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記事 4件
  • 「幸せよりもカネが欲しい高齢者」小林よしのりライジング Vol.186

    2016-07-26 16:40  
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      今の高齢者は、圧倒的に「幸せよりもカネが欲しい」と思っている!
     博報堂生活総合研究所が60~74歳を対象にした「シルバー意識調査」の結果を発表した。
     その中に「欲しいもの」を「若さ」や「名誉」など20項目から3つ選ぶという質問項目があり、1位は「健康」、2位が「安定した暮らし」、3位が「お金」となった。
     この結果で注目を浴びたのは、 欲しいものは「お金」と答えた人が40.6%に上り、「幸せ」の15.7%を大きく上回ったことだった。
    「お金で買えない幸せがある」「お金よりも幸せが大事」といったことは常識のように言われてきたし、年配者こそそういう台詞を言うものだと思っていたが、今や年配者が身も蓋もなく 「幸せよりカネ!」 と言うようになってしまったのだ。
     同調査は1986年から10年ごとに同じ方式で実施され、今回が4回目になる。
      初回の86年調査では「欲しいもの」は「幸せ」(31.1%)が「お金」(28.1%)を上回っていたが、2回目の96年に逆転。その後は差が広がり、ついにはお金が欲しい人が、幸せが欲しい人の2.5倍以上にまでなってしまったのだ。
     年々幸せを求める人がどんどん減り、お金を求める人がどんどん増えているわけである。
     しかも「何歳まで生きたいか」という質問に対する回答の平均は「84歳」で、86年の「80歳」から4年も延びている。
     長生き願望は肥大させながら、長く続くであろう老後に対する不安を抱え込んでいるのだから、「お金が欲しい」というのは切実だ。欲しいもの1位の「健康」や2位の「安定した暮らし」も、その不安感の反映だと言える。
     幸せよりもお金が欲しいという理由をよく見ると、 子供などに迷惑をかけたくない ということがあるようだ。
      この場合の「幸せ」とは、具体的には子や孫に囲まれて暮らし、面倒を見てもらいながら安らかに老いていくことだろう。
     しかし、子供に迷惑をかけたくないからそういう「幸せ」は諦めたとなれば、いずれは自分一人で自分の始末をつけなければならなくなる。
     子供と別居して夫婦二人で暮らしても、どっちかが先に死んで必ずどちらかは一人の老後を迎える。そうなれば、まず必要なのはお金だということになる。
     だから幸せよりもお金が欲しいということになるのだ。
     この結果は、ものの見事に今の時代を反映している。
      かつては、子供を産んで育てたのなら、老後は子供に面倒を見てもらうという期待が常識としてあったものだ。
     ただし、それは祖父母から孫までの三世帯同居の大家族だったから成立していた常識だったのである。
     大家族であれば、分担して誰かが老人の面倒を見るから、家族のうちのたったひとりに負担が集中するということはなかった。だから親は家で死ぬのが当たり前だったのである。
      だがこれは、核家族になった途端に崩壊する。
  • 「天皇陛下、生前退位のご意向」小林よしのりライジング Vol.185

    2016-07-19 19:35  
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     天皇陛下が生前退位のご意向を示されているという報道は衝撃だった。
     7月13日にNHKが第一報を報道すると、たちまち全マスコミが後追いし、 天皇陛下が退位して皇太子殿下へ譲位したいと考えておられること は、たちまち疑いない既成事実の扱いとなった。
     皇室典範に生前退位の規定はなく、ご意向を叶えるには典範の改正が必須だが、典範改正は国会が行う国政問題となっている。
     本来、皇室典範は皇室の家法であり、これが「国政問題」になっていること自体がおかしいのだが、天皇は憲法の規定によって国政には関われないことになっているから、もし天皇陛下が「生前退位できるよう、皇室典範を改正してほしい」と言ったら、憲法違反になってしまう。
     報道の直後、宮内庁が「報道されたような事実は一切ない」と否定したが、これは憲法違反の発言ととられることを懸念したためだろう。
     だがその一方で宮内庁は、陛下がご自身のお考えを国民に広く示される方向で検討を進めているという。
     おそらくその際は、天皇陛下は制度の問題に関しては国会に委ねるとして一切触れず、ただご自身の心情を語るという形にするのだろう。
     陛下は憲法に定められた象徴天皇としてどうあるべきかを模索し、日々の公務に加え、戦没者の慰霊や被災者への慰問に積極的に取り組んできた。
     だが宮内庁関係者によれば、陛下はこれらの「天皇としての公務」を年齢や体調などの理由で十分に行えなくなった場合は、大幅に公務を減らしたり、代理に代行させたりといった措置をとって天皇の地位に留まるのではなく、生前退位をするべきだというお考えだという。
     そしてそのお考えを皇后陛下や皇太子殿下、秋篠宮殿下にも伝えられているという。
     そういうことを、あくまでも個人の心情としておっしゃるものと思われる。
     天皇陛下が自らそうおっしゃっても、まだ生前退位に反対し、皇室典範改正を拒み、天皇は死ぬまで、あるいは病気で倒れるまで公務を続けろと言える者などいるだろうか?
      これは暗黙の「聖断下る」である。
      皇室典範が改正されて生前退位が可能となり、現在の皇太子殿下が即位すれば、次の皇太子がいないという事態に直面することになる。
     秋篠宮殿下を「皇太弟」にするというのはまず無理だ。
     皇太子殿下と秋篠宮殿下は5歳しか離れていない。
     例えば皇太子殿下が即位した後、85歳で譲位したら、85歳の天皇から80歳の皇太弟への皇位継承になってしまう。もちろん秋篠宮天皇の元号は著しく短くなるし、悠仁さまが祭祀継承の準備をする期間も当然短くなる。
     そして何よりも、悠仁さまが結婚されて男子が産まれなければ、皇室は消滅してしまうのだ!
     そんなことを、天皇陛下が望まれているわけがない。
      天皇陛下が、皇位の安定的な継承を望んでおられることに疑いの余地はない。
      そしてそれを叶える方法は、女性天皇・女性宮家を公認し、愛子さまが皇太子になり、佳子さま、眞子さまが宮家の当主になれるようにすること。それ以外にないのだ。
  • 「【バングラデシュ事件】ついに日露・大東亜戦争の遺産は食い潰された」小林よしのりライジング Vol.184

    2016-07-12 15:40  
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     バングラデシュの首都ダッカのレストランを過激派組織「イスラム国」のテロリストが襲撃し、日本人7人、イタリア人9人を含む民間人20人を殺害するという大事件が起きた。
     この事件が、大の親日国であったバングラデシュで起きたという意味を、我々はもっと深刻に捉えなければいけない。
     バングラデシュの国旗は緑の地に赤い円というデザインで、日の丸によく似ている。
     
     バングラデシュのシェイク・ハシナ首相は2014年5月に来日した際の講演でこの国旗について、父親で初代大統領などを務めたシェイク・ムブジル・ラフマンが、1972年の国旗制定時に「日本に魅せられ、日の丸のデザインを取り入れた」ものだと語っている。
     パラオの国旗も青地に黄色の円で日の丸に似ており、元高千穂商科大学教授の故・名越二荒之助(なごし・ふたらのすけ)氏は、講演で日の丸とバングラデシュ、パラオの国旗を「日の丸『三兄弟』」と称し、他の親日国の国旗と併せて次々と広げるパフォーマンスをやっていた。

    (『日本統治論』わしズム2005秋号『ゴー宣EXTRAパトリなきナショナリズム』に収録)
     その名越氏はバングラデシュの国旗について、著書にこう記している。
     私が駐日大使館に国旗の意味を訊ねたら、広報担当官が流暢な日本語で「日本への憧れですよ」と言下に答えた。私が「それは外交辞令ではないか。独立国らしく答えて貰いたい」と言うと、「私の国では国旗の意味を特定していない。解釈は自由なのだ」という。そして、「バングラデシュというのは、“ベンガルの国”という意味である。そのベンガルに世界に誇るべき偉人が三人いる。一人はアジア人で最初にノーベル文学賞を貰った詩聖タゴール(岡倉天心と親交あり、数回来日している)であり、続いてインド独立に命をかけたチャンドラ・ボース、そして極東裁判で正論を貫いたラダビノッド・パル判事だ。この三人はいづれも日本と深い関係にある」と答える。
     同じ解釈をするのは大使館員だけではない。独立した時に日本は早川崇国会議員を団長に、バングラデシュを訪問したことがある。その時建国の父といわれるシェイク・ムジブル・ラーマン首相が、訪問団に同じ趣旨のことを述べたという。このことは同行した田中正明氏の証言でもある。
    (『世界に開かれた昭和の戦争記念館4 大東亜戦争その後』展転社)
     少々話がそれるが、パラオの国旗についても触れておきたい。
  • 「EU離脱の国民投票の結果は天の配剤である」小林よしのりライジング Vol.183

    2016-07-05 20:15  
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     どこもかしこも、イギリスのEU離脱を非難する論調一色になっている。
     曰く、イギリス人は誰もまさか国民投票で離脱派が勝つとは思いもせず、面白半分で離脱に投票した人たちがいて、みんな後悔している。
     曰く、離脱が決まってからネットの「EUとは?」の検索が飛躍的に伸びた。
     曰く、離脱派は離脱が決まったら公約を撤回し始めた。
     曰く、国民投票のやり直しを求めるオンライン署名が400万を突破した…。
     中には、今後の日本経済にも深刻な影響が及ぶ可能性があると脅す者もいる。例えば6月30日「我々の年金にも影響が…英EU離脱でリーマン級危機!?」と題して放送した、テレビ朝日・羽鳥慎一モーニングショーの「そもそも総研」である。
     同番組では、最悪の場合EU解体によって日本のGDPが2~3%マイナスとなり、平均株価9000円台の可能性もあるといい、そして、株価が下がれば年金積立金の運用にも大幅な損失が出て、大打撃を受けると煽っていた。
      だが、そもそも株価が下がって打撃を受けるのは、EUに進出しているグローバル企業だろう。 それは一般国民の生活にそんなに影響することだろうか?
      日本に中小企業は385万社もあり、日本の全企業数の99.7%を占める。
     だが中小企業庁によれば、下請け企業は製造業で約4万9千社、サービス業で約5万9千社だという。
     ということは、 残りの374万余の中小企業は下請けではなく、グローバル企業の影響を受けてはいないわけだ。 これらの企業が内需で頑張っていけば、EUがどうなろうと、我々庶民の生活には何の影響もない。
      そもそも日本の輸出依存度は11.4%にすぎず、日本は内需で成り立っている国である。それなのに、国の政策がグローバル企業優先になっているのがおかしいのだ。
     また年金の問題は一昨年、安倍政権が株価押し上げと円安促進のために、独立法人GPIFによる年金積立金の運用を、株式に重点をおくように変更したことがそもそもの間違いである
     これについては当時から、年金は確実な運用をするのが当然であって、バクチにぶっ込むなんてもってのほかだと、ゴー宣道場のブログでも再三指摘してきた。
      年金が打撃を受けたなら、それは年金積立金を株に注ぎこんだ安倍政権の責任であって、イギリスのEU離脱のせいに転嫁してはいけない。
     これでは「そもそも総研」も安倍政権に媚び、スポンサーのグローバル企業に媚びているのかと疑念を持ってしまう。
     誰も彼もが、EUは理想であり、成功しなければならないものなのだということを前提にして話をしている。
      だがわしは、ずっと以前からEUは「バベルの塔」だと言い、EUはいずれ崩壊するだろうと言ってきた。
      歴史も文化も経済力もそれぞれに全く異なる国々を、単一の経済共同圏に統合しようという極めて人工的・設計主義的な試みには完全に無理があり、こんなものは破綻するに決まっているのだ。
     今度も予言は当たると、わしは確信している。
     だから、今からEU崩壊に備えて対策を打っておかなければ危ないと警告しているのだ。
      フランスの歴史人口学者、エマニュエル・トッドが言っているように、EUの正体は「ドイツ帝国」である。