなったからか、新聞がインタビューを求めてくることが多い。
ありがたいことなのだが、新聞は文字数が限られる。1時間以上話しても、記事ではかなり省かれ、凝縮されるので、どれだけ伝わるのかわからない。
ライジングでは文字数制限がないので、詳細に書けるのだが、届けられる人数が少ない。やむを得ない。諦観しよう。
最近の新聞のインタビュー依頼のテーマは「 集団的自衛権 」である。
日本が「 集団的自衛権 」を行使できるようにするのならば、憲法改正は不可欠である。ところが安倍政権は、改憲をせずに押し切ろうとしている。
これだけでも言語道断なのだが、実はもうひとつ、集団的自衛権行使を容認するなら改定が不可欠なはずなのに、安倍政権が手をつけずに済まそうとしているものがある。
それは、「 日米安全保障条約 」である。
日米安保条約では、米国には日本を守る義務があるが、日本が米国を守る義務はない。 その代わり、日本には米国に基地を提供する義務があり、条約は双務的になっている。
基地の提供は米国の世界戦略に貢献するだけではなく、日本は在日米軍関係経費、基地交付金など 毎年6400億円 を負担している。
集団的自衛権の行使容認となれば、「日米による相互防衛」となるから、 日本は米軍への基地提供義務を廃止するか、そうでなければ米国が国内に自衛隊基地を提供する義務でも課さなければバランスが取れない。
日本だけが基地を提供し、お互い守り合うのであれば、日本にだけ過重な負担を強いる「不平等条約」になってしまうのである。
対等な独立国同士であれば、「 集団的自衛権行使と引き換えに、基地提供義務を廃止 」という条約改定をやらなければならない。
ところが安倍政権は安保条約改定には一切触れることもせず、「 日米ガイドライン 」の見直しによって集団的自衛権行使に踏み切ろうとしている。
日米ガイドラインとは「日米防衛協力のための指針」であり、日本への攻撃や周辺事態(具体的には朝鮮戦争が再開し、日本に飛び火する事態を想定)の際に日米双方の役割分担を定めた文書である。
米国が基地とカネという既得権益を手放すわけがなく、安保条約改定になど応じるはずがない。
それがわかっているから、安倍政権は最初から条約改定を一切口にせず、条約よりも下位にある日米ガイドラインの見直しで集団的自衛権の行使をしようとしているわけだ。
日本の一方的な負担増を、日本の側から申し出ているのだ。あまりにも露骨な米国追従、媚びへつらいである。これを屈辱とも思わないのだから、属国根性極まれりである。
なぜこんなことをやりたがるのか。実はその理由を、安倍自身が10年前の岡崎久彦との対談本『この国を守る決意』であけすけに語っている。
安倍は、日米安保条約は「双務的」であり、さらに集団的自衛権まで行使する必要はないという批判に対して、 米国が日本を守り、日本が基地を提供するという現行の条約では「双務性」が足りない と言う。
そして 「日米安保をより持続可能なものとし、双務性を高める」ために、集団的自衛権の行使が必要だと主張している。
日米安保条約第5条には、米軍が日本を守ることが規定されている。だが安倍は、条約は「ただの紙」でしかないというのだ。
安倍はこう言っている。
信頼関係と連帯のない同盟というのはただの紙でしかありません。それがあって初めて同盟に魂が入り、有効に機能するということです。
「五条にこう書いてあるではないか」と言って、まるで法の番人のようにアメリカに突きつけたところで、何の効力も発揮しないということなんです。これは相手の立場に立って考えてみればすぐにわかることだと思います。ですからこれからも、日本はその不断の努力が必要であると。 (P61~62)
その「 不断の努力 」が、米国に対する「 不断の媚びへつらい 」なのだ。
いざという時に見捨てられないように、とにかく米国に媚びて媚びて媚びまくれ! 尽くして尽くして尽くしまくれ! 基地を提供しているだけでは足りない、さらに米国のために自衛隊員の血まで流してさしあげろ! ここまでやっているのだから、北朝鮮や中国がヤバくなっても見捨てないで下さい、助けて下さいねと、アメリカ様にしがみつけ!!
安倍が言っているのは、要するにそういうことだ。
この対談本が出たのは 2004年1月。岡崎久彦がイラク戦争の米軍勝利を確信し、これで世界史的な「アメリカ帝国」ができ上がるぞ、これからは「パックス・アメリカーナ」の時代だぞと欣喜雀躍していた頃 である。
この本でも岡崎は、イラク戦争を支持したことで「 日米関係がこの150年で最善だ 」と喜び、「 一年前に集団的自衛権の行使を認めていれば、今回のイラク戦争で世界三大国の一つになっていましたよ 」と悔やんでいる。
それから10年、日米関係は安倍政権によって史上最悪といわれる状態になったし、イラク戦争をめぐる岡崎の発言はすべて間違っていたことも明白になった。 -
「安倍政権と大マスコミの癒着」小林よしのりライジング Vol.88
2014-06-10 20:40153pt新聞に、こんな内容の記事が載っていた。
アベノミクスによる景気回復で、雇用の改善が進んでいる!
有効求人倍率はバブル崩壊後の最高値に並んだ!
人手不足は都市圏に限らず全国に広がり、人材の奪い合いが起きている!
都心部では、時給1500円でも人が集まらないケースまで発生している!
人手不足は本格的な景気回復を告げる「福音」だが、さらなる経済成長を阻む不安要因となることも懸念される!
……マトモな生活実感を持って暮らしている人なら「一体どこの世界の話だ!?」と思うだろう。事実、ちょっと検証すればこれはトリックだらけの、詐欺同然の記事だとすぐ判明する。
これが、最初から安倍政権の御用新聞だとわかっている読売新聞や産経新聞に載っていたのならまだわかる。
だが、この提灯記事が載ったのは5月31日の朝日新聞 。それも1面トップと2面の特集という大々的な扱いである!
朝日新聞を、安倍政権に対する批判勢力だなんて思わない方がいい。
朝日新聞は一応、集団的自衛権については批判しているが、景気対策ではデマまで駆使して強力に安倍政権を応援しているのだ。
政府は5月30日、4月の物価・生産・雇用等の統計を発表、朝日はこれを基に30日の夕刊で「 求人倍率さらに改善1.08倍 4月バブル後最高に並ぶ 」という一報を載せた。
ただしこの記事はまだマシだった。「有効求人倍率が1倍を超える」というのは「 仕事を選ばなければ 全員が職に就ける状態」であると説明した上で、次のように書いていたのだ。
ただ、正社員を希望する人でみると、有効求人倍率(原数値)は0.61倍で前月を0.04ポイント下回った。求人は依然、非正規が中心となっている。このため、企業が出した求人のうち、実際に採用に結びついたのは2割にとどまった。 求人は非正規が中心で、正社員の有効求人倍率はわずか0.61倍!
本当はこれが重要なポイントなのだ。ところが、このことは翌日の1面トップと2面特集の大々的な記事からはスッポリ抜け落ち、「景気回復で求人難」という内容になっていた。
しかもその特集記事で、「時給1500円」という高額を提示しても人材を確保できない実例として登場するのが、なんと牛丼チェーンの「すき家」なのである!!
すき家はメニューが多く、券売機方式ではないため、ただでさえ他の牛丼チェーンよりも店員の作業が多い。
しかも人件費抑制と利益率増大のため店員は必要最低限の人数に抑えられ、深夜時間帯はアルバイト1名のみで1店舗を担当する「ワンオペ(ワンオペレーション)」という勤務を強いられる。
注文を受けた後、キッチンに入って盛りつけ、提供、会計、片付け、そして報告まで全部ひとりでこなさなければならないのだ。
「ワンオペ」は防犯上も問題で、すき家では2010年頃から強盗事件が多発。2011年には未遂も含めると78件と、牛丼チェーンの被害総数のうち9割近くを占めたという。
そしてこの上に今年2月、さらに手間のかかる「牛すき鍋定食」が発売となったことでついにキレたのか、バイトが一斉退職。
すき家では店員の確保ができずに休業に追い込まれる店舗が続出し、ニュースになった。
今ではすき家のバイトはあまりにも過酷だということは広く知れ渡っている。だから時給を1500円にしても人員が確保できないのだ。
もちろん朝日の記者がそれを知らないはずがない。実際、記事中では「 すき家は、深夜帯のアルバイトを一人で任されることもあり、負担が大きいと2月から4月にかけて人手不足が深刻化 」とも書いている。
朝日新聞は実態を知っていながら、それを「 景気回復によって求人難になり、待遇改善が図られた 」という記事にしたのだ。
有効求人倍率が「改善」し、企業が「求人難」になっているというのは、景気回復のためでも何でもない。
ブラック企業を含む求人側が、都合よくこき使えて使い捨てできる人材を大量に求めているからというだけのことだ。
朝日新聞は、安倍政権のために情報操作をしているのである。
朝日新聞の安倍政権提灯記事をもう一つ指摘しておこう。5月30日夕刊の記事「 アベ効果?ベア実施6倍 大手企業の46.7% 」である。
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